表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29  作者: 葵 しずく
3章 過去との決別
30/155

第1話 あいたい

みなさん!あけましておめでとうございます。

休載させていた「29」3章 連載再開させていただきます。


休載中も沢山の方々が読みに来てくださりありがとうございました。

このPVとユニーク数は励みになっています。

また新年から気持ちを新たに、頑張っていきますので宜しくお願いします。

今年も「29」よろしくお願いします。


葵しずく


 合宿が終わって二日が過ぎた8月5日

 瑞樹は自室のベッドで物思いにふけっていた。


「合宿から帰ってきて3日目か・・・・」


 まだ3日しか経っていないのに、もう頭の中は間宮の事でいっぱいになっていた。

 受験勉強はしている事はしている。

 でも以前の様には(はかどっていない・・・


 自分はもっと色んな事に区別をつけて、何事も両立出来るタイプだと思っていた瑞樹だったが、たった3日でその自信が総崩そうくずれしそうになっている。


「これじゃ、バカップル願望がんぼう丸出し女みたいじゃん・・・」




 間宮さん・・・・




 合宿であった間宮との記憶を思い出そうとすると、

 間宮のあの柔らかい笑顔が大きく頭の中に描かれる。


 スマホを立ちあげて、祭りの前に撮った間宮との浴衣姿のツーショット画像を開いた。

 間宮の着ている浴衣の生地を見ると、祭りで抱きしめられたシーンが鮮明によみがえって、瑞樹の顔は真っ赤に茹で上がった。


 思わず顔を枕に埋めて自分の声が誰にも聞かれないようにして、足をパタパタとバタつかせながら、

「会いたい!会いたい!会いたい!今すぐあいたーーーーーい!!!」

 と大声で叫んだ。



「・・・・・・・・お姉ちゃん・・・何やってんの?キモイんだけど・・・」



 !!!!!!


 慌てて枕から顔を離して振り返ると、そこには呆れた顔をした妹が立っていた。


「!!!ちょっ!!希!!私の部屋に入る時は、ノックしなさい!っていつも言ってるでしょ!!」

 顔を真っ赤にしながら、ベッドから飛び降りた。


「あ~、ごめ~ん。面倒臭かったから・・・つい・・」

「面倒臭いって・・・アンタね!!」

 希に今度とゆう今度はと説教してやろうとしたが、


「で?何にもだえてたの?」


 うぐッ!?


「・・・・・・・べ、別になんでもないわよ・・」

 白々しく誤魔化ごまかした。


「ふ~ん!私はてっきり眼鏡のちょっといい感じのお兄さんの事を、考えて悶えてるのかと思った。」

 希はニヤリと小悪魔的な表情でそう言った。


「・・・・・・!!!!!」


「うわっ!!」

 瑞樹は希の腕を引っ張り、完全に自分の部屋に入れてから、バタンとドアを閉めて、希に詰め寄った。


「アンタが何で、間宮さんの事知ってるのよ!?」

「ふ~ん・・・間宮って言うんだ!あのお兄さん。」


 ぐっ!?


