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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
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クイ 戦闘する事に決める(挿絵追加)

「お……ははは。スマンスマンにしても、お前はちまいな」

「余計なお世話!!」

 へそを曲げて後に面倒が残るのも嫌だなと考えるジルヴィア。弟のクイをなだめて要件を尋ねる。

「まぁまぁ、怒るなって……。それで何の用なんだ、クイ」

「兄ちゃんに力を貸して欲しいんだよ」


「は?」

 怪訝そうな表情で理解し難いと聞き返した。

「何を言っているんだ、クイ。お前の持ちあわせている力で十分だろうが……」

 困っているという事をクイが声で表す。

「そんな事を言わないでよ、兄ちゃ~ん。だってだってあっちには頭のキレるお兄ちゃんがいるんだもん」

「いいじゃないか。張りあいがあって……」

 ジルヴィアは強敵だとやる気の高まるタイプだが、クイには堪え性というものはない。そのためか、相手をするのがだるい相手だと一人で作戦を続ける気持ちが削がれているようであった。

「よくないよ~~~~!!」


「コラコラ、わがままを言うんじゃない」

「わがままじゃないもん、にーちゃんのバカ~~~~ッ!!」

助力は望めなさそうとクイは決め付けた。更にかんしゃくを起こし続ける。

う゛~~っ、兄ちゃんのバカ。全然わかってないよー。え~ん、いやだよぅ。一人じゃ無理なのに。兄ちゃんのバカッ! これで何度目の兄への罵倒だろうか。ひとしきり涙を流したら、単純に行動に移す気になったみたいである。いーもんっ、いいさっ。一人でやるよっ。開き直ってやる!! と叫ぶ。

「うう~~~っ兄ちゃんめ。ギャフンと言わせてやるぅっ! 見てろよーっ!」


挿絵(By みてみん)



 最後まで兄のジルヴィアへの愚痴で発奮するクイだった。



                            ◇

翌日――――――

「クイ、来なかったね」

 面倒な魔族に違いのない子どもの幹部をデュアは気にしている。水を飲んでいたトムはふいてしまった。

「ゲホッ、ゲホッ。お前なぁっ。あんなガキなんか気にしてるんじゃねーよ!!」

「何よっ、そんなに怒ることないじゃない」

 デュアが頬を膨らませて不服そうだ。

「怒るよ!! ったく」

「なんで?」


 デュアには本気でわからなかった。

「なんでって……」

 デュアになんで!? という疑問を何度も繰り返された。トムには微妙にプレッシャーになるので話すまでもないと態度で表す。

「……とにかくっ、あんなガキの話をすんな!」

「…………………………」

 静かな空間にどこからともなくクイが現れた。

マヌケな表情になっているかもしれないが、トムは目の付く場所に現れたクイに言葉もない。


「おっおま……っ、なんで……!?」

 口をパクパクさせてしまっているトムをクイは目を細めて眺め

「お兄ちゃん……なに金魚のマネでもしてんの?」

 言い得て妙だとメイが面白がる。くっ……とグレイも笑いをこらえているようだった。

「笑うな~~~~っ!!」

「くは、ゴメンゴメン、どうもコメントが面白くて……」

「う、うん。グレイの言う通り」

 メイも後に続く。そこでデュアが口をはさんで――


「クイ、何をしに来たの? なんか用があるんでしょ」

「うん」

 さらりとクイが応えた。

「それで? 何の用だ?」

 トムが聞くと、ニヤリと笑みを浮かべたクイが聞く必要ある? という態度だ。

「そんなの……聞くまでもないんじゃない?」

「な……っ!」

さっ……とトムの動きを制限する位置にグレイが手を開き、予想していた事を口に出した。

「僕を……殺しに来たんだろう?」

 ドキッとしたクイ。図星だと表情に出さないように頑張っている。

「さ……さすが察しがいいね」

「前にも同じような事があったんでね」

 それはアイラ姉ちゃんの事だろうとクイはわかった。

「わかっているなら」

「わかっているなら……?」


子どもらしい一面からか、何の疑問も持たずにそんな言葉を言う残忍さを持つクイ。

「死んで?」

 そんな事を言われてもどう対処していいものか。まずメイが話にならないといった様子で聞いた。

「き……君ねぇ。『死んで』って言われて「はい、そーですか」って死ぬ人がいると思ってんの?」

「思ってないよ」

 クイの言動にメイが脱力する。

「さらっと言うねぇ……キミ」


 クイは何も隠そうともしない。正直な気持ちをデュア達に告げてくるのであった。「さらっと言わないとスッキリしないもん。いつまでもグチグチ言っているのなんて性に合わないからね」

