デュア達と街のお祭り日 1
「サービス……ですか? それはどうも」
「全く父ちゃんは危ないことをするんじゃないよ、食べ物が無駄になるかもとか思わないのかねえ......ブツブツ」
実際サービスしてもらって嬉しくないわけではないのだが、待たせ中のデュアがイライラしてきていそうな予感、そっちが気になって仕方がなかった。
「あの……早くしてくれませんか? 連れが拗ねてきている気がして……」
「あれま! ごめんよ。一個サービスしとくから。じゃあ気をつけるんだよ」
キップの良い奥さんにたこ焼き代をちょうど渡す。
「はいっ、これお代です。これでちょうどですよね」
「毎度あり~、兄ちゃん。また来てなー」
トム達が苦笑いしながら、この場を後にした。
眠そうにしているデュアを、トムが起こす。
「おーい、デュア。起きろ~~っ」
「んー、なに?」
「ホラっ、お前がご所望した食いもん、たこ焼きだよ。起きなきゃ食えねえだろ!」
たこ焼きを近づけてやると、デュアはソースの匂いで一気に目が冴えて元気になった。
「あーっ、美味しそう。早く行こうよ」
放っておいたら食べてしまいかねないくらい、デュアの目が輝いていた。双子ちゃんと一旦別れた広場まで待つようにと注意しておく。
「そうだな、もうそろそろグレイ達も来てんだろ。さっ、早い所行こうぜ」
「うんっ、行こう!」
その頃、グレイとメイは――
「あ~あ、やっと宿屋がとれたね。二人とも待ちくたびれちゃったかなぁ」
「そんなことないかもしれないよ、お祭りに行っている可能性だってあるから」
That’s right!(その通り!) ←作者の心
「あれ? いないじゃない。グレイの予想通りお祭り行っちゃったのかな……」
祭りの屋台の方から、トムは双子ちゃんが待ち合わせ場所にいるのを発見した。
「ん? あそこに見えるのはグレイ達じゃねーか。早く行かなきゃ……」
「えっ、本当? あらら大変。急がなくちゃ! 特急ーーーーっ!!」
勢いをつけすぎたデュアは一旦グレイ達の場所を通りすぎてしまう。スピードを弱めて急ブレーキをかけたデュアは「あちゃー、行きすぎちゃった。ごめーんトム……って、あら? いない」と呟く。
実はデュアの走りに巻き込まれていたトムが壁に激突してしまっていた。
「あーん、トムーっごめんなさいー。起きてよう~っ、たこ焼き食べたいよう」
デュアはトムを前後に揺さぶったりする。
「えーん、起きない~。もう往復ビンタで起こすしかないわ」
ほんの少しでも錯乱したかもしれないデュアが何度も往復ビンタした。
「ハッ! オレってば何でこんな所でこんな状況に? なんか頬も痛いし……」
「ごめん! トムッ。あたしが悪かったの、乱暴にしたから」
双子ちゃんが呆れた感じで彼らに声をかける。
「もうっ、二人とも。何やっていたのよぉー!! 通りすぎていっちゃうし……」
「そうだよっ、全くトムがしっかりしなきゃ~~(デュアもだけど)」
その言われ方だと、トムだけが悪者かのようで黙っていられなかった。
「なんだよ! 何でオレだけなんだよっ。デュアだってそうだろ。せっかく買ってきたんだけどお前らにはやるのやめようかな」
まず、メイがはじめて見るらしいたこ焼きに感激の声をあげる。
「えっ? たこ焼きぃ!? うわースゴーイ。これがたこ焼きなのねー、おいしそー」
「うん。香ばしい匂いがするね。思わず喉を鳴らしてしまいそうなにおいだよ」
トムが、双子ちゃんにわざとらしく少し疑ってかかる言い方をした。
「そうだ! 宿とれたんだろうなー? ちゃーっんとやったんだろーな?」
「……ったりまえだよ。二人で祭りに行って来たクセに! 大変だったんだよ! お祭り時期だったからかなかなか空いている宿が見つからなくて……」
メイも口をとがらせて文句を言う。
「そうよー、めったなことを言うもんじゃないわよっ」
「ハイハイそうでしたか、オレが悪うございましたー、っだ」
トムが一番子どもっぽい言い方をしていたので、火に油が注がれる前にデュアが三人をたしなめた。
「まあまあ、三人とも。口げんかはやめてグレイ達が予約してくれた宿屋に行ってみようよ。ねっ?」
「そうだな。デュアすまねえ、行こうか」
結構こういうことに順応の早いメイが、さっきまでのことなんか忘れたかのように宿屋まで先導する。
「じゃああたしが案内したげるー、こっちだよ~」
「それじゃメイ、よろしくねー」
メイが元気よく返事をした。
「OK--!! 行こ行こっ」
どうやらお祭り会場の方を通っていった方が、宿屋の建物が見えやすかったようなので自然と祭りの雰囲気も味わうことが出来たのである。
「ここだよ! ここが予約した宿屋。早く入ろ~」