 余計な情報を与えてしまった・・・


 希のニヤニヤ顔が収まらない。

「何でって?お姉ちゃんが合宿から、帰ってきた時玄関先まで一緒に歩いて来てたじゃん。」


 そうだよね・・・見られたとしたら、そこしかないよね・・・

 あんな時間だったし、絶対寝てると思ってたから油断した・・・


「アンタ、あの時まだ起きてたんだ。」

「うん!志乃が帰ってこないってお父さんが心配してたから、

 私も心配してマメに部屋の窓から家の前をチェックしてたんだ。」


「アンタが心配してたのは、私じゃなくて、私がちゃんとお土産買ってきたか心配してただけでしょ?」

「うん・・・まぁ・・そうとも言うかな!」


 アンタって子は・・・

 瑞樹は大きなため息をついた。


「で!?やっぱりお姉ちゃんの彼氏なの!?」

 そうくると思った!だから希には知られたくなかったのに・・・

「違うよ。合宿でお世話になった講師だよ。偶然、最寄駅もよりえきが同じで、駅前でバッタリ会って、遅い時間だったからここまで送ってくれただけよ。」


 瑞樹 のぞみ 

 私の2つ下の妹だ。

 本来、無理しなければ私も入学していたはずだった、上野高校の1年生。

 面倒臭がり屋で甘え上手、基本的に世の中を他力本願たりきほんがんで渡って行こうとしているタイプ。

 だが、妙なところで芯が強くブレない。

 我が妹ながら、掴みどころがありそうで、実は掴みどころがない様な女の子。


「それで?何か用事があったんじゃないの?」

「あぁ!そうだった!合宿から帰ってきてから、全く外に出ていない引きもりのお姉ちゃんに、外の空気を吸わせようと思ってさ!近くのモールまでショッピングにでも行こうよ!」


じつの姉をニートみたいに言わないでよ。ショッピングしたいなら、友達と行ってきたらいいじゃん!私は勉強で忙しいの!」


「・・・・まるで受験生みたいな事言ってるね!」


「私!立派な受験生だからね!」


 鋭いツッコミを無視して、希は部屋のドアを開けて、大きな声で一階にいる母親に話しだした。

「おか~さ~ん!合宿から帰ってきた時、お姉ちゃん男と・・・モゴ!フガ!」

 瑞樹は母親に間宮の存在をバラそうとした、希の口を慌ててふさいだ。


「わかった!付き合うから!ショッピングでも映画でもご飯でも付き合うから、余計な事言わないでよ!」


「おっけ~!んじゃ!リビングで待ってるから、支度したくして降りてきてねん!」

 片目を閉じてピースしながら、希は軽い足取りで一階のリビングへ降りていった。


 あの子には受験勉強を頑張っている、姉に対して応援しようとか考えないのだろうか・・・

 ため息ををつきながら、支度を済ませて2人でショッピングへ出かけた。



 モールへ到着すると、希は早速さっそくお目当てのショップへ瑞樹の手を引いて移動する。


 やっぱり自分が買いたい物があったから来ただけじゃない!と腹を立てたが、また間宮の事で騒がれたら面倒なので、諦めて付き合うことにした。


「どう?お姉ちゃん!これ!私的にはツボったんだけど!」

 はしゃぐ希をチラッと横目で見て

「この前、似たようなシャツ着てなかった?」

「え?そうだっけ?」

 瑞樹はまたかと呆れた。


「じゃ!またいつもみたいにお姉ちゃんがコーディネートしてよ。」

「はいはい・・・」

 希はおしゃれに気を使っているように思われている。希の周りの人間からは、おしゃれのセンスが良くて、参考にされる事も多々あったりするのだが、現実の希は服装には結構、無頓着むとんちゃくなところがあり姉のコーディネートによるものがほとんどだったりする。


 瑞樹は数店舗のショップをめぐってから、頭の中でイメージする。


「よし!今回はあそこのショップの最後に見ていたインナーと、下の階にあったショップで可愛い!って言っていたパンツとデニムシャツを合わせてみようか。多分いい感じだと思うよ。」


