友情 1
もし、現代日本の人達が知らない事だらけなら?
そういうゲーム世界、異世界といってもいい気がする。
「デュアー、あっそぼーぜー! 今日はオレの友達も連れてきたんだ」
所変わってここは魔族達が占いで知ったやさしい心を持った少女のいる村、川上村と呼ばれている場所。ちなみに今、デュアという子を誘いに来た元気な少年はトムといって彼女とは親友なのだ。
「うん、今いくぅーっ。パパ、行ってきまーす」
デュアの父が玄関先でお見送りをしに来る。
「十分に気を付けて行っておいで」
「はーい」
家から出てきたデュアがとびっきりの笑顔でトムに謝る。
「えへっ、ごっめーん。遅くなっちゃって」
改めて私はデュア=ローレンスって名前の女の子、12才よ。みんな覚えてくれると嬉しいな♪
「誰に言ってんだよお前」
トムの表情が呆れて何も言う気が起きないって感じになっている。
「――ふうっ、それはそうとオレの友達紹介に戻っていいか?」
「本当にごめんね。よろしく」
トムが紹介出来る空気になったと判断して友達紹介を始め出した。
「じゃあ、まずはグレイからだな」
近くで待っていた2人の子達に声をかける。眼鏡をかけて理知的に見えるグレイという子。妹以外の女の子と話す機会があまりないという話。そのせいか、どぎまぎした感じに自己紹介を始め出す感じである。
「ボク、グレイっていうんだっ。よろしく」
何だか初々しいグレイが自己紹介を終わったら、すぐに隣にいる彼の妹もしっかりとした印象で自己紹介を始めた。
「わたしはメイっていうの。グレイの妹よ」
デュアとしては清楚でおとなしい印象に感じたメイ。背格好が似ていたのでデュアは思いきって聞いてみる。
「えっと、呼び捨てにしてるし。背も同じくらい。もしかして二人は双子……なの?」
「「うん」」
二人は間髪入れず同時に答えた。あまりに息がぴったりなのでデュアは驚く。
「さっ、自己紹介はこれでいいよな? 遊ぼうぜ」
「ところで何して遊ぶの?」
トムの提案にメイが聞いた。
「大きめのボールを使って遊ぼっ、あれ、面白いらしいよ。あたし達もやってみよう」
「ん~っ、特に反対意見もないみてえだけどよー。どう遊ぶんだデュア」
トムがグレイ達も賛成している様子なことを伝え、デュアに説明を求める。
「あのねえっ、玉ケリっぽいヤツ?」
デュアの、のほほんとしたお間抜けな一面にトムが脱力した。
「聞くなよ……こっちが聞いてんだから」
「えへっ、ごっめーん。一度やってみた方が早いかも」
デュアが舌を出して笑顔で謝る。記号で表すなら「えへっ☆」だろう。
デュア達はまず、すぐ近くにあった運動場に行ってそこのネットが張ってあるフェンスにシュートを決める。
「ふえ~そんな感じか。うまーい、デュア」
感嘆しているのはメイである。
「ふふんっ、まーねー」
デュアが自慢気に言った。
「あたしこういうの好きかも」
メイがボールを軽やかに動かしながら白い歯をのぞかせて笑う。
「顔に似合わずってやつだな」
「悪かったわね、失礼しちゃう」
トムのいたずら小僧的な言い草に、メイは舌を出して応戦した。
「オレもこういうの得意だと思う。2対2でやろうぜ!」
3人がすでに遊んでいて楽しそう。グレイも快く賛同する。
「じゃあもうゲーム開始」
デュアがポケットにしまっていた笛を響かせると彼らの遊びが始まった。
「オラオラオラオラッどけどけどけーい!!」
「そうはいかないよ」
トムが蹴っているボールをグレイは上手くカットする。
「ナイスカット! グレイ!!」
「サンキュ~! メイ」
ボールを取られたことにトムは凄く悔しがっていた。
「ちっくしょう。もう少しでゴールを決められると思ったのに」
「どう言おうと。もうっ、取り返そう」
トムはふてくされて動きを止めている。
「もうっ、あたしがいく」
スカートが汚れるのも気にせず男の子顔負けのスライディングで草の上を滑り、ボールを奪い返した。
「うふふっ、ざっとこんなもんよ」
「スキありっ」
グレイがデュアのように取り返そうとしてきたが、
「ふふん、甘いわ。そう来るだろうって予想済みよ」
デュアはボールを後ろに回して体を入れつつグレイをかわしきる。
「へえっ、デュアってすっごーい。【玉蹴り】っていう遊びにも詳しいし」
メイが目を丸くしてデュアに感嘆の気持ちを表現していた。
「私が直直に教えてあげようか?」
「えっ、本当? 嬉しい…………ってもうこんな時間!? うっそおー。残念」
メイがグレイを呼ぶと何かを話している様だ。
「ねえっ、この遊びもまた今度にしてさっ、良かったらボクらの家に来ないかい?」
「そうね、でもパパに連絡させて」
デュアが首から下げている十字架のペンダントの真ん中にある小さなクボミを押すと、電話機みたいになった。そしてデュアはそれを使用して父親との連絡を取る。
「あっ? パパ。あたしだけど今日ねっ、新しい友達が出来たの。それでその子に家にこないかって誘われたんだけどいってもいい?」
“いいぞ、行っといで。暗くなる前に返ってくるのならね。トム君も一緒に行くなら私が彼の家に連絡してやる”
「パパ、わかってるう。じゃあ悪いけどよろしくね?」
“うん、楽しんでおいで”
「わーい! ありがと♪パパ。大好き!」
“連絡くれれば迎えに行くから。じゃあな”
トムが不思議そうにペンダントを見ているので、デュアはこのペンダントの機能について教えた。
「どうなってんの? そのペンダント」
「タダの電話よ。違いはパパとのテレパシーみたいな機能がついていることくらい」
「へーっ、めっずらしーい」
そんな変わった機種を持っているのは一つのステータスになる。トムは羨ましいという気持ちを持つ。
「どうしたの? 早くボクらの家においでよ」
「ここから近いのよ。さっ、ついてきて」
グレイとメイがデュア達に一声かけると先に行って足音のみを響かせていた。その足音が止まる。
「ここよ! どうぞあがって。どうせあたしとグレイだけだしね」
意味深なメイの発言に、デュアはメイが無理に明るく振舞っているかのように感じた。
「えっ……? どういうこと。ご両親は? いないの……?」
デュアがためらいがちに心配そうな声で言った。聞いたらまずかったかなとも思う。
「あっはっはっ、やだなー。家の両親は帰りが遅いだけだよ~、紛らわしかった? ごめーん」
「……そう……」
デュアは少し悲しげな表情をした。自分が小さい頃に母親を亡くしているので母親という存在に会ってみたかったのかもしれない。
「ん? どうしたんだデュア? 何か元気ねえな。いつものお前らしくねえぜ!」
そう言いながらトムがデュアの背中を叩いた。それが彼なりの元気づけさせ方なのだろう。
「いっ……、もおっ、痛ーい。何すんのよ!」
お返しにデュアもトムの背中に拳を連打する。
「おっ、その調子だ! やっぱデュアはそうでなくちゃな」