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29  作者: 葵 しずく
3章 過去との決別
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第10話 Cultural festival act2  ~プレオープン~

 文化祭初日が始まって早々に瑞樹のカフェが賑わいをみせていた。


「いらっしゃいにゃ!何名様ですにゃ?」

 ホール担当の猫娘達が事前に行った練習通りに接客に応じだした。


 勿論ホールのエースである瑞樹も奮闘している。


「いらっしゃいませですにゃ!ごゆっくりにゃ!」

 尻尾を可愛らしく振りながら、肉球の手袋を顔の前で構えて笑顔で接客する

 姿に魂を抜かれる男共が続出した。

 恥ずかしがり屋の瑞樹が、こんなに愛想を振りまくなんて今まで一度もなかった。

 そのレアな行動こそが、瑞樹が本気でカフェを盛り上げる為の頑張りであり、文化祭を楽しむ事でもあった。


 それにしてもオープン直後から客足が途絶えない。

 いきなりホール、厨房共にフル回転状態だ。

 少しでも客の回転を良くしようと、瑞樹は廊下で順番待ちをしている客に先行してメニューを手渡す為、廊下に出て驚愕きょうがくした。

 何と順番待ちをしている客の列が長い廊下一本では足りなくて最後尾が教室からでは見えない状態だったのだ。


 とりあえずメニューを5部持ち出してきた瑞樹だったが、慌てて持ち出せるだけのメニューを持ち出して、先頭の客から可能な限りの客に手渡して回った。

「どうぞ!メニューにゃ!待っている間に決めていて欲しいんだにゃ!」

 笑顔は崩さずに慌ただしく配っていると、待っている客から可愛いと大絶賛され続けた。


 瑞樹自信は気がついていないようだが、オープン直後から客足が絶えない大人気ぶりなのは、実は瑞樹が無意識に宣伝広告塔になっていたからだ。


 元々瑞樹のクラスで行うカフェが、猫耳カフェという事で話題になっており、女子レベルが高い事も周知されていた為、注目されてはいたのだ。そこに今朝の猫娘姿の瑞樹がパンの受け取りの為に、学校を走り回り他のクラスの連中の目を引いたのが原因だったのだ。

 ホールのエースがオープン前から学校中に姿を見せた為、元々絶大的な人気を誇る瑞樹が文化祭の期間だけ猫娘姿が拝めると話題になった。一目見ようと客が押し寄せるのは必然だったかもしれない。

 ただ凄かったのはその先である。

 瑞樹や他の猫娘に変身した女子達だけが目的ならば、序盤だけで客足の勢いは衰えたであろう。だがこの勢いは最後まで続いた。

 その原因も瑞樹だったのだ。最後まで客足が衰えなかったのは、瑞樹が提案して自身で仕入れショップを発掘し、ライバル店をも押さえ込むプレゼンを行なったベーカリーOOTANI製の菓子パンの存在だった。

 飲食店は軒を連ねていたが、どこもメニュー的には似たようなメニューだったのに対して、瑞樹のクラスだけが菓子パンを扱う事により客を独占してしまったのだ。勿論どこにでもある菓子パンならこんな結果にはならなかっただろう。

 大谷が焼いた渾身のメロンパンを含む仕入れた5種のパンがどれも美味しくて、その評判がクチコミで広がり飲食店系列では1人勝ちとなったのだ。

 店内での注文は勿論の事、持ち帰りでも大好評を収めた猫耳カフェは結局最後までフル回転の賑わいをみせ続けた。

 猫娘の姿を提案した杉山と、とびきり美味しい菓子パンをプレゼンした瑞樹の、2人の功績は絶大な効果を生んだといえよう。


 しかし喜んでばかりいられない事態になってしまった。


 それは15時を過ぎた頃に発覚する。

 相変わらず休憩時間を短縮して働いても、客足が一向に落ちない状況が続いていて、瑞樹も接客に追われて気が付かなかったのだが、裏方の提供する食材を管理担当している木村がその事に気が付き、近くにいた瑞樹に緊急報告した。


