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大金を持つのって怖い

*前回までのあらすじ

 担当編集に異世界に飛ばされたよ!




 腹が減っては、とよく言うだろう?


 俺は気持ちを切り替えて[インベントリ]から水とパンを取り出した。出した、と簡単に言っても実際にはあまり容易ではなかったが。

 先ず、アイテムメニューから[チェスト:食料][取り出す]を選択し、食料の入ったチェストを出す。現れた小さめの衣装ケースサイズの宝箱風木箱に触れ、それによって出てきたウィンドウから水とパンを選択し取り出すことで、ようやく手にすることが出来たのだ。


 水は[水袋]という、魔法での耐水加工が施された革の袋に入っており、容量は1リットル程のようだ。思ったより冷えていて美味しかった。浄水や天然水といったものだろうか。

 パンは[黒パン]と[白パン]を一つずつ選んだ。黒パンは名の通り外も中も黒っぽく、ほんのり甘みがあるものの硬めでパサパサしていた。白パンはごく普通のパンだった。中は白いが表面はしっかり焼き色のついた薄茶色で、黒パンより少し甘みが強く柔らかかった。

 器が必要な料理を取り出したときにどうなるかは、後で確認することにする。出てきた器がどうなるか、そこそこ気になるのだけれど。


 腹ごしらえを済ませ、ざっとスキルなどを確認すると、気になっていた[ダンジョンメニュー]をようやく開いた。ずっと気になっていたのだが、これだけは他と違い全く初めてのものだから、少し慎重になってみたわけです。


「さてさて、えーと」


 胡坐をかいてその足に肘を乗せ、顎に手を添えてウィンドウを見た。尚、この体勢に特に意味は無い。ちょっと疲れただけだ。


 ウィンドウには、こう表示されていた。




【 ダンジョンメニュー 】


マップ   ダンジョンの領域を中心に周辺地図を表示する

ダンジョン 現在のダンジョン内の詳細を表示する

カタログ  APを消費して得られる物の一覧表

      ダンジョンの拡張やモンスターの召喚等を行う

吸収    ダンジョン内の死体を吸収しAPに変換する

回収    ダンジョン内のアイテムを回収する

チェスト  回収したアイテムの取り出しやAP変換を行う

再配置   一度配置した罠などを違う位置に再び配置する

転送    指定した対象を指定した位置に転送する




 転移前に彼が言っていた「カタログ」とは、これのことで間違いないだろう。他にそれらしいものは見当たらなかった。

 ちなみに[AP]のAは、建築や構造という意味のArchitectureアーキテクチャからきているそうだ。Pは普通にポイントだった。こういうのって普通ダンジョンポイントの略で[DP]とかになるんじゃないのか。

 というか、死体吸収って…いや待て、さっきサラッと読んだ中に【APの取得方法】が書いてあったな。


 一度ダンジョンメニューを閉じて[ヘルプ]を開き、[ダンジョン]の項目にある[APの取得方法について]を選択した。


「…うわ、やっぱり」


 出てきた説明文に、俺は肩を落とした。




 <ダンジョンマスター>のAPの取得方法は以下の通りである。


・自らが保持する土地(ダンジョンの領域)に対し24時間ごとに一定量が発生

・ダンジョンの領域内に人間が一定時間留まる

・ダンジョンの領域内で人間が死亡する

・魔石や硬貨を変換する

・召喚したモンスターが戦闘を行う




 あっはは、…マジですか。ダンジョン内で人が死ぬとAP入るんですか。…まあ、ダンジョンだからな。ダンジョンには危険がつきもの、だよな。そりゃあ大怪我したり、死亡することだってある…よな。

 しかし、生ぬるい環境で生きてきた俺にとって「人の死」というのは、簡単には受け入れられないものだ。というか、俺が創るダンジョンで死ぬとなると、それは俺が殺したも同然になるのでは…。

 い、いや、やめよう。今から気にしていたって仕方がない。というかこれ以上人の死について考えていたら病む。無理。他人ではなく俺(の心)が死んでしまう。


 取り敢えず、土地だけでも先に確保してしまおう。


 100APで1平方メートルをダンジョン領域に出来て、1平方メートルあたりのAP取得量が一日0.1APだから、1,000日で元が取れる計算だ。早めに取っておいたほうがいいだろう。

 ああ、その前にAPの取得が先か。カタログには[10AP 銀貨1枚]とある。


「うーん。銀貨か」


 この世界の基本通貨単位は、(アウルム)だ。硬貨は銅貨、銀貨、金貨と順に価値が上がっていく。ちなみに金貨の上に更に星貨や魔貨があるが、それらは基本的に国家間取引等の莫大な金をやり取りする時かコレクションくらいにしか使われないらしい。

 ゲームでは銅貨1,000枚で銀貨1枚分だったが、ここでは銅貨100枚で銀貨1枚分らしい。インベントリを隠す為に幾らか硬貨で持ち歩くつもりだから、枚数は少ない方が軽くて楽なので有難い。

 ちなみに銅貨はアウルム、銀貨はゲエム、金貨はクントゥムとも言われ、10,000アウルム=100ゲエム=1クントゥムとなる。(と、ヘルプに書いてあった。)


