夏の午後
遅くなりました。
あれから早瀬葵とは何度か会った。梓ともすっかり仲良くなっていた。杏は少し不貞腐れていたが気にしない。
葵は思ったよりもクールだった。女子の間では相当な人気者のようである。
その日は珍しく葵と2人で昼食をとっていた。
「梓たちは?また、いちゃついているのか?」
もうあの2人のラブラブぶりになれたようで、あきれた様子で尋ねてくる。
「そうみたい。まぁ、そのうち戻ってくると思うけど、今日は放課後まで戻ってこないかもね」
その言葉に少し首をかしげていたが、特に興味もないようで「ふぅん」と相槌を打つ。
今日は夏休みまであと1週間ということで授業は昼までである。昼食を終え葵と別れた私は別館に向かった。特に用はなかったが別館にいるといろいろ役に立つ知識も手に入り、個室もあるので、学園の中でとても気に入っていた。
ちらほらと生徒を見かけるがどれも上級生――特に成績上位者が多く見られた。正魔獣師の適合試験が近付いているからだろう。個室もほとんどが「使用中」の光がともっている。奥の使い勝手の悪い個室はまだ空いているようだ。まぁそこを愛用している身としてはありがたい。一番隅の個室の周りはひっそりとしている。学生証で使用許可をとると「使用中」の光がともる。何冊か本を持ってくると、個室に入りパラパラとめくる。それだけでまるでコピーされたように頭の中にインプットされるのだ。個室に入る意味などない。持ってきた本を読み終えると、パソコン型の端末を鞄から取り出し、この個室だけを支配する。防犯用にカメラが設置されているが、騙すことなど容易である。不特定多数が使うこの空間はもしばれてもそれが誰だか特例しにくいという点で非常に便利である。
「珍しいねこんな時間に」
くすり、と笑う慶太さんは今学園の敷地内にいないらしい。保健教諭といっても補助的な役割に位置する慶太さんは比較的自由に動いていた。
「今度の留学のことで話があるんです。そっちに行く時は律人も一緒に行くと思うんですけど、空いてる日ありますか?」
「いつでもいいよ。多分研究室にこもりきりだろうから直接来てくれればいいよ」
私たちが送った情報を実証するためらしいが、それも順調らしく情報を催促してくる。こっちも学生なんだから少し勘弁して欲しいものだ。まぁ、その分を今日集めに来たのだが。
一度個室を出てまた何冊か本を持っていく。それを4、5回繰り返したところで今日の作業は終わりとする。
一件のメールが入っていた。律人からの夕食のお誘いのようだ。今日はいつもより贅沢な食事になりそうだ。
「早かったね。今日は、梓君たちとは一緒じゃないんだ」
「デートだってさ」
苦笑いを浮かべながら「あぁ……」と呟く律人はあの2人の甘ったるい雰囲気が苦手なようだ。リビングへ行くと鼻歌が聞こえる。亜咲ちゃんがキッチンに立ち楽しそうに何か作っている。ふんわりと甘い匂いがするから、お菓子だろう。気になって覗くと「まだダメですよー」とお預けされてしまった。
ショボーンとしながらソファに座り、思いついたことを口にする。
「会わせたい人がいるんだ。呼んでもいいかな?私と同級生なんだけど…」
「いいよ。亜咲もいいよね?」
「大丈夫だよ」
2人とも快く了承してくれたことに安心し、その人物にマップ付きのメールを送った。
3ヶ月ぶりぐらいです。
遅くなって申し訳ないです。




