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異世界を巡る  作者: 秋野伊月
入学編
15/24

騒動の後

 支部に戻ると、少し疲れたような顔をしているフィノが、外で待っていた。すぐにフィノが何かあったのか聞くと、途中で手練れの正魔獣師にあったというのだ。右腕に書いてあったのは三つ葉のエンブレムがついていたそうだ。そして三つ葉の周りを、5つの星が囲んでいたそうだ。

 正魔獣師の「三つ葉」は諜報を得意とし担当とする者たちで、多分こちらの攻撃能力の詮索に来ていたのだろう。 

 正魔獣師にはほかにも「桜」「椿」「三日月」などのマークがある。

「桜」のエンブレムは、主に攻撃を得意とし担当とする者たち。「椿」のエンブレムは、主に防御と補助能力――回復や攻撃力の増力など――を得意とし担当する者たち。「三日月」は暗殺や情報操作など、裏の仕事、すべてを得意とし担当をする者たち。

 そして星というのは、その者の位や実力を表すものだ。無星は一番下の位や実力の者7つ星が最高位で一番位が高く、実力のあるものとされている。

 そして、正魔獣師連合せいビーストマジックれんごう連合長トップには狼の周りを7つ星が囲んでいるエンブレムがついているのだ。

 狼は正魔獣師の象徴なのだ。


「それでどうした? 」

「少し攻撃をしてきたもんだから、急いで避けたよ」

「能力は使ってないな? 」

「あぁ。でも、一緒にいたやつらにも誰でも使えるような幻影能力を使って、姿をくらませた」

「それぐらいなら許す。けがは? 」

「少しかすったくらいだ。一緒にいたやつらは無傷だよ」

安心してほっと一息吐く。そして、フィノの傷を治すために一番奥の部屋に移動した。


 「ごめんな、緋水。あんな時間に呼び出して、けがまでさせて……」

「大丈夫ですよ。っていうか、むしろ少しすっきりしました。調べてるとストレスが溜まってきていたので……」

ほかの人が少し前に用意してくれていたお茶を飲み、1時間程度休んだ。


 「そろそろ、帰ります。杏が起きたとき私がいなかったら、うるさいだろうから」

「そうだね。送ろうか? 」

「いえ、目立つとダメなので、自分たちで帰ります」

「そっか。気を付けて」

私は外に出ながら「はい」とうなずいて、スカイの風能力を使い寮に帰った。



 夜が明けるまであと3時間という時間帯。思わぬこともあり、非常に疲れがたまったので、寝ることにした。さっさと着替えを済ませると、ベッドに倒れこみそのあと、朝まで一度も起きることなく眠った。



 今日の朝は騒がしい中目を覚ました。何事かと思って杏のほうを見るとなぜか、梓がいた。

「何してんの?朝から五月蝿いんだけど……。しかも今日って昼からの登校だよね?寝たいから静かにしててほしいんだけど……」

ジト目でにらみながら言うと2人はしゅんとした様子で、文句をぶつぶつと言っていた。あたしは気にせずに、「行く時間になったら起こして」とだけ伝え、また眠った。




緋水はまた布団にもぐって眠ってしまった。俺たちは安心する。このところ、緋水は何か一人でいろいろとしているみたいで、疲れが相当溜まっているんじゃないかと心配していたのだ。

 昨夜も、緋水の能力の強い波動が伝わってきて俺は起きた。杏は起きなかったようだが、起きたときに何か違和感を感じたらしい。

俺は能力の波動の感受性が人一倍強くて、もしかすると緋水よりも強いかもしれない。

 そんなのだから、緋水のことが気になって押しかけてきたのだ。寮の管理人さんにも許可をもらったので、別段問題はなかった。

だが今日は運が悪いようで、誰かがこの部屋に訪れてきた。緋水が音に気づいて起きるんじゃないかと思ったが、相当深く眠っているようで、起きる気配は全くなかった。

 「ごめね。こんな朝早くに……。崎澤さんいる? 」

尋ねてきたのは桐沢先輩だった。杏は緋水が起きていないことを伝えると、桐沢先輩は安心したように「よかった」とつぶやいた。そして杏と一言二言かわした後、部屋に入ってきた。

目が合った瞬間「あ…」と驚かれてしまったが、俺は「おはようございます」と苦笑して挨拶した。

「用事があってきていたんです。管理人さんには許可をもらっているので」

納得してくれたのか、笑顔でうなずいてくれた。

 俺の隣に杏向かい側に桐沢先輩が座り、先輩が話を切り出してきた。

「崎澤さんのことなんだけどね……愛架、あ、石原先輩がね……」

「気を遣わなくていいですよ。話しやすいように話してください」

杏の一言に少し気を許したのか、空気が幾分か砕けたものになった。

「愛架がね、わかってるかもしれないんだけど、あなたたちのこと疑ってるの。もしかしたら『闇』に入っているんじゃないかって……」

それをどうして俺たちに言いに来たのかわからないが、はなしを続けてもらうことにした。緋水も起きているようだし……。

「『闇』に入っていることが悪いとは言わない。だって私も知っているから、『闇』のことを……」

部屋に沈黙が流れた。それは桐沢先輩が思いがけないことを口にしたからだ。まぁ、でも知っていると言っても、俺たちのように真実は知らないだろうと、聞いてみた。

「知ってるの。全部。みんなにはずっと隠していたんだけど、ね……」

「桐沢先輩、そこまでにしてもらっていいですか? 」

いきなり立ち上がるので、起きていると知っていた俺も驚いたが、知らなかった2人はより驚いていたようだ。

 立っている緋水の目はひどく冷たくて、鋭かった。まるで何か一つのことに執着しているような、普段はこんな時絶対に見せない目だった。

 すると桐沢先輩が緋水に向かい合うような形で立ち上がった。

「ごめんなさい。でも、この2人にだけは知らせておいたほうがいいと思うんです」

いきなり敬語になる桐沢先輩に驚くが、俺たちのことは完全に無視らしく、2人は勝手に会話を進めていった。

「何度も言ってきたと思いますが?それでも納得していただけないのでしょうか? 」

「納得できません。やはり、伝えるべきことだと私は思います」

「命懸けれるの?今あんたが、2人にばらして、もし何かあった時、命懸けて、2人を守れるの? 」

言葉を切りながら言う緋水の言葉には重みがあった。そして何か重大なことを言うときによく緋水が使う「命懸けれるの?」という言葉に驚いた。

「懸けれます。責任だってとります」

「こんなに防御が薄いくせに?防音能力だって何一つ使ってない。それ何に信じろと? 」

防音能力がいる会話なのか?と思ったが、緋水に一瞬視線を向けられ黙っておくことにした。

はっとした様子の桐沢先輩に次の言葉を投げかかる緋水。

「この話は違うところで話そう。今は眠いからパス。帰って」

桐沢先輩は少し不満を残していたようだが、黙って帰っていった。

「緋水、どういうこと?」

「ごめん、眠い。今はパス」

そう言うと、また深い眠りについてしまった。

「どういうことだろうね?」

「さぁ。でも緋水は何か隠してるみたいだね。桐沢先輩が入ってきたときから、微力だけど強力な防音能力を使っていたから」

「気になるけど、やっぱりまだ聞かないほうがいいよね?」

珍しく自分の好奇心を抑えている言葉に「イイ子、イイ子」と頭をなでながら「そうだな」と返事をした。

今回は長々と書き連ねていまいました。

多くてすみません。


一難去ってまた一難来そうな予感でしたが、なんか気にくわなかったのでやめて、これになりました。

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