「了解!じゃあ、それ買ってくるから、そこで座って待ってて!」

 そう言って希は大急ぎで、姉が指示したショップを巡りだした。


 通路に設置されているソファーで休んで、ふと付けていた腕時計が目に入った。

 お気に入りの時計だったが、随分ずいぶんとバンドがいたんでいる。

 丁度休んでいる向かい側に腕時計の専門店があったので、ただ待っているのも暇だからと時計のバンドを物色ぶっしょくする事にした。


 ショップへ入ってバンドが売っている奥へ向かおうとしたが、店頭の真ん中にあったショーケースが気になり、ケースの中にある時計をのぞき込んだ。


「うわ~!これいい!格好良いデザイン、でもどことなく可愛い感があるのがいいな!ユニセックス系の時計かぁ・・

 このブランドこんなデザインの時計だしてたんだ。」


 ショーケースに並べてあった数種類の時計があったが、その一点に一目惚ひとめぼれしたらしい。

 でも、何だか初めて見る気がしない。



「あれ?これって・・・・」


「それって間宮先生が使ってた時計だよね!」

「え?」

 後ろからふいにそう声をかけられた。

 聞き覚えのある元気な声・・


 瑞樹は振り返ってみると、そこには加藤と佐竹が立っていた。


「オス!志乃!」

「愛菜!」

「あはは!偶然だね!まさか志乃に会えるとは思わなかったな。」

「うん!何かまだ合宿が終わって、3日しかってないのに、久しぶりな感じがする。」

「ほんとだね!一週間ずっと一緒だったからかな。」


 瑞樹は思わぬ親友との遭遇にテンションが上がった。

 まだ3日しか経っていないのに、盛り上がり方が同窓会どうそうかいのようだった。


 盛り上がる2人を他所よそに取り残される佐竹・・・


 佐竹はわざとらしくせき込んだ。

「ゴホンッ!」


 その咳払せきばらいいで、佐竹の存在に気付いた瑞樹。


「あ!佐竹君も合宿ぶりだね。」

 そう言って笑顔を佐竹に向けた。


 自分に笑顔を向けてくれるなんて、初めての事だったから、変に緊張した佐竹。

「お、おう・・・」

 引きつった表情で何とかそう返した。


「何緊張してるのかな?」

 加藤はニヤニヤしながら佐竹にそう言うと

「べ、別に緊張なんかしてないし!」

 そう否定した佐竹は顔をきながら、展示してある時計を見た。


 加藤と瑞樹はそんな佐竹を見て、クックック・・と顔を見合わせて笑った。


 意地悪そうに笑う2人にねるように話題を変えた。

「ほら!腕時計見てたんだろ?」


 そう言われて2人も瑞樹が見ていたショーケースに視線を移した。

「そう言えばそうだったね。ねえ、愛菜!やっぱりこの時計って・・・」

「うん!これ間宮先生が付けていたのと同じ時計だよ。私も可愛くてお洒落しゃれな時計だなって見てたから間違いないよ!」


 やはりこれは間宮が愛用している時計で間違いなかった。

 そうなると、自分がこの腕時計のレディースを買ったら、ペアウォッチになる。そう考えると何だか嬉しくてドキドキしてしまう反面はんめん、それを使っている事に間宮が気付いて、迷惑そうな顔をされたらと不安になる自分がいる・・・もしそうなったら立ちなおれる自信がない・・・

 そんな事を考えながら、その腕時計の値札を見ると・・・

 58000円・・・

 到底とうてい、高校生に買える値段ではなかった。

 余計な心配だったと苦笑いした。


 加藤も隣で同じリアクションしている。

「え~!?58000円!?高過ぎだよ!1万以内ならプレゼントしようと思ったのになぁ・・・

 間宮先生ってお金持ちなんだね・・・」


 フフフフ・・考える事はやっぱり同じ高校生だけに一緒だと微笑んでいたが・・・ん?プレゼント?


「愛菜、プレゼントって誰かにこの時計をプレゼントしようと思ってたの?」


「誰って、志乃にプレゼントしようとしてたに決まってるじゃん!今月誕生日だったよね?」


「え?私に?いやいや!確かに今月誕生日だけど、これが1万円だったとしても、そんな高価なプレゼント貰えないよ!」


「う~ん・・・それもそうだね。じゃあ!今日ここでプレゼント探してくるから楽しみにしててね!丁度荷物持ちもいる事だし!」

「僕は荷物持ちかよ・・・」


 あはははは!


「そういえば今日は佐竹君と一緒なんだね!もしかしてデートですか?愛菜さん!」

 ニヤニヤしながら加藤に真相しんそうを迫った。


「ち、違くて!佐竹が遊びに行こうってしつこかったから、仕方なく付き合ってあげてただけだし!」

「しつこいって・・・ひどくね?」

 佐竹はあまりの言われように泣きそうな表情で固まった。

 そんなあわれな佐竹を見て瑞樹が加藤をいましめる。

「愛菜!佐竹君は頑張って愛菜を誘ったんだよ?

 そんな言い方は流石にないんじゃないかな!」


 うっ・・・・!?


