第18話 Cultural festival act10~祭りの終わり・・・そして・・~
「お前達の様子を見てて驚いたんだが、神山って何か格闘技やってるのか?」
加藤達へのお説教タイムが終了して、そのまま談笑していると間宮が、神山が使っていた格闘技に興味を示した。
「そうそう!私も気になってたんだよ!あの時は超緊急事態だったから、聞けなかったんだけどさ!」
加藤も間宮の質問に同意見のようだ。希もコクコクと首を縦に振っていた。
「あぁ!あれは神山家代々伝わる古武術なんだよ。お爺ちゃんに子供の頃から稽古つけてもらってたんだ。」
「古武術!?何か凄いですね!!」
希が羨望の眼差しで神山を見つめる。
「古武術か!どうりで見たこともない構えだと思ったよ。神山の攻撃を見て介入する必要はないと思ったんだ。」
「ありがとうです!でも、お父さんが継がないでコックになっちゃったので、お爺ちゃんの代で途絶えちゃうんですよね。」
間宮の関心に対して、神山は少し寂しそうな表情を浮べた。
「ええ!?もったいないじゃん!結衣が継いだりしないの?あんなに格好良かったのにさ!」
「そうしたい気持ちはあるんだけど、この古武術は代々男が継ぐ事が習わしになっているんだ。だから仮にお父さんが継いでいたとしても、お父さんの代で潰えちゃう事になるから、少し途絶えるのが早まっただけなんだよ。」
加藤の継承話をそう言って否定した。
「でも、美容と健康の為に続けてきた古武術が、まさか大切な仲間を助ける為に役立つなんてね!やってて良かったってマジで思ったよ!」
神山はそう言って、嬉しそうな笑顔を向けた。
「美容と健康の為ですか・・・・ね!結衣さん!今度私にもその古武術の稽古つけてもらえませんか?」
「あ!希ズルい!私も教えてよ!結衣!」
「あはは!いいよ!じゃあ今度お爺ちゃんの道場に招待するね。」
そんな話で盛り上がっている3人を優しい表情で見つめる間宮を見て
「やっぱり、今の間宮さんが、本当の間宮さんって感じがしますよ。」
そう佐竹は関心深げに言った。
「本当の俺・・・・・ね・・・」
そう呟いた間宮は、一瞬だけ寂しそうな表情を見せた時、スマホが震え表情を戻して電話にでた。
「もしも~し!あれから首尾良くいったのかな?」
「あぁ!おかげさまでな!悪かったな、面倒な事頼んじまって。」
「今度美味しいお酒をご馳走になるからいいよ!それに志乃ちゃんいい子だし、何か青春ドラマって感じでワクワクしたしね!」
「遠き過去の思い出ってやつだな。」
「もっと遠い過去の思い出になってる良兄に言われたくないけどね!
「うるさいよ!」
「あはは!あっ!そうそう!良兄達ってまだ学校内にいるの?」
「ん?大体はいてるけど、瑞樹達3-Aの連中は打ち上げに行ったみたいだけどな。」
「そっか!まぁいっか!んじゃ残ってる皆で楽屋に来てくれない?優希にさっきの事を話したら、何か感動したみたいで直接渡したい物があるらしいのよ。」
「神楽優希が俺達に?わかった、今から向かうよ。」
そう言って電話を切った途端、聞き耳をたてていた神山が、物凄い勢いで間宮に詰め寄った。
「え?今!神楽優希がどうとか言ってなかった!?間宮さん!」
鼻息荒く迫られた間宮は、その迫力に圧倒されながら、
「あ、あぁ!何か神楽優希が俺達に直接渡したい物があるから、今から楽屋に来れないかって言ってたんだけど・・・」
「えぇ!?!?か、神楽優希が私達に!?」
「う・・・うん・・・」
「行きましょう!今すぐ行きましょう!」
そう言って1人で突っ走りたい気持ちを必死で抑えながら、すぐに行こうと催促するので、皆、神山の迫力に圧倒されて楽屋に向かう事にした。
コンコン!