「瑞樹!ワリィ!気が付くのが遅かったんだけど、2日分仕入れたはずの菓子パンがもう殆ど在庫が無くなってるんだよ!」

「え?えぇ!?だってこの個数で十分に2日分あるって言ってたじゃん!明日どうするのよ!」

「だってこんなに爆発的に売れるなんて誰も予想出来ないじゃん!」


 確かにそうだ。パン自体は美味しいし売れるとは思っていたが、まさかここまでの売れ方をすると、予想しろという方が無理なのだ。

 嬉しい誤算ではあったが、本番である明日販売する分が全滅するのは完全に想定外だ。


「頼む!瑞樹!パンの追加頼んでみてくれないか?」

 木村が両手を合わせて瑞樹に追加発注を頼みだした。

「いやいや!今日頼んで明日受け取りなんて無理だって!」

 瑞樹達が言い合っているのに気が付いた杉山が近づいてきた。


「どうしたんだ?この忙しい時に。」


 菓子パンの在庫がもうない事を木村が杉山に説明した。


「それはマズイな・・・このパンは明日もメインメニューにするつもりだったし・・・・」

 そう言って杉山達は考え込んでいる隙に、瑞樹はコッソリ仕事に戻ろうとしたのだが・・・

「瑞樹!!」

「は、はい!!」

 杉山が目ざとく逃げようとする瑞樹を呼び止めた。

「な、なによ・・・」

「お前少しの間、店を離れていいから、大谷さんに連絡をとってパンを追加出来ないか交渉してみてくれ。」


「さっきも話してたんだけど、今日注文して明日受け取りは無理があるって!」

「無理言ってるのはわかっているが、頼むしか方法はないんだ!」

真剣な表情の杉山に押されて、瑞樹も渋々観念した。

「わ、わかったわよ・・・でも期待はしないでよね・・」


 そう言ってスマホを持ち出してカフェを飛び出した。

 店を離れて校舎裏まで移動してスマホを立ち上げる。

 この場所はいつも人気ひとけがなくて去年までの文化祭では、いつもここで隠れていた場所だった。


 大谷の店の番号をタップしてスマホを耳に当てた。


「はい!いつもありがとうございます!ベーカリーOOTANIです!」

 元気な声の女性が電話にでた。

「あ、あの!私、英城学園の瑞樹といいますが、大谷さんをお願いしたいのですが・・」

「は、は?英城の瑞樹さん?えと・・・どういったご要件でしょうか?」

 やはり悪戯電話だと勘ぐられたようなので、詳しく話す事にした。

「えと、大谷さんとパンの仕入れを契約させてもらっている者なのですが・・・」

 どうやらレジ打ちだけのアルバイトみたいで、上手く話が通じていないようだった。

 そんな時、電話口の後ろから声が聞こえた。

「ん?どうした?」

「あ!店長!なんか高校生が仕入れの契約をしてて、店長に繋げって言ってきてるんですけど・・・悪戯電話だと思うんですが・・」

「あぁ!それ悪戯じゃないよ。俺の大事なお客さんだよ。」

 大谷はアルバイトにそう説明して電話を替わった。


「はい!お電話かわりました、大谷です。」

