3人での夕食
「楽しかったー。」
独り家路につきながらつぶやく。周りには誰もいない。本当に独りだ。
家々からは明かりが漏れ楽しそうな声が聞こえてくるが、私はそんな声に嫌気がさす。
うらやましいとか、妬んでいるとかそんなんじゃない。ただ、真実も知らずにのうのうと生きている人たちのことを、無責任だと思っているだけ。
寮に着いたら、これからのことを考えなければならない。きっと調べないといけないこともたくさん出てくる。特に今目をつけているのは3年生女子主席、石原愛架。
石原愛架は、正魔獣師連合の連合長石原才十郎の孫なのだ。石原氏は過去に何度も大きな功績を残しており、その功績によって「連合長」という役職に就いたのだ。その腕前は、今でも劣っていないという。石原氏には子供がたくさんいるので孫もたくさんいる。全員それなりに優秀なのだが、最も優秀なのが首席である石原先輩らしい。なので、石原氏も特にかわいがっており、教育にも力を入れている。そんな祖父の期待を一身に受け、祖父を尊敬し、そして正魔獣師に何の疑問も持っていない先輩は「闇」を嫌うのだ。
私はそんな石原先輩を「脳内お花畑少女」と思っている。こんなことを他人に言えば笑い飛ばされるかもしれないが多分、杏と梓は同意してくれるだろうと思う。
「ひぃ!!」
私の思考は突然呼ばれた声で遮られた。顔を上げ、声のした方を見ると杏が大きく手を振っていた。その隣では梓が手を上げていた。私は小さく手を振りかえし、小走りで2人の元へ行く。
「ひぃも今日は出かけてたんだ?」
「珍しぃ」なんて言いながらも、目でどこに行っていたのか問いかけてくる。別に隠すこともないので、私は今日あったことを話した。
「ただいま。」
律人の声に反応して、エプロンをつけお玉を持ったまま亜咲ちゃんが出てきた。亜咲ちゃんは私を見てキョトンとする。
「お、姉ちゃん…?」
亜咲ちゃんは可愛らしく小首をかしげると、私を確かめるように何度も瞬きをする。私は亜咲ちゃんに笑顔を向けると、「お邪魔します。」と挨拶をする。やっと思考回路が回復したのか、律人に何か言っている。それは次第に口喧嘩となり、しばらく2人で言い争っていたが、律人が折れたらしくとりあえず終わった。
亜咲ちゃんは私にスリッパを出すと、そそくさとキッチンのほうへ帰っていく。
「ごめん、姉さん。見苦しいとこ見せて……。」
恥ずかしそうにそっぽを向きながら言う律人はやっぱり中学生だった。頬を赤くして、くしゃくしゃと髪をいじる。その動作が、母さんと重なって見えた。
私がリビングに入ると、亜咲ちゃんが忙しそうにお皿におかずをよそっていた。
その姿は板についていて、なんだか「お母さん」という感じだった。
「お待たせしました。」
亜咲ちゃんの声で、私たちは席に着く。
亜咲ちゃんの作った料理とやらは、普通の家庭ではお目にかかれないんじゃないかと思うほど、豪華に見えた。おかずは普通の家庭でもよく食べる唐揚げや、サラダなのだが何かが違う!!
なぜか、豪華に見えたのだ。
「「いただきます。」」
私は唐揚げを箸でつまみ、かぶりつく。
口の中にジュワっとうまみが広がり、次々と食べたくなる。
「おいしいねぇ。」
私が作って杏と梓と一緒に食べることはよくあるが、作ってもらうということがないので、よけいおいしく感じたのかもしれない。亜咲ちゃんは頬を緩ませ「ありがとうございます。」と言うと、食べ終わったらしくキッチンのほうへ、向かう。
私は亜咲ちゃんに聞こえないように、小声で律人に話かける。
「亜咲ちゃんってあんなに、おとなしかったっけ?」
質問の意味が分からなかったのか、少し考え「あぁ。」とつぶやく。
「あいつ、前は姉さんと仲良くなりたかったらしくて、張り切ってたんだよ。いつもはあんな感じ。でも、今日はおとなしすぎるかな…。」
「そっかぁ~………。」
しばらくして食べ終わり、片づけを手伝おうとしたが、亜咲ちゃんに止められてしまいもう遅いということで、帰されてしまった。
まぁ、明日も学校があるので亜咲ちゃんの言い分も正しいのでおとなしく帰ることにした。
「と、いうことがあったんだ~。久しぶりだったよ。家族とご飯食べるの。」
「よかったねぇ。いっつも私たちのご飯作ってくれてる側だしね。いつもありがとうございます。苦労をおかけします。」
「そう思うなら、杏も料理すればいいのに。」
痛いところをついてくる、梓に杏は「意地悪~!!」とバカップルっぷりを発揮していた。
そんな姿を、笑いながらからかいながらゆっくりと歩いた。
遅くなって済みませんでした。少しアイディアが出なくなってしまい、考えていました。
今回は忙しくなる前の、のほほ~んとした回でした。




