友情 3
<見てくれているかね? 小娘君。あなたのお父上は私が亡き者にしてあげました。悔しいですか? いつでも相手になってあげますよ。おっと、そうそう。あなたのお父上の断末魔の声も届けてあげましょう。これが魔物流の優しさというやつです>
“……!! 何だお前は? うぉっ!? 何をする”
“あなたの子どもに孤独をプレゼントするものですよ。お父上?”
“こんなことをして何になる。やめろ”
“黙りなさい。あなたを楽にしてあげます”
“ぐうわあああ―――っ!! デュア、ペンダントの特殊機能を探……ごふっ、それと……人前で泣くなよ”
映像機は最後に立体映像を作り出し、それに写っている魔物が皮肉をたっぷりこめた声を発する。
「くっくっく。お父上は最後まであなたのことを思ってくださっていたようで。反吐が出ます。くだらない茶番でした」
映像機は役目を終えると小爆発を起こして消滅した。それを見ていたデュアの兄、ルアが医者の「安静にしてなさい」という声を無視してデュアに告げる。
「そいつ……、ボクもそいつにやられたんだ。黙っていても仕方がないから言っと……。うぐっ!?」
ルアは横っ腹の傷口から激痛が走り、片ひざをついた。動くのが辛そうなので医者が手を貸してベッドに戻す。デュアはあり得ない信じたくない展開に動揺していた。
「パパ……、約束は守れない。だってこんなに悲しいんだもの。許して」
デュアは泣き止むことが出来ない。こんな現実なんてリセットしたい心境だった。
「デュア、もう行こうぜ。もうここにいても辛いだけだろ…?」
「もう少しだけ居させて」
トムはデュアの悲しみをどうにも出来ないもどかしさを感じつつも、励ましの声をかける。
「ああ………。思う存分そうしているといいと思うぜ」
デュアは散らかっている父親の部屋までふらふらと向かう。そこで思い出を探しているようだった。泣きはらした顔で父親の愛用していた上着を見つけて握り締めていた。そしてデュアはふんぎりをつける。
「みんな、ごめんね。ルア兄、この家は守り通して。私は一人でもお父さんの敵を討つ」
兄であるルアは静養に入った様なので声だけかける(お医者さんはさっきトムに別の家に往診と告げて去っていったのでいない)デュアの決意は固そうだった。目が全てを物語っているので止めても無駄だろう。
「なーに言ってんだ二人でっ、だろ?」
「トム…………」
「ずるい、トムだけで。ボク達だって手伝えるんだよ」
みんなの意思をデュアは確かめたが、ためらう気持ちもあった。こんなことをするのは一人で十分(巻き込みたくないと思っていた)からだ。でもトムに一人じゃ危なっかしいからなと言われて落ち着きを取り戻す。この場の3人に感謝してデュアは、まず「妖精の水場」という願いを叶える言い伝えが残っている場所に向かうことにする。
「あっ、妖精が通ったよ」
この場所は今でも願いを叶えてくれそうな神秘的な雰囲気がある。それは今のようにごくまれに妖精としか表現しようがない存在が目に映ることがあるからだ。主に15歳未満の子ども達のみ。
妖精の水場
自然を愛する心を強く持った子どもだけが到着出来るらしいスポット。文献情報でも10年20年周期で子どもが一時的にここへ行けたと噂していたとある。そのため、村を見守ってくださる水の女神という信仰もある。女神様に会えた子どもは願いを叶えてもらったという話も。
実際に妖精が存在してもおかしくない印象を見た人は思うであろう整備の行き届いた水場。水は透き通っていて透明度の高い感じ。
水場に到着。デュアが先頭に立って願いを祈りを捧げようとした所、水場から光が浮かびあがってくる。そこから凛としているが、どこか温かな雰囲気の神々しい存在が出現した。
『デュア、トム、グレイ、メイ。聞こえますか? 私は精霊リリィです。あなた方を選ばれし者にさせて頂きました』
精霊が自分達の名前を知っていた事、選ばれし者とか指名されても困るとデュアが代表して返答した。
「ええ!? そんなの勝手に決められても」
精霊さんがどこか悲しげな雰囲気で、申し訳なさそうにデュア達に懇願してくる。
『本来なら私が願いを叶える存在のはずですが、魔物の力を抑えるのに力を割いていて。迷惑を承知でお願いします。獣人クジャクを倒してください!』
「獣人クジャク……!?」
四人が声を合わせて言った。
『そうです。デュア、クジャクの側近こそがあの憎きバラスなのですよ。あなたがこいつを正式に倒す理由ができたと思いますが』
不思議な霧に覆われた4人。
描写追加
精霊さんのいる場所について。精霊さんのセリフ微調整
それとイラストは妹が10年位前? にイメージで描いたものです。鉛筆書きなので見えづらいかと思いますが。
後は、作者別作品の更新とかぶせたくないので次の更新は1週間程度先だとご承知頂けると助かります。