 ようやく大谷に繋がった事に安堵した。

「お、大谷さん!お疲れ様です!瑞樹です。」

「うん!おつかれ!どうしたの?まだ文化祭終わってない時間だよね?」


「は、はい!まだ終わっていないんですが、緊急事態になってしまって!」

「え?どうした?ひょっとして俺のパンが不評でかなり売れ残ってしまったとか?」

「いえ!その逆で爆発的に売れ過ぎてしまって、もう完売してしまいそうなんです!それで本番の明日販売する分が無くなってしまって・・・」


「・・・・・・もしかして追加とか?」

「・・・・・・もしかして追加お願いしたいんですが・・・」


「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・いくらなんでも無茶ですよね・・・」


「今日って学校内だけのプレオープンだったんだよね?」

「はい・・・」

「てことは明日は一般の人達も来場するわけだから、今日の何倍もの人が来るって事だよな?」

「はい・・・・。」


「・・・・・どのくらい必要だ?」

「・・・・え?」

「だから具体的にどのくらい必要なんだ?」

「え?作ってもらえるんですか?」

 絶対に無理な話だと頼んでる本人が一番わかっている。

 だから注文内容を、聞いてくれるなんて思ってもいなくて驚いた。


「え、えと・・・希望は今日の2倍!各100個、合計500個お願いしたいんです。」

「2倍か・・・じゃあ!翌朝に250個、昼一に残り250個配達で大丈夫か?」

「それは問題ないですけど、そんな事をしたらお店に並べる分のパンが作れないんじゃ・・・」

「大丈夫!店のパンは妻に焼いてもらう事にするから!」

「お、奥さんもパンを焼けるんですか?」

「あぁ!ウチは夫婦揃ってパン職人なんだよ。その代わり条件がある。配達2往復分の送料とパンの単価を最終的に出した特別単価じゃなくて、最初に見積もりした単価でなら、その仕事引き受けるけどどうする?」


 「大谷さんのその条件は当然だと思いますし問題もありません!ありませんが・・・」

「ん?どうした?」

「どうして大谷さんから見たら文化祭の、しかも子供がやっている事にそこまで力を貸して下さるんですか?」


「不思議かい?」

「はい・・・すごく・・・」

 大谷の返事は物凄く助かるし、有難い事ではあった。

 だが、何故そこまで協力してくれるのか、瑞樹には理解出来ずにいた。


「俺はパン職人を目指した時からずっと大切にしてきた事がある。それは人と人との繋がりなんだ。」

「繋がり・・・ですか?」

「あぁ!仕事上はもちろん、プライベートでの繋がりもなんだけど、人間は1人では生きてなんていけない生き物だと思ってる。だから生きていくうえで、関わってきた人達の繋がりを大事にしていたいと思ってきた。今こうして瑞樹ちゃんと仕事をする事になったのも、俺にとっては凄く大切な繋がりなんだ。

 瑞樹ちゃんと繋がりを感じた以上、俺に出来る事なら力を貸すのは当然なんだ!

