第22話 間宮のプレゼン act 1
「志乃~~!!!」
「うわっ!ちょ、ちょっと、愛菜!?」
センター試験を終えた翌日の事。
この日から自由登校になっていたが、麻美達が集まろうと声をかけらていた為、午前中だけ登校していた。
午後からはゼミ仲間とファミレスで集まり、受験したセンター試験の解答を照らし合わせ、その結果を元に色々と相談し合う事になっていた。
待ち合わせ時間の30分前に到着した瑞樹は、午前中に麻美達と答え合わせをしたセンター試験の問題と解答用紙を鞄から取り出した。
解答用紙に視線を落としていると、小走りで走る足音が聞こえたかと思うと、いきなり加藤に抱き着かれた。
完全に考え事をしていた瑞樹は、加藤のいきなりの抱擁に目を白黒させている。
周りの客達の視線が痛い。
騒がしい加藤を落ち着かせようとしたが、タッチの差で加藤の口の方が早い。
「ホントにありがと!志乃と松崎さんがいなかったら、ホントにヤバかったよ!」
「わ、分かったから、とりあえず他のお客さんに迷惑だから、座りなさい」
瑞樹は、まるで加藤の母親のような口調で、落ち着くように促した。
そう言われて、初めて自分が浮いている事に気が付いた加藤は、へへへと苦笑いを浮かべながら瑞樹の向かい側に席に座る。
瑞樹は溜息をつきながらも、加藤の自信に満ちた顔を見て、試験の手応えがよかった事に気付き安堵した。
「それで?もう答え合わせはした?」
「ううん!最近追い込みでろくに寝てなかったから、昼前まで寝てたんだ」
「そっか、じゃあ、私はもう学校でやってきたから、答え合わせ手伝うよ」
「うんありがと!」
加藤も自宅で用意した問題用紙と、解答用紙を鞄から取り出して、早速答え合わせを始めた。
「おっ!早速やってるねぇ!」
解答用紙に視線を落としていると、頭の上から声をかけられた。
「あ!結衣と佐竹君!センターお疲れ様!」
「おいっす!志乃と愛菜もお疲れさんだね」
神山達は軽く挨拶を済ませて、席に着いた。
佐竹は鞄の中から解答用紙等を取り出していると、さっきから加藤が全く喋っていない事に気付く。
「なぁ、加藤」
「うるさい!今、大事なところだから話しかけないで!」
「お、おぅ」
加藤は集中しきっていて、佐竹を全く寄せ付けない。
そんな加藤達のやり取りを眺めていた、瑞樹と神山も答え合わせを始める。
暫く、さっきまで賑やかだった瑞樹達の席に沈黙が訪れる。
書類をめくる音と、ボールペンを走らせる音だけが四人が座っている席を支配した。
「ねぇ、志乃。そっちはどうだった?」
そんな沈黙を破ったのは、一番集中していた加藤だった。
「ん、こんな感じだったよ」
そう言った瑞樹は、加藤に合わせ終わった結果をメモした紙を見せる。
そのメモと自分の採点結果を見合わせると、加藤の目がどんどんと大きくなり、口元の角度が上を向いた。
「……志乃、これ……ホント?」
「嘘言うわけないじゃん!ホントだよ!」
採点の結果、本命のI大は勿論の事、その上の偏差値を誇っている国立大学にまで、十分に手が届く結果が出た。
当日、松崎に落ち着かせてもらうまでの加藤の状態を考えると、本人が信じられないと思ってしまうのも無理はない好結果だ。
逆に言えば、あの時、瑞樹が機転を利かせて松崎を向かわせていなければ、この結果は絶対に得られなかったと考えると、加藤は背筋にゾッとする感覚を覚えた。
「おぉ!愛菜、凄いじゃん!」
「ホントだな!加藤って頭良かったんだな」
神山と佐竹が、加藤の採点結果を覗き込んで驚いた。
「ありがとう!結衣!あと、佐竹うっさいし!」
ホッと安堵した加藤は、いつもの調子を取り戻したようだ。
その後、神山と佐竹も答え合わせが終わり、2人共順当な結果を出せていた。
