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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
友情の芽生え
14/112

トムの心 7 トム離脱後

 グレイに断言されたメイは呆れてしまい、宿屋の主人にグレイを部屋まで送ってもらう。

「おやすみ、グレイ。夜に眠れなかった分、今から寝ましょうね」

 そしてメイもデュアを連れて部屋まで戻り、グレイも含めて二日も眠ってしまっていた。


                    ◇

「ん――っ、よく寝た。ええ? 二日も経っているじゃん。まっ、時間も戻せないし今はさっさとデュアを起こすとしましょう」

 過ぎた事は気にしてもどうしようもないしという性分らしい。その前にとメイは一度ドアを開けて部屋の外に出た。

「んーと、たしかこの部屋よね」

 隣の部屋にやってきたメイはグレイが起きていない可能性も考えて強めにドアをノックする。

「ううーん? こんな時間にだーれー……ってもう二日経ってる!? 大変だぁ~。えーと眼鏡眼鏡はっ……とあった。装着! ん~っ、この方がしっくりくるなー。なんてやってる場合かっての」


 部屋の外にはメイがいた。グレイはかける言葉が見つからなかったのでとりあえず朝の挨拶をする。

「おはよう、メイ。今日は気持ちのいい陽気だね」

「グレイ? その格好で言っても決まってないわよ」

「あっちゃー。直してこないと」

メイに冷めた目で見られたグレイは髪を整えたりなどの身だしなみを気にする。再度出直しの形でグレイがメイの前に現れた。

「やあ、メイ。今日もすがすがしい一日になりそうだね」

「あたしは朝から疲れてきたわ」

 

 メイは比喩ひゆをもちいただけなのに本気で心配してきたグレイを軽くあしらいながらデュアと一緒に使っていた部屋に戻ってきた。

「いつまでも寝てないの。ほら、起きて」

 メイとグレイが話しあった結果、少し荒っぽくてもデュアを起こした方がいいと結論が出た。なのでメイがデュアの眠っている布団を投げるという荒技を。

「え? 何、何があったの。まだ6時よ、もう少しだけ寝かせて」

 布団を取り返そうとしたデュアだったがグレイの力の方が強くて取り返せない。


意地になっているデュアにメイが時計を見せて日時を確認させた。

「ほら、デュア。これを見て」

「時計がどうしたの? うそ! 二日も経過しているじゃない」

 デュアにとって心なきトムとの戦いは体力も精神力も消費が激しかったのだから無理もない。まだ体には疲労が残っているようだ。起きあがると今度は火傷の痛みにうずくまる。

「あいたたた……」

 見た目痛々しい皮膚はだのただれにメイは心配せずにはいられなかった。

「だ、大丈夫?」


挿絵(By みてみん)



自分の荷物を指さしてデュア。グレイに火傷に効くアイテムを取ってもらう。

「グレイ、その荷物の中のアロエ草取ってくれる? 良かったわ、とりあえず薬になる道具は揃えておいて」

「こんな火傷を負って良く我慢出来たね」

 アロエ草をデュアに手渡しながらグレイが言った。

「ん――っ、そうよね。このムチが炎を中和してくれていた気がするわ。そういう効果がムチになかったら死んでしまったかも。そう考えられるからぞっとするわよ」

「さっ、デュアにアロエ草を塗るからグレイは隣の部屋に戻っていてね」

 メイはデュアのことを考えて、部屋からグレイを追い出す。


「別にベランダでも良かったんじゃあ?」

「だーめ。女の子の肌をそうそう見せるもんじゃないわ。ベランダだとのぞかれる可能性も否定出来ないもの」

 アロエ草を一気にすりつぶす。メイはデュアに上着を脱いでもらって患部にアロエ草をすりつぶしたものを塗りたくった。

「アロエ草は効くんだから痛くても我慢しなきゃ」

「わかってはいるんだけど」

 冷や汗をかきながらデュアは歯を食いしばり、痛みをこらえる。

(んなこと言われても痛いもんは痛い~~)

「火傷の部分は全部塗り終わったよ」

「あ……ありがと……」


 デュアの声が震えている。でもすぐにアロエ草の効果を実感した。

「治ってきている感じがするわね~。やっぱ効くわー」

 そこで遠慮えんりょがちにノックの音がした。

「メイ、まだかい? 食事の用意が整ったそうだけど」

「今、着替え中。もしのぞいたりしたらタダじゃすまないわよ」

「そ……そんな事しないよ」

 グレイだって思春期な男の子、こうは思ってしまうのである。

(興味はあるけどさ)

 誰もいないドアの前でグレイは赤面する。しばらく待っている内にドアが開く音が聞こえてきた。


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