デュア達と街のお祭り日 2
デュア達にも当然宿屋に向かう事の異論があるはずがない。
「うん! 行こ行こ~っ。たこ焼き食べたいしー。トム……早く来てね」
上目遣いのデュアが可愛くてトムは一人でドキドキしたが、平静を装った。
「ハイよっ、今行くって」
会話に入りそびれたグレイが心中で自分の性格を呪う。
(あぁ、僕ってば何でこんなに話しかけられないんだろ? 理由はわかっているんだけどな、コンチクショ~~後でシメたる!)
「おい! グレイ。オレたちも入ろうぜ!」
「ん? ああ、今行く」
女の子達にとっては重要なことなのだろう、メイがデュアに説明していた。
「ここが部屋よ! 今回はわかれてないの」
デュアとしてはそういうこともあるだろうと覚悟していたのか、結構淡白な返答をしている。
「ふーん、別に仕方ないんじゃないかな。ここらでこれを食べよーよ」
メイもとりあえず今は、不満よりも空腹が上回ったようだ。
「うんっ。食べる食べるー。ちょうどお腹空いてたの~~」
(もうお腹空いたのか? 俺は全然すいてねーよ。女ってやっぱ腹がへるのが早いやつもいんのかなー、まっ俺もみんなと合わすか)
まだまだ温かいたこ焼きを見て、メイが一番急かしてくる。
「わーい、やっぱり美味しそうだよね~~。早ーくー食べ~た~い~な~」
グレイが苦笑しながら、机に並べていった。
「待ちなよ! 今出しているからさっ。全く」
何だか疲れを感じたトムは、でも食べてからにするかと思う。
「ふあ~あ、眠いなー。でもお腹空いているから食べて口内をキレイにしてから寝るって決めとこ!」
皆が食べやすいようにグレイが並べたたこ焼きを、思い思いに食べ始めた。
「はい、どーぞ! みんなで食べてくださ~い」
実は食べた事のない食べ物だけど、メイはお祭りを楽しんでいる町人を見ていたので食べ方を知っていることになる。
「わお! この棒みたいのでさして食べてたよ確か。初体験だわードキドキしちゃう」
「言っとくけどそれまで食うなよ!」
トムが茶化した台詞に、メイがふざけすぎよといった感じで軽くいなした。
「誰がそんな事すんのよ。言われなくてもわかってるも~ん」
ふざけたトムの言葉が何故かデュアの笑いのツボに入ってしまったようだ。
「アハハハハ! 変なこというのねトムって。んなこたあ、わかってるに決まってるじゃなーい! 変なの~~。ねーーっ」
こんなことで笑われるとは思っていなかったけど、心から楽しそうにデュアが笑っているように思えてトムは何だか得した気分になった(デュアの笑顔が見れたから)
「どーでもいいけど食べるなら食べた方がいいよ、冷めちゃうから。別に僕はイイけど……」
グレイに言われて、デュア達はまた美味しく食べ始める。
「そうねっ、食べよう(どーでもいいと言われると気になっちゃうけど……)」
全員で食事前の挨拶をしっかりとする。
「いっただっきまーす!」
一口食べて、トムは冷め始めてしまったと感じた。
「ありゃ、ぬるくなっちゃったな。お店のオバサンに申し訳ないな~」
デュアが初の食べ物ということもあるかもしれないが、同意を求めてくる。
「でも美味しいわ。買って正解だったわね、トム」
思いつきでグレイが何となく聞いてきた。
「おまえの『炎』の力で温めるというのはどうだろう?」
トムがグレイの提案にそれは無理だということを、強い言い方で言ってしまう。
「ば……バカいえっ。悪いがまだ熱さのコントロールが出来ねえから焦げちまってもったいないことになっちまうだろっ、全く……その考えは的外れだっつうんだよ」
グレイもそんな言い方がされると思っていなかったせいか、少しふてくされた感じで言い返した。
「別に……ただ言ってみただけで出来なきゃいいんだよ。それとバカって言った方がバカだから、お前がバカだね。フフン」
トムとグレイによる言い争いがまだ終わらない。
「お前って奴ぁーどうしてそういう屁理屈を言うかね。だから頭の良いやつって嫌だよ」
そろそろ取っ組みあいの喧嘩になってもおかしくない状況で、グレイがトムの怒りを買う発言をした。
「フン……、嫌味で結構。バカにはこういう理屈がいえないんだろ」
「ムッカーーー、言ったなコノヤロ!」
喧嘩が始まりそうな所でメイがたこ焼きを口に入れたまま二人を止めようとする。
「ふはりほも、へんかはやめなはいよまっひゃく……」
怒りを削がれたトムが、メイに呆れた感じで脱力していた。
「何語しゃべってるんだよ、食うかしゃべるかどっちかにしろよなー……ったく」
メイが食べ物を飲み込んで二人に言い直す。
口の中に食べ物入れながらしゃべる行儀悪さ。何を言ったかわかりますよね?
必要ならルビでも入れますけど。




