ディリー達と戦闘訓練? 2
「たまには外に出ようよ! ねぇ!」
外に出るという事は魔物退治も考えなくてはいけない。まだ実戦が少ないデュア達は危機感を持ってはいた。そういう観点からも魔物退治に外に出ようかと話がまとまり、デュアが代表してディリーに尋ねる。
「あ、そうだ。ディリーさん達は魔物と戦った経験は多いのですか?」
話を振られたディリーが視線を少しデュアの方に向けて一言だけ発した。
「ん……? まぁな」
「ったく『まぁな』じゃないでしょーが!! 十ッッ分に戦ってきたじゃないのぉ」
デュアにだけわかった彼の笑み。一瞬やわらかい微笑みを浮かべて、短いながらもしっかりした提案をする。
「そうだな……今日お手並みを見せようか?」
「合点承知!」
ぱぁんと強めに手をならす。みんなの思いが一致した。
(ピュティアさんって巫女のイメージと違う)
そんな全員の様子を見た彼女がきょとんとして「どうしたの?」と聞きまわる。その話をふくらませると面倒な事になりそうだったので「早く外に出ましょう」とデュアが先に宿屋出口へと向かう。
「そっ、そうですね。お手並み拝見させてもらいます」
「そうするといいわ、ディリーは強いから安心よ」
へぇ~とデュア達は感心する。ディリーは無言でその場を去って部屋に戻ってしまった。
(何だよあいつ……『ごちそうさま』くらい言っていったらどうなんだ、無愛想なやつだな)
そんなトムの思いが顔に出ていたのか、ピュティアがディリーのフォローをする。
「ごめんねー皆。ディリーったら無愛想だから」
「いえ、いいんですよ。トムの言う事を気にしなくて」
気にしないでとデュアがいうのも理由がある。ディリーの境遇からこちらも可能な限り触れない方が良い話だとの判断からであった。
(だってあんな事実が知れたら誰だってああなるもの……)
「はい、ごちそうさまでしたー。美味しかったですよ~」
食事を食べ終えたグレイが厨房のおかみさんに率直な感想を言った。その声を聞きつけた宿屋のおかみさんが「あら、どうもありがとう」と全員が残さず美味しく食べてくれたので嬉しそうにしている。
「じゃあ片付けておきますからごゆっくり……」
先に部屋に戻ったディリー以外の全員で食後の挨拶を元気良くした。
「「「「「ごちそうさまでしたー」」」」」
階段を上がってそれぞれが一度自分の部屋に戻る。
ここはデュアとメイの宿泊部屋――
(ちょっと……お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃったわ……。寝よ)
睡魔に誘われるまま布団もかけずにベッドの上に横になると眠ってしまった。
メイは疲れてそうだから休ませてあげようとデュアの胸付近まで布団をかけた。その彼女は外に出られるのが楽しみで準備を整えていく。
30分経過――――
「ちょっとデュアったら起きなさいよ!」
起きる様子のない彼女をメイが急かす。
「ん~?」と寝ぼけた声を出した。
早く外に出たいメイが眠りの後のボーっとした状態なのはわかるけど、そんな状態でも準備くらい出来るとデュアへ用意するように、と、またもや急かしだした。
「もうっ! 『ん~?』じゃないの!! ボーっとしてないで外に出る準備をしなさい」
「メイ……何かママみたいよ」
デュアが寝ぼけて考えなしに言った言葉にメイが大きく反応する。
「マ……しっ、失礼ね。そんな年じゃないんだから。とにかくっ! 早く用意してよ!」
やる気のない人が出しそうな「は~~い」という間延びした声でデュアが応じた。
5分経過――
「ごめーん、お待たせしました。さぁ~、外に出ましょう!」
すでに集まっているデュア以外のメンバーに軽く謝りを入れて、出発するかどうか聞いた。
「おせーよ、デュア」
特にトムが不機嫌そうにむすっとしていた。意外と短気なのだ。
「怒んないでよぉぉ」
仕切り直しにメイが出発の合図をした。
「さーあ! みんなぁ。とっとと外に出ましょう!」
「はい」
――フィールド――
「ワオ! 久しぶりだな~。外に出るのは」
そよ風の吹く程度の快適な気温の今、トムが空気を全身に浴びて気持ちよさそうにしていた。そんな中、意識を集中しているのか目をつむっていたディリーが何かに気づき剣を抜く。
「来るぞ」
何の気配も感じないのでトムが問い返した。
「え、何が……!?」
ただ端的に伝えているつもりのディリーだが、自然と語気が強くなってしまっている。
「わからんのか! 魔物に決まっている!!」
(ムカッ、なんだよ! どこから来るって言うんだよ!?)
まるでトムの心の中を見透かしたように
「森の中から出てくるぞ! 構えておけ」
(何だよ偉そうにーっ、ムカつく)
誤解が解けるまでは連携が困難そうな2人だった。