二話
「うわぁやっちゃったなぁ。次の配達時間間に合うかなぁ…。」
空を猛スピードで飛ぶその少女の名はアンリ。少女は老婆との世間話によって時間が押されていた。
少女が使う魔法は「火」だ。だが火の中にも様々な種類がこの世界には存在する。
スピードタイプの火・パワータイプの火・バランスタイプの火…。
人の数だけ魔法の数も多種多様に存在している。少女は根っからのスピードタイプであった。
しかも少女は珍しく浮遊魔法を使えた。少女は自身が持つ速さと浮遊魔法を合体させて自己流の魔法を会得し、それを生かすために配達屋という職に就いた。
この世界には大人にならないと職に就けないという規制は無い。寧ろ働けるのであれば年端もいかぬ子供ですら場所によっては職に就いている。人が足りないという訳ではない。中には自己流の魔法を色々な人に伝授している人もいれば、ただ一人で魔法の研究に没頭している人もいる。日がな一日土を弄っている農夫もこの世界に居る。魔法の世界ではあるが、誰しもが魔法を使えるという訳ではない。
魔法が使えない人は学問に没頭し知識を深めて薬剤師をしたり、魔法が使えないのであれば己の拳を限界まで鍛え上げて魔法使いと戦う人もいる。魔法が使えないからと言って馬鹿にする輩は確かに存在するが、そのような罵倒はレベルの低い罵倒なので逆に言った側が恥をかいたりする。
そんな世界に「私」は生まれた。
話を少女に戻そう。
「おやおや?。誰か手を振っていますね。」
少女が視線を向けた先にはレザージャケットと鎧を合体させた服を着て眼鏡をかけた男が大きな荷物を背負って手を振っていた。
少女は時間があまりないにも関わらず健気にもその男の所まで降りて行く。
「いやぁすまんねアンリちゃん。別に何か用事があって手を振った訳じゃないんだよ。空を飛んでるアンリちゃんに挨拶的な感じで手を振っただけなんだ。勘違いさせてごめんね。」
「いえ、私も時間が無いので挨拶だけでも済まそうと思っただけですから…。今から何処か行くんですか?。そんな大きな荷物を背負って。」
「あぁ。これから伝説の森に行こうかと思ってね。やっぱりあの森には何か隠されている気がするんだ。あの森の入口付近は数多の冒険者が挑戦してるからもう何もないと思うけど、僕はあの奥に進んでみたいんだ。魔物が存在しない伝説の森、それは間違いなく女神様の力のお陰だと僕は思うんだ。僕はそれを解明したい。」
「大丈夫ですか?。あの森は一度はいれば三日以上は絶対出られませんよ?」
「危険なのは分かっているさ。それでも僕はあの森の奥を見てみたい。僕はね、探求心を無くしてしまったらそれはもう冒険者とは言わないと考えてる。アンリちゃんが配達に命を掛ける様に、僕も冒険者と言う物に命を掛けているんだ。だから僕はあの森に入ってみる。もしかしたら女神様に会えるかもしれないからね。」
「あ、ならトルドさん。もし女神様に会ったら、私が会いたがっていると伝えてはくれませんか?。お願いします。」
「そんなことぐらいお安い御用さ!。もし女神様に会えたらの話だけどね。」
「はは…会えたらいいですね。それじゃあ私は配達にもどります。」
そういうと少女は残りの配達物を済ませるべく再び空中へ飛んでいく。
少女は飛びながら男の無事を祈る言葉を呟いた。男も飛んでいく少女を見守ると再び歩を進めた。
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こんにちは私です。報告します。全然森から抜けられません。
行けども行けども木々達しかいません。途中息抜きをするために滝壺で泳いだくらいです。
でもその後に後悔しました。濡れた体を拭う物が無かったのです。寒いです。
考えたら直ぐに分かる事でしたのに…やってしまった…。
なので私は日の光が当たる場所で今立って乾かしています。冬じゃなくて良かった。というかそもそもこの世界に四季なんて存在するのでしょうか。まぁどっちでもいいです。今は乾かすことが先決なので。
それにしてもこの森の水は本当に綺麗です。私のお腹の所まで伸びている長い髪の毛をそこで洗ったらまるで洗剤で洗ったかのように綺麗になりました。ほのかに良い匂いがします。人為的に作られた匂いではなく、自然が創り出した匂いです。安心します。
しかしやはりと言うか、このおっぱいは少し邪魔ですね。いや、嫌いという訳ではないですはい。
せめてブラジャーでもあってほしかったな。歩くたびに上下に揺れて少し痛いです。これが現実です。
まぁ私は若いので型崩れはそう簡単に起きないと思っているのですが、やはり気になってます。
型崩れしたら笑えませんからね。何かで代用できないかなぁ。
そう思いながら私は伸ばした水の手君を使って近くに実っている果実を採取していきます。
あ、これ使えるのでは?
ものは試しです。女は度胸です。手に水を纏う事が出来るのであれば、私の体を纏う事もできるのではないでしょうか。たしか手を伸ばした時は手に集中していたから、それをこの胸に置きかえれば…。
サァー…。
これは…成功と言うべきなのでしょうか。胸を纏う事は出来なくても、下乳を僅かに支えてくれてます。試しにジャンプしてみましょう。
タユン。タユン。プルン。プルン。
おぉ!あまり痛くないです。これは成功ですね目を凝らさないと分からない位の水ですのに効果は抜群です。これでスキップできます。水君様々ですね。
そんな事をしていると体が乾いていました。そしてまた新たに気付きました。先ほどまで私の右腕に纏っていた水を無くしてもその腕は濡れてません。若干湿ってるだけです。あ、これ濡れてるじゃん。
まぁどうでもいいや。どうせ乾くのですから。
それよりもこれからどうしましょうか。はっきり言ってこれ以上進むと一日では帰ってこれなくなりそうです。あの洗面台があるところがちょうどいい広場なだけあって、他の場所は狭くて薄暗いです。
もう森から出るの諦めようかな…いや何をいっているのだ私。まだ始まったばかりじゃないの。
流石に早すぎです。せめてあともう一週間頑張って無理そうだったら諦めましょう。うん。
そうと決まれば今日は早めに撤収しましょう。まだ日があるうちに行動を起こさないと直ぐに日は傾いてしまいますからね。明日から頑張ろう。




