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29  作者: 葵 しずく
第5章 それぞれの想い
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第21話 センター試験

 1月19日早朝


 目覚ましが鳴る前に体を起こす。

 軽く深呼吸をした。


 うん、大丈夫。落ち着いてる。


 気が張り過ぎていないか意識を中に向けたが、思っていたより落ち着いているようだ。

安堵してベッドから一気に降りた。


 カーテンを開けても、この季節のこの時間帯は真っ暗だ。

 瑞樹は一度両手を組んで天井に掲げて、全身を伸ばした。


「ん~~~~!はぁ!!!!」


 深く息を吐きだして、血液が体中を急激に流れ出したのが分かる。

 少しドキドキはしているが、この高揚感は気持ちいいと感じる。


 着替えようとパジャマのボタンに触れた時、ベッドに置いていたスマホからLineのメッセージが届いた事を知らせる通知音が、連続で鳴り響いた。

 何事かと、スマホを手に取って通知の画面を立ち上げると、以前、ゼミ仲間だけのLineグループを作っていた掲示板に、グループメンバーが次々に書き込みをした通知だった。


 皆それぞれ、朝の挨拶から始まって、お互いの健闘を祈るような内容のメッセージを書き込んでいた。


メンバー全員がセンター試験を受ける事になっている。

だが、学校がバラバラな為、指示された試験会場もバラけていて、皆各々で会場に向かう事になっていた。


 クスッと笑いながら瑞樹も、

『おはよう!皆!いよいよセンター試験だね!皆の検討を祈ってるよ!私も頑張る!(´▽`*)』

 そう書き込んでスマホをまたベッドに置こうとした時、メンバーでまだ書き込みをしていなかった加藤が書き込んだ通知が届いた。


『お、おはよ!み、みんな!いよいよ、始まったね!落ち着いて、が、頑張ろう!!』


 そんな書き込みを見て、他のメンバーからお前が一番緊張してんじゃん!とか、もう!愛菜ったらボケて私達の緊張をほぐしてくれたの?超余裕じゃん!などのレスが書き込まれた。

