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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
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グレイの帰還 1(挿絵追加)

「……そう、わかったわ。やってみる」

 可能性がある上にデュアが乗り気になってくれている。自信がある訳ないとわかるからこそメイはとてもデュアの優しさが伝わってきた事がありがたかった。

「頑張るから安心して」

 そうデュアに言われて、デュアが負担を覚えないようにメイは失敗しても恨まない事を誓う。


 聖なる御霊よ、身体に戻りたまえ

 精霊よ、我が歌に力をもたせよ

 どうか……どうか……

 神に逆らっていくのは承知の上

 しかし、貴方様も鬼ではないでしょう

 この者が死んでは嘆き悲しみの深さが大きい者がおります

 しかもこの者は親と子どもがおりました

 しかし親は殺されてしまっております

 この者がいなくなってしまったらその妹はどういたしましょう

 どうか、どうか

 魂を呼び戻したまえ


挿絵(By みてみん)



 神々しいデュアの姿にトムとメイが息を飲む。神聖な場所にいるかのような錯覚、その中心にはデュア。光がデュアを照らし、精霊が微笑みかけているような喜んでいるような雰囲気。

そこまで精霊の恩恵を感じて失敗だなんて事はあり得ないと断言できそうな荘厳な空間だった。


背後で人の気配を感じる。

「ああ!!」

「!?」

 メイが興奮気味に感激していた。

「すごい……! 本当に呼び戻してもらえるとか……!」

 起きあがったグレイにメイが抱きついた。今はグレイも状況をよく理解できていない。

「私とした事がとんでもない事を教えてしまった気がします」

 それにメイが

「後悔先に立たず」

 ……と冷静に言い放った。


「ハハハハ、これはしてやられました。いずれ私と戦う事もあるでしょう。その時はお手合わせ願います」

 ジルヴィアにトムが意気込んで対戦する時は負けないと宣言する。

「いいぜ。俺らももっと強くなっているからな! 覚悟しとけ! そのボウズにも顔を洗って出直してこい! と言っておけよ」

 ふざけているのか、本気なのか判別しづらい返事をジルヴィアが言い残していった。

「合点承知の助」

 使い古した死語のようなとトムは思う。

「それではごきげんよう」


 風を巻き起こして去っていった。


 グレイが状況を理解し始めている。

「あれっ!? 僕は父さんと母さんに会って死を実感して!? あれ~~?」

 メイが嬉しさのあまり、涙をこぼすのもいとわず

「ばかっ。し……心が辛かったよっ。でも……戻ってきてくれてありがと……。お帰り……」

 グレイとの二度と叶わない可能性の大きかった再会を果たす。デュアとトムは良い対面だともらい泣きしかけていた。

「よかったわ、生き返って……。私ったらついに神にまで逆らった事になるのか。きっと地獄行きね」

 少しでも惜しむ気持ちを押し殺そうとデュアは舌を出す。


 デュアを慰めているんだかどうだかという感じだが、トムが何とも言えない慰め方でデュアの負担を軽くしようと彼なりの気遣いを見せる。

「……安心しろ、デュア。人間で天国に行けるやつなんていねーさ。一輪の花踏まず一匹の虫も殺さずにいられる人間なんていると思うか? そんな奴は世界中を探したっていねーだろ」

「そうね。じゃあ一緒の場所に逝けるかな」 

 また交信が入って、デュアのパパからツッコミが入った。

「デュア、トム。ただいま……!」「お帰り!!」 思わず二人してグレイに抱きついた。そこにメイも加わってじゃれつきあう。


 お前はほんっとにお人好しだからなぁ。でもアドバイスありがとう。おかげで無駄に戦わずに済んだわ。いやいや、僕はただデュアのお父さんに言われた事を伝えたにすぎないんだよ。

 そう、パパが…………良いお父さんね、デュア、愛されているのね。ううん、あたしの方がパパの事が好きだったのかも。

(小声で)二~三才の時とはいえファーストキスもパパだって聞いたし。トムの脳裏にその瞬間の悪夢がよぎった。まだ物心がついていないデュアの過去の事なんて忘れようと横に首を振った。唇の端を上げて、ニコニコしながら「どうしたの、トム」と聞く。なっ、なんでも。トムの声が震えていた。



 さーぁ、今日は飲みましょうよ! グレイが還ってきたお祝いよ。

ん~、いいね。

でも肝心のグレイはどう? いや?

