ディリー達と戦闘訓練? 3~またデュアの父親から通信!? 1
森の木々の周辺で枝を踏み砕いた音と共にヒートドラゴン2体とウォーウルフ1体が出現。
「な……!? いきなりグレードアップしてねえか」
「油断するなよ」
この敵の強さはまだ不明だが、トムにも緊張感が走った。
「わかってらい!」
(さあっ、お手並み拝見だぜ!)
トムに見られているのを気づいているのかもしれないが、そんな事よりディリーは眼前の敵に対する対抗策を練っているようだ。
(ううむっ、火属性と無属性か……。よし! ここは『星』で行くか)
そのトムのみがとても意識している2人の関係を後ろで見ながらも、デュアはあまり気にしないようにしようと思った。
(何か2人の世界だわ……。まっ、問題ないわよね。ほっとこう)
ディリーが剣技を発動させるためにオリジナルな詠唱を始める。
「銀河の光よ……我に力を与えたまえ……。汝に力を――……!」
バン・スラッシュ!!
彼の声に呼応するかのように空からまばゆい光が差し込む。その光を剣に宿らせて、魔物を斬りつける。ドザっと魔物だった残骸が3匹いっぺんに倒れた。
「フンッ、雑魚が」
ディリーの剣技が魔物をまとめて斬りつけるものだったようで、クールなまま彼は剣を鞘におさめる。
(す……すげぇ……!! あんな強そうな魔物を一撃で! うううっ、悔しいけどこいつは本物だぜ)
「どうだ? 俺の実力は」
歓喜の声を上げて、ディリー達を仲間に誘った。
「すごいですね。ぜひとも行動を共にする戦力になって下さい」
デュアが『SWEETHEART』の持ち主である事が関係しているかどうかだが、ピュティアの顔を見てお互いうなずきあう。
「最初からそのつもりだ。これからよろしく頼む」
「はいっ」
心強い旅の仲間が2人も加入したことでデュアの声が弾んでいた。
「納得いかね~~~~!」
急にトムが大きな声をあげたのでみんなビックリ。
「な、なに、どうしたのよ? 何が納得いかないのよトム。ビックリするじゃないのぉ……」
自分の価値に危機感を覚えたのか
「こんな強ぇ奴と一緒に旅をしろっつーのかよ! 俺の見せ場がねえじゃねえか」
ビシっと擬音が入る感じにトムがディリーの方を指さす。
「ふん。そんな心配か……」
しどろもどろになってトムがどうしていいかわからなくなったのか、ディリーに絡み出した。
「な、なんだとぉ!? てめえが一発で魔物を倒しちゃうから悪いんじゃねえか!!」
デュアに良い所を見せたかっただけなのが丸わかりなので、ディリーは特に気には留めず。
「まっ、まぁ。抑えろよ……トム、見せ場なんて自分で作り出せばいいじゃないか」
言われて当然な事だとわかっていてもトムはグレイにも俺の気持ちを汲んでくれという様子で嘆いた。
「テメ~~、グレイ! んな簡単に言うなよ!」
「怒らないでよ……トム」
ぶつくさと心中で思っていればいいだけの事をトムが垂れ流している。
「あ~~気に入らねえ気に入らねえ!! だいたい何様のつもりで俺達と旅をするんだよ」
特に隠す必要はなさそうだと判断したディリーが同行理由を短くつぶやいた。
「俺の目的は『SWEETHEART』だ……」
「ん? 『SWEETHEART』……!?」
少しだけ考えてグレイが解答を導き出す。
「うん、『SWEETHEART』……か。訳し方は『優しい心』かな」
その時、急にペンダントからデュアの父親の声が聞こえた。
<そのっ通~~り! さっすがグレイ君と言ったところか>
「パッパパ!? 何!? どうかしたの急に出てきたりして……!」
<いやいや、さみしくってな……ってそんな茶目っ気を出している場合と違う! 無理言ってお前たちに話しかけているんだから!>
前も無理を聞いてもらったと聞いた気がしたが。あの世のそういうものを管理している存在は融通が効くのかなど詮なき事を思いつつ手短に話すのならとデュアもさっさと話を聞き出そうとする。
「じゃ、何?」
<……ヤバイんだ。今、世界がな>
「は? 何で? 話が読めないよ……」
言われた瞬間は気づかなかったが、今までの事を考えてみてハッと気づいた。
<その様子だとどうやら気づいたようだな……。そう……今、クジャクが完全体に近づいているようだ……!>
なかなか次なる地に行けないように次から次へと幹部をデュア達の元に送り込まれていたのはそれが理由だったのかと仮説を立てる。
「どうして……!? もう世界中の人達から『SWEETHEART』を魔族どもが奪い続けているって事になるの……っ!? 」
<その通りだ……。さすがにあの世のお偉いさんでも一気に人間がという状況は好ましくないらしい。どうにかしてくれんか>
「そっ、そんな事を言われたって……」
ただ目標は明確になっても、どうしていいのかわからなければオロオロするしかない。そこにディリーがやって来て話に割り込んできた。