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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
101/112

デュア達一行の前に現れた魔族 3 挿絵あり

「ああ……知っているさ。こう言えば気が済むかいデュア」

 辛そうな表情を見せまいと顔を横に向けるディリーにデュアが言い淀んだ。

「そんな悲しい顔をしないで下さい……。申し訳なく思っています……ですが!!」


「知っているよ……忘れるものか。あのルシファーとか言う奴……いや、本当は俺の……!!」

 自然と口が動いたのでディリーがはっ、とする。自分でもどうしてこの娘には包み隠さず話せるのか。そこで彼は思い当たるフシを思い出した。神父さんの話で聞き覚えのある『SWEETHEART』を持っている人には心を開けるという伝承。まさかこのヒトが! と思う。

「? どうしたんですか……」

 つい考えこんでしまったけど、デュアに問われて我に返った。

「い……や……。そんなハズないか」


挿絵(By みてみん)



 ディリーが考え込んでいる間仏頂面をしていたからか、デュアは彼の話したくなさそうな事だと感じて遠慮する。

「すいませんディリーさん、やっぱりいいです。ヒトの過去をあれこれ詮索しないに越したことないですしね」

 そのディリーがそういえば証拠を調べればすぐわかるじゃないかと思ったがわざわざ調べる気はなかった。

(あっ、そうだ。このヒトがSWEETHEARTの持ち主という証拠がないじゃないか……)

「本当にすいませんでした。ディリーさん、宿屋に帰りましょう」


 デュアの首元辺りで風にあおられたネックレスが軽い音を立て、揺らぐ。

 !? なっ……まさかロザリオ? 本当に……っ? とディリーは自分の目を疑ってしまった。

「ちょっとデュア。こっちに来てくれないか?」

 戻るつもりだった彼女は驚きの声を漏らす。

「え……っ」

 少し彼の方から近寄った。

「あの……」

 戸惑っている様子のデュアには悪いが、今になって彼女の外見の特徴が気になった。興味を持っていない時はあまり外見なんて気にしていなかったから薄緑のセミロング、目も青い……SWEETHEARTの持ち主の伝承と合致している事に気づいたのである。ロザリオっぽいものが見えた!? と改めてディリーは確認する。


「デュア。ロザリオを身に着けているのか?」

「え? はい……」

 何でそんな事を聞くんだろうと少し首をかしげたデュア。ディリーが『やっぱり……!!』と思っているのは気づかない。でもデュアはこの人にロザリオについて教えてもいいかと不思議と思ったので微笑んで伝えた。

「パパの形見なんです」

「そうか……すまんな」


                            ◇

「すいません、ピュティアさん。しばらくお借りしまして」

「ううん、別にいいのよ」

 あまり必要以上の事は話さないディリーと比較的話していたように見えたデュアが、彼と何を話していたか気にならないといえば嘘だ。しかし、そんなものは表に出さずにフレンドリーさを強調する。

「何話していたんだよ、なぁーっ」

 トムが語りかけても、デュアが何も言わずに双子ちゃんの元にいったので怒りの矛先が変わる。やきもちを焼いているかのように怒りの表情をしてしまっていたようであった。

「え、あ……何?」


 そのやきもちを焼いている姿をデュアに見られてしまったトムは彼女が気に掛けてくれたと思ったからか怒りが尻つぼみになっていった。それでも聞きたい事だけは聞き出そうとする。

「いや……だから……。何を話していたのかなぁーて……」

 遠回しな言い方をトムがするのでデュアは意地悪した。

「さて、何でしょー。ねー? 知りたい?」

 わかっているくせに……とトムは表情に出してしまっていた。かまってちゃんだと思われるのは釈然としないものの、本音を口にする。

「う……っ、知……知りたいに決まってるだろ」


 デュアが素直な意見をトムに話すように無邪気な笑顔で誘導しつつも、結局は教えなかった。

「そう? でも教えてあーげない」


 いろいろあってもう遅い時間だ。これ以上彼女らが話を続ける気がなさそうかなという事でピュティアが就寝しないかとここにいる全員を誘う。

「さーて、そろそろ休まない? みんな」

「そうですね」

 ベッドで寝そべっていて眠くなっていたからか、メイがすぐに目をつぶった。

「おやすみなさーい」

 

 みんなベッドで寝る準備をしていたら疲れていたのか誰からともなく寝息を立て始めていた。その中で、デュアは一人で何やら考え込んでいる。

「ねぇ、トム起きてる……?」

 だが、トムは眠っている。デュアに控えめな声をかけられた時、う~んと返事のような唸りを出して寝返りをうっていた。その寝返りが勢いついていたらしく、ベッドから音を立てて落ちた。

「ってて~」と痛そうな表情を短時間していたかと思うと、眠気の方が強いのか無意識にボーっとしながら再びベッドの中に潜り込む。


「ねぇったら、トム」

 軽く体を揺さぶられたのでトムが寝ぼけたように「ん?」と言い、デュアの方向に向いた。

「なんだよ? 眠れね―のか?」

 どこか寝起きが悪いかもしれないトムに、彼が喜びそうだという話題を振る。

「んーん、さっきの話のこと……話してあげようかと思って」

 おっ! とウキウキし始めたトムがベッドから飛び起きた。

「なんでぇ、なんでぇ。その話ってーのは?」

「フフッ、それはね……」


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