顔合わせ
チンッ
オーブンの音とともにメールの着信音が鳴った。どうやら、家の近くまで来たようだ。
玄関を出ると、端末とにらめっこしながら歩いてくる姿が見えて、呼びかける。
私に気づくと駆け寄ってきた。
「迷いそうだったよ。ここ似たような建物多いから。でも、ここは大きいよな……」
「二人で住んでるんだよ。弟とその幼馴染が。もう伝えてあるし、入って」
2人で住むには大きすぎると同じように感じているのだろう。少しだけ、圧倒されていた。
亜咲ちゃんはオーブンからアツアツのカップケーキとクッキーを取り出し、それを律人がテーブルに並べていた。
こちらに気づいた2人はいったん手を止め、ぺこりとお辞儀をする。再び手を動かしているところをみると、何も知らないようだ。
「弟いたんだな」
「以外?よくできた弟だよ」
ソファへ座るように促し、律人たちが座るのを待ち、自己紹介を始めた。
「今度の留学の件について話すために明日、慶太さんのとこへ行こうと思うんだけど、みんなで行こうと思ってたから、顔合わせと思って連れてきたんだ」
しばらくぎこちなく会話を交わした後、落ち着いたようで笑顔が浮かんでいた。
「そうだ、姉さん。夕食も食べていきなよ。もちろん葵さんも一緒に」
「え、いやでも、迷惑だろ?」
「全然!!一緒に食べてくださる方が楽しいです!!」
二人の勢いに押され、ニ、三度頷く葵を満足そうに見た亜咲ちゃんは律人を連れて買い物に行ってしまった。行動が早い二人である。
「今日は付き合わせてごめんね」
「いや、楽しかった。ありがとう」
亜咲ちゃんが腕によりをかけた夕食はとても美味しく、葵も満足してくれているようで一安心だ。
それぞれの寮に帰る分かれ道、そこで別れを告げる。
明日は早い。
まだ夜も明けぬうちに、ゴソゴソと誰かが動く気配がする。まぁ、この部屋には私と杏しかいないのだから、杏だろう。そう思ってゆっくりと起き上がる。
「珍しいね、杏。こんな早くに……」
「起こしてごめんね、緋水」
明らかに違う声音に疑問を覚えつつも、なぜか納得している自分がいる。杏のベッドには、掛け布団を蹴っ飛ばして寝ている杏の姿。はぁ、とため息をつきつつ、布団をかけ直してやる。
「何してるのか知らないけど、先に彼女の面倒見てあげなよ。体調崩してもしらないよ」
「うん。けど、準備もしないとね」
柔らかく微笑む顔が普段よりも眠たそうなのは気のせいではないだろう。そこまで杏を気遣うのはやり過ぎな気がするが、料理、掃除、洗濯、人との関わりなど梓の苦手なことを全て受け持っているのだから、おあいこなのだろう。
梓を見ながら、ぼぉーっとそんなことを考えていた。
「ねむい……」
「遅い」
「今日は頑張ったほうだよ」
「梓、あんまり甘やかしちゃダメだ」
「うーん、そうだね。杏、もう少し頑張ろうな」
慶太さんは仕事がひと段落ついたらしく、迎えに来てくれた。
杏は相変わらず寝ぼけ眼をこすり、ふらふらと危なげに歩いてる。
車ーー完全自動運転システム車ーーにのりこみ、行先を告げる。大した音もなく、ゆっくりと動き始める車はここ10年の間にさらに改良されている。年々乗り心地はよくなり、魔物との遭遇率も低下している。電車のつぎにメジャーな乗り物になっていた。
10分もすると目的地につく。
「お帰りなさい、みんな」
出迎えてくれたのは、笑顔が素敵ななんでも出来てしまうパーフェクトな女性であり、慶太さんの婚約者である文月弥生さん。隣で杏がウズウズしてるのを梓に捕獲してもらい、本題に入ることにした。
遅くなりすみません。
なかなか戦闘シーンにたどり着きませんが、きっともうすぐです!(たぶん)




