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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
友情の芽生え
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トムの心 6

 デュアはメイに状況を理解させた。そしてこれ以上手出し無用だという事も伝える。

「今ねっ、二人だけの戦いをしていたの。だから空気を読んでくれないかな」

「そうだったの。わかったわ。それじゃあ仕方なく見物してるね」

 デュアは心なきトムと再び対面する。グレイもそのまま加勢に残ろうと思っていたが、メイに呼ばれた。

「グレイ、手出しはバツなんだって。わかった!?」

 手を交差させてバツ印を作ったメイに対して、グレイは不満げな返事をしながらも応じる。

「メイ……わかったよ」

 

 二度目の試合再開前にお互いの感想をもらした。そして戦いに意識を向けるのであった。

「また待たせてしまって悪かったわね」

「待ちくたびれることをしておいて、緊張の糸を少しでも切らそうとしているのかと思ったぞ」

「そんな訳ないでしょ!」


 気合を込めた攻防。二人は掛け声に合わせて続けていく。

「はああああぁぁ――――っ!!」

「てや――――――っ!!」

 両者、相手の武器をほとんど回避。二人とも大してダメージを与えられず、体力だけをいたずらに消耗させていった。

「ぜい……ぜい……」

「はあ……はあ……」

 双方ともにかなり息が荒くなってきた。かなり体力の消耗で弱ってきているようだ。

「デュア……!」



 かなりもどかしそうにしていたグレイがデュアの元へ駆けつけようとした。メイもそうしたい衝動はあったが、心を鬼にしてグレイを止める。

「駄目なんだってば。手出しするとデュアに怒られちゃうでしょ」

 グレイはしょんぼりして悲しそうにつぶやいた。

「ごめん、そうだった」

 そんな事があったなんて知る由もないデュアと心なきトムは双方ともが次の攻撃にすべてをかけようと心に決めていた。

「あと一発といったところだな」

「こっちもこの最後の力で対抗してあげる」

 心なきトムはすでに準備がほぼ完了しているようだ。


 反対にデュアは息を吸って気合を高め、素早さを上げる『アビリティライズ』という補助魔法を自分にかけて万全な状態にする。

「いくわよ、ファイナルバトル!!」

「こっちはすでに準備が出来ている」

 この一発にかかっている。全てはトムのため! デュアは気持ちを込めて最後の一撃を打ち込んだ。

「とりゃあ!」

「えいや―――!!」

 どちらかに確実に一撃がヒットしていて、片方は一撃の威力を殺していた。メイとグレイには勝者が一人である事を確認出来たのである。

「勝負……あったわねグレイ」

「うん……」

 先に倒れたのは心の機能を奪われているトムの方であった。


 しかし、デュアも喜ぶ気力が残っておらず、両ひざをつく。

「!」

「デュア!! 平気?」


 闇の通路からまたヴァルマーが戻ってきた。そしてヴァルマーの口からとんでもないことを聞かされる。勝手に引き分けと判断してトムを連れて行った様だ。

"くくくっ、面白い余興であった。だが約束を守らなかったのは貴様らの方だからな。知らなかったは悪者には通じん。残念ながらこの小僧はもらっていく。早く追って来いよ? そうしないと小僧の『心』は完全な悪になるからなあ。は~はっはっはっ"


「ヴァルマー……!! 今度こそトムを取り返すからね……必ず……」


 力を使い果たしたデュアはその場に倒れてしまった。ヴァルマーは魔族の城に帰ったようである。

「あ~あ、世話が焼けるわね。グレイ、目の視力が悪くてもデュアを運ぶことは出来るわよね?」

 グレイは苦笑いしながらも首肯する。

「まあね。でも危険回避はメイの先導をお願いするよ」


 デュアをかつぎあげたグレイ。より安全な方法をメイに訴えておいた。

「流石に疲れるなー。まだ町の宿屋まで遠いっていうのに」

 一応自分の兄にもメイは厳しい意見だ。

「体力っていうか魔法戦士のくせに力が全体的に不足気味なのよねグレイは。そりゃテレポーテーションでも使えれば楽!?」

 冗談で言ったのに実際に現象が起きたのでデュアをかついでいたグレイにメイも驚く。





 ミトースの町の宿屋目の前に着いていた。

「ここって……グレイ?」


「え? え? どうなってっ――。ってここはボク達が泊まっていた宿屋じゃないか」

「ってどこ向いて言ってんのよ」


 グレイが手をとって話していたのがたまたま通りかかった町娘だったので(グレイの容姿は良い方なので町娘はうっとりしている様子)むかついたメイがグレイの頭をはたく。

「痛ってーなー。悪かったよ、お前かと思って不用意に手をとったりして」

 メイは町娘にグレイの視力が悪い事情を話して手を離してもらう。ついでにふてくされた物言いをした。

「ふーんだ。いくら視力悪かろうと妹と他人を間違えると思う?」

「思う! だって本当に人間の性別を調べんのにも苦労するんだから


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