いや、喜んで参加させてもらうよ

イエーイ、決っまりぃー。さぁさ、そらにいる父さん達だって今日くらいは許してくれるさ! 

んじゃ行こ~~行こ~~

途中で何かを言い訳してアルコール度数一~二パーセントのシャンパンとワイン風飲料を買った。

そして宿屋に到着した(もちろん普通にジュースなどを大量に買い込んで紛れ込ませてわかりづらくしていたが)


 デュアの父親の言い分

<未成年のくせに酒のような飲み物を飲むなんてけしからんな。ま、俺達が神の許しを得て生き返らせて欲しいと頼んだし。今日くらいは許すよな>

 グレイとメイの両親が決めかねているのをそのまま言葉にした事を口に出す。

<良くないけど、いい>


                            ◇


 宿の宿泊している部屋にて――

宿屋の女将さんに素晴らしい出来事があったと告げて、少し騒ぐのを許可してもらっていた。だけど極力うるさくなりすぎないように喜びあう。

「グレイが還ってきたのに乾杯!」

「かんぱ~~~~い!」

 みんなが口に含む程度の量だけ飲んだ。


「くっはー、んまいね。いやー最高!」

 メイが飲みっぷりの良さを発揮して飲み干した所でデュアが同意する。

「フフ……そうよね。今日は良い日だもの」

 心から喜びを表現している笑顔で愛おしそうにデュアはメイを見つめるデユア。

「グレイ~~~~ッ、あんたのために開いているんだからぁ。もっと飲んで飲んで~~っ」

 絡みながらワイン風飲料をグレイについでいくメイ。そんな醜態の妹だが、気分を害さないようにされるがままになる。トムが聞こえない様つぶやいた。

「酔ってるな、こりゃ」


「う、うん。じゃあ頂きまーす」

 一気飲みのようにグレイは飲み干した(※アルコールの一気飲みは危険です。アルコール度数がないも同然でも注意するに越したことはありません)

「ワオ! さすがお兄ちゃん。良い飲みっぷりねー」

 宴の席なので楽しい気分だよと表現しようとグレイが小さく笑う。

「あれ、デュア。飲まねーのか?」

 トムの問いかけにも最初は何かを考えているようだった。何だか視線を感じたデュアは焦りを少し見せ

つつも気にしないでとばかりに一口で飲めるだけ飲んだ。


「え、ううん。飲むよ」

「なーに? それくらいしか飲まないのぉ? ダ・メ! もっと飲まなきゃーめで鯛んだからーっ」

 その様子を何とも言えぬ複雑な面持ちで様子を見ているグレイ。デュアはアカン……壊れてきている……シャレなんて滅多に言わないメイちゃんが……。グレイはこうなる事知ってたんだなと妙に納得する。

「メイは笑い上戸なんだ……いつ笑い出すかとヒヤヒヤしてるよ」

 ……とグレイに言われた矢先に

「聞――――た!? さっきのシャレ!! きゃ~~~~はっはっはっはっはウケるぅーっっくはっくははははははは」

 ホラねと言わんばかりのグレイの顔――


「どうよどうよこのシャレーっ! どうっ!?」

 気を遣うつもりでデュアは口を湿らせる程度に少し飲み物を口に含んだ。

「いいんじゃないかナ~?」

 そんなこんなで祝う会が続いた。

グレイも楽しんでいるかのような表情を浮かべていたので良かったと思う。


今月は後1~2回更新予定

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