楽屋に到着してドアをノックすると、部屋の中から茜が出てきた。
「いらっしゃい!どうぞ!」
部屋の中へ招かれて、5人は中へ入っていこうとした時に、また間宮のスマホが震えて、モニターを確認したら、顧客からの電話だった為、加藤達を先に入らせて、間宮は楽屋の前で電話にでた。
「いらっしゃい!はじめまして!神楽優希です!」
ニッコリと笑顔を向けて加藤達に挨拶した神楽に対して、一目散に前に出て
「は、はじめまして!私、神楽さんの大ファンでお会いできて光栄です!」
あまりにも興奮し過ぎて、自分の名前を名乗るのが飛んでしまった挨拶をする神山だった。加藤達も順番に挨拶を済ませると、神楽が4人の前に立った。
「さっき友達を助ける為に、皆が体をはった話をそこのマネージャーから聞いたの!もう!熱い友情って感じで興奮したわ!」
身振り手振りでこの興奮を伝えようとする神楽に、4人はバツの悪い表情になった。そんな4人の変化に気付いた神楽は、首を傾げた。
「ん?どうしたの?皆。」
神楽にそう言われた4人は、お互い顔を見合わせてから、
「いや、その事で今、外で電話してる間宮さんって人に叱られたばかりだったので・・・」
「叱られた?どうして?」
叱られる意味が解らないと訴える様に加藤達に質問した。
「無茶をして取り返しのつかない事態になってしまった時、助けようとした友達の気持ちを考えたのかって叱られたんです・・・」
加藤は指で頬を掻いて、苦笑いしながらそう答えた。
「フフフ・・・兄の言いそうな事ですね。」
入口付近の壁にもたれ腕を組んで、神楽達の話を聞いていた茜が、会話に割って入ってそう言った。
兄!?その台詞が引っかかり、4人は一斉に茜の方を振り返った。
「兄ってまさか、神楽さんのマネージャーさんの・・・・」
神山はそう言いながら、外にいる間宮の方を指さした。
「ええ、そうよ!はじめまして!間宮の妹の茜です。よろしくね。」
ええええええぇぇぇぇぇーーーーーー!?!?!?
それを聞いた加藤達は心底驚いたようだった。そのリアクションが面白かったのか、茜はクスクスと笑った。
「間宮さんの妹が、神楽優希のマネージャー!?う、嘘でしょ!?」
神山は興奮を通り越して、唖然と立ち尽くした。
「そっか!だから間宮さんに連絡がきたんだね。」
希は納得して頷いた。そんなやり取りを暫く眺めていた神楽が一番端にいた佐竹の前に立ち、
「もうちょい先なんだけど、12月にXmasライブをやるんだ。今回友達を助ける為にライブに参加出来なかったって聞いたから、よかったらこれどうぞ!」
そう言って佐竹に手に持っていたチケットを差し出した。
「え?ええ!?Xmasライブのチケット貰えるんですか?」
佐竹の驚きの声にいち早く反応した神山は、差し出していたチケットを覗き込んだ。
「こ、このライブチケットって私が必死にスマホとPCの2機がけで手に入れようとして、惨敗した激プレミアチケットじゃん!ちょっと!佐竹君!このチケット頂戴よ!お願いだから!」
そう言って強引に奪い去る勢いで佐竹に詰め寄った。そんな神山を見て神楽は笑った。
「あははは!大丈夫だよ!ここに来た人数分のチケット用意してあるから安心して!」
神山は即反応して神楽を、まるで神様を見ているような眼差しで見つめた。
「ほ、本当ですか!?私も頂けるんですか!?」
「うん!もちろんだよ!本当はクラスの皆も招待したかったんだけど、招待用のチケットそんな枚数なかったんだ。」
神楽から差し出されたチケットを、震える手で受け取った。
