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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
54/112

シーオンによるヴィアンの回想 4 挿絵あり

 この回想で登場しているルファという魔族はかなりの上級魔族な設定。


回想シーン、難しい><

それから私がご主人の方へ目を向けると、あの魔物を弱っちい奴だという感じで決めていたのですが、新たな何者かの影がここへ現れます。

「ハッハハハハハ!! あなたは何と運が無い方なんでしょうねぇ。可哀想に……」

「誰だてめぇ!! 笑ってないでそこから降りてこい」

 降りるといっても草原にある石の上からですので、なんとも言えません。それはそうと、その何者かはクスクスという表現の笑い方がぴったりな感じでご主人に問いかけました。

「いーんですね?」

「……ったりめーだ! さっさと来い!!」

 私はこの謎の存在に戦慄を覚えました。何でしょう? この得体のしれない感覚は。これからこいつに関わるとろくなことがなさそうだというのが伝わってきました。ご主人に私の最悪な思った事を教えたいのに、ご主人はもう誰の声も耳に入っていなかったのです。


「では……!」

 まさか一飛びで数十メートル離れている私達のそばへ!?

「来ましたよ。クスッ」

「んじゃあ始めようか?」

 そこでご主人が戦闘開始を宣言したのですが、謎の影(どうやら魔族っぽいですが)ひょうひょうとご主人に名前を聞いてきました。

「お待ちくださいよ。お名前を聞いていなかったですね」

 そんな怪しい者にご主人は自分から名乗ったりはしません。


「それは俺だって同じだ!! テメーから名乗れ!!」

 ご主人の敵対心むきだしな状態を特に気にも留めず、相手は聞かれたから答えてあげましょうという感じでした。

「私はルファです」

「俺はヴィアンだ」

「それでは始めましょうか!」

 戦闘開始の声代わりの事を口にしたかったご主人でしたが(気合の入り具合が違うとか)、それは魔族のルファという者に取られてしまいます。しかし、先制攻撃はご主人からでしたよ。


おおっ!!

ファイアボルト!!

そのご主人の牽制低級魔法は、ルファにフローズン・ファイアー!!という氷の塊に囲まれた炎に飲み込まれました。

「……なっ……!?」

 その意表をつかれて少し呆けたご主人の表情を見て、ルファが不敵な笑みを浮かべていたのを私は歯科とこの目に焼き付けたのです。何か裏がありそうだと。


「フフフ……ハッハハハハ!!」

 ご主人は相手になめられるのは嫌いなので、ルファにかみついていました。

「て……てめえ!! 何がおかしいんだよッ!!」

「いえ……ね。弱い炎だと思いまして。この技が低級というのを差し引いても……この呪法の意味を特別に教えて差し上げましょう。この意とは「凍りつく炎」という意味なのですよ」

 私は魔族ルファが呪法の意味を教えるとは何を考えているのかと不安になりました。この世界での呪法の意味は知られると対抗されて威力が著しく落ちるというのに。ご主人がまどろっこしい言い方をしているんじゃねえといった状態なのでこの事を伝えづらく……


「ほほーっ、その顔はどうやら理解出来たようですねぇ。私とあなたの『力』は正反対なんです」

「言われなくてもそんなこたぁ、わかってらぁ!」

 先程の炎のぶつかり合いだけで、この魔族はご主人より実力は上だと判断したのでしょう。しかし、この魔族はしたたかで更に奇跡の起きる確率さえせばめているのが私にはわかりました。ご主人に冷静な判断をくだせる時間さえ取らせないように畳み掛け、ご主人はまんまと術中にハマっているのが理解できて何も助力できない馬の姿をこの時は恨めしくさえ思ったものでした。

「それでは自分で負けを認めるんですか?」

「決め付けてんじゃねーよ。99%負けるとわかっていても勝つ1%にかける」


 

言葉通りなら不意打ちをされたのは相手のはずなのですが、それほど相手の剣の技量は高いという証明にも映ります。ご主人は魔族の者にもっともな事を言い放ちました。

「るせーッ。決闘を申し込んできたのはテメーの方からだろうが」

「けしかけてきたのはあなたの方からですよ」

 そういう魔族の言っている話は事実なのですが、ご主人は半笑いな魔族の表情に顔を赤くして

「もー、キレるぞ。コラッ」

「すでにキレてるじゃないですか」


挿絵(By みてみん)


