転校生 その1
トラブルは突然に。
トラブルというのはいつでも唐突で、小説のようにそこかしこに伏線が張られていることもなく、ゲームのようにフラグを必要とせず、虫の知らせなんて役に立たない。
「こんにちはー!今日からよろしくお願いしまーす!」
そう、いま教卓で先生の横でキラキラした笑顔をクラス中に振り撒きまくっているあいつのように唐突にトラブルは訪れる。そして今の俺にとってのトラブルは他のどれでもなくあいつである。
「やっほー!」
俺に手を振る。俺以外のクラスメイトには目もくれずに俺だけを見て俺に向かってあいつは手を振っていた。
俺の部屋に強引に押し入り、パンツを忍ばせ嵐のように帰ったはずのあいつが今俺の目の前にいる。
「ど、どうしてこうなったんだ」
俺はいつも通りに過ごしたはずだ。いや、今日は初日だったために多少は変わったことは在ったも知れないが、しかしそれは許容範囲でそれ以外にはなにもしていない。
生徒玄関で新しいクラスの確認をして割り当てられた靴入れを利用して靴を履き替えてまっすぐに教室に来た。
俺の通っている高校には集会とかいうものはない。元々はあったそうだが、現在の校長になると、その校長が「めんどくさい」と言い始めたらしく、早々に集会は廃止され、現在の全校連絡の手段は校内放送ですまされている。そのため、誰もが校内放送に耳を傾けて過ごすのが普通になっている。
最初は反対も多かった制度であったが、集会のように居眠りをして話を聞いていなかったような生徒は劇的に減り、先生方も生徒を体育館に集める必要がなくなったために仕事が減ったため、現在ではほぼ関係者全員がこの制度を支持しているほどだ。
そして、俺も支持する1人であり、そしてめんどくさいと以前から言い続けている稀有でもない普通の在り来たりな一般生徒だ。
「なのに、なんでこんなことに」
「ん?どーしたの?」
思わず呟いた俺の言葉がいつの間にかそばまで来ていたあいつに聞かれていたらしく、頭を抱える俺の目の前に顔を寄せて言われた。
「お前なんでここにいるんだよ」
俺は至って冷静に言った。
言うとそいつはニヒヒと不敵で不気味な笑みを浮かべた。
「転校したのよ」
「そんなの聞いてねぇぞ!」
俺は慎重に、しかし不自然にならないように声をすこし低くして話す。
「え?でもちゃんと言ったよ?昨日家に行ったときにちゃんと置き手紙したはずなんだけどなぁ」
「はぁ?パンツしかなかったぞ」
「きゃ!女子に向かってパンツとかさいてー」
「うっわ!超うゼェ!」
俺に答えてこいつは泣いた振りをした。
「ちゃっと男子~。私泣いちゃったじゃーん」
「嘘つけ」
「あ、ばれた?」
そう言って笑った。
「はいはい。そこでおしまいだ。それから先はこれからの学校生活でやってくれ」
先生は2人の間に割って入り、呆れたように言った。
「おっとそう言えば自己紹介をしてないぞ?」
「あ、忘れてました!」
続けて言う。
「私の名前は東八重日和です!よろしくお願いします!」
拍手をするタイミグを見つけたクラスメイトたちは今更に示し合わせたように手を叩いて彼女を──ひよりを受け入れた。
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