瑞樹達四人は、結局それぞれの答え合わせに集中してしまい、終わった途端に空腹な事に気が付いた。
「安心したらお腹空いた」
「あはは!そういえばお昼食べるの忘れてたね」
四人はその後、かなり遅い食事をとる事にした。
食事の時も話題はやはりセンターの結果を踏まえて、受験する大学の選択が中心だった。
だが、食事も終盤に差し掛かった頃、加藤が思い出したように瑞樹に違う話題をふった。
「そういえば、私達の卒業旅行の件だけど、間宮さんに話してくれた?」
「あ、ううん。実は今日の夕方に色々と相談があるかるからゼミに行くつもりなんだけど、その後に間宮さんに少し時間を貰ってるから、その時誘うと思ってるんだ」
「おぉ!センターが終わった途端、早速イチャイチャするつもりだな!?」
センター試験から解放された加藤が、瑞樹の予定を聞いて、ニヤニヤと口撃を開始した。
「ちがっ、イチャイチャって!何でそうなるかなぁ!」
顔を真っ赤にした瑞樹を見て、加藤達三人の明るい笑い声が響く。
凄く恥ずかしかったが、久しぶりに皆の屈託のない笑顔を見て、嬉しくなり瑞樹も一緒に笑っていた。
食事を済ませて、皆で食後のお茶を楽しんでいると、卒業旅行の話題が出た流れで目的地について話し合った。
ゼミ仲間で卒業旅行は凄くいいアイデアなのだが、学校の友達と行く旅行に費用がかなりかかる事になっている。
その事を考えると正直、豪勢な旅行をするのは現実的に厳しかった。
でも、折角なので多少の無理をしてでも、それなりの所へ行きたいという話になり、四人は頭を抱えて悩んでいた。
その時、この旅行の発案者である加藤がぼそりと呟く。
「……関西」
その呟きに他の三人の視線は、加藤に集中した。
「そう!関西!大阪!!皆、行った事ある!?」
そう問われて、考えてみると意外と全員関西方面に行った事がなかった。
「うん!大阪いいかも!」
「でしょ!やっぱUSJは外せないっしょ!あとはねぇ」
神山が乗り気だと分かると加藤のテンションが上がり、もうプランを練り始めている。
「ね、ねぇ!ちょっと待って!大阪に行くのは、私達的には楽しそうだけど、この旅行って間宮さんも誘うんでしょ?」
一気に話を持っていかれそうになり、瑞樹は慌てて話の腰を折った。
「うん、そうだよ?何か問題があるの?」
そう言われて、自分以外は間宮が大阪出身なのを知らない事に気が付いた。
「実は、間宮さんは大阪の人なんだよ。だから、旅行っていうより、帰省になっちゃうかなって思って」
「えぇ!?そうなの!?そんな感じ全くしなかったから、ビックリだよ!」
神山はそう言って驚いていたが、加藤はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべて見せた。
「丁度いいじゃん!今日間宮さんを誘うんだよね?」
「うん、そうだけど」
「なら、もし参加してくれるのなら、向こうで安く泊まれるホテルとか旅館を知らないか聞いてみてよ」
何が丁度いいのか分からない。
瑞樹が言いたかったのは、大阪だと旅行気分ではなくなるだろうから、行き先を変えないかと相談したかったからだ。
だから、その提案を否定しようとしたが、間髪入れずに加藤がマシンガンの様に押しに押してくる。
恋愛事には消極的なのは似てるけど、こういうイベントに対しての積極性は自分とは正反対で助けられた事もあった。
でも、今回ばかりは突っ走り過ぎだと思う。
「いや、だからね」
「志乃が言いたい事は分かってるよ。でも、その心配はいらないって!」
素直に話そう。
正直そう言った加藤に、初めてムッとした。
私より、間宮さんの事を理解している風の顔が妙に癇に障った。
そこまで言うなら、証明してもらおうじゃん!
