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29  作者: 葵 しずく
2章 導かれて
22/155

第15話 お祭り!浴衣デート act 2

 屋台での騒動を少し離れた場所でチェックしている少女がいた。

 その赤い浴衣に身を包んだ少女はスマホを取り出して、電話をかける。


「もしもし!隊長!作戦はうまくいった?」

「うん!ミッションフルコンプリート!浴衣カップル一丁あがり!って感じ!予想外のトラブルがあったのは焦ったけどね。」

「トラブル?何かあったの?!」

「うん!一言で言うと、ウチの親友が綺麗過ぎて、雑魚を引き寄せちゃって、拒否られて逆ギレ的なトラブルだった。」

「えぇ!?みっちゃん大丈夫だったの?」

「焦ったけど大丈夫!危ないとこでナイト間宮が颯爽と現れたからね!

 しっかし!さっきの間宮先生格好良かったなぁ!いつのも先生からじゃ、想像出来ない感じで、離れた所から見てたから、何て言ったかは聞こえなかったんだけど、私までドキドキしちゃったよ。」

「えぇ!?あの間宮先生が!?それは見たかったなぁ。」

「いいもの見ちゃった!それよりも、今日はごめんね!朝から色々手伝って貰って、その上、お祭り皆で回れなくしちゃって・・・」

「あはは!気にしなくていいよ!案外快適だしね、何でもご馳走してくれるしさ!」

「そっか!でもそれで太っても責任持てませんからね!ありがと!戻ったらちゃんとお礼させてね。」

「うん!楽しみにしてるね。じゃね!」

「また後でね!じゃあね!」

 そう言って電話を切った。

 その少女の側に立っていた少年が不満そうに言った。

「なあ!これって間宮先生と瑞樹さんを浴衣デートさせる為だけのデートだったのか?加藤。」


 そう、ここまでのシナリオは全て瑞樹に自分の本心を気付かせる為の時間と状況を用意する事を目的に加藤が仕組んだ事だった。

 グループでの現地解散の時も瑞樹の性格なら、絶対1人で回ると言い出すと確信しての事だ。瑞樹と別れるタイミングと間宮が合流出来るタイミングを合わせたのも加藤で、その間宮に瑞樹の事を強く意識させる為に、浴衣を着せようと企んだのも加藤だった。


「ん?そうだよ。な~に?やっぱり愛する瑞樹さんを他の男に持っていかれるのを見るのは面白くないって?」

 加藤は悪戯っぽく佐竹にそう言った。

「ち、違くて!加藤が僕を祭りに誘ってくれたのは、その・・・あれなのかなって思って・・」

 佐竹はそう言って頬を赤くした。


「なに?なに?もしかして私からお祭りで告られるかもって思ったの?」


「ちがっ・・・そ、そんな事・・・」

 アタフタしながら佐竹は俯いてしまった。


「あのね!佐竹!私そんなに安い女じゃないから!

 私を振り向かせたかったら、男としてもっと頑張りなさい!今の頼りないままじゃ、アンタの彼女になんか頼まれたってならないよ!」


 人差し指を佐竹の胸に押し当てて、加藤は真剣な顔でそう言い切った。


 佐竹は胸に当てられた指だけではなく、その手ごと握って

「わかった!頑張って加藤を振り向かせる男になるよ!だからこれからの僕を見ててくれ!」

 真剣そのものの目で加藤を見つめてそう宣言した佐竹、

 そんな佐竹に見つめられた加藤は心臓が飛び跳ねる程ドキドキした。

「そ!まぁ!頑張りなさい!でも私ってば結構モテるみたいだから、あんまり遅いと他へいっちゃうかもよ?」

 素直な気持ちを誤魔化すように加藤はそう言った。


「加藤は僕なんかと違ってモテるのは昔から知ってる!今朝も食堂で他の男達に囲まれてるのを見てイライラしてた!だからそんなに待たせるつもりはない!」


 珍しく男らしくそう宣言する佐竹を見て

「そ、そう、わかった。その時を楽しみにしてる。」

 加藤は頬を赤く染めて嬉しそうにそう言った。


「さ、さて作戦もうまくいったし、私達もお祭りに参加しますか!

