ステータスサーチ
「そういえば、まだ自己紹介がまだだったな」
ラウルス皇国までの同行が決まり少し歩いたところで、碧髪の彼がそう言って歩調を緩めた。元から大して速くはなかったが、会話しながらになる為更にペースを落としてくれたようだった。おそらく俺に合わせてのことだろう。
自己紹介か、そういえば俺もすっかり忘れていた。[ステータスサーチ]の練習がてら彼らのステータスを見ておくとしよう。
固有技能である[ステータスサーチ]は、例え偽名であっても本人が「自分の名前である」としっかり認識してさえいれば、詳しいステータスが見られるようになっている。詳しい、とはいえ、身長や体重などの身体的なステータスは表示されず、ジョブとそのレベルやスキルなどが主である。
ちなみに、これが俺のステータスだ。
名前:リョータ・ソノダ
年齢:23
種族:ヒューマン
職業:ダンジョンマスター
レベル:全正規ジョブLv.MAX(計5080)
追加レベルLv.7 (合計Lv.5087)
スキル:全スキル取得
魔法:全魔法取得
アビリティ:全アビリティ取得
固有:インベントリ
言語翻訳(日本人対応)
ステータスサーチ
まあ、ジョブレベルは<ジョブマスター>じゃないと<ダンジョンマスター>にはなれないからな。当然っちゃあ当然だよね。うん。
スキルなどはそれぞれタップすることでリストや詳細が見られるが、何しろ俺は全取得しているので、未だに全ては確認出来ていない。多すぎて全部を確認するのに時間がかかり過ぎる為、気が向いた時に少しずつ確認している。
そういえば、この通りの表示だと色々と不味いので、俺のステータスは追加レベル分しか表示されないようになっているらしい。そんな魔法もスキルも無いから大丈夫だとは思うが、万が一サーチされても安心というわけです。森田さんアザース。
それは置いといて、今は目の前のパーティーだ。丁度タイミングよく、まずはアタシから、と女冒険者が前に出て俺を見下ろした。
「アタシはマリー。マリー・トワネーよ! よろしくね、リョータくん!」
ん、あれ…? 見下ろされている、だと…? あ、履いている靴の踵が高い。いやでも178センチの俺を見下ろすということは、少なくとも170後半はあるとみてまず間違いないだろう。うん、精神的ダメージをありがとう。ぐすん。
マリーさんは、魔導書を装備しているにもかかわらず、やや露出の多い剣士風な服装をしていた。上は肩の部分と胸元を切り取ったようなTシャツに黒いマントを羽織っていて、下はショートパンツにニーハイとブーツというシーフっぽい恰好だ。お胸様が輝いております。じゅるり。
美形でスタイルが良く赤い長髪に紅い瞳だからか、「灼熱の~」とか「紅蓮の~」とかいう二つ名がついていそうだ。
ああ、えっと。ステータスは、と…。
名前:マリー・トワネー
年齢:34
種族:ヒューマン
職業:冒険者/回復士
レベル:ヒーラーLv.7?
スキル:短剣術/弓術/棒術/特殊武器術
料理/見切り/気配察知/解体/採収
魔力操作/操縦
魔法:回復魔法
アビリティ:幻覚耐性/呪い耐性
闇属性耐性/弓適正/杖適正/魔導書適正
固有:???
備考:女王様気質
おーい最後の何だコノヤロウ。[備考:女王様気質]って何だコラ、ご飯の代わりにお菓子でも食べろってかコノヤロウ。いや野郎じゃないけど。
しかし、固有のところが[???]となっているのが気になるな。…もしや、マリー・トワネーは偽名なのだろうか。それとも、単に自分の名前が好きじゃないとかで認めていないのか。
「僕たちは双子の兄弟で、僕が弟のアーウィ・エヴァ。こっちが兄のコーウィ」
「宜しく頼む」
茶髪の双子は、俺とほぼ変わらない身長で内心にっこり顔の俺です。弟のアーウィさんは前髪パッツンで、弟のコーウィさんは……あれは何だ。どっかの人類最強と同じ…あっ、ツーブロック! これ、イケメンしか似合わない髪型だと思う。
マリーさんとは違い、二人はそれぞれジョブに合った恰好をしていた。アーウィさんはくすんだ淡い緑色のインナーに赤茶色のローブを羽織っていて、コーウィさんはえんじ色の服に深緑のマントを羽織っていた。服の色まで似ているとは、さすが双子。
さて、二人のステータスは…。
名前:アーウィ・エヴァ
年齢:36
種族:ヒューマン?
