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異世界を巡る  作者: 秋野伊月
異世界編~エルフ界~
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裏切者の男

 7月。1年生も大方は落ち着いて過ごしている時期。気の抜けやすい時期でもあるがそうならないための定期試験がある。この結果で、2学期からの「異世界留学」の生徒が決まるため、みんな張り切っている。けど、たいていは入学試験で首席・次席をとった人が夏の定期試験でも首席・次席をとるので、変化はない。それでもあきらめない人たちはいるようで、朝から騒がしかった。

 今日は結果発表が行われる日。全校生徒を講堂に集めそこで各学年男女の首席・次席の名前が呼ばれ、「異世界留学許可証」をもらうことになっているのだ。


 全校生徒の選ばれる者を待つ熱気というか高揚感が講堂を包み込む。あまりこういう空気が得意ではない私は列から少し外れたところにいた。列と言っても、もうみんな好きなように動いていてぐちゃぐちゃになっているので、離れていても誰も気づかないのだが……。

 3年生男子から呼ばれ、2年の女子まで呼ばれ終わると、2、3年生までもが1年生の首席・次席を気にしだした。

「1年男子首席・早瀬葵はやせあおい。次席・豊川梓。女子首席・崎澤緋水。次席・沢木杏。以上の者壇上へあがれ」

予想が当たったが、またも梓が次席なことに驚く。入学のときは目立ちたくないからと手を抜いていたが、今回はそんなこと言っていなかった。不思議に思ったが首席で呼ばれた男子と軽く言葉を交わした男を見て、私は立ち止まった。

早瀬誠一はやせせいいち

その名前が頭をよぎり、私の頭の中にあの光景が鮮やかに蘇る。冷静さが一気になくなるのが自分でもわかり、立っているのがやっとになってしまった。そんな私の異変にいち早く気付いたのは、ここで保健教諭として働いている慶太さんで、いち早く事情を察したのも慶太さんだった。

「緋水、大丈夫か?深呼吸しろ、落ち着いて。ここは学校だ。思い出すな。今は大丈夫。だから戻って来い!!」

慶太さんが耳元で何度も私に呼びかける。頭は冷静さを取り戻し、やっと体が動くようになる。一言慶太さんに謝り他の先生たちにも謝る。訝しがられながらもそれを気にせず再び歩を進める。男の近くまできたとき、ちらりと様子をうかがい見たが、男も私のことを訝しげに見ているだけだった。

 それからは滞りなく勧められ、そのまま昼休みへと入った。教室に戻るものもいれば、そのまま購買へ走っていくものもいる。私は杏と梓に断りを入れてから、1人で中庭へと行った。

中庭には、先客がいたようで言い争うような声が聞こえた。早瀬葵とあの時の男の姿が見え、思わず足を止めてしまう。会話の内容は聞き取れなかったが、男のほうが早瀬葵に何か頼むような声音だった。

 しばらくすると早瀬葵が呆れたように私のほうに歩いてきた。私に気づいたようだが何も言わずに通り過ぎた。ちらりと横顔をうかがうが、男とは似ていないようだった。だが、腕にちらりと『マーク』があったため、親子だろうと予想した。

 男はため息をつきこちらに歩いてくるようだった。すぐに結界を張り、男が入ってきた瞬間、空間を封鎖する。それに気づいた男は私のすぐ後ろで立ち止まる。振り返ろうとする男に「動くな」と攻撃系魔法の一種を準備する。男は黙って指示に従った。

「君は確か……1年女子首席・崎澤緋水だったな。何の用だ?」

「呑気なものだな……、こちらに裏返った人間というのは。覚えがないか?仲間を裏切り、売ったような愚か者」

男の身体がかすかに動いた。それと同時に私は結界を解きもう一つ準備していた移動魔法で中庭の奥へ移動した。


 近くに会ったベンチに腰掛け一息つく。体が冷や汗でべっとりとしていた。どうしてもあの時のことを思い出してしまう。さっきだってあんなことをするつもりはなかったが、少し冷静さが欠けてしまった。醜い感情ばかりが沸き立ち、理性が飛びそうになる。そうなれば魔力が暴走し魔獣も暴走してしまう可能性がある。そうなれば、被害がどれほどになるかわからない。ドラゴンは魔獣の中でも特別で、魔力が並外れた多さを誇っている。それが暴走するのだ。危険に決まっている。

 背後に気配を感じ、思わず振り返る。小さなナイフを魔力で作り、背後の人物に向ける。

「誰だ?」

姿を現したのは早瀬葵。隠れるつもりはないようで、茂みからこちらに出てきた。

「ずいぶん物騒なもの持ってるな」

「うるさい。結界まで張って何の用?」

早瀬葵は私が魔法を使おうとすると慌てて止めてきた。

「待て!!俺はお前と敵対したいわけじゃない!俺は親父とは違う。俺は闇にいたかった……。学園こんなとこで学んで正魔獣師あんなやつらになんてなりたくない。あんな自分勝手な奴らなんかには……」

俯くことなく私の目を見ってしっかりとした声で言ってくるその姿は、凛としていて少し圧倒された。私は品定めするように目を見据える。自分の持っている能力ちからを使い、本当にそう思っているか確かめる。

「嘘、でしょ。なんであんたが、だって、裏切者なはずなのに」

「俺は裏切りたくなんかなかった。あれは親父の独断で、俺たちほかの家族は関係ない。その証拠に姉ちゃんが闇に入っている。怪しまれてるみたいだけど」

「当たり前でしょ!!裏切られて、家族殺されて、闇をボロボロにしたやつの家族をどうやって信用しろって言うんだよ!!」

感情が高ぶり思わず大声で叫んでしまった。結界を張っていなかったら近くの教室には聞こえていただろう。結界がはってあったことに安心しながらも「ごめん、いきなり…」と謝った。

「早瀬葵、お前の目的は何?」

「葵でいい。俺の目的は、闇の再興。そして、正魔獣師に闇を認めさせて、これ以上組織をつぶすような真似をさせないこと」



確かな覚悟と、確かな思いが目に宿っていた。




よかった、葵もダメそうで……。


一か月ぶりの更新でした。

これからは不定期になると思います。すみません。


能力ちからについての説明がまだでしたよね?多分…


能力とは…

魔獣師となれるほどの魔力を持つ人と魔獣が、もともと持っている能力。

念動力や精神感応テレパシー、瞬間移動、透視など各々違う。多くは先に挙げた4つのうちの一つを保持している。魔獣師の能力が高い人たちは、普通の人が持っていないような能力を持っていたり、2つもっていたりする。


説明下手ですみません。

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