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プロローグなんて大体こんなもん

 ダンジョン運営ものが書きたかった、宿屋経営モノです。俺の趣味というか好み丸出しでお送りいたします。ご注意ください。


 




 マグナ・テンプス最大の大陸、ナトゥーラ・ウィリデ大陸。その大陸の最西端の国であるラウルス皇国と、その更に西にある港町ロサ―――の、間にある草原地帯。

 そこにはダンジョンの傍に小さな村があり、ちょっと変わった宿屋があった。


 ダンジョン村唯一の宿屋、黄昏亭(たそがれてい)


 ここは、ダンジョンマスターが経営する、れっきとした宿(ダンジョン)である。







「いらっしゃいませー!」


 明るい少女の声がフロントに広がる。オレンジ色の瞳をしたそのハーフエルフの少女は、肩より長い赤茶の髪を三つ編みのサイドテールでまとめ、白と黒のシンプルな膝丈のメイド服に身を包んでいた。


「6人部屋を一週間で頼むよ」

「はい! いつもご利用ありがとうございます!」


 少女は丁寧にお辞儀をすると、にこりと可愛らしく微笑んだ。受付係として満点の対応である。


「あーあ。おれらも早く地下の方に行けるようになりたいぜ」


 ぼやく冒険者の後ろを、青年が通りかかった。


「あと4つはレベルを上げないと危ないってリョータが言ってたぜ?」


 通りすがりに冒険者をからかう、ダンピール(ヒューマンとヴァンパイアのハーフ)の青年。青緑の髪に紺の瞳の彼は、炎系魔法と双剣を使う戦闘スタイルから“双炎の剣士”として知られている。


「あと4つかぁ」

「先は長ぇなー」

「なあ、後でリョータさんにステータス見てもらおうぜ」

「そうだな!」

「ふふっ。頑張ってください」


 部屋を取った冒険者たちは苦笑交じりにフロントを後にし、双炎の剣士はダンジョンへと出掛けていった。


 宿の傍には、地上と地下に二つのダンジョンがある。初心者・中級者向けの円錐型地上ダンジョンと、上級者向けの地下ダンジョンだ。どちらも、進むに従って出現するモンスターのレベルやランク、手に入るアイテムのレア度などが上がっていくタイプのダンジョンである。

 ちなみに宿の向かいには、冒険者ギルドの支部がある。冒険者ギルドと宿は、丁度地上ダンジョンの出入口を挟むように建てられていた。


「あれ、リョータさんは?」


 戻るなりそう言った男は、黒髪に黒い瞳の元勇者である。


「リョータさんなら、ちょっと前に起きてすぐ見回りに行きましたよ。もうすぐ戻るはずですけど」

「もうすぐってどのくらい? 5分以上かかるならオレが…」


 オレが迎えに行く、と言おうとしたところで、丁度話題の人物が「ただいまー」と気の抜けた声を出しながら扉を開けた。


「リョータさん!!」

「ちょ、まっ…ぐふッ!?」


 姿を確認した途端抱きついたこの元勇者。実は、この村ではちょっと有名なヤンデレ変態ホモ野郎である。


「ちょ…苦しい…死ぬ…!」

「ということなので、マスターを離してあげてください」


 そう言いながら、騎士のように寄り添う銀髪碧眼の少年が、己の主を助けるべく元勇者の袖を引いた。


「仕方ないなあ。リョータさんに死なれちゃ困るから、離してあげる」

「お、おう…ありがとう…?」

「…マスター、謝る必要は無いんですよ?」

「え?」


 どこか抜けている主に、少年はやれやれとでも言いたげに苦笑した。


「おっ、宿屋の旦那ぁ!」

「リョータさん!」

「あ?」


 いつものように少年の頭をナチュラルに撫でていた宿屋の主人に、それを見つけた常連の冒険者たちが手を上げた。


「おー」

「ん? なんだ、寝起きか?」

「まあな。さっき起きた」

「おいおい、さっきかよ~」

「もう昼過ぎですよ? ちょっと寝すぎじゃないっすか~?」

「うるせー、ほっとけー」


 冒険者と幾らか言葉を交わし、宿屋の主人は自室へと戻っていった。




 *





「はぁぁ」


 自室に戻って来た俺はどかりとソファーに座り、平和だなあ、と息を吐いた。


 仲間も増えて、宿はそれなりに繁盛しているし、ダンジョンも上手くいっている。不満なんてたいして無い。あっても良くある普通のやつだ。


 …いや、あったな。どデカイ不満。―――チート持ちのはずの俺が、仲間たちの中で一番役立たずってことが!

 料理も、接客も、戦闘も。全部全部、仲間たちのほうが上なのだ。


 なんなんだ、まったく。俺の仲間ハイスペックすぎだろ。最高かよ。…あ、最高か。じゃあいっか。


「さて、と」


 昨日の続きを書こうと、机に紙の束を広げた。


 実は、新しい世界での俺の話を、少しずつ日本語で書き残しているのだ。

 もし俺以外にもこの世界に来る者がいたら、少しは役に立つかもしれない。そう思って書き始めたのだが、つい小説のように書いてしまう。自分で読むとなんだかちょっと恥ずかしい感じになってしまっている。


 しかし、ここまで色々あったし長かった。いや、短かったかもしれない。とにかく、なんだかんだ楽しい毎日だったように思う。

 思い出して、ゆるりと頬が緩んだ。


「…よし。書くか!」


 気合いを入れるように、ぐい、と袖を捲った。






 ―――これは、ダンジョンマスターとしてこの世界に来た園田涼太(そのだりょうた)という日本人が、最高の仲間たちと一緒に、宿屋の主人として生きていく話である。




 



 園田そのだ 涼太りょうた


23歳 男 日本人 黒髪 黒目 身長:178cm

種族:ヒューマン 職業:ダンジョンマスター

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