第10話 瑞樹と初詣 act 1
1月1日元旦
午前10時前、間宮はA駅前に向かっている。
ここで瑞樹と待ち合わせて、電車で初詣に行く事になっている為だ。
道中、元旦のこの時間だからか、着物姿で歩いている人を多く見かけた。
幼い頃と違い、店関連は殆どいつもと変わらずに営業している。
流石に慣れたが、昔はどこの店も閉まっていて、どこへ行っても静かな時間の流れを感じて、そんな空気が正月なんだと実感していたものだから、少しの違和感と寂しさがあった。
でも、着物姿の人達を見ると、正月気分がようやく湧いてきて、駅へ向かう足取りが少し早くなる。
盲腸の傷跡が少し痛むが、痛み止めのおかげで我慢出来ないレベルではない。
A駅前に到着すると、駅前の一角が少し騒がしい。
その様子を見た間宮は、少し顔が引きつった。
嫌な予感しかしない・・・
小さく溜息をついた間宮は、その一角を凝視しなくても状況がすぐに理解出来てしまった。
もう流石に慣れたが、新年早々めでたい日にまでやる事かと、もう一度溜息を吐きながら、騒がしい一角に足を向けた。
一角に近づくと、若い男が3人壁際にいる誰かを取り囲む様に立っていて、それぞれに何か話しかけている。
良く聞くと、何を話しかけても全く返答がないようで、男達は終始無視され続けいる事に、苛立っているように見えた。
嫌な予感が当たっていれば、恐らくその中心にいるのは・・・・
「悪い!待たせたか?」
間宮はわざと大きく声を張って、その集団に声をかけた。
その声を聞いて、囲む様に立っていた男達がこちらを振り向く。
周りの冷やかしで立ち止まっていた連中も、こちらに視線を向けているのが分かる。
男達が振り返った際、少し男と男の間が開いて、その隙間から淡いピンク色の振袖が見える。
間宮はそのまま向けられた視線を全て無視して、一人の男の肩を掴み、まるで扉を開けるみたいに、男を自分の方に引き寄せ開いた扉の中へ入るように、男達の間に割って入った。
「何だよ!てめえ!」
「邪魔すんな!」
強引に割り込んだ間宮に、男達の罵声が飛び交う。
そんな罵声をも完全に無視して、中心にいた人物を確認すると、そこには淡いピンクをベースにした晴れやかでいて、色とは対照的に落ち着いた柄の刺繍が施されている着物の上に黒を基調とした羽織と温かそうなショールを身に纏った瑞樹が立っていた。
その姿に間宮は思わず言葉を失ってしまった。
だが、瑞樹の様子がいつもと違う事に気が付く。
いつもならこんなナンパ男に対して、臆する事なく罵声を浴びせて追い払おうとしていた瑞樹なのだが、今日はギュッと口を閉ざして険しい表情で何かに耐えている様な表情をしていた。
「間宮さん!」
しかし、割り込んできたのが間宮だと気が付くと、固く閉ざしていた口を即座に開いて、間宮の名を呼び、慣れない着物をなびかせて間宮に近づき心の底から安心した顔を見せた。
「新年早々、みっともないナンパなんかしてんなよ!この子は俺の連れなんだ。だから他を当たってくれ。」
瑞樹の無事を確認した間宮は、男達に促す様にそう言った。
新年早々にトラブルを起こしたくない。男達の身を案じてではなく、そうゆう気持ちだった。
「は?知るかよ!」
男の一人がそう言い捨てて、間宮に言い寄ろうとしたが、すぐに男の視界が奪われた。
間宮がその男の顔鷲掴みしたからだ。