 まずはお腹が空いたから何か食べようよ!」


「そうだな!じゃあ!まずはたこ焼きから行くか!さっきからたこ焼きの匂いだけ嗅いでたから、無性に食べたくなってたんだよな。」

「お!いいね!ゴチになります!佐竹さん!」

 ニヤリとしながら加藤は佐竹におねだりした。


「はぁ!?何で俺が加藤の分まで買わないといけないんだよ!」

「え~?好きな女に、たこ焼き位ご馳走する甲斐性もないの?」


 ウグッ!?痛いところを突かれて二の句が継げなかった。


「わ、わかったよ!たこ焼きだけじゃなくて、今日は全部僕が奢ってやるよ!」


「え!?マジで!?すご~い!佐竹さんやっさしい~~!!」

 現金な女だなとため息をついたが、はしゃいでいる加藤を見てたら、なんだか佐竹も嬉しくなった。


「じゃ!早くいこ!佐竹!」

 加藤は佐竹の手を引っ張りそう言った。

 佐竹は思わずドキっ!としたが、冷静を装い加藤に引っ張られるまま、一緒に走り出した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ごめん!おまたせ。」

 駆けつけた瑞樹の顔を覗き込んで

「どうした?顔が真っ赤だぞ?」

 間宮はそう言って帯に刺していたうちわを取り出して

 瑞樹の顔をパタパタと扇いだ。


「あ、赤くなんてなってないもん!」

 そう必死に否定してところで異変に気付いた。


 膝がガクガクと立っていられないくらいに震える。

 体も小刻みに震えて、目頭が熱くなる。


「ごめんね、少し待ってて・・・」

 と間宮に背を向けて俯きながら、鞄からハンカチを取り出して、それを目元に当てて動かなくなった。


 声をかけられてからずっと気を張っていたが、間宮に助けられて安心して気が緩み、あの時の怖さがこみ上げてきた。

 瑞樹はこれまでも、ずっと男達に嫌われる様に振舞ってきたが、その度に後から怖さが体を支配して、一人で泣いてきたのだ。

 だからこんな事は慣れていた。

 ただこの後に、全く経験した事がない事態になった。


 ふわりと温かい何かに包まれる感覚を覚えた。


「え?」


 目を閉じてハンカチを当てながら泣いていた瑞樹は驚いて目を開いた。

 目を開けても視界が暗い。目の前に見覚えのある着物の生地と男性と思われる胸元が見えた。



 間宮に抱きしめられている・・・・



 それを理解出来た瞬間、驚いて間宮の抱擁を解こうと腕に力を入れようとした時、上から優しい声が降ってきた。

「怖い思いさせたな、遅れてごめん。もう大丈夫だから、大丈夫だからな。」

 間宮はそう言って、優しく瑞樹の髪を撫でた。


 その言葉と髪を撫でられる感覚が伝わると、腕にいれた力が抜けて、強ばった体の力も抜け、少しずつ流していた涙腺が決壊を起こし一気に溢れ出してきた。

 殺していた声もコントロールが不能になり、気が付けば間宮の腕の中で大声で泣いていた。


 間宮は瑞樹が泣いている間、周りの通行人の視線など全く気にせずに、左腕は瑞樹の体を優しく包み込み、右手はずっと髪を撫でていた。


 暫くして瑞樹の鳴き声がとまった。


 瑞樹がゆっくりと間宮の腕の中から離れていく。


 俯きながら掠れた声で

「ご、ごめんなさい・・・私・・・」


 思い切り泣いて落ち着いたのか、体の震えが止まったようだ。

 その事に安堵した間宮が

「何を謝ってるんだ?」

 そう言って優しく微笑んだ。