 確かに君はまだ子供なのかもしれない、でもきっとこの気持ちは理解出来る女の子だと思ってる。目を見ればわかるんだよ。」


「人と人との繋がり・・・・」

 瑞樹はそう呟いて、大谷の言わんとしている事を考えた。

 少し前までの瑞樹には到底理解出来なかっただろう。

 自分を隠す為に人を遠ざけてきた瑞樹には・・・

 だが、あの日から隠れる為の壁を溶かし出した人がいる。

 その人の温かいぬくもりで凍らせていた時間さえ、少しずつ少しずつ優しく溶かしてくれて、今クラスの為に懸命に頑張っている自分がいる。

 それはクラスメイトとの繋がりを大切にしたいからなんだと、大谷に言われて気が付いた。


「はい!大谷さんのお話で初めて気が付けました。改めて、繋がっている大切なパートナーさん!パンの追加発注の依頼お願いできますか?」


「ははは!いいね!その台詞グッときたわ!了解!その依頼引き受けさせてもらうよ!進捗状況はlineで報告させてもらうな。」

「わかりました!それでは宜しくお願いします。」


 そう言って瑞樹は電話を切った。

「繋がりか・・・・いい言葉だよね。」

 嬉しそうにそう呟いて瑞樹は急いでクラスのカフェへ戻っていった。


 カフェに戻ると初日の終了時間、間際だった為、流石に順番待ちの客はいなくなって、店内は落ち着きを取り戻していた。


「おつかれ!みんな!忙しい時に抜けてごめんね!」


「お!瑞樹おかえり!で!どうだった?追加発注引き受けて貰えたのか?」

「ん!なんとかね!かなり厳しいとは思うんだけどね・・」

「だよな・・・大谷さんいい人っぽかったから、何か申し訳ないな・・・」

 木村は自分のミスで迷惑をかけてしまった事を気にしているようだった。


 最後の客がカフェを出たところで、初日終了を告げるチャイムが鳴り響いた。


 そのチャイムを聞いて、クラスメイト達は後片付けと明日の準備、それから打ち合わせを始めた。

 カフェの猫娘制服からいつもの制服へ着替え終わった瑞樹は、杉山に声をかけた。

「杉山君!悪いんだけど、私これで帰っていいかな?」

「ん?何かあるのか?」

「やっぱり無理なお願いをするだけして、呑気にパンが届くのを待ってるのは嫌だから、私これから大谷さんのお店に行って、雑用しか出来ないだろうけど手伝いに行こうと思うの。」


 そんな2人の会話を聞いていた周りのクラスメイトが瑞樹の周りに集まりだした。

「それなら私も行くよ!」

「俺もだ!力仕事なら手伝えると思うし!」

 大谷の手伝いに皆名乗りを上げだした。


 そんな皆を見て杉山が話をまとめにかかった。

「確かに無理な依頼をしてしまっているから、手伝える事があるなら行くべきだな!瑞樹はどう思う?」

 杉山は大谷と一番接点がある瑞樹の意見を求めた。

「そうね!皆の気持ちは嬉しいんだけど、小さなお店で工房も多分そんなに広くないと思うの!だから大人数で行っても逆に迷惑をかけてしまうし、パン以外の準備もあるから、私を含めた4人位で行った方がいいと思う。」

 瑞樹は手伝い組みを4人でと提案した。


「そうだな!よし!わかった!じゃあ、瑞樹と俺それから・・・」

 そこまでメンバーの名前を挙げ出した所で挙手する男がいた。

「それなら俺も行かせてくれ!元々俺の判断ミスが原因なんだから。」

 そう言って挙手しているのは木村だった。

 杉山は無言で頷いた。

「あと1人は・・・・」

 瑞樹がそう言って集まっているクラスメイトを見渡した。


「私に行かせて!志乃!」

 意外な人物が名乗りを上げた。


「麻美・・・」

 名乗りを上げたのは麻美だった。

 麻美はどちらかと言うと文化祭に対して面倒くさそうに取り組んでいたはずだ。

「麻美が?どうして?」

 瑞樹は名乗りをあげた麻美に理由を聞いた。

 麻美は神楽 優希のライブが観たいだけで文化祭参加に賛成したと聞いていた。だから時間外までカフェの為に時間を割く理由がないはずで、思わず聞いてしまうのも無理はなかった。


「へへへ!やる気がなかった私がどうしてかって?」

「あ、いや・・・そうじゃなくて・・・」

「気を使わなくていいよ!やる気なかったのは正解だしね!」

「それじゃ、どうして協力してくれるの?」

 やはりやる気がなかったのは間違いではなかった。

 間違っていなかっただけに、益々理由が解らなかった。


「やる気を出させてくれたのは・・・志乃だよ!」

「え?私が?」

「そう!どっちかってゆうと、志乃って私達寄りで必要以上にクラスの連中と絡んだりしなかったでしょ?なのに今回は文化祭の話が動き出してから、凄く皆の為に頑張ってたじゃん!志乃は入学してからずっと友達だったからよく知ってるけど、こんな志乃は初めてみたんだよね!そんな志乃を見てたらさ、高校最後の文化祭くらい、何か皆で成し遂げる為に頑張るのもアリかなって似合わない事思っちゃったんだよね。」


 麻美に言われて初めて気が付いた。最初はクラスの為ではなくて間宮に喜んでもらう為にパンの仕入れに走り回っていた。でもその間宮とは文化祭中は一緒にいられないのに、恥ずかしいのを我慢して猫のコスプレをして笑顔で接客したり、今みたいに学校が終わった後に大谷の店でパン作りを手伝いに行こうとしているのは・・・・