「わかった!じゃあ、愛菜が言った事そのまま話してくるよ」
勢いよく席を立った瑞樹は、少しジトっとした目で加藤を顔を見ながら、そう返した。
そのまま財布から自分のお代をテーブルに置いて、帰り支度を済ませて少し席を離れる。
「そのかわり、もしこの事を話して間宮さんが行かないって言っても、私は知らないからね!」
「ちょ、ちょっと!瑞樹さん、落ち着けって」
豹変した瑞樹の様子に、驚いた佐竹は焦った表情で瑞樹を宥めようとして立ち上がった。
「先に帰るね。お疲れ様!」
佐竹の言葉を無視して、瑞樹は一方的に加藤達別れて店を出て行ってしまった。
「愛菜?何で志乃を揶揄ったりしたの?」
テーブルに肘をついた手を顎に乗せた神山が、加藤を横目で見ながらそう問う。
「別に揶揄ってなんていないよ。ただ、あの子は間宮さんの事が好き過ぎるんだよ」
「ん?それの何が悪いの?」
好き過ぎる感情を指摘した、加藤の意図が掴めない神山は首を傾げて再度そう聞いた。
その質問には佐竹も同意しているようで、無言で頷く。
「悪いわけじゃないんだけど、好き過ぎて間宮さんに気を使い過ぎてる気がしたからさ」
加藤はそこまで話すと、瑞樹が出て行った店の出口の方を見つめる。
「もし、間宮さんと上手くいったとしても、あのままじゃ近いうちに疲れちゃうと思うんだよね」
「なるほどね」
加藤の真意に気が付いた神山は、顎を乗せていた手を膝元に戻して納得した表情をした。
「え?どゆこと?意味が分からないんだけど」
だが、佐竹はまだ何も分かっていないようだ。
「だから、私も少し気にはなってたんだけど、最近の志乃って間宮さんに対して、少し過剰になってる気がしてたんだよ」
オロオロしている佐竹に、今度は神山が説明を始める。
「え?そうかな。いつも通りの瑞樹さんに見えたけどな」
瑞樹の変化に気が付いていない佐竹に、加藤が溜息をついて、神山の説明を補足する為に口を開く。
「これだからアンタは……はぁ……あのね!恐らく志乃にはライバルがいるんだよ。そのライバルを気にしすぎて、間宮さんに嫌われないようにって事ばかり考えてるんじゃないかな」
その補足説明に加藤はうんうんと頷く。
「ラ、ライバルって誰なんだよ!」
佐竹は予想もしていなかったと言わんばかりに、目を見開いて加藤にそう詰め寄った。
「そこまでは知らないけど、多分そうなんだと思う」
そう話すと、無言で神山と佐竹も瑞樹が出て行った方をジッと見つめていた。
最近の瑞樹は、らしくないと感じていた。
何だか必要以上に、無理して背伸びをしているように見える。
そんな事をして、自分を偽って得た結果などどっちに転んでも後悔する事になる。
だから、加藤のあの態度は加藤からの忠告であり、親友を心配する優しさでもある。
自分の気持ちに、気が付かなくてもいい。
でも、間違ってしまっている自分の気持ちには気が付いて、本当の自分で勝負して欲しい。
そんな想いを抱きながら、加藤は暫く瑞樹が立ち去った方角を見つめていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
予定通りゼミに向かい、用件を済ませた瑞樹は間宮に連絡をとり、いつものホームで間宮を待っていた。
昼間の加藤とのやりとりが、ずっと頭から離れない。
いくらなんでも、あんな態度とる事なかったよね……
愛菜、怒ってるかな
彼女が意味もなくあんな事を言う子ではない。
それは冷静になった今なら、断言できる。
でも、じゃあ、何故……
「よう!待たせちゃったか?」
悶々と昼間の事を考えているうちに、ホームに間宮が現れていた。
……のだが、加藤の事を考え込んでいて、間宮に気が付いていなかった。
「ん?瑞樹?」
「……」
「お~い!瑞樹?」
「……」
