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放課後 その1

お久しぶりの更新です

 授業が一通り終わり、帰りのHRが終われば、生徒はそれぞれ部活に向かったり、駅に向かったり、下校中に寄り道をしたりと様々な様相を見せる。

 翻って僕に限っていえば部活に行くわけでもなく、教室でテニス部がコートで球を打っているのを見ながら本を読んでいた。

 あぁ、これが平和か、と享受するように僕は本当にいつも通りに過ごす。それは僕の隣で同じように本を読む振りをしながらチラチラとこちらを伺う奴の存在から目を逸らしている僕の弱さである。しかし、今ばかりはそれを受け入れよう。

 だってしょうがないじゃないか!めんどくさいんだもん!

「結希ちゃーん?本読み終わったー?」

 痺れを切らしたのか、厄介者が間延びした声で話しかけてきた。全く、なぜいつまでも僕を待っているのか。正直理解出来なかった。

 僕は彼女のその声を合図に仕方なく、本をカバンの中に詰め込み、帰る準備をする。だが、準備と言っても本を詰め込んだカバンを持つだけなのだが。

「おわった。後は家で読むし」

 言うと東八重はぱっと跳ねるように立ち上がり、即座にカバンを携える。

「じゃあ!レッツ帰宅だー!」

 同時に東八重は僕を通り過ぎて教室の出入口まで向かい、立ち止まった。

「早く行こうぜぇー」

「はいはい」

 すると再び東八重はくるりと半回転し、そそくさと歩き出す。

 テンションを高くしすぎだと東八重の背中にチョップをしながら僕はそれについて行った。


 さて、そんなわけで生徒玄関にて。慣れた仕草で僕が靴箱を探し当て、履き替えている中、ふと東八重をみると彼女は履き替えることをしていなかった。

「どうした?見つからないのか?何番だ?」

 東八重は少し顔を赤くして言った。

「えーと。あのー。靴がない的な?」

「は?どういうことだ?」

 頭を掻きながら言う。

「いやぁー。なんと言いますか?あのー。上靴で来ちゃったと言いますか、外靴を忘れたと言いますかー?って感じ?」

 ま、さ、か。

「家からずっと上靴で来たのか!?」

「ちょ、大きい声出さないでー!私でもこれは恥ずかしいとは思ってるよ!」

 手を目の前でブンブンする人を僕は今日初めて見た。

「………絶望だ」

 そう、絶望だ。ここから家まで何キロあると思ってるんだ?ってかなんで気づかずに学校までこれたんだ?

「お母さんに送ってもらったからかなぁ……?」

 思考が声に漏れていたのか、東八重が僕の疑問に答えた。

「な、なるほどね。それならギリギリ有り得るか」

「ギリギリって……酷いなぁ」

「いや、上靴で学校に来るお前の方が酷いぞ。主に頭が」

「まだ、禿げてないよー。どちらかと言えば結希ちゃんのほうが禿げる可能性高いし」

「別に頭皮の話はしてねぇわ。僕が言ってるのか脳みそだよ。で?なんか帰る手段はあるの?」

「うーん。お母さんは仕事だし、お父さんは……やだし。誰も送ってくれる人いないかも?」

「お前は楽することしか頭にないのか」

「それか、結希ちゃんが昔みたいにおんぶしてくれるとか?」

「1番無いわ」

「じゃあ、どうするのの?」

「僕が聞きたいよ」

 さて、どうしようか。僕の両親だって共働きだし送迎は無理だ。それはもちろん東八重も同じ。

 いや、なんか考えるのめんどいな。

「靴下履いてるか?」

「うん」

「よし。じゃあ、上靴脱げ」

 東八重は言われた通り靴を脱ぐ。

「靴箱に仕舞え」

 仕舞う。

「よし。じゃあ、行くか」

 東八重は──

「っておかしいでしょー!!!」

 地面に足を付けなかった!成長したなぁ。さすが高校生。

「なに我が子の成長を喜ばしげに眺める親の目をしてるんだよ!」

「だってそれしかもうないよ。大丈夫大丈夫。ある程度歩いたらおぶってあげるよ」

 この貧弱な女の身体で出来ればだけど。

「ならばよーし!ふふふ。しょうがないから我慢してあげよー!」

 そして、勢いよく東八重は地面を踏みしめる。そして、その着地点には尖った石が。

「いたーーい!!!!」

 東八重の悲鳴が陸上部のスターターの音をかき消した。

次回→放課後 その2

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