鷲掴みした手に力を込める。男の鼓膜にミシミシと嫌な音が響く。
「たっ!!い、イテェって!は、離せよ!!」
男が悲鳴に似た声を上げるが、間宮は構わず更に力を込める。
力を込めた瞬間、間宮の表情が苦悶の顔つきになり、左手を腹部に当てる。
腹筋に力を入れ過ぎて、患部に痛みが生じたのだ。
「新年早々、問題を起こしたくいないんだ・・・これで引いてくれるか?」
痛みを隠しながら、間宮が男にそう告げるとナンパ男は手を引くと諦めた様子を見せ、それを確認した間宮は鷲掴みしている手を解いた。
男は握り潰されそうになった箇所を押さえて、捨て台詞を吐きながらこの場から姿を消した。
騒動にならずに回避出来た事に安堵した間宮は、傍にいる瑞樹に目をやると、いたはずの場所に彼女がいない事に気が付く。
それと同時に患部に当てていた手の上に、柔らかい温もりを感じた。
患部に視線を落とすと、不安げな表情で間宮の手をそっと掴んでいる瑞樹がいた。
「ごめんなさい!手術の傷が痛むんだよね!?」
間宮なりに隠していたつもりだったが、瑞樹にはすぐにバレていたようだ。
「あ、いや!大丈夫だから気にするな。」
「大丈夫には見えないよ!それに・・・」
瑞樹はそこまで話すと、言い辛そうに話を続けた。
「盲腸の傷が痛むかもしれない事は分かってたのに、私の我儘で初詣に誘ったりしてごめんなさい。」
そう話す瑞樹は間宮の手を握る力を強めた。
瑞樹の中で葛藤があったのだろう。
だが、間宮にしてみれば無用な心配だった。
「謝る必要はないって!元々、医者からリハビリに歩け!歩け!って言われててさ。でも、目的もなく歩くのって性格的に向いてなくてサボってたんだよ。」
そう話すと、今にも泣き出しそうな顔をしていた瑞樹が間宮の顔を見上げるように顔を上げた。
「だから、誘ってくれて助かったんだよ。目的があれば歩くのは嫌いじゃないし。それに・・・」
「それに?」
瑞樹は首を傾げながら、話の続きを待った。
「瑞樹の可愛い着物姿が見れるんだ。一石二鳥どころか三鳥くらいあるじゃん!」
「ふ、ふぇ!?か、かわ・・・いい・・・・」
思わず変な声が出た。顔が急激に熱くなる。
こんな真冬に汗ばみそうだ・・・
全く、本当にこの人の天然トークは勘弁してほしい・・・
他意はないって分かってるつもりなのに、飛び跳ねて喜びたい気持ちを押し殺すのに四苦八苦する身にもなって欲しい!
爆発しそうな感情を、体を小刻みに震わせながら、必死に耐える瑞樹の姿を見て、間宮は首を傾げる。
実際お世辞は言っていない。
改めて見ると、浴衣姿の時も思ったが、彼女は何でも着こなす。
決して和風顔ではなく、どちらかとゆうと派手な顔の作りなのだが、不思議と和服を着ればそうゆう雰囲気を漂わせるのだ。
今、目の前にいるのは華やかな着物が似合う美少女とゆう評価で間違いはない。
「瑞樹は怪我はなかったか?」
悶々と考え込んでいた瑞樹に、間宮らしい笑顔を向けてそう聞いた。
「え?う、うん!大丈夫!」
「良かった!んじゃ、そろそろ神社に行こうか!」
そう言った間宮は、握られていた手を離して、自分の手の向きを変えて瑞樹の手を繋ぐ形をつくり、屈んでいる瑞樹をグイッと引き起こした。
そのまま改札まで手を繋いで歩いたのだが、瑞樹にとってもうおみくじなんて引かなくても大吉だと分かってしまった時間だった。
あ!そのまえに!
