第22話 Xmas live
「さぁ!納得出来る説明をしてもらうから!」
優希と深夜ドライブをして翌日の朝、間宮の部屋にはピリピリとした緊張感が漂っていた。
未明から拡散されだした一枚の画像だ。
その画像は間宮のマンション前で、神楽優希が男にビンタしている画像だった。
引っぱたかれている男の顔が隠れるアングルから撮影された物で、叩かれている男が誰なのかは非常に分かりづらい画像だった為、優希が白状しない限りマスコミが押し寄せる事がないのは不幸中の幸いといったところだろう。
だが、分かりづらいのであって完全に誰なのか分からない画像ではない。
近しい人間なら気が付く事が可能なアングルだった。
茜はすぐに優希に問いただしたが、相手の正体が誰なのか口を割る事がなかった。
だが茜が優希に問いただしたのは、あくまで確認する事が目的で初めから画像を見て良介だと気が付いていた。
そこで次に間宮を電話で叩き起こして、そのままマンションへ殴り込む様に訪れて今に至る。
間宮は茜に説明を求められて、少し考えを纏める為に沈黙していると、茜の視線は当たり前の様にソファーに座っている間宮の隣にいる康介に移った。
「てか、何でアンタがここにおるん?康介。」
「いや、俺は・・・」
康介は契約の事や準備の為に、一時上京している事を説明した。
その説明を聞いた茜は、康介に芸能関係者を身内にもっている義務として、ここで聞いた事は絶対に他言無用でときつく釘をさした。
「それで?茜は何が知りたいんや?」
2人がそんなやり取りをしている最中に、間宮がそう口を挟んできた。
「そんなん決まってるやん!良兄と優希の関係が知りたいねん。」
だよな。と予想通りの返答が返ってきて、間宮は康介と茜の顔を見渡してから、自分達の関係を話す事を決めた。
本当は誰にも話すつもりはなかった。話してしまってどこからかその事実が漏れて、広まってしまうと迷惑をかけてしまう人間が存在するからだ。
だが、こうなってしまったら優希のマネージャーである茜に説明しないわけにはいかないと観念した。
「彼女は俺の元婚約者、香坂優香の妹なんだ。」
「は?」「へ?」
間宮が優希との関係を告げると、2人は間抜けな声を漏らした。
その後、固まって動かない2人に間宮は溜息交じりで話を続けた。
「と言っても、その事を知ったのはごく最近なんやけどな・・・」
間宮は何も発する事をしない2人に、文化祭で出会い、優香の墓の前で再会した優希からその事を告げられた事を簡単に話して聞かせた。
「そ、そんな事ってあるの?確かに言われてみれば優希の本当の性は香坂やけど・・・」
2人の頭の片隅にも、この真実の可能性はなかったのだろう・・・
だから、間宮から真相を告げられてもまだ半信半疑の様子だった。
間宮本人だって、優希の姿に優香を感じなければ俄かにも信じ難い事実なのだから、2人のリアクションは当然といえば当然だ。
「そういえば、必要に良兄の番号を知りたがっていたけど、優希は文化祭の時から気が付いてたって事?・・・」
「あぁ、俺は墓で会った時に気が付いたんやけどな。」
ようやく話が出来るようになった茜と、ここまでの経緯の擦り合わせをしていると、まだ夢心地の様子の康介がポツポツと口を動かしだした。
「じ、じゃ、なに?優香さんが亡くなっていなかったら、神楽優希は俺達の身内になってたって事か?そ、そんな漫画みたいな事ってあるんか?」
「俺も初めて聞かされた時、同じ事考えたわ。」
こんな嘘臭い嘘をつく理由など見つからない。
兄の言う事は本当の事なのだろう。
だが、今気にしないといけないのはそこではない。
「それで、その優希に何で良兄は引っぱたかれてたん?」
茜はこの画像そのものの事実の説明を求めた。
「どうやら彼女は、自分の両親と俺の関係を修復したいみたいでな。で、その事を話の流れで俺がお義父さんを馬鹿にしたって捉えられたみたいでな・・・」