あっ、そうという感想しかグレイも感じなかった。だがしかし、何を考えての導き出した答えなのかグレイが驚くべき事を口にする。

「殺しに来たんだったらさっさとやれば。さっさと」

 メイは困惑してしまう。兄が何を考えているのか想像もつかなかった。

「なっ、何を言ってんのよ!?」


 クイもポカンとした後に改めて尋ねてしまうくらいである。

「いいんだ……いーんだね!?」

 あっさりと言ってのけるグレイ

「いいよ」

 メイは心境としてこんな時にどうしていいかわからず困っている。グレイの服を引っ張ってうるうるした瞳で涙目になったまま自分の気持ちを乱暴に伝えるので精一杯だった。

「バカッ、何を言ってんのよ。殺されるのが怖くないわけ!? も……う妹の身にもなってよね。兄を亡くしたらと悲痛の気にも……」


 グレイはヒザからくずれて悔しがる妹に温かい眼差しを向けて、謝罪の言葉を述べる。

「ごめんな、メイ。僕って本当に不器用だよな。両親も亡くしているっていうのによ、妹を一人にして逝っちまおうだなんて本当……僕は――……」

 その場の皆に別れを告げてトムが走り去っていった。

「さようなら、メイっ」

「グ……グレイ~~~~ッ!!」

 クイの方に方向転換したグレイに反応して、強大な能力を発動しようとする。

「お兄ちゃんの一大決心はもしかして……!? その勇気に免じてそのままの形で残してあげるよ」


挿絵(By みてみん)



 トムが驚愕した時の言葉を発した。

「な……んだと――――!?」

 カッ!! と光が放たれる。あまりの眩しさにこの場にいる3人ともが目をつむった。視界が回復したその時、目の届く範囲にグレイが横たわっていた。

 メイが目を見開く。

「死……んでいるの……?」

「ま……まさかァ」

「これで確かめればわかるわ」

 道具袋からデュアがペンダントを取り出した。

「そ……それは……!!」

 デュアがどこか悲しげな表情で遠くを見る。

「そう……パパのペンダント」

 実際は「貸して」といっているものの、まるでひったくるかのような異常な速度でメイがペンダントを手にして焦った感じであの世への交信を開始し始めた。

「パパッ、パパッ。聞こえる!? あたしよっ!! グ……グレイはもしかしてと思って連絡したんだけど……」


 電話のように交信しているペンダント越しで言葉を言い淀んでいるメイの父親を心配するかのようなメイの母親の声も聞こえてくる。

「アール……(メイの父親名)」

 言いづらい事だけど、まずすでに気づいているんだろうとメイの父親は思って重いクチを開いた。

「実は……」

「実は……?」

 張り詰めているかのような空気なのでメイが息を呑む。

「来ちゃっているんだ」


 信じたくない事実を告げられてメイが悲しみの声をあげた。

「えええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!?!?」

 そんな……と絶望的な表情になるメイ。デュアやトムもかけてあげる言葉が見つからない。

「……そりゃそーだよ」

 何を今更といった表情のクイがメイのわずかでもと願う希望を打ち砕いた。

「!」

「だってボクが血液を『凝固』させちゃったんだからね」


 すがるようにクイの服を引っ張ってメイが言い放つ。

「返……してよ……。私の時に無神経な兄を……ッ!!」

 メイが涙声で訴えかける。扱いに困ったクイがついでに始末できると思ったのか、それとも苦し紛れの言い訳か微妙な事を口に出した。

「ムッ、ムリだよ。そうだ! だったらお姉ちゃんもそのお兄ちゃんの後を追えばいいんじゃない!?」

「そっか~~~~」

 一瞬わざとらしいくらい目を細めてから

「……なんて納得できるわけないでしょおっっ!!」

ふざけたことを言っているんじゃないわよとばかりに叫ぶ。

 クイが耳をふさいで大きな声をシャットアウトしている。


「お姉ちゃんてば、声が大きいね。そんな声じゃなくても聞こえてるよ」

「悪かったわねえ」

 そんな言葉の応酬から一転して、クイが警告した。

「静かにしてもらうよ」

 クイの能力の異常さにメイは恐れをなした。下手な事を言って機嫌を損ねては自分の身も危なくなるので当然だ。そんなメイを守るようにデュアとトムが前に出る。

「そんなビビるなよ。俺とデュアで守ってやるから」


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