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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
新幹部 現る
22/112

新たな幹部3 / 街でお祭り 1

「お人好し? 俺が? アハハハハ。まっさかぁ! お……俺がフッ……プッークククク。笑っちまうわあ」

 自覚のないヴィアンが笑いを吹き出していた。自覚して欲しいシーオンは若干イライラしてしまう事実もある。

(もうご主人!! まじめに言っているんですからね。ま・じ・めに聞いてもらわないと困ります。お願いしますよ)

「ん……悪かった。ちゃんと聞くよ。で? 続きは」

 少しいい加減さが残っている気もするが、ご主人のヴィアンが聞く気になってくれている様子。なのでシーオンは言いたい事もついでに言ってしまおうかと考えて口にした。

(ご主人は自分について知らなすぎですよ!! 地上を見て下さい! 困っている人はあふれんばかりにいるんですからね。そのっ……ご主人のお人好しクセが出たら『心』を取るって目的自体忘れてしまいかねないじゃないですか! 全くそのクセを直したらいかがですかっ)


「直せっていわれてもなあ……覚えがないのだからどうしろと。気にしすぎだ、寝ようぜシーオン」

 ある意味好き放題のご主人にシーオンが苦言を呈する。

(寝てる場合じゃないでしょう! 荷作りはどうするんですか……)

「荷作り? あー、あんなもんは明日で大丈夫だ。あ・し・た」

(も~!? ご主人。それもあなたの悪いクセ! 明日明日と言いながら先延ばしにしていることが幾度と無く! さあ、やってやって)

 ヴィアンが、シーオンに文句を言い返した。


「どこの母ちゃんだよ。それがお前の悪いクセ! 直せって」

(ほーっ、ご主人。なんてことを言うんですか! 私はご主人が何度も言わないとやらないから嫌々言っているんですよ!! さあ、やったやった!)

「寝みいんだよ、寝かしてくれマジで。明日確実にやるからさ」

 眠気に負けそうなヴィアンだが、そういう時に言った事は今まで実行してきているので、シーオンに強く言われる事はなくなる。

(もうっ、本当ですね? 絶対にですよ? 約束ですからね)

 一応念をおすことは忘れなかった。

「さんきゅっ。絶ー対に明日やるかんな。おやすみ、シーオン」

(おやすみなさい、本当にやってくださいねっ!!)

「あ~あー、おやすみだ」


                  ◇


その頃のデュア達はというと――――――

「改めて地図を確認しようかな」

 ポケットサイズの地図をデュアがアイテム袋から出すと全員集合、みんなで目を通す。

「あっ、この街道のこの位置みたいだね。もうすぐもうすぐ!」

 何だか町があるという方角から陽気な音が聞こえてきた。

「そういえば何かウキウキする音、お祭りでもやってるのかな?」

 グレイがその意見に同意する。

「そうみたいだね!! 灯りが近づいてきているし……」

「もうっ、二人とも!! いつまでそこにいるの? おいてっちゃうよ」

 デュアに急かされて、特にメイが慌てた。

「あっ! ヤダーーっ。待ってよ~~」


 町に入ってしばらく歩いているとやはりお祭りが開催されていたらしく、町全体が賑わっているようである。

「着いたーーっ! やっと着いたよーっ。馬鹿の相手をしたから疲れたしー」

「そうね、早いところ宿をとっておきましょうよ」

 やはり基本は、休息のため宿屋を探すのが定番だろう。その役目を双子ちゃん達が買って出る。

「あたしが探してくるね~っ! 待っててー」

「僕も行ってくるよ。メイが心配だからねっ」

 甲斐甲斐しく、メイの面倒を見ているグレイに、トムは思ったままを口にした。

「グレイって妹想いだよな~うん。つくづく思うわ」

 

 デュアにとっては、そんな事より今は自分の欲望に忠実になっている。

「そうねぇー……にしてもヒマ! 暇だよーーっ、どうにかして!」

 トムと二人きりの時にしか見せないデュアのわがままに、トムは困り顔になった。

「そんな事言われても……どうすればいいんだよ」

「もう……何か疲れた。眠いよ~~っ」

 デュアの気をひくのにちょうどいい事をしているじゃないかと、トムは手を叩く。

「そーら起きろ起きろ! お祭りを見て回ろうぜ」


「えーーっ? いいのかなぁ、そんな事して。不満を言われちゃうかも……」

 何の保証もないが、グレイ達なら笑って許してくれそうな気がする。トムがたまにしか見せない強引さでデュアの手を引っ張った。

「大ー丈夫だって! 行こうぜホラッ、そんな顔しなくて平気だ。い・い・か・ら」

「でも……悪いもん。トム一人で行ってくれば?」

 そんな提案されても祭り自体はつまらなくないだろうけどって考えるが、トムは一緒にいて楽しい存在と回った方がいいに決まっていると思う。

(お前がいなきゃ意味ないんだって……俺はデュアと二人きりの時間がいいのに………………)