「それで引っぱたかれたんか・・・」
茜は状況を理解した顔つきでそう言うと、間宮は無言で頷いた。
「それじゃ、恋愛での揉め事とかじゃないんやね?」
「あぁ!そんな事じゃない!これは断言できる。」
「そっか・・・分かった。」
納得したような顔をして茜はソファーから立ち上がった。
その時、初めて聞いたのだが、現在、茜の事務所はその画像についての問い合わせや抗議の電話が鳴りっぱなしなのだと言う。
その話を聞いて、間宮と康介は神楽優香がどれだけ日本国内に影響力がある人物なのかを痛感した。
茜の事務所の対応としては、知らぬ存ぜぬを貫いていく方針らしく、今後直接的に優希と接触しないように警告された。
「そんな事警告しなくても、もう会う気はないし、あいつも会いたくないと思うけどな・・・」
「えッ!?もう会わへんのか?神楽優希なんやで?」
会うつもりはないと断言した間宮に、康介は理解出来ない様子だった。
「あぁ、正直あいつといると優香とダブる事が多くて辛いねん・・・」
間宮は2人に本音を話した。
そう、辛いのだ。優希といると本当に優香と一緒にいる様な錯覚に陥る時がある。正直、気を緩めると抱きしめそうになる自分が怖いとさえ思っていた。
「ま!関わる気がないのは助かるわ。それじゃ、そろそろ優希を迎えに行く時間やから。」
茜は間宮の本心に触れて安心したのか、ここへ来た時を比べて表情を柔らかくして、間宮の部屋を出ようとする。
玄関手前まで来た時、見送る為に後ろからついてきた康介に、再度警告しようと足を止めた。
「ええか!康介!絶対ここでの話は誰にもするなよ!オトンやオカンにもやで!」
「分かってるって!そんな事して茜がクビにでもなっても、責任なんかとれんのやしな・・・」
「わかってればいい!てか何でアンタは私の事だけ呼び捨てにするねん!」
「まぁ、それは別にええやんけ!ほら!仕事なんやろ?」
細かい事言ってる暇があったら、早く仕事に向かえと言わんばかりに、手をシッシと払うような仕草で見送る康介に、茜は顔を引きつらせて何も言わずに間宮の部屋を後にした。
しかしこの騒動が原因で、予想外の事が起こる事をこの時の間宮は知る由もなかった。
翌週からまた、激務に奮闘する日が続いて、何とかライブ当日に一日休みを確保する事が出来た。
ライブ前日の23日夜、間宮がクタクタになりながら自宅へ向かっていた。
疲れはピークに達していたが、いつもの疲れとは違う違和感を感じながらも、瑞樹との約束が果たせる事に安堵していた。
A駅まで戻ってきた間宮は、スマホを取り出して瑞樹にライブへ行けるとlineでメッセを送る。
そのメッセにすぐに既読が付いて、即返信が返ってきた。
このレスポンスの良さにはいつも驚かされる。
lineで送ってくる内容も至っていつもの調子で、どうやら瑞樹達はあの画像を見ていないか、優希と一緒に写っている相手が自分だと気が付いていない様子で、間宮は安堵して胸を撫でおろした。
その後、集合時間と場所をlineで確認してスマホをポケットに戻し自宅へ帰宅した。
帰宅してすぐに冷えた体を温める為に風呂へ直行して、温まったリビングで冷えたビールを喉に流し込んで一息つくと、テーブルに置いていたスマホが点滅しているのに気が付いた。
スマホを確認すると、また瑞樹からlineが届いていて、電話してもいいかとゆう内容だった。間宮はすぐにOKの返信を送ると既読が付いた直後に電話がかかってきた。
ーもしもしー
「もしもし」
ーお仕事お疲れ様。疲れてる時にごめんねー
「いや、大丈夫!で?どうしたんだ?」
ーうん、あのね、明日のライブが終わった後って何か予定あったりする?ー
「いや、帰って飯食って風呂入って寝るだけだけど?」
