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水の味  作者: 鉄の男
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プロローグ

本作品を見て下さり有難うございます。

この作品は、あらすじでも書きましたが、いわば筆者の練習台の様な物です。

ストーリーを含む様々な矛盾があります。

それでも宜しければお付き合い下さいませ…。

ある日、一人の人間が地球と言う惑星において命を絶った。

事故だったのか。はたまた殺人だったのか。死んでしまった人にはそんな事分からない。

死んでしまえばその人の過去など意味がないから。

死んでしまった人の親族や友人にその人の経歴や生きてきた証が残るだけ。

死んだ人からしてみれば証も何も残らない。

神様がこの世界にいると科学的に証明できる人がいないように、死んでしまった人の魂が地球に居るとは限らない。

だからこそ人は死後の世界や神々の世界を想像して物語を書いたり絵を描いたりする。

誰も見た事が無い世界を現世に描くのだ。そして様々な人々にそれが後世に伝わっていく。

そしてそれが誰しもが死後の世界を知っていると錯覚するのだ。


だがそんな誰も見た事が無い世界に一人、先ほど地球という惑星で死んでしまった人間の魂が迷いこんでしまう。そこでその魂はその世界を見て何を思うのか。








_____________________________




気付けば私は森の中で眠っていた。

いや、正確に言うならば「俺」であろうか。

だが「俺」の名前やどうして此処に居るのかが分からない。

「俺」はなんなのだろうか。だが一つだけわかる事がある。

この世界を「俺」は知らない。見た事もない。

「俺」の記憶の中には高い建物や鉄の塊が走っていた思い出がある。

そして「俺」は男だったはずだ。

だが無意識に自分の事を「私」と言っていた。とりあえず起きる事にしよう。


取りあえず尻を付けて「俺」は座った。すると何という事だろう…胸が膨らんでいるではないか。

しかも服を着ていない。裸だ。胸だけでなく恥部まで丸見えだ。

だが不思議と恥ずかしいという感情が湧いてこない。まるで今まで裸で生きていたかの様だ。

そして無意識に頭を掻くと髪が指に絡まった。

「俺」の頭には黒茶髪色のウェーブのかかった髪が生えていたのだ。

俺は少しよろけながら立つと、近くから水の綺麗な音が聞こえたのでそこまで歩いて行った。

音の聞こえる所まで行くとそこは何とも美しい場所が広がっていた。

まさに幻想的な世界と言わざるを得ないだろう。

そして視線を音のする方へ向けると、自然が作った洗面台があった。

なんと澄んでいて綺麗な水なのだろう。そこの水を覗きこむと一人の少女が「俺」を見ていた。

だが直ぐに違うと分かった。本能的にと言うべきなのだろうか。肌の色は程よい白色だった。少し焼けていると言えばいいのだろうか。眼は大きく、瞳の色は茶色だ。北欧とラテンが混じったかのようだ。

それは紛れもなく「私」だった。そのウェーブのかかった髪の毛が「私」の胸の中心にある乳首を隠している。だがこれも不思議と恥ずかしいと思わない。「私」は変態なのだろうか。

そう思いつつも喉が渇いていたのでその水溜りを手ですくう。とても冷たい。手に入り切れなかった水がポタポタとしずくとなって元の居場所に帰っていく。

「私」は手に入っている水をゴクゴクと全て飲み干した。すると「私」の眼から涙が流れた。

どうしてなのだろうか…。「私」はいきなり途轍とてつもない孤独感に襲われた。

その涙は孤独感からくる悲しい涙なのだろうか。泣いている自分が理解できない。

「私」は両手の腕で交差するように両肩を掴んだ。寂しい。悲しい。そんな感情がドバッといきなり心から漏れていた。

「私」なんなのだろう。どうして此処にいるのだろう。「私」は一人ではなかったはず。

もっと沢山周りにいた筈…なのに分からない。気でも狂ってしまったのだろうか。

交差していた腕を元に戻し、そしてまた水をすくい飲み干す。すると涙が滂沱ぼうだの様に流れた。

それに伴い「私」は先程までは言わなかった嗚咽おえつを漏らしている。

「私」は何…?。その答えだけでもいい。「私」は聞きたい。「私」は知りたい。



この世界は…一体なんなのだろう…。



その問いに答える人はいない。今この場に居るのは「私」だけだ。

「私」は孤独感という感情を抑え、嗚咽を抑えて再び地面に座った。

今聞こえてくる音は水がチョロチョロと先程の自然の洗面台に落ちていく音だけだ。

「私」は体育座りをして膝に顔をうずめた。





_____________________________





気付けば私は眠っていた。さっきまでは木々の間から木漏れ日があったのに、今は月の光がちょうど私だけを照らしていた。

そしてもう一つ気付いた。眠る前には恐怖すら覚えていた孤独感が嘘の様に無くなっていた。

私はその場で寝ころんだ。なんなのだ一体…。

あの水を飲んでからと言うもの碌な目に遭ってない。

私は寝返りを打つとあの洗面台を見た。眠る前と何も変わっていない。

なんとムカつく事だろうか。自分をこんな目に遭わせておきながら水は静かにその場に木霊こだまするだけとは。

そんな事を思いつつ私はもう一度起き上がる。お腹が減ったのだ。

例え一日中身体を動かさなくてもお腹は減るのだ。人間と言う物はめんどくさい生き物だ。

私はガサガサと音を立てて歩く。意外にも裸足が嫌ではない。寧ろ気持ちが良い。

この辺は細かい石などが少ないのだろう。草を踏んで地面を蹴る。

こんな森の奥深くに一糸纏わぬ少女が歩いているのにも関わらず、その姿は変だと自分でも思わない。

描ける人が描けばその作品は『森の妖精』と銘打つであろうと自画自賛した。


少し歩くと木の上にさくらんぼのような果実がなっているのを見つけた。

でも私の背丈じゃ届きそうにないなぁ。背が伸びなくても手が伸びてくれたら届くのになぁ。

そう思いつつも届かぬ果実に手を向けると私の右腕から水の塊が出て来た。

うわっ。なんだこれ。そう思いながら私は右手をニギニギするとそれに呼応して水の塊が動いた。

まるでもう一つ腕が生えたようだ。あ、これを使えば…あの果実取れるかも…!

そうして改めて手を伸ばすと水の塊が伸びて軽々と果実の所まで届いた。

早速口に運ぶ。味はとても甘く美味しく瑞々しかった。ありがとね水君。

こうなればたらふく食ってやるぞ~!


気付けば私のお腹はぽっこりと出ていた。違うよ。太ってるわけじゃないよ。

でも毎日これを食べ続けるといつかは無くなってしまうかもしれないね。

それに服もやっぱり着ないといけないよ。私は良くてももし誰か来たら…誰かって誰だ?

私は私以外の人を見ていない。もしかしてこの世界は私しかいないのかもしれない…。

よし、明日少し森を探検しよう。そうしよう。そして誰かいたら服をねだろう。一枚でもいい。


さて、それじゃあ寝るかぁ。








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