 

 今の状況では、わざと引っ張る痛みを与えてデュアの気をひくつもりであった。

「ダ・メ! お前が来ないと」

 トムが強引に手を引っ張る。

(もうトムったら強引なんだから……何でそんなに私を連れていきたがるのよー、手の筋が伸びちゃってるかもー……)

 鈍感なデュアであった。

「よーう兄ちゃん! 彼女連れかい? ヒュ~、やるねこのこの~~」

「そっ、そんなんじゃねーよ、幼馴染だからだよオッサン!」


 人に茶化されると、トムのような年頃は気恥ずかしさが勝ってしまう事が多い。

「そうですよー、変な事を言わないでくださいよっ!」

 デュアの剣幕に気圧されて屋台のおっちゃんはつい謝ってしまった。

「悪かった! 悪かったよ姉ちゃん。気を悪くすんなよ」

「べ……別に……。気なんか悪くしてませんよ」

 言葉が途切れ途切れだが、デュアの照れ隠しはバレバレである。

「でも兄ちゃんのほうは悪くしちまったようだぜ」

 むーーーーっとした表情をしていた。理由は言わずもがなだ。

「なーにようトムっ、機嫌悪ーっ」

 デュアがトムの顔を覗きこむ。

「別にぃー、行こうぜ。じゃな! オッサン!」


「じゃな! 兄ちゃん」

(でも最後までオッサン呼ばわりか~、俺はこれでも老け顔ってコンプレックスのある24なんだけどなー……)

 屋台の兄ちゃんの心境なんかデュア達は気づけるはずがなかった。屋台を見てまわるデュア達、その中から彼女が美味しそうなものをねだる。

「ねえっ……トム、あれ食べたいな」

 トムは食べ物屋台が多いのでどれを指しているのかわからなかった。


「あれって何だよ?」

「あれだってばーー、あの美味しそうなの~~ッ」

 デュアが指さしたところには、温かそうな湯気の立った丸い食べ物がある。

「あれか?」

「うんっ、あれ。あの『たこ焼き』ってやつ美味しそうだよ」

 トムも一目見て美味しそうだと思ったが、建前でごまかした。

「しょうがねえなっ、みんなの分も買おうぜ」

「うんっ、そうしよう。食べれればいいもん」

 

 デュアの色気より食い気が勝っている気がするけど、待ちわびている子どものような笑顔にトムは呆れつつも実は嬉しかったりする。

「お前な~~、まっ、いいけどよ」

「わーい、トム大好き」

 トムは、ハートマークがついているようなデュアのお礼にメロメロになった。

(大好き……大好き……。うぉ~~、生きてて良かった~~、デュア俺もだよっ。ハッ、俺ってば自分の世界に入っている場合じゃない。買わなきゃ!)

 どうやらこのたこ焼きは、1人前3フォゴルのようだ。

「よし、買おうぜ。ん~~、みんなの分だから12フォゴルだなっ。ようしっ、お姉さん! たこ焼き4人前ね!」


「よっしゃ! 4人前ね。父ちゃん早う焼いとくれ~~ッ」

 どうもこのたこ焼き屋台は夫婦でやっているっぽい。息がぴったりだった。

「あいよっ! 兄ちゃん。こいつはおばちゃんだぜぇ、お姉さんだなんて言うもんじゃねえや~~」

「うるさいよっ、父ちゃん!あたしはうるわし~いお・姉・さ・んだよ」

 割と本気かもしれないが、ふざけて屋台の奥さんが父ちゃんを叩く。

「おーっ痛てえ、こんな乱暴な母ちゃんをもらうんじゃなかったぜ」

 屋台の夫婦はどうやらかあちゃんに分がありそうである。


「なんだって~~。もう一度言ってごらん! そんな戯言たわごと言ってんじゃないよ。さぁ、焼いた焼いた!」

「ハイハイ、やってますよ」

 屋台の奥さんが客商売の鏡のように、さっきまでの険悪な雰囲気を感じさせないほがらかな笑みでたこ焼きを渡してくれた。

「ゴメンよ兄ちゃん、待たしてしまってな。サービスもしとくよ」

「母ちゃん一丁あがり。ホレ! 受け取れ~」

 屋台の主人が、たこ焼きを投げてよこした。それを受け取れるということはどれだけ熟練した技術を持っているんだと感嘆してしまう程だ。



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