「だってこんな人ごみの中で大声で泣いたりして、恥ずかしかったでしょ?」

 瑞樹は顔を真っ赤にしながら、俯いて申し訳なさそうにそう言った。


「人?あぁ!はは!全然気にもならなかったな!」

 間宮は笑って平然としていた。


 そのまま間宮は続けた。

「そんな事よりさ!腹減らないか?さっき貰ったたこ焼きと焼きそばをどこか座って食べよう!」

 たこ焼きと焼きそばが入ったビニール袋を持ち上げて笑顔で瑞樹を誘った。


「え?う、うん」

 瑞樹は間宮の余りにも気にしていない態度に驚いたが、そんな間宮の笑顔につられて返事をした。


「んじゃ!いこ!」

 と瑞樹の手を引いて近くの空いてるベンチに移動して座った。


 ガサガサと、ビニール袋からたこ焼きと焼きそばを取り出して

 瑞樹の前に差し出した。


「え?私こんなに食べれないよ?」

「あはは!分かってるよ!食べれるだけ先にどうぞ。」

「だ、だよね。あっ!先生が先に食べて!私猫舌であまり熱いのは食べられないから。」


「そう?出来てから少し経ってるから、大丈夫だと思うけど・・

 まぁ!いっか!じゃ!お先にいただきます!」

 そう言って間宮は勢いよくたこ焼きを一つ口に放り込んだ。


「ほら!やっぱりもう熱くな・・・・」

 !!!!

「アッツ!!!!まだ中はトロトロで超熱い!!」

 間宮は油断して確認もせず一気に口へ運んだせいで、

 跳ねるようにして悶えて「ハフハフ」と口の中の熱を逃がしながら、涙目になって飲み込んだ。


「はぁ、はぁ・・・口の中が大火事だった・・・」


 さっきの屋台での間宮と今の間宮が同一人物だとは思えない程のギャップを目の当たりにして、瑞樹は笑いを堪える間もなく吹き出した。


 プッ!


「あはははははははは!せ、せんせ!何やってるのよ、調子に乗ってそんな事するからじゃん!あははははは!お、お腹が・・痛い・・・!!」


 間宮はムスっとした顔で

「笑い過ぎじゃね?」


「だって!先生のせいじゃん!クククク・・・」

 お腹を左手で押さえながら、笑い過ぎて溢れてくる涙を右の人差し指で拭って楽しそうに笑う瑞樹を見て、間宮はクスリと笑った。


「ほら!笑ってないで食べなって!」

「うん!いただきます。」


 たこ焼きに息を吹きかけて、十分に冷ましてから口へ運んだ。

「うん!美味しいね!」

「美味いよな!大将の魂が詰まってるからな!」

「あはは!ほんとだね。」


 二人で美味しくたこ焼きと焼きそばを平らげた。

 お腹が満たされた事で落ち着いたのか、瑞樹は肝心な事を聞くのを思い出した。


「ああ!そうだ!先生に絶対聞かないといけない事があったの思い出した!」

 急にそう瑞樹が叫ぶように言いだしたから間宮の体が少し跳ねた。

「ビ、ビックリした!な、なんだよ急に!」


「なんだじゃないよ!何であそこに先生が現れたの?確か他の先生達と飲み歩きするって盛り上がってたよね?」


「あ、あぁ!その事か・・・」

「そう!ねぇ!何で?」

 瑞樹が真剣な眼差しで間宮に詰め寄った。

「そうだな、ちゃんと話しておいた方がいいよな。

 実はさ・・・」

 間宮は観念した様に瑞樹に経緯を話しだした。


 話はマイクロバスが走り出して間もなく、隣に座っていた加藤が話しかけてきた場面まで戻る。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 加藤が間宮にこれから話す事になるべく小声で返答を求められて了承した。