 瑞樹に叱られた加藤は素直に反省した表情で佐竹に向き合った。

「言いすぎた・・ごめん・・佐竹。」

「う、うん。いいよ、大丈夫だから!」

 加藤が自分に謝るなんて、想像もした事がなかった佐竹は驚きながら許した。


 加藤も恥ずかしくなって話題を変えた。

「てか志乃は1人なの?ひょっとして間宮先生とデートだったりする!?」

 加藤は目を輝かせながら聞いてきた。


「そんなわけないじゃん!妹に無理矢理むりやり付き合わされてるんだよ・・・」


「妹?瑞樹さん妹がいるんだ。」

 佐竹が意外そうな顔をした。

「そういえば妹がいるって言ってたね!どこにいるの?」

 加藤は瑞樹の妹に興味津々のようだった。


「今ショップ回って服を買いまわってるとこで・・」


「お姉ちゃん!お待たせ!レジが混んでて時間かかっちゃった!・・・あれ?お姉ちゃんの友達?」


 各ショップのロゴが入った袋をぶら下げて、戻ってきた希は加藤と佐竹に気付いて、瑞樹に確認した。


「そうだよ。さっき偶然会ったんだよ。」

 そう言って瑞樹は加藤と佐竹の横に並んだ。


「紹介するね!同じゼミで合宿にも参加していた、佐竹君と加藤さん!

 で!こっちが私の2つ下の妹の希!」

 瑞樹はお互いを紹介した。


「お姉ちゃんがいつもお世話になってます!妹の希です。」

 そう挨拶して軽くお辞儀じぎした。

 そんな妹を見て瑞樹は、おいおい・・君は誰だ?って本気で聞いてみたくなる程、別人にしか見えない外面そとずらの良さにため息が漏れた。


「こんにちわ!こちらこそお姉ちゃんにいつもお世話になってる加藤 愛菜って言います!よろしくね!希ちゃん!」

 加藤はいつものように明るく希に挨拶した。

「こ、こんちわ。さ、佐竹って言います・・よろしく・・」

 姉に負けずおとらずの美人な希に佐竹は思わずドギマギしながら挨拶した。


「こんにちわ!加藤さん、佐竹さん。」


 元々人当たりの良い加藤と、天真爛漫てんしんらんまんな希はすぐに打ち解けて談笑だんしょうに花を咲かせた。


「あ!そうだ!これから皆さんでお昼ご飯食べに行きませんか?」

 希はウキウキしながら提案した。

「希!駄目よ!愛菜と佐竹君のデートの邪魔をしない!」

「デ!?違うって言ってるじゃん!いいね!ご飯行こうよ!希ちゃん!」

「やった!決定ですね!」


 盛り上がってる2人を他所に苦笑いしている佐竹に瑞樹が近づいて

「ほんとごめんね。言いだしたら聞かない妹で・・」

 申し訳なさそうに、佐竹に話しかけた。


「い、いいよ!本当にデートじゃないからさ。」

 手を左右に軽く振りながら、佐竹もデートを否定した。


 それから4人は適当にレストランを見つけて、そこで昼食をとる事にした。


 食事を済ませてからも、お茶をしながら談笑は続く。


「あ!そういえばさ!昨日ゼミの帰りに間宮先生と会ったんだよ。」


 ピクッ!!