ーあはは、それじゃさ、そのご飯なんだけど、皆で結衣の家でクリパしようって事になってるんだけど、間宮さんもよかったらどうかなって思って-
「へえ、神山のとこでクリパか・・・でも遅くにそんな大勢押しかけて大丈夫なのか?」
ー結衣の家凄く大きくて、離れがお爺ちゃんの家なんだけど、今は病院で入院中らしくて好きに使っていいんだって。-
「そうなんだ。それじゃ、俺もお邪魔じゃなかったら参加させてもらおうかな。」
ーお邪魔なわけないじゃん!それじゃ、間宮さんも参加で話し進めておくねー
「あぁ、よろしく!」
ー了解です!それじゃ、また明日ね!おやすみ、間宮さん-
「また明日な、おやすみ。」
電話を切ると間宮は少し溜息をついた。
正直、このところの激務で体調的にはあまり良くはないから、ライブが終わったら解散の流れが理想だった。でもこの間の瑞樹主催のホームパーティーに参加できなかった罪悪感があった為、クリパは埋め合わせの意味で了承した。
これは少しでも睡眠を多くとって疲れを取らないとと、飲みかけのビールを飲み干して、あまり食欲がなく気分的に違和感がとれていなかった為、食事もそこそこで切り上げ、すぐに眠る事にした。
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ライブ当日、24日クリスマスイブ
集合場所は神山の自宅で、各々がクリパに使う食材やグッズを持ち寄り、その荷物を神山の自宅へ預けてライブ会場に向かう事になっていた。
既に冬休みに入っている瑞樹達は、時間通りに集まり荷物を冷蔵庫に移す作業に取り掛かっていた。
特に神楽の大ファンな神山のテンションは凄くて、ライブが始まる前に電池が切れてしまうのではないかと心配になるほどだった。
久しぶりに受験の事を忘れて仲間達とのイベント。しかもそれが神楽優希のプレミアムライブともなればテンションが上がらないなんてあり得ない事だった。そんな積み込み作業が一段落したところで、瑞樹のスマホが鳴った。
通知音でlineのメッセだと分かった瑞樹は、作業片手にメッセをチェックすると、急に作業の手が止まった。
様子が変だと気が付いた加藤が声をかける。
「志乃?どうした?」
その声かけに周りにいた全員が志乃の方を見る。
「・・・間宮さんが風邪ひいたらしくて、受験生の私達にうつしたら大変だから、今日は来れないって・・・」
「えぇ!!!????間宮さん来れないの!?」
「てか風邪なんて気にしなくていいのに!」
周りが風邪でこれなくなった間宮の事で、さっきまでとは違う意味で騒がしくなる中、瑞樹は辛そうな表情を浮かべていた。
そんな瑞樹の横顔を見て、妹の希は姉の志乃の背中にそっと手を置いた。
「お姉ちゃん!皆こう言ってるんだし、もう一度来れないか聞いてみたら?」
何とか姉に元気を取り戻してほしくて、希はそう志乃に提案した。
「ううん・・・間宮さんって周りに気を使ってばかりの人だから、そう言って誘っても絶対に来てくれないよ・・・」
そう呟くように言うと、間宮の性格を大体知っている、他のメンバーも変に納得して押し黙ってしまった。
そこで変な空気にしてしまった事に気が付いた瑞樹は、慌てて仕方がないと話して、荷物の整理に取り掛かった。
そんな彼女を見て、他のメンバーも作業を再開する。
瑞樹の沈んだ表情は、間宮が来れなくなった事にショックを受けたからではない。
本当の理由は、自分が必ず一緒にライブに行こうと我儘を言って、その為の時間を作る為に仕事を切り詰めさせてしまい、疲労で体調を崩させてしまった自分に対して腹がたったからだ。
lineの内容では大した風邪ではないと書いてあったが、そのlineそのものに瑞樹は疑問を抱いていた。
それは、間宮の性格ならこんな急にキャンセルするのなら、lineでのメッセージではなく、直接電話をかけてくる性格だと知っているから腑に落ちなかった。
