この魔族幹部は! 4 挿絵あり
「――やめて! ディリーさん!!」
「な……!?」
眉をしかめ、ルシファーに斬りかかろうとしていたディリ。邪魔をする理由は何だとばかりにデュアを見つめた。
「冷静になって、ディリーさんっ! そうじゃないとこいつの思い通りになってしまいます」
せっかく誑かしてディリー《この男》の隙をつくつもりだったのにというルシファーの表情。(チッ……さすがは『SWEETHEART』の持ち主……心の内を読まれているかのようだ……)
ルシファーがどいてもらおうかという言葉を吐く。
「口出ししないでもらおうか……」
「そういう訳にはいきません!!」
デュアのやっている事は仲間にはすぐ理解出来ない事がたまにある。だけど泣きそうな表情でディリーとルシファーの間に入っているデュアを見たトム。何かを悟って聞くのをやめた。やはり今の段階では双子ちゃん達は何が何やらわからないといった表情をしていた。
「このままでいいんですか!? よく考えてください、ディリーさん! こ……こいつはあなたの『心』を狩るつもりなんですよ」
「なっ!? ま……まさか」
親友の姿形をしている魔族幹部、あいつの心が残っている限りはそんなマネをするはずがと信じたくなさそうである。
「信じたくない事かもしれません!! ……けどこれは確かな事なんです!!」
信じるしかないのかとディリーが逡巡している。デュアの後に続いてピュティアも訴えかけた。
「私もそう思うわ! だめよディリー!! 挑発に乗ったら!!」
ピュテイアの本名『美琴』もそう思うのかとディリーは迷う。
「お願いです……! 信じてくださいっ! きっと……いえ、絶対にそいつはディリーさんの『心』を狩るのをたくらんでいるとしか考えられません」
涙で言葉が出てこなくなりそうだったがグッとこらえて
「その『ルフラン』という人の話でディリーさんの『心』が揺らいでいました。それはディリーさんも人並み以上の『やさしい心』を持っているからです」
「俺に『やさしい心』なんて……」
良心、人を労る心くらいは誰もが持っているのでは? と疑問を覚えた。
「誰にでもそんな『心』はあると思ったでしょう? 人並み以上といったはずです。だから……だから自覚していないのは良くないんですっ!」
風が吹き、木々が音を立てている。
「余計な口出しをするなっ!!」
親友ルフランの事を何も知らないくせにとか、俺の心はそんなに良い物じゃないなど様々な感情のせいかディリーがデュアに斬りかかる。まさかそういう事になるとは思っていなかった彼女は剣が近づいてくるのに気づくのが遅れた。
「危ない!! デュア!!」
トムがデュアを押し出した。そのトムの行動に双子ちゃんは「やるじゃん」と彼の事を見直していた。トムが怒りを瞳に宿らせてディリーを睨む。ディリーは事の重大さに気付いてやりすぎてしまったと自戒する。
「女の子に何てことをするの!」
悔やんでいる彼にピュテイアの平手が飛ぶ。頬をおさえ、申し訳なさそうにうつむいた。
(うわぉ、結構過激っ!)
メイがそんな風に思ったようである。
「……すまない。気が立っていたものだから……」
罪悪感を感じている表情で謝罪するディリーだが、トムの気がおさまらない。
「あのなっ! 『すまない』程度で済むと思っているのかよ! デュアはあんたの事を心配していたんだぞ! それを聞けないっつーんならアイツのところへ行っちまえ」
デュアが立ち上がって、トムの肩にそっと手を置いた。
「言いすぎだよ、トム……。私も調子に乗っていたんだから……」
「でもよ……」
彼女は首を振って「いいの」と言った。
「すいませんでした。ディリーさん……。私も無駄に『心』に踏み込みすぎてしまったみたいで……」
ディリーが表情で「いや、いいんだ」と悪いのは自分だからというのを表す。
もしもーしという声が魔族幹部のいた方から聞こえてくる。
「さっきから私の存在を忘れているのか無視されっぱなしなんですけど~~~~」
皆がわざとらしく「だから?」と疑問の表情をした。
その間にディリーは大きな決断を胸に秘めた。
第一部お疲れ様でした。
これから続編内容をまとめていくので気持ちの甘さ2はいつ投稿か不明です。
読者さんなどに感謝!