 確かにわざわざLineの文章で吃らせる必要はない。それに普段の加藤のキャラクターだとこうして笑わせて、皆の緊張をほぐそうとする事をするかもしれない。

 だから、皆の反応に特に可笑しいところはない。

ないのだが、瑞樹はこのメッセに違和感を覚えて、直ぐ加藤に電話をかけた。


「ひゃ、ひゃい!」

 ワンコールも呼び出さないうちに、加藤が電話に出たのだが、瑞樹の嫌な予感は当たっていたようだ。

「おはよ、愛菜」

「お、おお、おはよっ」

 吃る声と一緒に、電話越しにガチガチと何かが当たる音が聞こえてくる。

 この音は、恐らく加藤の上下の歯が当たる音だと、瑞樹はすぐに気が付いた。

 思っていた以上にガチガチに緊張しているようだ。


「な、なんで……わ、わかった?」

「分かるって!親友の私をナメないでよね!」

「そ、そっか……ごめんね、志乃……どうしよう」


「……わた、私ね」

「ねぇ、愛菜!」

 加藤が何かを訴えようした時、瑞樹はその言葉を遮った。

「今日別々で行く予定だったけど、よかったら待ち合わせて少し話さない?」

 瑞樹は優しい口調でそう提案した。

 加藤は、戸惑いながら申し訳なさそうに声を聞かせる。

「でも、こんな状態じゃ、志乃に迷惑かけるし……それに」

「いやいや!愛菜さん!これは決定事項なのですよ!」

 瑞樹はまたも加藤の話を遮り、決定事項だから拒否権はないと言い切った。

 電話では、加藤を落ち着かせる事が出来ないから、直接会って話を聞かせてと付け加えて、ようやく加藤はその提案を受け入れた。


「それじゃ!後でね!」

 そう言って電話を切ると、瑞樹は壁に掛けてある時計に目を向ける。

 そして徐に電話を切ったばかりのスマホをまた操作しだした。


 その後、着替えを済ませて、リビングへ降りようとすると、下からいい香りが漂ってくる。

 その香りに釣られるようにリビングのドアを開けると、父親がソファーに座って新聞を読み、キッチンでは母親が朝食の支度をしていた。


「……おはよう。どうして2人共、こんなに早いの?」

 不思議そうな顔をして、2人にそう問いかけると、両親が仲良く同時にズッコケかける。


「どうしてって!そりゃ、志乃の試験があるからに決まってるだろ」

 父親が呆れ顔でそう話すと、キッチンにいた母親からも言葉を投げかけられる。

「どこの世界に子供が大切な日に、呑気に寝てる親がいるのよ!」

 溜息交じりに届いた言葉は、温かくて気持ちを癒してくれた。

 毎日遅くまで働いている両親に、ゆっくり休んで貰う為に、静かに家を出るつもりでいた。

 共働きで働かせてしまっているのは、自分の学費にお金がかかっているからだと自覚しているからだ。


「さぁ!出来たわよ!食べましょう」


 食卓には温かい和食が並べられた。

 母親の呼びかけに父親と瑞樹が食卓に着くと同時に、希が大きなあくびをしながらリビングに降りてきた。


「おはよ~」


 目を擦りながら、眠そうにそう挨拶するとパジャマ姿のまま希も食卓に着く。

「アンタまで起きてくる事なかったのに」

「ん~~だって、いつも通りに起きたらご飯なさそうだったから」


 それが希の照れ隠しなのは皆分かっていた。

 家族皆が応援してくれているのが、強く実感出来て胸が熱くなる。

 家族の温もりに触れて、更に緊張がとれてこれから受ける試験が楽しみにさえ感じてきた。

 母親が作ってくれた味噌汁が、体中に染み渡る。

 よくお袋の味とか聞くが、その意味が少し分かった気がした。


 いつもはバタバタと食べる朝食が当たり前になっていたが、今朝はゆっくりと味わって食べてから、支度を入念に済ませて家を出る。


「志乃!落ち着いてね!」

「お前なら普通にやれば大丈夫だ!」

「まぁ、あれだけ頑張ってたんだから、大丈夫っしょ!」

「うん!ありがと!それじゃ、いってきます!」


 家族に見送られて家を出る。

 いつもより早い時間に家を出ると、寒さもいつもより厳しかったが、母親が作ってくれた温かい朝食と、家族揃って食べた時間が瑞樹の体と心を温めてくれたおかげで、たいして気になる事なく自転車を走らせる。

 ほぼ毎日通っている並木道が枯れた落ち葉が風で舞い、カサカサと音をたて瑞樹を迎える。

この季節では当たり前の光景だが、何だかこの音が頑張ってこいと励ましてくれているように感じる程、今の瑞樹は充実している。

 今までしてきた努力に不安は感じない。

 出来る事はやってきたと胸を張って誰にでも言える。


 見ててね!間宮さん!


 瑞樹は、まだ人の数が疎らな駅の構内へ消えていった。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 センター試験 同日


「……」

 瑞樹に指定された時間に、最寄り駅のホームで一人白い息を吐きながら、加藤は瑞樹が到着するのを待っていた。

 瑞樹の提案で予定していた時間より30分早く待ち合わせて、話をする事になっていた。

 体中の震えが止まらない。

 それは決して寒さだけが原因ではなく、極度の緊張からくるものだ。

 家を出る時は、家族に心配をかけまいとどうにか誤魔化してきたが、本当は逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。


 ホームに電車が入るアナウンスが流れる。

 待ち合わせ時間から考えて、この電車に瑞樹が乗っているはずだ。

 加藤は迷子の子供が親を探すような表情で、目の前を減速しながら通過する車両の中に目を凝らして瑞樹の姿を探した。

 動体視力には自信がある方だった加藤だったが、瑞樹の姿は見つけられない。

 電車が完全に停車して、ドアが一斉に開くとホームで待っていた数人の乗客が乗り込むだけで、降りてくる人影は見当たらない。


 加藤の不安が大きくなる。

 もしかして遅れているのではと、慌ててスマホを見るがそんな連絡は来ていない。

 震える手でスマホを握りしめながら、電車に視線を戻したが、はやり誰も降りる事なく、電車のドアが閉まり次の駅を目指して動き出した。


 慌てて手に持っていたスマホで、瑞樹に連絡をとろうとアドレスを立ち上げたところで、操作していた指が止まる。


 きっと何かあって来られなくなったのだろう。

 なのに、自分の我儘の為にこれ以上無理を言うのは間違っている。

 そう思い直してスマホを鞄に仕舞った。


 ……情けない。こんなに自分が弱いとは思わなかった。

 何が元気印のムードメーカだ。

結局他人の背中を押すだけで自分の事となると、何も出来ない弱虫じゃないか。


 上り線、下り線とも電車がなく人気のなくなったホームに冷たい風が吹き抜ける。


 ……グスッ、ヒック


 静かになったホームに小さい嗚咽だけが聞こえる。

 今朝起きてから必死に耐えていた涙が、とうとう零れ出した。

 もう、どうしていいか分からない


 目の前が歪みぼやけていく。

 俯き目を閉じて視界を遮り、何とか気持ちを落ち着かせようとした。

 その時、頭の上に何かがポンと乗せられた感覚があった。

 目を開けると、溜まった涙がポロポロと地面に落ちた跡が視界に入る。

 その跡の横に人の影があるのに気が付いた時だった。

「なにやってんの!」

 頭の上から声が落ちてきた。

 声をかけられた事もだが、その声に聞き覚えがあった事で、肩がピクッと跳ねる。

 ゆっくりと見上げると、そこに加藤の頭を撫でているダウンコートを羽織っていたが、下はジャージ姿の松崎がいた。


 松崎の顔を見た時、加藤の思考は停止して身動きがとれなくなる。

 あまりにも都合が良すぎる現状に、思考が追い付かないようだ。


「たく!何て顔してんだよ」

 目を見開いたまま、固まっている加藤の顔を覗き込んだ松崎が苦笑いしながらそう言ったが、その声は今まで聞いた事がない程優しい声色だった。


 ポスッ!


