デュア救出のために出来る事 3
「かっこつけておいて、かっこわる~~」
「るせっ! だったらお前がやれよ」
頭に血が昇り始めたトムが、顔が赤面しそうになりながらもメイに怒鳴った。言われなくてもという感じでメイがすでに水の矢を準備している。
「フンッ、何よえらそうに。ウォーターアローで倒しちゃうんだから!」
矢が胸の辺りに突き刺さった。
「やったー! フフン、どーよトムぅ?」
トムの顔を見て嫌味っぽく笑う。
悔しさからトムは残念そうにしながらも、可能性の高いことを口にした。
「ちぃーーっ、トドメを持っていかれちまったな。でもそれは俺がダメージを与えていたからこそだろ」
「何よぅっ。あいつ、あんたの攻撃じゃそんなにダメージを受けていなかったんじゃない!?」
言葉になっていないトムとメイの喚く声「◯☓△□§❀」
またトムとメイが口げんかを始めた。どうしてこうなるかなと思いながらも間に入る。
(あちゃあ~~また始めちゃったよこの二人。もぉ~世話のやけるっ)
また同じ事で苦言を呈するのはどうかと思ったが、二人にとってはそれが一番効く薬だと思った。
「やめてよ二人とも。デュアを救出するための作戦会議するんでしょー!」
またトムとメイは自らの愚行に冷や汗をかいて、非を認める。
「そうだった。あ~……もうっ! 俺ってダメな奴」
「わたしもいけないのよね。頭に血が昇るのが早すぎて」
また気配を出来るだけ殺して、謎の人物がトム達三人の動向に注目していた。
(ウフフ……あの二人は良くケンカするわねぇ。このまま仲間割れが苛烈さでも増すなら大歓迎だけど。そんなことになるわけないか、都合がよすぎる)
横目でグレイの方に視線を移して
(もう一人のボウヤがいつもケンカ止めちゃうしね~~。これはあのボーヤが一番邪魔かな。始末するしかないわね)
何かを感じ取ったのか、グレイが盛大にクシャミをする。
「はっくしっ!」
クシャミをしたということは、まだ負傷の影響で体の抵抗力が追いついていないかもしれない。メイはそう考えて、心配そうに兄の顔をのぞき込んだ。
「いやいや、誰かが僕の噂でもしているのかな」
クシャミした反動で鼻水が出かかったので、グレイは鼻をすする。
「風邪でもひいちまったか? んんーー?」
トムにも心配されてしまったので、あり得るかと思ったグレイは大人しく先に休むことを言い残していった。
「そ……かな? んじゃ僕は宿に戻ってるヨ……」
トムとメイが具合が悪くなりそうなら先に言っておいてほしいという、動作で「やれやれ」といったジェスチャーをする。
「俺らはもうちっとばかり戦ってるからよ。先に行って休んどけよ。まったく街の近くで良かったぜ」
「お言葉に甘えるよ」
軽く手を上げて、街中に入っていくのを見送るトムとメイ。
「ふうっ……」
トムが額に汗をかいたので、腕を使って汗をぬぐった。
グレイと比べてあの二人が不穏な気配に予想より疎い(鈍感)なこと・仲間を一人にする迂闊さ、しかも結構近くで気配を殺しながら見つめているとはいえまだまだ青二才だなと謎の人影が思う。
体調を万全にするに越したことはないだろうと宿屋に戻って宿泊している部屋に行く。部屋でグレイはトムとメイのことをベッドに寝っ転がりながら気にする。ただ、やはり人間というものは特に疲れていたりすれば睡魔が襲ってくるので自然と眠りの世界に誘われていった。
「あ゛~~……なんか眠くなってきちゃったな……寝よ」
安眠しているグレイの元に、先程の謎の人影がベッドの横に立つ。
(ごめんねボウヤッ、悪く思わないでちょうだい)
謎の人影がグレイの命を狙って、胸に力を込めた拳を叩きこもうとした。
「ん……」
ぼんやりとしたままグレイは起きあがり、気配がしたような方へ訊く。
「だ……れかいるのか?」
ギクッと少し汗が顔をつたって心臓に悪い状況になった。特定をされる前に謎の人影(?)が命拾いしたねとつぶやいて、この場を素早く去っていく。
眼鏡をかけていなかったので、ぼんやりとしか状況が把握できていなかったグレイ。眼鏡をかけなおして、部屋全体を見渡すのだが、別段変わっているところがない。人影があったはずだがない それなら気のせいと考えを導き出して、また眠ることにした。
そうやってグレイが寝ようとしたところで、少し強めにトムがドアを開ける音が響いた。
「うあ~~~~疲れたぁーーっ。今日はレベルがきっと上がっただろうー」
実際はもう少しでレベルアップという感じで、まだ上がっていない。それはそうと、トムとメイが入ってきて騒がしい感じになってしまったのでグレイはもう寝る気がなくなった。グレイは心中でもう少し寝たかったと思っていたかもしれないが。




