表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
42/112

謎の女性の企み 1

「ハア~イ、こんにちは。そこの空いている席を使わせてもらっていいかしら?」

「え……あっ……はい。いーれすけど……」

 グレイは行儀が良くないのは承知の上。だが何も言わないのも失礼かなと思って、口の中に食べ物をほおばりながら返事した。

 謎の女性はグレイが覚えていなさそうだなと安堵した。その後で、グレイの食べている軽食にオーバーリアクションする。

「あら? あなた、お粥だけなの? まぁいけないわ。それだけじゃあ体がもたないと思うわよ。このサラダも少し食べる?」


親切を装って、うまい具合に始末できないかと画策したのだが、にべもなく断られた。

「いえ……僕は」

「遠慮することないのよぉ~」

 劇薬サラダをお皿に取り分けてグレイの近くに持っていくことまでしてあげた謎の女性だが、グレイにお皿ごと近くに返されてしまう。

「えっ、そんなホントいいですよ~。いや……ホントお気持ちだけで」

 一口でも食べてくれれば事足りるのに、そういう状況にならないので謎の女性はやきもきする。どうしたものかと悩んでいるとグレイに聞かれてしまった。

(毒を盛ってあるんだからあたいは食べる気ないってのに!!)

「あの……ぼんやりしているようでどうかされましたか?」



 今度はこういう作戦でいってみようかと別の戦略で謎の女性がせまる。

「ん……ううんっ、何でもないわ。あたしの注文したサラダをほんとに食べてくれない? あたし、お腹がいっぱいになっちゃってさ」

「そ……そうですか。では……」

 何度もすすめてくれるので、少し食べれば納得してくれるかなと思い、グレイがサラダを口にしようとする。それをトムが小声で静止した。

「おいグレイ、そのサラダは食わない方がいいと思うぜ」

「何で?」

「何となくだよ」




 一度食べようとしたところを中断して、グレイがトムに聞き直した。それからトムをたしなめた。

「それじゃあ失礼じゃないか。僕、野菜は好きな方だから……」

「なら勝手にすればいいじゃないか」

 自分の意見を無視された形になったトムがそっぽを向いた。グレイはせっかくの好意なので食べさせてもらおうとする。

「じゃあ遠慮なく」

 謎の女性は内心、うまくいったとシメシメといった思いだったかもしれない。

(フフ……一口食べただけでTHE ENDよ。悪いわねボウヤ。恨みはないけど)




 グレイが口の中に入れた――

(やった! 食べたわね。THE ENDよ。さようなら、ボウヤ)

 そのはずだったのだが、食事中だけど我慢できずにグレイはクシャミをしてしまった。

「……っくしょーん!!」

 口の中にお粥が少し入っているのが飛んだ程度で、そこまで机を汚さずに済む(食べる直前にくしゃみをしたのでサラダは食べていない)

「も~、グレイったらきったないわよーーーーっ」

 グレイは恥ずかしさを隠すためにごまかし笑いをした。




「……はは。ゴメンゴメン」

 予想外の出来事に謎の女性はずっこけてしまう。

(もお~~、このボウヤと来たら……。悪運強すぎでしょっ)

 軽食の楽しい雰囲気が台なしだとかメイが不満をたれていたが、グレイは怒りを鎮めるようにたしなめに入っていた。

「あたしはもう失礼させて頂くわ……。軽い頭痛を覚えたもので……で・も、サラダは食・べ・て・ネ」

 何でだか誘うような言い方で、まだサラダを食べるようにせまってくる謎の女性にグレイは申し訳なさそうに遠慮する。

「いえ……また妹に怒られたくないんで。もう結構結構コケコッコーですよ」

 謎の女性はグレイのお茶目な一面を微笑ましく見つめる。だけど、仲間のトムとメイの反応としては「寒すぎ」という心境を表情に表していた。




 そんな二人にグレイは「何だよ」といった感じで口をとがらせた。

(もう……ホントに頭痛の種ね……。このボウヤを始末する計画を立て直さなきゃ)

 頭を振って、謎の女性がグレイに向かって投げキッスをした後で去っていく。

「じゃ、あたしは帰るわね。ボウヤまたね」

 去っていく謎の女性に何だか色気を感じて、男2人は顔を赤らめてしまった。

「あらぁ~? トムぅ~~、浮気!? 何赤くなっちゃってんのよ」

 メイが兄の事は気にせず、トムのみをイジる対象としていたずらっぽく聞く。




 ハッとした感じで表情を引き締めたつもりのトムだったが「べ……別にっ……」と声をどもらせてしまう。メイに「あやしいよその反応は」って視線で、トムは釘をさされた気分を味わった。

「あっ! 冷めてる。私のスープが~」

 悲しむメイを面倒がりながらも、優しい一面を見せようとするトム。

「……んだよ。俺が温めなおしてやるから騒ぐな!」

 いつの間にか少しでも炎のコントロールが出来つつあるトム。スープに直接ちょうど良い温かさまで温度を上げる炎を着火。調節して飲みやすい温度に温める。普通なら騒ぎになりそうなものだが、この世界では魔法は珍しいものでもない。あまり気にされていないようだ。

 喜んだメイがスープを一気に飲み干した。口の周りの汚れを持っていたテイッシュでぬぐって満足そうにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