 話を戻そう。現在、所持金の総額は16,412,704,879アウルム。約160億アウルムである。仮に1,000アウルム=1円としても約1,600万という大金だ。森田メモによると実際は1アウルム=50円相当らしいので、日本円に換算するともっととんでもない金額だ。恐ろしい。

 ううむ…小心者精神というかなんというか。大金を持っていることが怖いし、そわそわする。ここは思い切って金貨10枚分の10万アウルムを残し、残りは全部APに変換してしまおう。

 というわけで早速変換すると、銀貨164,126,048枚分で1,641,260,480APになった。APも資産ではあるが、現金でないというだけで精神的に少しだけ楽になった。


 よし。APを得たからカタログが使用できる。土地は、と…。


 1平方メートルをダンジョンの領域にする為に必要なのが100AP。1m×1m=1平方メートルで1,000mが1kmだから、あー…取り敢えず俺を中心に1平方キロメートルでいいか。1平方キロメートル=100万平方メートルで、消費APは1億だ。うん、余裕だな。……あ、あれー? 指先が震えるぞー? ガクブル。

 何はともあれ、サクッと周囲1平方キロメートルを領域(ダンジョン)化し、残りは1,541,260,480APとなった。細かいな。約15億APか。


「…ん?」


 え。えっ、待って。え、15億? えっまだ15億APもあるの?

 うわああ…、大金だ…。どちらかといえば貧乏な生活しかしてこなかったから、贅沢の仕方とか良く分からない。こういう時はどうしたらいいんだ。貧乏性な俺に、こんな大金どうしろと?

 というか、過ぎた金は人を狂わせるって言うじゃないか。金があることが当たり前になってしまったらどうしてくれるんだ! ああ怖い、大金怖い!


 しかも毎日1,000APも入るんだよな…。1,000APは丁度銀貨1枚に交換出来るから、毎日100アウルムの収入だ。

 …いいか、何にもしないで毎日100アウルムの収入だ。この世界の平民(一般人)の年収は約36,000アウルム、そして現段階の俺の年収は、一年が366日なので36,600アウルム。つまり、土地収入だけで既に平民と同等の年収が確定したということだ! ひいぃぃ!


 つーか、1平方キロメートルって、サクッと領域にしちゃったけど確か東京にある某ドームが0.05平方キロメートルくらいだぞ。某夢の国と某夢の海ですら、合わせてようやく1平方キロメートルいくかどうかってくらいだったはず。広さの表現でよく某ドーム○個分と聞くから、どれくらいなのか気になって調べたから覚えている。

 それだけの土地をたった10数秒で自分の敷地にした俺って何なんだ。こわい。俺がこわい。というか<ダンジョンマスター>怖い! 金稼ぐの楽すぎるだろ!

 これはもう明日あたり金持ち過ぎて死ぬ。きっと死ぬ。絶対死ぬ。


 …いやいやいや。落ち着け俺。金があるだけでは死なないからな。うん。はい深呼吸。スー、ハー。…うん、大丈夫だ。


「…あ。そういえば、今何時なんだろう」


 ふと気になって時計を探した。時刻は、メニューウィンドウの右下に小さく表示されていた。今は[AM09:48]となっている。


「午前10時前…。なんだ、まだ昼前だったのか」


 てっきり午後だと思っていたが、こちらに来たのは案外早い時間だったんだな。それに、今の今まで時間の確認を忘れていた自分にも少し驚きだ。


 突然異世界に来て、というか突然こんな大金を手にして、自分で思っているよりも動揺しているんだろうな、俺。

 生活費は金貨10枚と10万APもあれば事足りるだろう―――“1年分の”生活費としてな。


 ああああっ駄目だ、そわそわする! うぅ…。俺に大金は精神衛生的に良くない。うん、良くない…。


「……ダンジョン、作るか」


 早めに使ってしまうために、大雑把にでもダンジョンを作成しておくべきか。地上にちまちま作るのは怪しまれるだろうし、少しでも時間がかかるなら地下だろうな。

 内装は面倒だから、取り敢えず土地と空間の確保だけしておこう。もう1平方キロメートル分領域を広げて、地下の土を回収して空間を…うん? あ、保存機能もあるのね。じゃあ今作ったやつを保存して、と。

 さて、残りは…1,435,039,080APか。あっやばい。あまり減らなかった。仕方ない。少しずつダンジョンとして整えて、どんどんAP減らしていくか。





  *資産推移*

所持金 16,512,704,879アウルム→100,079アウルム

所持AP 0AP→1,440,260,480AP

(使用予定AP:5,221,400AP 差引:1,435,039,080AP)



【 本編内用語解説 】

*ダンジョン独自のポイントについて

 ダンジョン独自のポイントは“AP”と言い、建築や構造という意味の英語を使用したArchitecture(アーキテクチャ) pointポイントの略である。主にダンジョン制作に使用するポイントのこと。

 元々は魔力の源である魔素を数値化したものだと言われている。


  *取得AP算出・換算法*

・土地(ダンジョンの領域)に発生するAP量

1平方メートル=0.1AP/24h(365日=36.5AP)

1平方キロメートル=1,000AP/24h(365日=365,000AP)

1,000日(約2年半)で元が取れる。



 ちなみに…

某ドームは約0.047平方キロメートル(46,755平方メートル)

某夢の国は約0,47平方キロメートル

某夢の海は約0.49平方キロメートル

某夢のリゾートは約2平方キロメートルらしい。wiki参照。



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