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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
友情の芽生え
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トム離脱後 2

「着替えも済ましてきたわよ。火傷もだいぶ痛みはひいてきたし」

 グレイがデュアとメイを出迎えた。そしてリンディさんが来ていると伝える。デュア達がそろったっぽいと判断した案内人さんが宿屋の居心地はどうかと聞きに来た。お金を少々預けて必要なアイテムの購入依頼もしていたという事実もある。宿屋の主人と気さくに話をしている辺り、いつもの事なのかもしれない。

「久しぶり登場のリンディです。みなさ~ん、よく眠っておられましたねえ。心配しておりました。おやっ、誰か怪我でもされましたか?」

 案内人の経験豊富さに驚かされながらも彼らは何となく笑ってごまかそうとする。

「ええ。ちょっとした火傷を少し……」

 あながち間違ってはいない説明をデュア達から聞かされたリンディは深く追求することもなく、役に立つ道具アイテムを渡してくれた。


「それならこの薬草を使うといいですよ。痛みもほぼ中和してくれますからね」

「そこまで都合の良い薬草なんてあるんですか? リンディさん」

 聞いてみるとリンディさんがアイテムの説明をしてくれる。

「薬草も常に進歩が続いているのですよ旅人さん。まぁ使ってみた方がわかりやすいですよね」

 やっぱり薬草の基本はすりつぶしたものを煎じるというものらしい。草をそのまま貼るという方法もあるが、やはり前者の方法だったようだ。

「うーん。効く薬草ってほとんど苦いんですよね。本当に痛みが引いて来ました」

 苦そうな表情をしたデュアだが、火傷のヒリヒリ感を忘れる位の効能に控えめな声で嬉しい叫びをあげる

「わざわざ買ってきてくれたんですか? リンディさん」

 

 最初にこの案内人にこの世界の通貨を丁寧に説明してもらったデュア達は信頼して案内人にお金を預けていたのだ(とはいえ、そんなにこの世界の通貨として多くない金額だからこそだろう) もちろんお金に関する保険について双子ちゃん達が聞いていたりするなど余念はなかったが。

「はい。どんなアイテムを持って行ったらいいかわからず、困っている冒険者って案外多いものなんですよ」

 そして案内人リンディは他のアイテムも全て渡してくれた。

「用心のために忠告させてください。街の外の魔物には状態異常にしてくる敵もいますから十分ご注意願います」

 続けて購入して来たアイテムをデュア達に渡す。

「はい、これで全部なはずです。薬草五個に毒消し草三個・出直しの翼二個お渡しします。お気をつけて、神の加護のあらんことを」


 そこまでしてもらったのではデュア達は頭の上がらない思いだ。

「こんな事までしていただいてありがとうございました。あと何か忘れているような……」

案内人リンディにそれを聞くと、慌てて申し訳なさそうにうなだれてから預かっていたお金と袋を渡してくれた。

「大変失礼いたしました。あずかっていたお金のお釣り(領収証有り)とアイテムを入れるための袋です。どうぞお受取り下さい」

 デュア達もすぐに思い出せなかったので恐縮してしまう。

「ど……どうもご丁寧に。はい、超過分の泊まり代十六フォゴルです。フィールドに出ますね。本当に良いアイテムを買ってきて頂いてありがとうございました」

 

 接客業としては当たり前なのかもしれないが、礼儀正しい案内人リンディの態度にデュア達もかしこまってしまうのである。

「いえいえ、こちらこそ。たいしておもてなしも出来ずに失礼いたしました」

「とんでもないです。私達充分にお世話してもらいました。それでは失礼します。リンディさん! ありがとうございました」

「ええ。では、お気をつけて」

 最初にこの街に来た時は宿屋しか目に入っていなかったが、この宿屋の近くに攻と防のお店やアクセサリー店が飛び込んできて目移りしてしまった。

「寄り道している場合じゃないと思うよ」

「もうっ。ちょっとくらいなら良くなーい?」


 グレイも正直お店を見てみたいという衝動に駆られているらしく、うずうずする気持ちを抑えながらメイに注意をする。

「どうしたんだよ? いつもならお前の方が言う事だろ」

「ぶ――――っ」

 メイがほおをふくらませて抗議しているとデュアがやさしくさとした。

「メイちゃん。早く行きましょう。トムを助けだすのも、悪の組織を潰すのも早い方がいいしね」


「うん、そうする」

「じゃあ行こう。フィールドはもうすぐだ。気を引き締めていこうよ」

 フィールドに出ると草原が広がっていた。とりあえずデュア達は次の目的地に出れそうな道を探し出す。草をかきわけているとぷるぷるとしたゼリー状の小さな魔物を発見してしまう。

「ピピィ――――――――!!」

 その魔物がデュアの腕にくっついてきて攻撃してきた。

「いたたっ、もう。痛いじゃない。えーい、メイちゃん召喚獣に倒させちゃって」 

 メイが召喚術を発動させたのだが――

「ぺぇい?」

「そっ、それって魔物だよね? デュア! 攻撃メインにして。やっぱりまだ未熟みたい」

 

 メイの召喚はレベルの関係からか、失敗することがある。失敗すると他の敵を呼び寄せてしまうことがあるようだ。戦士であるグレイに冷静に指摘されてしまうのも無理はない。

「そ、そーね。えーと、短剣はどこにあったかしら。さっきのお返しよ……ってあら? 倒されちゃってる」

「ごめんね、メイちゃん。私の水呪文で一撃で倒れちゃったみたい」

 それからデュア達は地道にレベルとお金を稼ぎ、次の目的地に行く方法を相談しあっていた。

「じつはねー、あたしリンディさんから地図をもらったんだ。これでわかるよ」

 メイがもらっていた地図を広げ、デュアとグレイで今の場所を特定する。


「んーと、ここがミトースでっと。次はテーベって場所だな。ここから北に道なりに行けば着くと思うよ」

「北っていったらこっちの方よね。ちょうどあの道なんかそうなんじゃない?」

「うん。そうだろうとしか言えないけど」

 次の目的地が決まったのでデュアは何だか張り切りたくなった。

「次は北に向けて出――発――!!」



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