参話 長い話には濡れ場を用意しないとね!
俺とチョコは仲良く二人で電車に乗っています。
10時を過ぎたから、人はまばらでした。
俺が座席に座ると、チョコの奴は俺から離れていき、遠くの席に座りました。
はずかしやがりさんなのかな?
でも、俺ももう16歳になるいい大人。レディの扱いは心得たものです。
俺は静かに立ち上がるとチョコの隣に座り直します。
俺が腰を下ろすと、チョコの奴は腰を少し浮かせ距離をとります。
さてはコイツ、俺がイケメンだから異性を意識してしまっているんだな。かわいい奴だ。
だが、俺はあえてそのことを指摘しません。ここはそっと寄り添ってやるのが正解でしょう?スーパーひとし君を使うぐらい明白な男と女の甘い恋の推理ゲームだ
俺も腰を少し浮かせ、チョコの隣に座り直します。そうすると再びチョコも腰を浮かし、俺と距離を取ります。俺もすかさず後追います。
そんなこんなで俺とチョコの恋の駆け引きは、ついに座席の端までたどり着いてしまいました。
この俺から逃げられると思っているのか?俺は勝利を確信し、チョコの肩に手をかけようと抱き寄せようとします。
彼女も事ココに至って、ようやく観念したのか俺の方を振り返るとおもむろに立ち上がる。
あれ、なんで立ち上がるの?
伸ばした手をどうしたらいいんだ…って。ああ、もしかして服を脱ぐつもりか!?
…まいったな、彼女。俺のテクに相当参ってしまったらしい。こんな公共の場所で求めてくるだなんて、はしたない女だぜ、まったく。
いいぜ、来いよ!
幸いなことに、このシチュエーションのAVは視聴済みだ。
俺ったら、勉強家だからね。実践前の予習に抜かりはない。まずはつり革を使って拘束…
俺は脳内で勝利までの未来予想図を構築する。イケる!大丈夫だ。自分を信じろ
ビジョンが固まった俺はチョコを抱きすくめようと勢いよく立ち上がる。待たせたな。くらえ、俺の愛のタッチダウン…ってあれ?チョコの奴どこに行ったんだ?姿が見えないぞ?
あれ?もしかしてこれが噂の透明人間もの?女優側を透明にするとはなかなか斬新。
…くそ、どこにいるんだ。さっぱりわからない。
9割近くの人が濡れ場の予感を感じとり、ズボン脱いで待ってくださっているというのに、あんまり待たせたら悪いじゃないか。
…とりあえず、見つけた風を装って腰を振っておこうかな?
俺が読者サービスについて真剣に考えているこの瞬間。チョコの奴はなんと隣の車両に移動していたことがのちに判明する。
ざけんな!このアマ!!もっと大衆の目線で行動しろよ。民衆が何を求めているかなんて明白だろ。
しかし哀れこのときの俺はそのことに気が付くことができない。読者の期待に応えることで頭がいっぱいだったから。
俺は自らの手をつり革で拘束しながら、一人懸命に腰を振り続ける。孤独なスタンドプレイは目的地に決して止ることはなかった。