瑞樹は何かを思い出したように、引っ張られていた足を止める。
歩くのを止めた瑞樹に気付き、間宮も足を止めて振り向く。
「あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。」
そう新年の挨拶を言った瑞樹は、両手を前に組んで上体を前に倒す。
そういえば、着くなりあんな状態だったから、すっかり忘れていた。
「あけましておめでとう。こちらこそよろしくな。」
間宮もそう返すと、軽くお辞儀して笑顔を瑞樹に向けた。
お互い微笑みあって、再び駅へ歩を進めた。
電車へ乗り込み目的地の神社を目指す。
近づくにつれて乗客が増えていき、車内はかなりの圧迫感に襲われた。
乗った時から、空いているシートが無くて立っていた間宮達は、最初から奥のドア付近にいた為、乗客が増えてきても瑞樹を壁際に立たせて間宮が腕を立てて瑞樹の周りに空間を作る事が出来た。
間宮は瑞樹が押し潰されないように踏ん張っていると、腕の中にいる瑞樹は間宮の腹部に触れて、心配そうに傷がある辺りを見つめていた。
そんな自分を見つめる間宮の視線に気が付いた瑞樹は、そっと顔を上げて申し訳なさそうな表情を浮かべて、呟く様に話した。
「私も満員電車は慣れてるから、無理なんてしないで。」
瑞樹は間宮の患部を心配してそう言ったのだが、その言葉に間宮のスイッチが入る。
馬鹿言うなよ!正直痛みはあるけど、このくらいの事も出来ないなら初めから断ってるっての!意地でもこの空間は死守してやる。
そう心に誓った間宮は、まだ余裕がある左手で軽く瑞樹の頭をコツンと小突いた。
「バッカ!別にこの位どうってことないっての!余計な心配してないで、瑞樹は着物が汚れない様に、俺の腕の中からはみ出ない事だけ気を付けてればいいんだよ。」
軽く小突かれた頭に手を当てながら、そう言い切る間宮の笑顔を近距離で見ていると、心臓が飛び出そうになり勢いよく頷いてから、また患部へ目線を落とした。
ようやく目的地の駅に到着して、神社へ向かう。
履きなれない下駄を履いている瑞樹に、間宮は歩くスピードを合わせながら、周りを見渡していると、他の参拝者の視線が異様な動きを見せているのに気が付いた。
そんな視線が気になった間宮は、暫く周囲を注意深く観察する事にした。
勿論、瑞樹のエスコートをバッチリこなしながら、自分で自分に設定したミッションを遂行する。
まずは、男同士で参拝に来ている連中を観察すると、全員の足が止まり固まっているようだ。これはよく見た事がある光景だ。
その次が驚かされる光景だった。
それは、恋人と思しき男女の2人組だった。
彼女を連れて歩いているのに、彼氏は足を止めて魂が抜かれた表情でたち尽くしてしまっている。
彼氏の目線の先には、間宮の隣を歩いている瑞樹に向けられていた。
その彼氏の隣にいる彼女が脇腹に肘打ちを食らわせているのだ。
他のカップルも見てみると、彼氏は似たような状態に陥り、彼女は後頭部を引っ叩いたり、体の一部を抓ったりと様々な攻撃を仕掛けていた。
こんなの漫画やドラマでしか見た事がない。
こんな事ってリアルであったりするんだなと呆気にとられた。
そんな異様な視線を集めてしまっている張本人である瑞樹が、俺の隣で下駄が歩きにくいのかチョコンと俺のコートの袖を握りながら歩いているものだから、周りの男達からの鋭い殺気に満ちた視線が痛い・・・・
決して自分の彼女ではないのだが、悪い気がしないでもない。
参拝しようと本堂に向かったが、かなり長い行列を作っていた。
