魔物退治 1
「何となくわかっているんでしょ。さっきは二人ともケンカはやめなさいよって言ったの。さっさと食べたら? 冷めてんのが余計冷めても知らないよっ」
二人とも、大人げなかったかもなと苦笑しあって、隣同士に腰を下ろしてあぐらをかいた。その後はみんな珍しいせいか、たこ焼きを食べるのに夢中になってみんな黙々と食べている。
「はーーっ、満腹満腹ぅ! うまかったなーーっ、んーーこりゃいい満腹感だね」
満ち足りた表情をしたトムがお腹をさすったりして。
「ほーんと、いいねぇ。んーーっ、のびーーっ。運動しなきゃねっ、なんかこの頃魔物と戦う機会が少なかったから腕がなまっちゃっているかもーっ」
普通のフィールドモンスターと戦っていないも同然なので(強敵とのイベントバトルがメインだったから)、トムも同じことを考えていたようだ。
「そうだなー、俺なんて数えるくらいしか戦った記憶がねえからもっとなまっちゃっているかもよ」
デュアがそれじゃあ戦いに行こうと皆を誘った。
「は? 何で? こんな街中にいるわけねーよ。いたら大変だって」
トムのおとぼけ発言に苦笑いしつつも、デュアがレベル上げ作業を提案する。
「ばっかねー、誰が街の中で戦うっちゅーたのよ。夜になるとね、魔物が出やすくて少し手強くなるのよっ」
デュアは少し呆れながらも、そういうシステムなのよきっと、とトムに教えてあげた。
「ふーん、じゃあ行くか? 食後の運動ってか!?」
どうやら自分の能力をあがる可能性が高いレベルアップ作業をメイは好きそうである。
「やろやろー、久しぶりにやっちゃおーよ。スカッとしたいもんね」
率先して外に出ようとしているメイがいるので、ほぼ決まりだが一応グレイも自分の意見を言っておいた。
「別に僕はどっちでもいいけど……」
全員一応反対意見があるわけではないとわかって、デュアがどうするか決める。
「んじゃ戦うことに決定ーー!」
どうやら町のお祭りも終わりになったようで、静けさを感じだした。
「おっ!? さっきの兄ちゃんじゃねーか。夜の散歩かーー? ん~? でも気いつけろよー、結構怖~~い魔物が外にうじゃうじゃしてっからな。嘘じゃないで~~。母ちゃ~ん! さっきのお客の兄ちゃんやぞーーっ」
どうやらあまりお酒に強くないタイプなのに、お酒を少し多めに飲んで顔が赤くなってしまっている屋台の主人。屋台の奥さんは信用していないようだ。
「んん? 父ちゃん……お酒を飲んだりしていけないねえ。まさかウソで私の気を引こうってんじゃないだろうし」
トムの姿を確認した屋台の奥さんが軽い感じで、屋台の主人に謝罪した。
「あっ、ごめん。父ちゃん、疑ってや~~。兄ちゃん! ほんの二~三時間くらいしか経っていないんじゃないのかい。外に行くのぉ? ホラっ、これ魔除けさ、持っていってや」
「どうも……ありがとうございます」
町のNPCからアイテムをもらったトムは、礼儀としてお礼を言う。
「礼なんて水くさいことしないでいいよ! 行くんなら気をつけていくんだよ!」
「よぅし! 行こうぜー、みんなーっ!」
「おーーーーっ!!」
外に出てうろうろしていると、ワイルドキャットが現れた。ネーミング通り爪の鋭い魔物だ。
「うわっ、こいつの爪は強烈だから気をつけてみんな!」
早速、スピードの速いメイが自分の召喚術をうまく武器と融合し始める。
「うんっ、行くわよ。メイちゃんの水技!! 第一弾「水の弓矢」(ウォーターアロー)いっ……けーー!!」
水がワイルドキャットの顔を覆って窒息させていった。
「グウァァァァ!!」
苦しみでもだえながら、鳴き声をあげる魔物。無差別にワイルドキャットがひっかき攻撃を繰り出す。それがグレイにかすめる。
「痛っ! 爪にやられた。手当を早くしないとヤバイなこれは……毒か?」
メイが、グレイを口が良くなくても心配しているのがわかる行動、一気に勝負を決めるために今使える技で一番強力な技を使用した。
「グレイ……のんきなことを言っている場合っ、縁起でもない。もう……あたしが氷塊を出現させるからみんなよけて!」
技を発生させるための初期動作の言葉をメイが紡ぐ。
「大気に存在する水蒸気を集めて、増幅させる。そして水を氷に変え、邪悪な魔物の存在を永久に凍結させよ」
そして技が完成した。『硬氷!!』巨大な氷が作られ、その氷塊がワイルドキャットを押し潰す。
さすがに圧力に負けて、ワイルドキャットは圧死してしまったようである。
「ふうっ、これで一安心……って。グレイーっ、大丈夫なの、その傷~~?」
心配をかけまいと、グレイは微笑んで応じたが結果的に痛みに勝てず顔をしかめた。
「大丈夫だよこのくらい……痛っ……」
服のポケットからグレイはハンカチを取り出して破り、応急処置として腕に巻く。
ワイルドキャットの経験値によって、全員のレベルが1上がった
「よし……これでひとまず大丈夫なはず……。あーっ、痛てえ。僕としたことがっ、油断してしまったな」
メイがデュアに召喚精霊リリィを呼び出してみないかと提案した。
「無駄よ、無~~駄! 今の時間はどうせ寝ているだろうし」
「そっかー、どうしよう。薬草ないの?」
その問いかけに、トムがうっかりミスしちまっているなと言った感じで苦笑している。
「持ってくるの忘れちまっていたな。宿屋に置きっぱなしだ。持ってたらとっくに渡しているさ」
誰のせいにも出来ないので、メイもぐうの音も出なかった。
「うぅ……、立てる? グレイ。ひとまず宿屋に戻ろうよ」
「そうだな……うっ!?」
ダメージが大きかったようで、グレイはひざまつく。