 間宮のワードに瑞樹姉妹が同時に反応した。


「そ、そうなんだ・・間宮さん元気だった?」

「うん!何か仕事が溜まってて忙しいとは言ってけど、元気そうだったよ。」


 その会話に希が割り込んできた。


「そう!それです!」

 希は加藤に指をさしてテンション高くそう言った。


「え?な、なに?」

 加藤は驚いていると、すかさず瑞樹が希の介入かいにゅうを拒否した。

「希!余計な詮索せんさくはしないで!愛菜もこの子に何を聞かれても答えなくていいからね!」


「え~!?なんでよ!やっと噂の間宮って人の事が解ると思ったのに~!」


 激しくブーイングする希を無視していると、スマホにセットしていたアラームが鳴りだした。


「あ!もうこんな時間か!私今日この後ゼミだから、そろそろ帰るね!」

「うん。志乃は土曜日だったもんね。あ!そうか!じゃあ佐竹もゼミなんじゃないの?」

「そうだよ。僕もこれから帰ってゼミに行ってくるよ。」


 この流れでまた希はひらめいた。

「加藤さんはこれから何か予定あるんですか?」

「私?いや特にはないけど?」

「じゃあ!私ともう少し遊んでいきませんか?」

 希は目を輝かながらそう提案すると、瑞樹が加藤は受験生なんだから、無茶言わないと叱った。

 しかし加藤は希の事が気に入ったようすで、その提案を受け入れた。

 喜ぶ希に迷惑をかけないように!と瑞樹はねんを押して加藤達と別れた。



 希は完全に姉が帰るのを見届けてから、加藤の方へ向き直った。


「さて!邪魔者は退散しましたね。」

「邪魔者て・・・」

 加藤は希の言い分を苦笑いした。


「加藤さん!」

「なに?ってか愛菜でいいよ。」


「では愛菜さん!これからが愛菜さんを誘った本題なんですが・・・」

「うん?」

 加藤は単に2人でブラブラとショッピングをする為に、希に誘われたと思っていたが、どうやら違うようだと気付いた。


「愛菜さんに確認したい事とお話したい事があります。」

「確認とお話?」

「はい。と言っても立ち話も何なので・・・」

 そう言って希は愛菜の手を掴んで走り出した。

「え?ちょっ!」

「下のフロアにミルフィーユが超美味しいカフェがあるんですよ!そこでお話しましょう!

 あ!因みに私は服を買ってしまったから、お財布さいふスッカラカンなので!」

 希は愛菜の手を引いて、舌をペロっと出しながら、小悪魔的な表情で笑ってそう言った。

「はい!?え?何?それって私におごれって事!?」

「はい!ゴチになります!愛菜お姉ちゃん!」

「ははははは・・・志乃が手を焼く理由が解った気がする・・」

 瑞樹の苦労が少し理解出来たが、それでも憎めないって感じだったのも理解出来た。外見は姉と同等の美形だが、性格はまるで正反対!でも中身の芯の部分は同じで優しい子なのだろう・・・多分・・・


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 瑞樹は一旦いったん自宅へゼミの用意を取りに行く為に帰宅中だった。その途中でスマホが震えた。

 着信を確認するとクラスメイトの遠藤 麻美だった。


「もしもし?」

「あ!志乃!?もう合宿から戻ってるなら、連絡してよね!」

「あはは!ごめんね。帰ってからも少しバタバタしてて、連絡忘れてた。」

「もう!まぁ!いいけどね!でさ!志乃は登校日って登校してくる?」


「登校日?あぁ!週明けの7日だったっけ?それと21日もだったよね?」


 世間では登校日がなくなった学校も多いようだが、ウチの学校は未だに登校日の習慣が残っていて、しかも2日も存在するのだ。


「志乃ってば忘れてたでしょ?」

「うん!忘れてたw」

「しょうがない子だなぁ!で!どうするの?」

「うん。どっちも月曜だから、ゼミもないし登校しようかな!麻美はどうするの?」

「私は面倒臭いなって思ってたんだけど、登校日の放課後に文化祭の参加か不参加を多数決で決めて、参加ならそのまま何をやるか決めるらしいんだよ。だからサボって厄介やっかい役回やくまわりり押し付けられたら、笑えないから登校しようと思ってる。」


 瑞樹が通う学校はかなりの進学校で、毎年3年生には文化祭の参加、不参加の決定権が許されていて、各クラスでけつり不参加なら自宅で学習する事になっていた。


「あはは!なるほど!それは私も参加しないとだね!」

「でしょ!じゃあ志乃は来るんだね!それじゃ7日に会おうね!バイバイ!」

「うん!7日にね!バイバイ!」


 そう言ってスマホを切って、少し物思いに耽った。


 文化祭か・・・今年こそは最後なんだし、クラスの出し物以外でも、ちゃんと参加して回りたいな・・・1.2年生の時はクラスの当番以外は、ひたすら人気ひとけのない場所で隠れてたから・・・・



 高校生活最後の文化祭・・・

 何の根拠こんきょもなかったが、今年は素敵な事がありそうな予感がする。何だかワクワクしている自分に気が付いて、歩きながら1人で笑っていた瑞樹だった。



































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