 ポケットに手を入れてハンカチを取り出そうとする松崎の胸元に、加藤が無言で顔を埋めた。


「え?おい、愛菜ちゃん?」


 少し驚いた口調でそう話しかけたが、加藤は無言のまま両腕を松崎の背中に回して、ギュッと力を込める。

 体の震えが伝わってくる。

 そして再び小さな嗚咽が聞こえてくる。

 その声を聞いた松崎は上げていた両腕をゆっくり降ろして、加藤を優しく抱きしめた。

 抱きしめられた事を感じた加藤の両手に更に力が入るが、その手からも震えているのが伝わる。


 松崎は何も言わずに、ただ加藤が落ち着く様に優しく適度に力を込めて、自分の体に加藤の体を密着させる。


 その間、電車が一本ホームに入ってきて、僅かだが人の往来があった。だが、松崎はそんな視線など気にせずに加藤が落ち着くのを待つ。

 やがて、嗚咽が聞こえなくなり、感じていた体の震えも収まった。

 加藤は回していた腕の力を抜いて、ゆっくりと松崎から体を離すが、その表情は俯いたままで見えない。

「服を汚してしまって、ごめんなさい」

 俯いたまま掠れそうな声でそう告げると、また口を閉じた。

 そう言われてから松崎は自分の胸元を見ると、ネクタイの一部とワイシャツが涙で滲んでいた。


「あぁ!こんなのほっとけば乾くんだから気にすんな。そんなことよりだ!」

 そう返した松崎は、ポケットから取り出したハンカチを加藤にそっと差し出す。

「そんなクチャクチャな顔で、センター受けにいくつもりか?」

 加藤はもうすでに泣き疲れたような顔をしている。

 その顔は涙の跡が何本もついていて、目も腫れていた。

「……すみません」

 加藤は差し出されたハンカチを受け取り、軽く顔に当てて涙を拭き取る。


「それと、ほれ!」


 加藤が顔を拭いている間に、自販機で買ってきたミルクティーの缶を差し出した。

「あ、ありがとうございます」

 ハンカチと引き換えに缶を受け取り、ようやく松崎と目を合わせた。


「……あの、どうしてここに?」

「あぁ、瑞樹ちゃんから電話があってさ。この時間にここへ行って愛菜を助けて欲しいって頼まれたんだよ」


 松崎の胸で泣いている時、予想はしていた。

 恐らくそうなのだろうと……

 そうでないと、瑞樹が現れない理由が見つからなかったからだ。


「松崎さんにまで迷惑かけてしまって……すみません」

「ん?別に迷惑なんて思ってないって!受験本番で逃げ出したくなる気持ちは俺にも経験あるしな」

「松崎さんも?」

「おう!特に俺なんて愛菜ちゃんみたいに、やることは全てやったなんて言えない立場だったから特にな」


 加藤は話をしながら、受け取ったミルクティーを一口飲んで、大きく深呼吸をした。

そして、改めて松崎の顔を見上げた。

「うん!もう大丈夫です!おかげで落ち着きました!」

「そっか!そっか!」

「はい!」

 そう言って加藤は、今日は全く見せていなかった彼女らしい笑顔を白い息の向こうの松崎に見せる。


 やがて次の電車が到着して、松崎に行ってこいと背中を押された加藤は、迷う事なくその電車に飛び乗った。


「松崎さん!今日は本当にありがとうございました!私、頑張ってきますね!」

 車内に入ってすぐに、ホームにいる松崎に振り返って、元気にそう宣言した。

 もう、いつもの元気印の加藤そのものの顔を見せている。

「おう!愛菜ちゃんなら大丈夫!頑張ってこい!」

「はい!いってきます!終わったら遊びに連れて行って下さいね!」

 そう言って加藤は敬礼のポーズをとり、片目を閉じた。

「ん!楽しみにしてるよ」

 そう笑顔を向けたところで、ドアが閉まり電車は次の駅に向けて走り出した。


 加藤は走りだした車内で、ポケットに仕舞っていた松崎から貰ったお守りを取り出して、胸の前でキュッと両手で包み込み目を閉じた。

ふぅっと息を吐き、これから受けるセンター試験に意識を集中させた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 センター試験が行われる会場の最寄り駅に着いた瑞樹は、会場を目指して歩いている。