「い、いえ!あ、ありがとうございます!絶対ライブ行くので、楽しみにしてます!」
「凄く応援してくれてるんだ!でもそれだけ楽しみにしていたライブを、友達を助ける為にスッパリと捨てて、駆けつけた君は優しい子なんだね。間宮さんのお兄さんの言う事ももっともだとは思うけど、私はやっぱり感動しちゃったよ!かっこいいじゃん!!」
神楽は親指を立て白い歯を見せて、神山達の行動を称えた。
「ありがとうございます!間宮さんには怒られましたけどね・・・あははは」
後頭部を掻きながら苦笑いでそう応えた。
そのまま神楽は加藤、希にチケットを渡し、手元に2枚残ったところで、ようやく電話を終えた間宮が楽屋に入ってきた。
「遅い!良兄!いつまで電話してるのよ!」
入口で待ち構えていた茜が、長電話に文句を言って間宮を迎えた。
「取引先からだったんだから、仕方が無いだろ!」
兄妹で軽口を叩いていると、周りの視線に気が付いて茜は恥ずかしそうに、黙り込んだ。
「間宮さん!神楽さんが12月にあるライブのチケットをプレゼントしてくれたんだよ!皆で行こうね!」
加藤が嬉しそうに貰ったチケットを、間宮に向けてはしゃいでいた。
間宮は神楽の側まで移動して、軽く会釈をしながら挨拶を始めた。
「気を使わせてしまってすみません。妹がいつもお世話になっています。兄のま・・・・み・・・」
「はじめまして!神楽優希です。こちらこそ、妹さんにはお世話になっています。あ!チケットよかったらどうぞ。瑞樹さんの分も一緒に渡しておきますね。」
神楽はそう言って間宮にチケットを手渡そうとした時、間宮の異変に気が付いた。
「ん?どうかしましたか?」
神楽が、間宮にそう声をかけると、加藤達も間宮に視線を向けた。
間宮はまるで憑き物でも見ているような表情で、神楽を見つめて硬直している。
「ゆ・・・・・う・・・・・か・・・・」
神楽の事をそう呼ぶと、眉が少しピクッと反応した。
固まって手を出して受け取ってくれないので、隣にいる加藤に間宮と瑞樹の分のチケットを預けて、襟元に刺していたサングラスをかけて、また間宮に視線を戻した。
「今の私を見て、そんなリアクションをとって、私をそう呼ぶ人の心当たりは、一人しかいないかな・・・・」
間宮にそう言うとゆうより、自分に呟く感じでそう言って、茜に視線で合図を送り、立ち尽くす間宮の横を歩いて出口に向かっていく。
「それじゃ!私達はこれで失礼します!お疲れ様でした!またライブ会場で会おうね!」
手を軽く振り笑顔を加藤達に向けて挨拶を済ませた。
「こちらこそありがとうございました!Xmasライブ楽しみにしてますね!」
加藤達がそう礼を述べると、ニッコリと笑顔で応えてから、間宮の後ろに近づいて、小声で呼びかけた。
「またね!良ちゃん!」
「・・・・・・・・・・・!!!!」
神楽にそう呼ばれて、一瞬思考が停止した。心臓が飛び出すかと思う程の衝撃だった。目を大きく見開いて停止した思考を、無理やり呼び戻してすぐに神楽がいる方へ振り向いたが、神楽と茜はもう部屋から出て行った後だった。
追いかけようとしたが、何故か足が動かない。体が金縛りにあったように神楽を追いかける事が出来なかった。
有り得ない・・・そんなはずはない・・・・でもあの子はどう見たって・・・・いや!人違いのはずだ・・・だって・・・あいつは・・・
「お~~い!間宮さん!どうしたの!?お~~い!!」
頭の中で自問自答を繰り返していると、加藤が心配そうに呼びかけてきた。
「あ、あぁ!ごめん!なんでもないから・・・」