つまりそれは、電話で話せない程の風邪なのではないかと疑っているのだ。
その証拠に、キャンセルのメッセージに対して、お大事にと送ったlineに対して既読が付かない事がその疑いをより深いものにしていた。
だが、折角受検勉強を忘れて楽しむ日に、これ以上周りに気を使わせまいと気丈に振る舞い、クリパの準備を整えてライブ会場へ向かった。
会場へ到着すると、大ファンの神山は物販ブースへ直行して、大行列に並び貯めていたお小遣いを全部使う勢いで、グッズを買い漁る姿に若干引きつつも、他のメンバーも折角だからと記念にライブ中にも使えるスポーツタオルを購入して会場に入り、指定された席へ向かう。
席へ到着すると改めてもの凄いチケットを貰ったのだと実感させられる光景だった。
目の前がすぐステージで、まだ神楽本人が登場したわけではないが、目の前に彼女が立っている姿が容易に想像出来る席で、そんな場所に苦労せずに立っている事実が、周りの客は必死にチケットを手に入れようと努力して、このライブに来ている事に、何だか申し訳ないとゆう罪悪感と、この場にいる優越感が入り交じる複雑な気持ちになった。
そんな事を考えていると、大きな音が鳴り響き派手な演出で神楽優希がステージに姿を現して、ついにクリスマスプレミアムライブが始まった。
ライブは圧巻そのものだった。
曲は有名で全て知っている曲だったが、やはりライブは全然違った。
迫力と音響が段違い、この一体感こそがライブの醍醐味で、皆がチケットを必死に手に入れようとする訳が身に染みて分かった気がする。
特に神楽はライブに拘ってきたアーティストだ。
演出、会場にいる客の引き込み方が非常に上手く、引っ込み思案の瑞樹でさえライブ中盤には周りを同じようにライブを楽しんでいた。
希は別として加藤と佐竹も同様に普段の受験勉強のストレスを思い切り発散させるように弾けていて、特に大ファンの神山に至ってはもはや狂喜乱舞と言う言葉がピタリと当てはまる暴れ方だった。そしてライブの終盤に差し掛かり何度目かのMCが始まる。これまでのMCは熱い思いを皆に伝えたり、笑いをとるような内容で楽しめたのだが、今回のMCに入った時の神楽の表情に少し影が見えた気がした。
マイクスタンドからマイクを引き離して、ステージ中央に立ちマイクを口元へ運ぶ。
「えっと、今から話す事は事務所からNG出されてる事なんだけど、やっぱり皆に何も話さないまま有耶無耶にするのは違うかなって思うから、少し時間もらうね。」
あの馬鹿!!
ステージ裏のモニターが設置している休憩スペースでライブの様子をチェックしていた茜の顔色が変わった。
しかし止めようにもライブ中にそんな事が出来るはずもない。
これは優希の確信犯だ。そう気が付いた時はもうすでに遅かった。
「ここにいる皆も見た人がいると思うんだけど、私が男の人を引っ叩いてる画像の事なんだけど・・・」
瑞樹達は誰もその画像を見ていなかった為、お互い顔を合わせながら顔を傾げた。
「写っている男の人は、実は6年前に事故で亡くなった姉の元婚約者なんだよね。」
優希の告白に会場が騒めく。その会場の反応をステージ脇に移動した茜や、関係者達が不安な顔つきで見つめる中、優希は話を続けた。
「その人とは最近、某イベントで偶然に出会ってから、姉の事について会ったりする事が出来て、丁度この画像の時もその事で少し言い合いになって、思わず彼を叩いちゃったんだ・・・」
「そうゆうわけなんだけど、まさか撮られているなんて思ってなくて・・・騒がせてしまって、すみませんでした。」
そう言った優希はマイクスタンドから一歩後退して、深々と頭を下げて世間を騒がせてしまった事を謝罪した。
