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俺は女の子 その3

 見ない方がエロい!

 という諺があったとしてもそんな汚点は消し炭にしないといけないが、しかしあったのならば俺はそれに共感せざるをえない。

 無事着替えを終えて鞄を片手に通学路を歩きながらそんな下らないことをしかし、真剣にそう考えを巡らしていた。


 さらしを巻く時のことだ。

「みてもいいのか?」

 俺は考えた。自分の身体なんだから見てもいいんじゃねーかと。しかし、よく考えてみろ。もしもだ。もしもの話、もしかしたらこの身体はどっかの田舎娘と入れ替わったパターンでゲットた身体かもしれないんじゃないか?そして、なんやかんやあってこの俺の部屋にテレポートしちゃったんじゃないか?

 だったらよくない。見るのはとっても良くないだろう?

 じゃあなんで俺と少し顔が似てるんだとか言われても、まあ、偶然俺と顔が似てるだけだとか言っとけばいいだろ。

「けど、違うんだろうな」

 俺はそんな風に下らないことを妄想していたが、しかし、そうしている間にも時は刻一刻と進み続けてしまう。

 既に起きてから30分も経ってしまっている。

 ここで冷静に考える。

 これは俺の身体だ。俺は女の子になっている。

 しかし、戸籍上は俺は男だ。高校にも通っている。高校は今日から始まる。

 制服はもちろん男もの。胸の膨らみを考慮された作りはしていない。

 てか俺は女物の下着を持ってない。いや、持ってないのが普通だろ?持ってたらもうそれは変態だ。

 だからさらしを巻こうとしているんだ。そうだ。そうだった。

 いま俺は身体は女の子だが、しかし心は──つまり俺の気持ち的には自身の身体に少なからずの興奮をしている。

 まずい。よくない。胸を触るだけで少しやばいのにその上見てしまったらもう、俺は今日は学校へ行けないような状態になってしまうかも知れないだろう。

 だったら──。

「見なければいいじゃん!」

 そうだ。見なければいい。見なければ大丈夫。問題ない。

 俺の精神衛生も保たれるはずだ。

 俺はクローゼットの中にある洋服入れから気に入って集めていたメーカーのタオルのひとつを取り出して目を塞ぐように頭に巻いて後ろで縛った。

「うわ、真っ暗だな…」

 よし、じゃあ、さらしを……。

 ………あ。

「さらし見つけてねーじゃん!」

 俺はタオルを解き、さらしを探す。

 と言ってもだいたい場所は掴んでいる。空手をやっていた時に使っていたものは集めて部屋の角にある段ボールにすべて突っ込んでいる。

 だからそこを探れば余裕だ。

 俺は部屋の角の段ボールに手を入れ、ガサゴソとする。

 それはもう泥棒のように。そして、空き巣のように。

 そうすれば、よし。布の感触あり!

「──ほら見つかった!」

 俺はそう言って手をあげる!

 ぶわっと!どかっと!わっしょい!どっこらしょ!

 出てきたのさらし──とパンツであった。

「な、なんだと……」

 おい。なんだこれ。あれ?なんだこれ?あれれ?あっれ?

 こんなのあったっけ?んーっと?えーっと?

 あいつか!あいつなのか!

 昨日家に来て、部屋でゲームして帰ったあいつが入れやがったな。

 俺にも一応友達がいたことはある。あいつというのは幼稚園の時に友達で現在は俺とは別の高校に通っている幼馴染だ。

 女の子のくせになにやってんだよ。

 もうすこし落ち着いてほしいものだ。しかし、もはやあいつは俺の中では女の子じゃないな。あいつの中でも俺は男じゃないだろうけど。

 まぁ、いいや。

 そのパンツと一緒にさらしも出てきたし。

「よし。やっとか」

 俺は再びタオルを目を塞ぐように頭に巻いて後ろで縛る。そして、視界を完全に失った状態で服を脱ぐ。

 パジャマに首回りの緩い服を着ていてよかった。そのお陰でタオルに引っ掛からず、簡単に脱げた。

 そして、さらしを巻く。

「………ン」

 や、やべぇ。なんか触っちゃった。わからんけどなんかあれな気持ちになる。まずい。早くしなければ。

「……ッッ」

 さらしをきつく巻く。きつくしないと胸の膨らみがばれてしまう。そうしたらもうなんかやばい状況になってしまう。

 もうだめだ。語彙力がやばい。

 早く終わってくれ。胸が苦しいし、気持ちを押さえるので忙しいし、自分の触覚がこれほど敏感だったのか驚きだ。

 さらしを巻き終わると俺はすぐに倒れた。

「……ハァハァ」

 や、やべぇ。なにこれ。やだこれ。全身の汗がどばっと溢れたようでとても濡れている。

 びっちょびちょだ。

「あ、危なかった……」

 なんかエロかった。

 それがさらしを巻くという行為の感想なのは些か嘆かわしいことで、空手をやっていた時にはまったく思ったことのないことであった。

不定期更新です


次回はようやく学校へ?

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