 クラス全員で頑張っているカフェの為か・・・・


 瑞樹その事に気が付いてクスッっと笑って麻美の手を取った。


「うん!やろうよ、麻美!」

「おうよ!」


「よし!じゃあ残った奴らは明日の準備を頼んだぞ!明日最高の打ち上げやるぞ!」


 杉山がそう残ったメンバーに激を飛ばして4人は大谷の店へ向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 大谷の店へ到着すると、丁度閉店準備に取り掛かっているところで、店のドアにcloseの看板が掛けられていたが、瑞樹は構わずドアをノックした。


 そのノックに気づいたスタッフがドアを開ける。

「すみません。もう閉店時間なので・・・」

「あ!私先ほど電話した英城学園の瑞樹です。大谷さんお願いします!」

 スタッフが断りの台詞を言い切る前に、瑞樹は自分の名前を明かして大谷に取り次ぎを頼んだ。


「あぁ!あなたがさっきの・・・店長なら工房で大量のパン生地を作ってるわよ。」

 スタッフはそう言って工房へ向かおうと振り向いた時、待ちきれなくなった瑞樹は少しだけ開いたドアを開ききって勝手に奥へ向かった。

「え?あ!ちょっと!」

 スタッフの引き止めにも応じる事なく工房へ到着した。

「こんばんは!大谷さん!」

 そう言いながら工房の入口まで来ると、中で女性がパン生地を形にする作業をしていた。その女性が瑞樹達に気がつくと、

「あら?どちらさまですか?」

「あ!私、英城学園の瑞樹といいます。」

「瑞樹さん?あぁ!あなたがこのパンの依頼人の瑞樹さんね。主人から話は伺っています。はじめまして、大谷の妻の沙知絵です。」

「はじめまして!英城学園の杉山と言います。木村です!遠藤です!」

 沙知絵に自己紹介していると、奥のオーブンから大谷が出てきた。

「あれ?瑞樹ちゃん?どうした?こんな時間に。」

「お疲れ様です!あの私達に何かお手伝いさせてもらえないかと思って!」

「手伝い?いや!君達はカフェが大盛況で一日中動き回ってたんだろ?明日に備えて休まないと。」

 私達の体調を心配して手伝いの申し出を遠慮しようとした大谷に、瑞樹がここへ来た理由を話しだした。


「大谷さんこそお休みになってないじゃないですか!勝手なお願いだけして、呑気に届くのを待ってるなんてできません!雑用でも何でもするので是非手伝わせて頂けませんか?お願いします!」

 瑞樹がそう言って頭を下げると、「お願いします!」他の3人も頭を下げた。


 そんなやり取りを見ていた沙知絵がクスッと笑って口を開いた。

「なるほど!あなたが気に入った理由がよくわかったわ。」

 そう言って瑞樹達に優しく微笑んだ。

「気に入った?無理難題ばかりお願いしている私達をですか?」

「ええ!そうよ!主人がよく話すのよ。最近の若い奴らは生きてるのか、死んでるのかよく分からない冷めた連中ばかりだと思ってたけど、瑞樹ちゃんのような熱が入った子達もいたんだなってね。」

 そう言って沙知絵は大谷と笑みを交わした。


「そうだ!一生懸命頑張っている奴を応援しないのは、俺的にアウトなんだよ!アツい人間は嫌いではないしね!」

 大谷は瑞樹達に向かって片目を閉じながらそう言った。


 大谷にそう言われて、4人は顔を合わせ照れ笑いし合った。


「よし!んじゃ!力仕事頼んだぞ!野郎共!」

「じゃあ、瑞樹ちゃん達はこっちをお願いしようかな。」

 大谷と沙知絵は4人に手伝いの指示を出し始めた。


 2人の指示を聞いて瑞樹は3人の前に拳を作った右手を差し出し、皆の顔を見渡しながら、

「よし!やろう!皆!!」

 瑞樹の号令に応えるように3人は瑞樹の拳に自分達の拳を突き合わせて

「おう!!」

 4人は声を合わせて気合を入れるように叫んで、それぞれの指示された持ち場へ散っていった。


 その後4人の懸命な作業は23時を回った頃まで続いたが、誰も弱音など一切吐かずに最後まで頑張り抜き、それぞれ明日への気合いを滲ませて解散した。



























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