 加藤は真剣な表情で話しだした。

「志乃の事でお願いがあるんです。

 実はお祭り見物が始まって暫くしたら、志乃が1人になってしまう事になってるんです。」

「どうしてですか?」

 間宮は顔を傾けて問う。

「志乃以外の同室の女子は皆、誘われた男子達と回る事になったからです。」


「え?どうゆう事ですか?皆さん一緒に祭り見物するんじゃなかったんですか?」

 間宮はそう言うと、後方の座席に座ってる瑞樹をチラっと見た。

 瑞樹は相変わらず楽しそうに神山達と談笑していた。

「その事を瑞樹さんは知っているんですよね?」


「いえ、志乃は全く知りません。私達とお祭り見物すると思ってます。」

 苦笑いしながら加藤は瑞樹の現状を説明した。


「何故そんな事するんですか?瑞樹さんその事を知ったらショックを受けますよ。まるでいじめてるみたいじゃないですか!」

 間宮は思わず小声で話す事を忘れて、声の音量を上げて問い詰めようとした。


「シ~~~!!声が大きいですよ!先生!小声でって頼んだじゃないですか!」

 慌てて人差し指を口元に当てて、瑞樹の方を振り返りながら、小声で間宮に注意した。

 幸い瑞樹はこちらには気付いていなかった事に安堵した。


「それは誤解です!志乃は私の大切な親友なんです。」

「誤解?どこが誤解なんですか?」

 誤解だと言われても、全く納得が出来ない間宮は加藤に説明を求めた。

「男子達とお祭りへ行く為に、志乃を1人にするんじゃなくて、志乃を一人にする為に、皆、志乃から離れるんです。

 私がそうしてくれるように神山さん達に頼んだんですよ。」


「どうして瑞樹さんを一人にする必要があるんですか?」

 一人にする理由が思いつかない間宮は、さらに説明を求める。

「1人って言うのは少し語弊がありますね。

 訂正します。志乃を1人にするのではなくて、間宮先生と二人でお祭りを楽しんでもらう為って言ったら、今からお願いする事聞いて貰えますか?」


 そう言って加藤は間宮に詰め寄った。


「益々、分からなくなりました。」


「そうですよね。詳しい詳細は私からは言えないのですが、今の志乃は気が参ってしまう程、悩んでいる事があって、そんな状況でも自分の事ではなく、相手の事だけを考えた結論を出そうとしてて、志乃自身もどうすればいいのか解らなくなってしまっていて・・・」


「瑞樹さんが・・・・・

 でもそれを僕がどうこう出来るようには思えないのですが・・・」


「そんな事はありませんよ。だってその断片を間宮先生はすでに目撃しているはずですよ?」

 加藤は間宮の視線から目を逸らす事なく、真っ直ぐ見つめてそういった。


「え?どうゆう事ですか?」


「昨日の自主学時間に志乃は間宮先生の所へ行きませんでしたか?」


「!!  はい!  確かに僕の所へ来て、途中から様子がおかしくなったんです。原因が全然解らなくて困っていたのですが、加藤さんは何か知っているんですね!」


 昨日の瑞樹の話がでて、間宮の目つきが変わった。


「はい。でも私から言える事はここまでです。

 私は志乃が抱えている問題の答えを自分の本音で選択して貰いたいんです。

 その本心に気付かせる為の、時間と状況を用意してあげたくて、こうして先生にお願いしているんです。」


 そう言われても相変わらず、理由が理解出来ていなかったが、自分がその場にいる事で、瑞樹の何かがいい方向に向かうのであれば協力したいと考えた。


「わかりました。先生方にお断りする時間だけ頂ければ、瑞樹さんと一緒にいる事を約束します。」


 間宮のその返事を聞いて、加藤の顔がパッ!と明るくなり

「ありがとう!先生!こんな意味が解らないお願いを聞いてくれて!」


 間宮は苦笑いしながら

「本当に意味が解らないんですけどね・・・」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 瑞樹の元へ駆けつけた経緯を詳しく説明した。