 同じ方向に歩いているのは、殆ど同じ場所でセンターを受ける受験生ばかりのようだ。

他の受験生は歩きながら参考書や、カードに視線を落ちして最後のチェックに余念がない。

 そんな中、瑞樹の手は鞄を持っている以外、何も仕事をしていない。

 目線も落とす事なく、目的地に向けて真っ直ぐ前を向いている。


 会場前に到着すると、スマホが震える。

画面を立ち上げると、加藤からLineが届いていた。


 『やられた!ありがと!!』


 シンプルにそれだけ書き込まれたメッセを読んで、瑞樹は加藤が何を言っているのか理解して、悪戯っぽく笑みを浮かべている。

 こんな時、親友より好きな人が傍にいる方が勇気が出るのは経験済みだ。

 少し寂しい気もするが、親友がベストな状態で受験に挑める事が大事だから、これで良かったのだと安堵の表情を浮かべた。


 『今度何か奢ってねww』


 冗談っぽくそれだけ返して、スマホを仕舞おうとした時、またスマホが震えた。

 今度は一回の振動ではなく、数回続いてまだ止まらない。

 今度は加藤が電話をかけてきたと思い、まだ時間にはかなり余裕がある為、クスクスと笑みを零しながら電話に出ることにした。


「もしも~し!お礼ならこの前一緒に行ったカフェのスイーツでいいよ」

 電話に出るなり、相手の声を聞く前に一方的にそう話した後、瑞樹の顔が硬直する事になる。


「ん?スイーツ?何の事だ?」


 あ、あれ?愛菜じゃない……ってこの声って


「ま、間宮さん!?」

「え?そうだけど、通知画面見てなかったのか?」

 加藤だと思い込んで可笑しな事を言ってしまい、急激に顔を赤らめた。

「プッ!ククク……あはははは!」

「え?え?」

 電話越しに、明るい笑い声が聞こえてくる。

 その笑い声に、呆れられたと変な汗が流れそうになる程、瑞樹が焦っていると直ぐにその焦りがスッと消える言葉が耳元に届いた。


「緊張してるんじゃないかと思って電話したんだけどな。そんな冗談を加藤に言えるんだから、どうやら杞憂だったみたいで、安心したよ」

 間宮は、瑞樹の精神状態を心配して電話をかけてきた。

 瑞樹にはその気持ちだけで、寒空の下、心が温かくなるのを感じる。


「うん!大丈夫だよ。それとね、今ね……私」

「うん」

「今、私、K大の前に立っているんだよ!」

「K大に?そっか、瑞樹の学校が受けるセンターの会場はK大だったのか」


 今、瑞樹はセンター試験の会場になっているK大の前にいたのだ。

 初めて見る目標にしていたK大の佇まいに溜息が漏れる。


「ここが間宮さんが通っていた大学なんだね」

「あぁ、そうだな。どうだ?K大は」

「うん!思わず溜息がでちゃったよ。何か圧倒される感じかな」

「怖くなったか?」

「ううん!変かもしれないけど、凄くワクワクしてる」


 そう言う瑞樹の目はキラキラと輝いていた。

 腰が引けているわけでもない。慢心しているわけでもない。

 ただ、今日の瑞樹は体中から充実感が溢れている。


「ワクワクか!それは凄いな!」

「そうでしょ!」

「あぁ!俺なんて気持ちを落ち着かせるのに、苦労したもんだけどな」

「あはは!オドオドする間宮さんって見てみたいかも!」

「ば~か!……なぁ、瑞樹」

「ん?」

「試験、楽しんでこい!」

「うん!ありがとう!いってきます!」


 そう話して電話を切った。

 目を閉じてゆっくりと深呼吸してから、再び目を開くと瑞樹の目は、自信に満ち溢れていた。


 中学の事件から、去年、間宮と出会うまでの瑞樹からは想像もできない姿だった。

 いや、あの事件に巻き込まれる以前からでも、今の瑞樹には到底及ばないだろう。

 瑞樹は間宮と出会って、色々と変化してきたが、決して戻ったわけではない。

新しく、強い女の子に生まれ変わったと言ったほうがいいのだろう。

 美しく、優しく、気高く、そして何よりも強い心を手に入れた彼女は、もはや無敵だと言える。

 それは心の中に、いつも間宮が存在しているから。

 間宮を想う自分に、少しずつ自信が持てるようになったから。


 そして、嫌いだった自分を好きになれた事が、今の瑞樹を形成している。


 立ち止まっていた歩みを再開させる。


 瑞樹自身が望んだ未来を掴む為の、戦いの場に向かって。


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