だが、縁起物だからと我慢して最前列に到着するまで我慢して、満を持して勢いよく賽銭箱にお賽銭を投げ入れて、2人同時に手を合わせる。
どうか隣にいる彼女の大学入試に合格させて下さい。
きっと瑞樹本人も同じ事をお願いしているだろうが、2人分だと御利益が2倍になる気がして、瑞樹の受験合格を心から祈った。
願い事が終わって合わせていた手をパンパンと二回叩くと、その音がダブって聞こえて思わず吹き出しそうになる。
行列から離れて少し空いたスペースまで移動した。
その間、相変わらず袖をちょこんと握って瑞樹がついてくる。
何だかその姿を見ると、こそばゆい感じがした。
「間宮さんは何をお願いしたの?」
月並みな質問を投げかけてくる瑞樹は、何故か真剣な表情だった。
「ん?世界平和的な?」
「・・・・・」
瑞樹は何も言わずに無言の圧力をかける。
「・・・こうゆうのって口に出すと、叶わないって言うだろ?」
「ん~~~~・・・なら聞かないよ!」
プイっとそっぽを向く瑞樹に間宮は首を傾げていると、掴まれていた袖が小刻みに引っ張られているのに気づく。
「ね!間宮さん!おみくじ引こうよ!」
「あ、あぁ!」
さっきまで拗ねるような顔をしていたはずの瑞樹が、もう無邪気な笑顔でおみくじの方に、間宮の袖を引っ張りながらそう言ってきた。
今日の瑞樹は猫のようにコロコロと表情を変える。
そんな瑞樹を見ていると、なんだか楽しくなってきた。
しかし・・・おみくじか・・・
定番と言えば定番なのだが、受験生である瑞樹がくじを引くとなると、ある種の心配事が発生する。
頼むぞ!神様!俺はどうでもいいから、瑞樹に凶だけは引かせないでくれよ!
心の中で切にそう願いながら、お互いのくじを引く。
引き当てた番号を巫女さんに告げて、おみくじを受け取る。
間宮は受け取った自分のおみくじを開かずに、隣にいる瑞樹のリアクションをチェックしていた。
「あ!やった!」
弾けるような瑞樹の声が耳に届く。
この声で凶は回避出来たと察した間宮は、ホッと胸を撫でおろした。
「間宮さん!見て!大吉だよ!」
引いたおみくじを間宮の目の前に開いて見せた瑞樹は満面の笑顔だった。
「お!やったじゃん!新年早々縁起がいいな!」
「えへへへ!」
子供の様に無邪気にはしゃぐ瑞樹を眺めながら、ようやく間宮も自分のおみくじを開いた。
結果は末吉だった。微妙だなと思ったが、書いてある内容を見ると思わずニヤける内容が書かれていた。
ー仕事運ー
新天地で成功の兆し有り
今の間宮にとって、一番嬉しい事が書かれていた。
大吉を引き当てた瑞樹は、おみくじの内容を一通り読むと、大事そうに財布へ仕舞い込んで、手に持っている間宮のおみくじを覗き込んできた。
「間宮さん末吉だったんだ。微妙だねぇ!あはは!」
「うるさいよ!ほっとけっての!」
そんなやり取りをしながら、間宮も自分のおみくじを財布に仕舞おうとすると、瑞樹が不思議そうな顔をした。
「あれ?おみくじって大吉以外は、あそこに結ぶんじゃなったっけ?」
通常ならそうなのだろうが、間宮は迷いなく財布に仕舞いこんだ。
「いいんだよ!このおみくじは手元に持っておきたいんだ。」
嬉しそうにそう言う間宮に首を傾げる瑞樹だったが、神社に入ってからずっと漂っていた、いい匂いに意識を奪われて、出店の方を指さした。
「ね!お参りも済んだし、何か食べようよ!」
瑞樹の目は完全に出店をロックオンしている。
「あぁ、そうだな・・・っとその前にちょっとトイレ行ってくるから、ここで待っててくれ。」
「うん!わかった!」
そう言って間宮は瑞樹から離れた。
