ディリー達に実力の片鱗を見せる 2~この魔族幹部は!? 1
「そうね。そうしましょ~~~~!!」
不毛な言い合いもそれによって生じる雰囲気も好きじゃないピュテイアが元気良く賛同する。
トムとディリーが顔を見合わせた、が……2人して「フン」と顔を背けていた。どこか似たもの同士かもしれないのを認めたくないからかもしれない。
「ね、ね。早く村に行こう! ごちそうするわよ」
現金なものでトムが食べ物に釣られた。
「え!? マジっすかーっ」
「おい……その金はどこから出てくるのかナ~? ピュ・テ・ィ・ア」
今まで稼いできた旅の資金を相談もなしに勝手に使うつもりかとディリーは問いただすつもりだったのだが――
「なーに言ってんのよ、ディリーってば。さっき倒した魔物のGからに決まっているじゃない」
これにはさすがのディリーでも何も言えなくなってしまった。
「さぁ、村へLet's Go~~!!」
ピュテイアが村の影が見えてきたので先行して浮かれ気分で村へと移動していく。
――イコウ村――
「さーてと。村に着いたわ、早速ご飯にしましょうよ」
別に最初からそのつもりだったというのはある。それでもディリーにとっては村到着後にすぐ食事の心配かと何かを言わなければ気がすまなかったようであった。
「知らなーい! だけど村人に聞けばいいじゃない」
この村の静けさに父親が言っていた事をデュアは思い出した。魔族の側近クジャクが人の『優しい心』を奪い続けているって事。もしかしたらここもクジャクの毒牙にかかっているのかもと嫌な予感を覚える。
「……ア。デュア! どうしたんだ、ボーっとして?」
心配そうなトムの表情。何もわからない状況で不安を煽るなんて良くないと思ったのでデュアは適当な理由をでっちあげた。
「あ、ううん。何でもないの。おっ、お腹すいたなーとか思っちゃって」
「そうか。なら良いんだけどな」
単純なトムは何も疑わずデュアを信じる。
「どうしたの~? 2人ともーっ、置いていっちゃうよ~っ」
いつもの感じに戻ってデュア達は他のみんなと合流した。
食事のために村を歩いていた一行、村人を見つけたので率先してピュテイアが声をかける。
「あのーっ、すいません。食事に行きたいのですがどこがいいでしょうか?」
反応なし。
「何よぉ~~、返事くらいしてよねーっ」
村人の生気の抜けたような表情を確認してディリーがつぶやいた。
「待て、ピュテイア。様子がおかしい」
デュアも自分の嫌な予感が当たってしまっているのだろうと思った。村人の生気のなくなってしまっている姿から悔しい気持ちを抑えるのに必死だ。
「みんな、抜けがらみてぇだ……」
「本当にどうしちゃったのかな? ねぇ、グレイ」
トムとメイも村人の様子がおかしいのに気づいて頭のキレるグレイに話を振る。そのグレイはデュアが何かを気づいていると思って尋ねた。
「ん……デュア。わかるの?」
少し戸惑っていたが黙ってうなずく。
「え……知っ、知ってるの!?」
グレイはさすがに未経験なこんな状況で何かを理解するのは無理だろうと冗談のつもりもあったのだが――驚いた。
「だってパパから聞いていたんだもん。世界中からみんなの『SWEET HEART』が奪われだしているって。何でもある地方では大虐殺、戦争、犯罪、などなど悪の行為のせいで滅んだ場所が増加傾向だとか」
そんなものは目にしたことはない。だが、それでも嘆き悲しみ苦しみなどの人の感情に共感してしまうデュアは手をぎゅうっと握るくらいしか出来ないのである。まもなくしてから何者かの声が聞こえてきた。
「クククッ、さすが選ばれし者といったところでしょうか。情報がお早い」
そいつには見覚えがあった。なのでディリーが問いかけた。
「ルシファー!?」
<おや、覚えておいででしたか。光栄です>
ルシファーに魔族のボスがどうなっているかとデュアが探りを入れる。
「ク……クジャクが完全化しそう……なの……?」
しかし、それに引っかかることなくルシファーが意味深な事を言った。
<フフ……どうでしょうね。きっとあなた方の前に立ちふさがるでしょう。その前に私が倒すがな>
「やめてよ! もう……。人類の『心』を取るのは!!」
残念ながらそれは叶わないとルシファーが言う。
<無理というものです……それは>
「む……無理って……! どういう事よ!?」
どうしてもというならそういう方法があるという事で、ルシファーが交換条件を出してきた。
<ある人がクジャク様に『SWEET HEART』を渡さない限り……ね>
言い方が言い方なのでトムが叫ぶ。
「ある人って誰だこらぁ!!」