そこまで説明を終えると、会場からその画像を見た客達が、彼氏じゃないの?とか恋愛の縺れじゃないの?とか恋愛関係ではないのかと声が上がる。
その質問を受けた優希は、少し苦笑いを浮かべながら再びマイクを握って前を向いた。
「違うよ!私と彼はそんな関係じゃない。でもあの不幸がなければ義理のお兄ちゃんになってるハズだった人だから、気を許している存在ではあるけど、本当にそんな関係じゃないの・・・・でもね・・・」
でもねと続けた瞬間、場内が気味が悪い程、会場が静まり返って優希の言葉の続きを待つ空気が流れた。
「でもね!もし彼とそんな関係であったとしても、私は隠す事なんてしなかったよ。だってさ!私はアイドルをやっているつもりは全くないから!私は、私が作った曲を皆共感して大きな一体感を生みたくて、プロのアーティストやってるんだもん!だから、ステージを降りた私は、皆と同じ1人の普通の女なの。好きな人が出来たら付き合いたいって思うし、付き合えたらその人と触れたいって思う。」
そこまで話しても依然会場は静かなままだ。ただ、先ほどと違うのは優希の激白によって驚いて口が動かない客が多数存在していた事だろう。
「私は決して特別なんかじゃない。私だって普通の女なんだ!皆とどこも変わらない人間なんだよ・・・・・こんな私でよかったらこれからもついてきて!」
そう宣言すると、共感したファン達は一斉に歓声を上げて、さっきまで静まり返った会場とは思えない程、ボルテージが一気に高まった。
最前列で聞いていた瑞樹達も、大いに共感を受けて歓声の渦に溶け込むように騒いだ。
「ラスト、いくよ!!しっかりついてこい!!」
その合図と共に、照明が変わりサウンドが大音量で響き渡たり、最後まで萎む事なく大盛況に仲、一夜限りのクリスマスライブは終わった。
ライブ会場から次々と客達が出てくる。その流れの中に瑞樹達も紛れて出てきたが、外に出てから少し流れから外れたところでメンバーと集合した。
集まったライブ参加メンバーは各々にライブの感想を口にしてまだ冷めないライブの余韻に浸っていた。
勿論、瑞樹も神楽優香のライブに興奮したし、あのMCには感動さえ覚えていた。このライブに参加出来て本当に良かったと思っている。
でも・・・・それ以上に・・・・
「お姉ちゃんはこの後のクリパは不参加でいいよね?」
「え?」
皆の輪から少し外れてライブの事ではない事を考えていた瑞樹の背中をポンと触れて、妹の希にそう告げられた。
「え?なんで?」
慌てて希に振り向くと、その後方にいた加藤が二カっと笑みを浮かべながら、希の言った事を肯定する発言を始めた。
「だね!寧ろ、ライブまで付き合ってくれた事が驚きだったもんね!」
「ほんとそれね!」
加藤の話を肯定しながら瑞樹の周りに近づいた神山も笑顔で頷く。
気を使わせないように振舞っていたつもりだったが、信頼する仲間達には見抜かれていた。
本当はライブも全部投げ出して、間宮の元へ行きたかった事を・・・
「ご、ごめん・・・折角の皆でクリスマスを過ごす日なのに、こんな我儘を言って・・・・・本当にごめんなさい。」
本音を隠し切れないと悟った瑞樹は、間宮が心配な事を隠すのを止めて、深く頭を下げて皆に謝罪した。
「大袈裟だって!お姉ちゃん!私達の事は気にしなくていいから、間宮さんの所へ行って!」
希が瑞樹の背中を押しながらそう言った時、瑞樹は周りにいる加藤達を見渡すと、皆優しい笑顔を向けて頷いてくれていた。
改めて、本当にいい仲間達が自分の周りにいてくれた事を実感した。
そして、この繋がりを得る為に自分を変えてくれた間宮の顔が更に見たくなった瑞樹は、「ほんとごめんね!」ともう一度頭を下げてから、駅へ走り出した。
「いってらっしゃ~い!」
「頑張れよ!志乃!!」
と背中からエールが聞こえる。
そんなエールが照れ臭くなり、瑞樹は希達の方を振り返らずに走り去った。