正直、着物姿の瑞樹の破壊力は相当なものだが、出店周りではなく境内なら流石にナンパはないだろうと考えて、この場を離れた。
暫くして瑞樹の元へ戻ると、相変わらず周りから注目を浴びてはいたが、声をかけられた様子はなく、安堵しながら瑞樹の傍に駆け寄った。
「悪い!待たせたな!」
「おそーい!もうお腹ペコペコだよ!」
ぷくっと頬を膨らませて、抗議する瑞樹の手をそっと握った。
「へ?え?え?」
いきなりの事で瑞樹の思考は混乱する。
そんな事お構いなしに、そのまま瑞樹の手を引いて出店の方へ歩き出す間宮の顔も少し赤らんでいた。
境内を離れて出店が犇めく通りへ到着すると、来た時より遥かに人混みが増していた。
「逸れないように手を離すなよ。」
間宮はそう言って、握っていた瑞樹の手に力を込めた。
「あ、あはは・・・そうゆう事か・・・」
「ん?どうかしたか?」
寂しそうな顔をした瑞樹を覗き込む様にして、間宮はそう聞くと慌てて出店の方を見て笑った。
「なんでもない!それじゃ!まずは定番のたこ焼きからだよ!」
「その恰好でたこ焼きなんて食べたら、汚すんじゃないか?」
「子供扱いしないでよ!」
瑞樹はまたプクッと膨れて見せて、タコ焼きの出店まで間宮の手を引いて歩き出した。
手を引かれて苦笑いしながら、間宮も大人しく瑞樹についていく。
「6個入りを一船下さい!」
瑞樹が元気にたこ焼きを注文すると、タコ焼き屋の従業員の手が止まる。
「おぉ!お姉さん!超ベッピンだねぇ!彼氏が羨ましいわ!」
「え?か、彼氏!?・・・えっと、いや・・・」
「あはは!ありがとう!」
間宮を彼氏と間違えられて、慌てて訂正しようとしたが、隣にいた間宮が彼氏ではないと否定しなかった為、口を閉ざして俯いた。
「ほい!羨ましいけど、良いもの見せて貰ったから。8個入りにしとくよ!サービスだ!」
そう言った従業員に間宮が、6個入りの代金を支払って、出来立てのたこ焼きを受け取った。
「ありがとう!」
そう間宮が元気に礼をいったが、瑞樹は俯いたまま小声でボソボソと話すだけだった。
2人は早速、熱いうちに食べようと、出店の通りを少し外れた所にあるベンチに腰掛けてたこ焼きを広げた。
だが、一番食べたがっていた瑞樹がまだモジモジしていて落ち着きがない。
「どうした?たこ焼き食べたかったんだろ?」
「・・・・だって・・・・間宮さんが・・・」
瑞樹の顔がドンドンと赤くなり、ボソボソと小声で何か話しているが、声が小さくて良く聞き取れなかった。
「え?なに?」
そう間宮が聞き直すと、瑞樹は意を決した顔を見せて口を大きく開いた。
「だから!間宮さんが私の事を彼女じゃないって否定しなかったからじゃん!」
瑞樹自身は自覚していないようだが、彼女は声を張るとかなり通る声質なのだ。
だから、当然のようにその言葉が周囲の人間にもキッチリと届いてしまった。
こうなると、今度は俺が恥ずかしい思いでいっぱいになる。
周りをチラリと見渡すと、案の定、男共は嫉妬に満ちた目を向けて、女共はまるでドラマのワンシーンに立ち会ったかのようにキャーキャーと騒ぎ出すし、カップルの彼氏達は指を口元に当てて、羨ましそうに眺めている。
地雷を踏んだ事に気が付くのが遅かった。
いい年してこの羞恥は中々恥ずかしいものだ。
「わ、分かった!否定して欲しかったんだよな!悪かったよ・・・」
そんな関係ではないのに、否定しなかった事が気に障ったと思い、平謝りをして瑞樹を落ち着かせようとしたのだが・・・・
「謝るなら初めからそんな事しないでよ!」
そう言い放った瑞樹はベンチから立ち上がって、出店の通りに走り去った。