 

 シーオンは確かに……と思ってしまった。そう思った事の非礼を心で詫びつつ、シーオンがご主人を応援していた。マーガレットお嬢さんもご主人に「頑張って」と声をかけています。

「フッ……このルファも応援していただきたいものです」

「ケッ! 誰にも応援してもらえないのかよ? 人望ねーな」

 私がマーガレットお嬢さんを見ると、ため息混じりに相手の魔族を挑発なんかしてと思っているのが手に取るようにしてわかりました。

「カチン! と来ましたよ~。今の言動は」

 体を震わせる魔族ルファに対して、舌を出して馬鹿にするヴィアン。それがまさかルファのそんな状況にするという恐るべき力を垣間見るきっかけになるだなんて誰が想像できましょう。

「ほ~~~~~~そんな事を言ってもいいんですかねぇ。魂を取っても」

「た……たましいを?」


 あり得ない現象をすると言われても信用するのは無理でした。当然ご主人もそう思っていたはずです。だからこそ困惑気味にやると魔族ルファが公言した事を、無意識にご主人は復唱しつつもけしかけたのでしょうけどあんな結果を発生させるなんて想像は無理と言えました。

「出来るもんならやってみろってんだ!」

「いいんですか? 本当にやっちゃいますよ」

 まさかコイツ本気で……!? とその時にやっとご主人はどうにかしないとなどと考えていたと思われました。魔族ルファにそうさせるのを決断させたのはご主人です。それを理解したご主人は歯痒い思いを感じたでしょう。


 ルファの目にマーガレットお嬢さんが飛び込み――「可愛い方だ……そうだ! 私のコレクションにしましょうか。そうしましょう!」などとつぶやいたと同時にお嬢さんの目前で現れて一瞬で奪い取る。その一連の行動に隙がなく、ご主人は何も出来なかったと考えられました。

「きゃっ!」

 マ……マーガレット!!」

「ふふふ……美しいですねぇ」

 ご主人が嫌がるような絶望するような事を魔族ルファが舌なめずりをしながら問いかけてきたのです。

「あなたの前にこの方の魂を抜いて差し上げましょうか」


「やめろ!! 俺はどうなっても良い!! だからやめてくれ」

 懇願するご主人をただ見つめるが、それを聞くほど悪者の魔族が甘い訳ありませんでした。

「でも私は一度決めた事は意地でもやらなきゃすまないヒト? なのですよ」

 ご主人も言っても意味がないと理解はしていると思っていますが、言わずには済まなかったのでしょう。ルファに対してその能力は反則じゃないかと文句をつけます。

「お前なぁ、非常識にも程があるぞホドが!! 魂なんて抜くとかよ~!? ったくよーっ」

 そのくだらない意見にたわむれに答えてあげますかといった表情のルファが、ご主人の張り詰めた空気なんて気にせず機械的に受け答えています。


「非常識ですって? 私は人間ではありませんので。魔族です。それ故に常識など会ってもないも同然なのですよ」

 ご主人は悔しそうにしながらも、相手の言動のアラを探りだしました。

「じゃあさっきのは何なんだよ? 『ヒト』とか言わなかったか?」

「人間に見えるでしょう? 私」

 確かに姿形は人間そっくりなので認めざるを得ないですね。しかしご主人もそれは認めるにしても、そのまがまがしい人を寄せ付けないオーラ・それに外見の一部は隠しようがないと指摘しました。

「見えねーよッ。ツノが生えている人間がどこにいるんだよ!?」


 わずらわしそうにしているルファ。その彼に脅迫めいたことを告げられてはぐうの音も出ません。

「うるさいですねぇ。本当に魂を抜いてしまいますよ」

 うっ……とご主人が言葉を失いました。

「マーガレットを離したら俺にならいいぜ(ハッタリ)」

「ホントですか?」

 尋ねるルファに同じような口調でご主人はつられます。

「ホントですよ」

 とりあえず邪魔なので、ルファがご主人の魂を抜かれるという状況を私は看過しきれません。間に入るタイミングを図り始めました。


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