「そう?それならいいんだけどさ!じゃあ私達も帰ろうか!」
加藤がそう言い出して、部屋を出て正門を潜って外に出た。
5人はいい時間になっていたので、駅前のファミレスで夕食を済ませて、そこで解散する事になり長い、長い一日がようやく終わりを告げた。瑞樹のガードを頼まれてから、色んな事があった日だったが、皆大した怪我もなくて本当によかったなと、はしゃいで電車に乗り込む加藤達を見て安堵した。
皆電車に乗って、それぞれの最寄り駅で降りていく。加藤の家で今晩、瑞樹と神山が泊まりでお疲れ会を模様す事になっているようで、加藤と神山が同じ駅で降りて、希と2人きりでA駅を目指した。
A駅に到着した直後、大きな雷の音と共に激しい雨がホームの屋根を叩きつけるように降り出した。
「ウヒャー!何この雨!ゲリラ豪雨ってやつ!?」
希が大きな口を開けて驚いていた。このままでは帰れそうにないので、駅前のコンビニでビニール傘を2本購入して、一本を希に渡した。傘が確保出来たとはいえ、あまりにも激しい雨が降り続けている為、雨足が収まるまで改札口付近で、2人は雨宿りする事にした。暫くお互い何も話さなかったが、突然希が話しかけてきた。
「間宮さん!今日はお姉ちゃんを守ってくれてありがとうございました。平田はもうお姉ちゃんに近づいてこないんですよね?」
そう不安そうな表情で希は上目遣いでそう聞いてきた。
「安心していいよ。絶対にあいつはもう瑞樹の前に現れたりしない!俺が保証するよ。」
松崎に預けた後どうゆう結果になったか、確認はしていないが、間宮は松崎の言葉を信じて、平田の問題は完全に解決したと言い切った。その言葉を聞いて希は心の底から安心したような表情で笑った。そんな希を見て間宮は柔らかい笑顔を向けた。
「本当に仲の良い姉妹なんだな。妹想いの姉想い・・・でももうあんな無茶は駄目だからな!」
間宮はそう言って、希の頭をポンポンと軽く叩いた。
「はぁい!気をつけます!」
「よろしい!」
あはははは!
2人で笑いあった後に
「実は私って昔からお兄ちゃんも欲しかったんですよね!優しいお兄ちゃんが!間宮さんなら私!大歓迎だからね!」
「は、ハァ!?何言ってんだよ!」
雨が小降りになってきたのを確認して、傘を開いて駅から出ようとした希が突然そんなを事言い出した。間宮のリアクションを楽しんでから、小降りの雨の中を元気に飛び出した希は、間宮に大きく手を振って自宅の方角に歩き出した。
そんな希を苦笑いで見送った後、間宮も帰宅しようと駐輪所へ自転車を取りに向かい、そのまま自転車を押して歩いて自宅へ向かった。
帰宅途中、今日、1日あった事を色々と思い出しながら歩く。ヤバい場面もあったが、瑞樹のトラブルを解決出来て、これで受験勉強に集中させてやれるなと改めて安堵した。
ただ・・・最後の最後であの予想外な事がやはり気になっていた。結局あの子はなんだったんだ?テレビで何度か見た事はあるが・・・・神楽優希・・・彼女に可能ならもう一度会って話がしたい。どうしても確かめないといけない気がする・・・そんな事を考えながら自宅があるマンション前まで来た時に、エントランスに誰か立っているのに気が付いた。でもここは集合住宅のマンション、そんな所に誰かが立っているなんて、珍しくもないので、気にしないで自転車をマンションの駐輪所へ止めて、またエントランスへ戻り、ロビーへ入ろうとした時に視線を感じて、立っていた人物の方に視線を向けた。そこに立っていたのは・・・・・・・・
「み、瑞樹!?」