全く間宮の呼びかけが、耳に届いていない瑞樹の膝元に何かが覆いかぶさったてきた。
「うひゃ!」
短いスカートを着ていた為、肌に触接サラッとした感触を感じた瑞樹は、思わず可笑しな声を出した。
「あはははは!」
愉快そうな笑い声が響く。
ようやく、その声に気が付いた瑞樹は、下を向いていた顔を見上げた。
そこには、少し苦笑いを浮かべている間宮が立っていた。
「あ、間宮さん」
間宮の表情を見て、今の状況を理解した瑞樹は慌てて立ち上がろうとした時、さっきまで痛みを感じる程、寒さを感じていた膝元が温かい事に気が付いた。
視線を膝元に落とすと、そこには温かそうなひざ掛けが乗せてあった。
「……これって」
「あぁ、俺の部署の事務員やってる子が、出先で新しいひざ掛けを買ったらしくて、貰い手を探してたんだ。ここで話をするのは寒いだろうと思って、貰ってきた」
まったく、あざとい男だ。
でも、そんな計算でした事ではなく、天然でした事な分、質が悪い。
本人にそんな気が無くても、勘違いしてしまうじゃないか。
「ありがと」
「おう!それと、これな!」
そう言って、間宮がいつもここで会う時に買って来てくれるミルクティーの缶を手渡した。
「んで?何があったんだ?」
受け取った缶のプルタブを開けていると、間宮が瑞樹の隣に座りながらそう聞いてくる。
その質問が、今日呼び出した話の事を指していない事は、すぐに理解出来た。
「……何がって?」
「ん?何か難しい顔して、考え込んでたみたいだったからさ」
やはり、さっきまでの様子を見られていたようだ。
正直に話すと、本来の目的を話す時に、余計な気を使わせてしまう気がした。
だが、そんな事を考えたところで気が付いた事がある。
加藤は、こう言いたかったんじゃないかと……
間宮に気を使い過ぎて、自分の考えを伝えられていないのではないかと
うん!きっとそうだ!
その事に気が付いた瑞樹は、加藤とのトラブルを話す必要がなくなり、肩の力がスッと抜けた。
「うん!大丈夫!今、自分の中で解決出来たから」
「そうか?それなら、無理には聞かないけど」
「心配かけて、ごめんね」
そう話してから、瑞樹は軽く息を吐いて、今日ここに間宮を呼び出した用件を話し始めた。
「え?ゼミ仲間の卒業旅行に俺が?」
間宮が、目を見開いて驚いている。
それはそうだろう。高校生同士の卒業旅行に、10歳以上も年齢が離れた男に一緒に行かないかと誘われたのだから。
間宮は、無言のまま動かない。
「駄目……かな」
「いや、駄目っていうか、瑞樹達に俺がついていったら気を使わせるだけだろ」
予想通りの返答だった。
実際、加藤が間宮を誘おうと言い出した時、瑞樹も同じ事を考えたのだから。
「うん。私もそう言ったんだけど、皆、気を遣う気なんてなくて、絶対楽しそうだから誘ってきてって言われたんだ」
「そう言ってくれるのは、嬉しいけどなぁ」
間宮は、少し困った表情を浮かべて、言葉の歯切れが悪くなった。
恐らく、このまま黙っていたら、断られると予想出来た瑞樹は追い打ちを仕掛ける事にした。
「そ、それに」
「ん?」
「それに、わ、私も……間宮さんと旅行がしたいって思って……ます」
瑞樹は頬を赤らめて、上目遣いでそう呟くようにそう話した。
間宮は、瑞樹のその仕草にめっぽう弱い事はすでに実証済みだ。
勿論、瑞樹はそれを計算で行ったのではなく、ただ、雰囲気で本音を漏らしただけなのだが。
それに、早速加藤の忠告を実行した事にもなる。
「ま、まぁ、本当に皆がそう思ってくれているなら、断る理由はないけど……ただ」
暫く黙っていた間宮は、前向きな返事をしたあと、気になっている事を話し出した。
「瑞樹達って、この旅行以外にも学校の友達と旅行いくんだろ?瑞樹は確か北海道だったっけ」
「あ、うん。そうだけど?」
