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三月睦月―1

ご挨拶は初めてなので初めましてです。

意味の解らない小説ですが、最後までには意味を持たせますので暇潰し程度に読んでやってください。

不定期更新ですが‥‥‥‥

血だ。

赤い血だ。

たらり、たらり、伝い落ちている。

血。

赤い。

血だ。

流れてる。痛い。

血は痛い。

流れは痛い。

血、血だ。

痛い。



「‥‥‥」



血。

伝い落ちる血。

血。



「‥‥‥い」



痛い。

見ることが痛い。

血。



「お‥‥‥」



忘却。

抹消。

削除しろ。



「‥‥‥」



血を忘却。

血を抹消。

血は削除しろ。



「――起きろ!」

「ひっ!?」

唐突に肌が冷たい空気に撫でられて、私は比喩ではなく飛び上がった。そして‥‥‥、

ズドンっ! と、盛大にベッドから転げ落ちて、床に鼻をぶつけた。

「ひにゅっ!? にゃ、にゃひゅるのよぉ〜」

痛くて呂律が回らない。

鼻血が出ていないことを確かめて、鼻の頭を押さえながら、私はもそりとベッドに手を掛け立ち上がった。

傍らに仁王立ちする青年――いや、少年の名前は須藤晶。学年色の赤いネクタイを締めた学園の制服にエプロンを装着して、私の被っていたブランケットをその手に持っている。

黒の短髪に茶色の瞳。

和風な顔立ちは、いつかどこかで見た日本人形を彷彿とさせる輪郭をしていた。

一応、人気の通りにそれなりのナリはしているが、私の趣味じゃない。

失礼とは思うが、私にとって彼はどこか不気味なのだ。

「失礼だな、誰が不気味だ」

「ちょ、心読まないでくれます晶さん!?」

「なら心中の独り言を口に出すのは止めようね」

「え‥‥‥言ってた?」

「バッチリ」

‥‥‥この癖は早めに直さないとまともに生きていける気がしない。

「ほらほら着替えて。顔洗って、目が覚めたら降りておいで」

晶はお母さんみたいなことを言いながらベッドを直すと、二度寝するなよと後押しして忙しく部屋を出ていった。

寝直そうと思ったけど、先手を打たれたか。前はそれでも眠って痛い目に‥‥‥‥ん?

前は? 同じようなことがあった気がするが、そんなことあったっけ?

う〜ん‥‥‥

「ま、いっか」

既視感とかデジャブとかっていうのかな。こういうの。

制服に着替え始めながら、私は独りでそんなことを納得した。

顔を洗い、身だしなみをきちんときっちりと整えた私は、食欲をそそる香りに誘われて若干千鳥足でふらふらとテーブルに着いた。

因みに説明しておくと、この家は二階建てで、個室は上階、それ以外の共同で使用する施設と部屋は下階にある。

個室は四つ。階段を上がった左右に二つずつ。一階にはリビングとキッチンとシャワールーム。簡単にはまあ、こんな所だろうか。追記として、トイレは上下両階にあります。

「何をぼーっとしてるの?」

「ぴッ!?」

ぽけっとしていた私の後ろから声と供に肩に手を置かれた。驚くな、という奴がいたらぶっ飛ばしますからあしからず。

「変な声出すなよ、驚くだろうが」

全くもって言葉とは裏腹に飄々とそんなことを言うのは、さっき見たばかりの顔だった。

「い、いいいきなり現れるな! 心臓跳び跳ねた!」

ばくばく! ばくばくばくばく! と、朝から不適切な程に心臓が鼓動する。文字通り、まるで跳ねているように。

「呆けてるな。ここが戦場なら死んでいるぞ」

「意味分からんわ!」

床の上にしゃがんで胸を抑える私を見下ろしながら、朝から訳の分からんテンションの晶がびしりと指を立てる。

「むう、ノリの悪い奴だ。まぁ致し方あるまい。ちゃっちゃと飯食えこんにゃろう」

などと意味不明なジョークをかましながら私の向かいに腰を下ろす晶。

毎朝思うが、こいつのこの姿をみんなに見せてやりたいものだ。

どういう意図があってかは知らないが、晶は学園では品行方正容姿端麗頭脳明晰の優等生を演じている。一年生のみで構成されているとはいえ、二百名中数名の生徒会を統べるのだから余程だ。

まあつまり、今のようなことは学園では罷り間違っても口走らないのだ。もし言った日には、絶対幻滅されてリンチされろ。

「それはまた希望的だな」

「はっ‥‥! また口に!?」

そんなこんなで朝食に手を伸ばす。

見ると、今朝はオーソドックスな洋食だった。トーストにスクランブルエッグ、サラダに珈琲。お米よりパン派な私には和食より洋食が好ましく、だからこれはグッドですとも。

サクリとパンをかじる。卵を頬張る。サラダを食べる。珈琲を飲む。

二人のそれぞれのその動作だけが、カチャカチャと朝の清浄的な空間に響く。ただし、私がつけたテレビだけは別だ。

チャンネルはニュースに合わせ、時間を確認しつつ朝の情勢を大まかに確認する。

円高ドル安、株価上昇、内閣支持率低迷。うむ、よく分からん。

私がぼんやりとそれらを眺める前では、晶がアナウンサーに合わせてにこにことああ、とかなるほど、とか相づちを打っている。‥‥‥更に分からん。

何がって、彼の相づちが微妙どころか大差を付けてタイミングがずれていることだ。

例えば。

「昨日こんなことがあったんですよ!」

と陽気な女子アナが話すと、彼はうんうんと頷く。思わずお前も同じことあったんか! と突っ込みたくなるのを必死に抑えるのが大変だった。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

時刻は八時前。

「さて、行くか」

洗い物で濡れた手をエプロンでふきふき彼は言った。私は喉を鳴らしてそれに応じ、リモコンを操作してテレビを切った。

「一限なんだっけ?」

「現国」

何となしに気になったことをタイル張りの玄関で靴をはきながら訊くと、鞄を脇に抱え爪先でタイルを突く晶も何気なく即答した。

外は晴れていた。

朝にふさわしい清々しい空気と、暖かに照るうららかな春の日差しが心地好かった。

「いってきまーす!」

誰もいない家を向いて、私たちは毎朝通りにそう声を上げた。











私の胸には穴が空いています。

あなたを見る度、痛みが快楽として私の胸を穿ちます。

あなたの姿を見ていると胸が苦しくなって、

あなたの声を聴くと胸がきしりと軋みます。

あなたは、


私の、


全て。


あなたがいれば、私は何も要らない。

あなたがいれば、私は何も欲しくない。

あなたを私から奪うあなたは、










死んでしまえ‥‥‥‥











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