秘密の話(2)
「崎澤さんは本当にそれでいいの? 」
「いいもなにも、最初からそのつもりで近づいて、利用してきたんですよ?……忘れてないですよね」
悪い言い方だが、事実なので仕方がない。先輩もそのいい方に驚いて、何かを言いかけたが口を閉じた。でも、先輩はまだ何か言いたいのか必死に言葉を考えているようだった。
「崎澤さんはそれで大切な友達をなくしていいの?何も思わないの?後悔はないの? 」
何度も同じような質問はうっとおしいだけだ、と思いながらも先輩が折れてくれるような言葉を探し、紡ぐ。
「大切な友達? 誰のことですか、それ。まぁ、優秀な人材だったので惜しいとは思いますよ。でも、それ以外に思うことはありません。つまり、後悔なんてものもありません」
もう話すことはない。という意思表示も含め、私は立ち上がり出口に向かう。ガチャリとノブを回したとき、椅子を倒しながら立ち上がった。
「私はやっぱりあなたが正しいだなんて思えない!!人の気持ちを無視するようなそんな考え方も。自分の思いを無碍にするようなことも。真実を言わないことだってそう。そんな人は上に立つ資格なんかない!! 」
ドアを締め直し、先輩のほうに向きなおる。色々と思うところはあるのだが、今必要なことだけを選び、いつの間にか出てきていたスカイとフィノをなだめながらはっきりと告げる。
「私だって先輩が正しいとは思わない。そんな甘い考えを持ちながら、この組織にいるなんて信じられないよ。知らぬが仏っていう言葉、知ってるでしょう?世の中そんなことだらけなんだから。それとそろそろ覚えろ。私たちの親たちがどんな裏切りを受けたか。その原因は何か。私が考えてるのは、組織のことだ。個人を第一になんて考えていない。上に立つ者と、その下で活動する者の考え方は違うんだ」
言い切った後、先輩は私の言葉に呆然としていた。
時計を見る。示す時間は6:00前。案外長かったな。まぁ、ほとんどが沈黙だったけど……。再びドアノブを回し、今度こそ外へと出た。同時に今まで行使されていた魔法は全て解ける。誰にともなくただ私はつぶやいた。
「独りでいい」
と、譫言のように。
杏子と梓は予想をはるかに超えて9:00ごろに帰ってきた。晩御飯はもう一人で済ませ、明日のカリキュラムの確認をしていた。幸せそうな笑顔を浮かべ、両手にたくさんの荷物を持った杏、となぜかその後ろに梓。この時間、男子は女子寮に入ってはいけないはず…。あの厳しそうな寮長さんが許してくれるのか?
「ただいま~、緋水」
「お邪魔するね」
突っ込んで聞くことでもないと思い――本人も何も言わないため――私は2人を「お帰り」の一言で迎え入れる。その間にも、2人は今日買ってきたものを着々と片づける。何を買ってきたのか知らないが、そんなにいるものがあったのだろうかと、不思議に思う。
まだ5月中旬。夏はもう少し先。
肌に心地よい風を吹かせる夜は、月に照らされいつもより明るく見える。
だが、私たちのまとう空気はなんとなくじめっとした暗さを持っているように思えた。
「緋水、遊ぼう!!ボードゲームとかいろいろ買ってきたの。夏にできるように花火も!!」
「気が早くない?」
「まぁ、いいんじゃない?」
笑い声が重なる。空気とは真逆の明るい会話。
いつ終わるかもわからないボードゲームを、3人で子供の用にはしゃいで遊んだ。
遅くなりました。
次は、詩(?)を書くつもりです。