「現実問題な話、旅費とか大丈夫なのか?」
間宮が心配していた事は、学校の友達と旅行に行って、更に、ゼミ仲間達とも行くとなると、かなりの旅費がかかってしまうだろうと心配していた。
「うん。正直キツイけど、こんな機会って中々ない事だから、親に借りるなりして大学生になったらバイトして返す事にしてるんだ」
「そうか。で?肝心な事聞いてなかったんだけど、どこに行く事になってるんだ?」
そう聞かれた瑞樹は、少し表情を曇らせながら大阪、京都の二泊三日を考えていると話した。
「大阪と京都!?」
やはり、予想通りの反応を示した間宮に対して、瑞樹は自分が思っていた事を話し出した。
「やっぱり大阪が目的地だと間宮さんは、旅行って気分になれないよね?」
「まぁ、確かにそうかもだけど……」
そこまで話と、間宮は指を顎に当てて少し考え込み始める。
瑞樹は、もう間宮の判断に任せる事にして、返事を黙って待つ事にした。
暫く待っていると、顎に当てていた指をパチンと鳴らして、隣で返事を待っている瑞樹の方を見る。
「目的地が大阪と京都なら、瑞樹達の負担を大幅に減らす事が出来るプランがあるんだけど、のるか?」
間宮は、そう言ってニヤリと笑みを浮かべる。
まったく予想もしていなかった返答に、瑞樹は目を見開いた。
「プラン?そんなプランがあるの?」
「あぁ!でも、その前に条件ってか頼みたい事があるんだけどいいか?」
「頼みたい事?何?」
「その旅行に松崎も誘っていいかな」
「え?松崎さん?私はいいと思うけど、他の皆に聞いてみないとだね」
「そうだよな。んじゃ、聞いておいてくれよ。松崎が来て、目的地が大阪と京都ならかなり瑞樹達の負担を減らせると思うから」
「どういう事?一体どんなプランなの?」
間宮は瑞樹の質問に対して、ニヤリと笑みを浮かべて詳細の説明を始めた。
まず、現地までの移動手段を、飛行機や新幹線では個人負担が大きくなってしまう。
そこで、ワンボックスを一台レンタルして、高速を使って移動する。
その時に発生する車のレンタル料、高速代とガソリン代は間宮と松崎が支払う。
運転も2人で交互に行って移動する。
そして宿泊代は、京都は松崎の知り合いが旅館を経営して、定期的に安く利用させて貰っているらしいから、そこを格安で使わせて貰って、大阪は……
「ちょ、ちょっと待って!何も間宮さんと松崎さんがそんなに負担する事ないじゃん!」
「いや、これくらいは出させてくれ。でないと、このメンツで旅行に行って、完全に割り勘にしていたら、俺達の立場ってもんが無くなるからさ」
「……でも」
「それに松崎も絶対同じこと言うだろうしな」
「それなら、そのプランをそのまま伝えるよ。あ、話の腰を折ってごめん!それで大阪は?」
「あぁ、大阪の宿泊先は、俺の実家を使えばいいよ。勿論、無料だしな」
「え?えぇ!?間宮さんの実家!?」
てっきり目的地が大阪だと、帰省するみたいで楽しくないと言われると思っていた瑞樹は、予想の斜め上からの提案で驚いた。
「でも、実家にそんな大勢で押しかけたりしたら、迷惑かけちゃうよ」
「ん?大丈夫だ!部屋なら全然余ってるし、それにウチの両親に会った事あるだろ?とにかく、賑やかな事が大好きだから、きっと喜んで承諾するよ」
間宮はそこまでして、やっと気兼ねせずに一緒に行けるから遠慮しないで欲しいと訴えた。
瑞樹も、そんな間宮の気持ちを断るのは、逆に失礼だと考え一旦その好意を受け取って、後日皆に話す事を約束した。
間宮さんの実家か。
間宮さんのお父さんやお母さん、それに康介さん元気にしてるかな。
皆がこのプランに賛成してくれたら、間宮さんの家族にまた会えるのか。
うん!益々、この卒業旅行楽しみになってきた!
絶対に合格して、思いっきり楽しんでやるんだから!