職業:冒険者/魔導士
レベル:ソーサラーLv.24
スキル:短剣術/棒術/見切り/気配察知
解体/魔力操作
魔法:水魔法/風魔法/土魔法
アビリティ:魔法耐性/水属性耐性
風属性耐性/土属性耐性/魔導書適正
固有:無し
名前:コーウィ・エヴァ
年齢:36
種族:ヒューマン?
職業:冒険者/剣士
レベル:剣士Lv.25
スキル:剣術/短剣術/格闘術/盾術
見切り/気配察知
魔法:無属性魔法
アビリティ:物理耐性/長剣適正/盾適正
固有:無し
うん? 二人の種族、ヒューマンの後ろに[?]がついているのは何故だ。ヒューマンとして怪しいということか?
ああ、他種族とのクォーターとかかもしれないな。
それから、最後に。
「ハイル・オーヴァン。ハイルでいいぞ。一応俺がこのパーティのリーダーだ。よろしくな、リョータ」
うーん…。俺を見る紺の瞳がやけに優しくて、なんだか少し居心地が悪いな。
名前:ハイル・オーヴァン
年齢:37
種族:ダンピール
職業:冒険者/剣士
レベル:剣士Lv.20/双剣士Lv.4(合計Lv.24)
スキル:剣術/双剣術/格闘術/盾術/見切り
索敵/気配察知/解体/採収/吸血
魔法:火魔法
アビリティ:火属性耐性/長剣適正
双剣適正/格闘適正/盾適正
固有:無し
お、ジョブが二つ。追加職持ちか。
基本的に一人が発現出来るジョブは一つ、多くて二つである。ジョブを発現しているかどうかは教会で調べることが出来、もし発現していればざっくりとではあるが今のジョブとレベルを知ることが出来る。ちなみに、冒険者ギルドでも調べることは可能である。
そもそもジョブを持つこと自体素晴らしいことであり、二つ持つ者は確かに珍しい。だが、ジョブというものは才能があれば自然に得ることもあるし、センスがあれば厳しい修行によって得ることも出来る。そして後者の多くは、元々生産系のジョブを持っているが、冒険者になるために戦闘系のジョブを得た者である。
二つ以上のジョブを同時に持つということは、レベルの上昇によるステータス向上とスキル等の取得が二人分になる。簡単に言えば、ジョブを複数持つ者は滅茶苦茶強い(もしくは、強くなる)ということだ。
ちなみに、極稀に三つ以上のジョブを自力で発現させる者もいるが、多くは薬や禁術などを使用して無理矢理得ようとし、死んでいく。故に、三つ目のジョブは神の恵みとされ、天恵と言われている。
ハイルは剣士レベルは高めだが双剣士レベルがまだ低い。そっちを重点的に伸ばせば確実にもっと強くなるだろう。
「ん? どうした?」
「え?」
「いや、じっと見てくるから、顔に何かついてるのかと」
「ああ、いえ…すみません。宝石みたいな目だなぁと思って、つい」
「へ?」
うわ、しまった。咄嗟のこととはいえ、ハイルの目を宝石だなんて…口説き文句みたいになってしまった。あー、引かれたかな。
「やっだぁ、アンタってばハイルに惚れちゃったのぉ?」
「は!?」
マリー氏コノヤロウ!! 余計に引かれるだろうが!!
「はははっ、まあ男に使うには些か綺麗すぎる表現だな」
「ふふ、僕もそう思う」
双子まで! ちくしょう!!
「いや、あの、別に俺はそんなつもりじゃ…」
「ほらぁ。なんとか言ってやんなよ、ハイル」
「うん?」
黙っていたハイルは、マリーさんに話を振られ俺に目を向けた。
「俺は大歓迎だけど?」
「え!?」
「はあ? ハイル、アンタねぇ!」
「ははは、冗談だよ」
全然冗談に聞こえませんでしたけど!?
「もういいだろう? そろそろ行こう」
「そうだね」
「もうっ、ハイルったら!」
「ん? マリー、何を慌ててるんだ?」
「うわ、ハイルってば鈍感」
「そうだな」
「さて、リョータも行くぞ」
「あっ、は、はい」
見つめられたとき、狼狽えた。妙に優しい目なんだ、ハイルが俺を見る目。信用してますオーラが、なんか、こう、そわそわして居心地が悪い。
この人、ちょっと苦手だ。
お気付きかと思いますが一応補足すると、マリー・トワネーの名前の由来はマリーアントワネットです。ちなみに、アーウィとコーウィの名前は「ああ言えばこう言う」からきています。
* * *
[教会]
神王を崇め奉るための場所。特別な水晶玉でできた魔道具により、望む者のジョブやレベルを調べることが出来る。(冒険者ギルドでも可能)
ジョブの種類は色の変化で、レベル(強さ)は輝きの強さで表される。
[神王教]
神王ゼノ・クラヴィスを崇め奉る組織。200年程前に設立された。