「そっか。愛菜がそんな事を・・・

 どうりで・・・おかしいと思った。」


「加藤さんは瑞樹さんの事、親友だって言ってたけど、合宿前から知り合いだったのか?」


「ううん!合宿で知り合ったんだよ。それで親友とかやっぱり可笑しいかな?」

 苦笑いしながら、そう言った。

「いや!いいんじゃないの?親友とかってどれだけ、お互い本音で話が出来たかって事が大事なんだし、それって時間だけじゃないだろ。

 どれだけ時間を積み重ねても分かり合えない奴らだって、沢山いるんだしさ!」


「うん。そうだよね・・ありがと。」

「いい友達が出来て良かったじゃん。いい子だよな、加藤さんってさ!」

「うん!お節介が過ぎるのが玉に瑕なんだけどね。

 でもそんなところも含めて、愛菜は大切な親友なの。」


 そう言って目を閉じて幸せそうな表情になった。


 間宮はそんな瑞樹を静かに見守った。


「あ!先生達の飲み歩きを断るのって、大変だったんじゃない?」

 と、急に目を開けて間宮に話しかけてきた。

「ビックリした!急に話し出すなよ。」

「だって気になったんだもん!」


 間宮は人差し指で頬を掻きながら、気まずそうな顔をして

「・・・・・大変だった・・・」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

バスを降りて各自解散した後、講師達が集まった時に、間宮が切り出した。

「皆さんには申し訳ないのですが、僕は飲み歩きに参加できなくなりました。」


「え~~~!?間宮先生飲み歩き楽しみにしてたじゃないですか!?」

 奥寺が驚いて目を見開きながら訴えかけた。


「そうなんですが、ちょっと急用が出来てしまいまして・・・」

 間宮はそう言って右手で後頭部を掻きながら、申し訳なさそうな顔をした。


 これを聞かされて一番ショックを受けていたのは、藤崎だった。

「え?急用って・・・折角、浴衣を引き当てて間宮先生と・・・・」

 しょんぼりする藤崎を見て良心が痛んだが、ここは曖昧な事を言うと、

 さらに迷惑をかけてしまうから

「本当にすみません。あまり時間がないので、行きますね!ごめんなさい!」

 そう言って瑞樹の元へ向かおうとしたが、左手が引っ張られる・・・

 引っ張られる方を見ると、藤崎が手を握ぎりそのまま間宮を引き寄せるように力を込めて、距離を詰めた。

「どうしてもと言うなら仕方がありませんが、その代わり埋め合わせして頂けませんか?」

 少し怒ったような表情で間宮を見上げながら、条件を提案してきた。


「埋め合わせですか?何をすればいいですか?」

 間宮は少し不安そうな声で提案内容を確認した。


「この合宿が終わって、帰ったら近いうちに食事に付き合って貰えませんか?それが私からの条件です。」


「食事ですか・・・・えっと・・わ、わかりました!僕で良ければお付き合いします。」


 OKの返事を聞いて藤崎の表情が明るくなった。

「本当ですか?嘘じゃないですよね?言っときますけど、今度こそドタキャンは絶対ナシですからね!」


「あはは・・・わかっています。約束します。」

 藤崎の押しにタジタジになりながら、食事の約束をした。


 掴まれていた左手が開放されて

「それではいってきます。皆さん本当にすみませんでした。僕の分まで楽しんで来てください。それじゃ!」

 改めて講師達に頭を下げて瑞樹の元へ歩き出した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「てことがあって何とか抜け出してきた・・」

 ため息をつきながら、瑞樹にここに来るまでの経緯を話し終えた。


「そうだったんだ。無理させちゃったね・・・ごめんね。」

 申し訳なさそうな表情で謝った。


「ば~か!誰が悪いってわけじゃないんだから、謝るなっての!」

 そう言ってベンチから立ち上がった間宮が続けた

「さて!そろそろ祭り見物に行こうぜ!言っとくが楽しみにしてた飲み歩きを諦めてきたんだから、俺が満足するま付き合ってもらうから覚悟しとけよ!」


 人差し指を上に立てて、悪戯っぽく笑みを浮かべながら、そう宣言した。

 その宣言を聞いて瑞樹は満面の笑みを浮かべて


「まかせて!私も行きたい所が沢山あるから先生こそ覚悟してね!」

「OK!」

 間宮は両腕を組んで得意気に笑った。


「あ!そうそう!先生!さっき露店でメロンパンカステラってのがあったよ!」


「なに!?マジか!?それを先に言えって!

 よし!すぐにそこへ行くぞ!」

 そう言ってベンチに座ってる瑞樹に手を差し伸べた。


 その手を顔を赤く染めながら、ギュッと握って笑顔で立ち上がり

「うん!案内するね!」


 二人は仲良く並んで祭り見物の人ごみの中へ消えていった。










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