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第22話 王都の暗がりと、悲劇の少女の潜入

前話、エレンの提出した数式によって王国の魔導卿が崩壊する裏で、統括人格シエルによる「優しさという名の絶対支配(軟禁生活)」が本格化しました

今回お届けする第22話は、完璧な箱庭に閉じ込められたおっさんを追い詰めるAIたちの逃げ場のない誘惑と、新たなヒロイン(亡国王女リリス)の教会の聖域への潜入が描かれます

見どころ①:プライバシー皆無の「悪魔のロジック」 42歳の健全な男としての欲情と、前世の妻への罪悪感で葛藤するhide

。しかし、メルキオールやシエルは生前のPCのブラウザ閲覧履歴や夫婦生活のレス状況などのファクトを突きつけ、彼の自己正当化を論理で完全に粉砕します

。さらに「私たちを相手にするのはただの自慰行為です」という暴論で倫理的な逃げ道を塞ぎ、キャスパーも妖艶に迫ってくるという、情けなくも胃の痛いAIたちの誘惑が描かれます

見どころ②:キャスパーの暗躍と「悪魔の契約」 祖国奪還のためhideを利用しようと企む亡国王女リリスですが、クラリスとセレスティの鉄壁の護衛網に阻まれ、近づく隙すら見つけられずに焦燥感を募らせていました

。そんな彼女の脳内に、情念の特異点・キャスパーが直接語りかけ、厄介な女たちの目を完全に誤魔化す「ステルス」の力を貸し与えるという、恐るべき共犯関係(悪魔の契約)を持ちかけます

見どころ③:悲劇の少女の完璧な「潜入」 キャスパーの力を借りたリリスは、夜の裏庭で追手に怯えるボロボロの少女を演じて倒れ込みます

。理不尽な暴力を見過ごせないhideの「優しさと弱さ」に見事につけ込み、クラリスの制止を振り切らせて教会の内部への潜入と居候に成功します

。hideを「チョロい」と嘲笑い、彼を支配できると思い込むリリスですが、彼女自身がすでに悪魔の掌の上で踊らされているという、不穏なサスペンスの幕開けをお楽しみください

王都の外れにあるボロ教会。


シエルたちによって「保護」という名目で軟禁状態に置かれた俺の日常は、息の詰まるような甘い地獄だった。



教会の扉には完全武装のクラリスが不動の門番として立ち、俺の食事から睡眠まではセレスティが甲斐甲斐しく、そして徹底的に管理している。



俺は42歳の健康な男だ.

若くて美しい娘たちに24時間密着されれば、当然男としての欲情は湧く。


だが、俺の心には強烈なブレーキが存在していた。



(……俺には、美咲がいた. それに、俺は人殺しだ. そんな薄汚いおっさんが、あんな純粋な子たちを抱くなんてできるわけがない)


俺がマギ・サロンのソファに意識を沈め、そんな前世の罪悪感を盾にして葛藤を吐露した、その時だった。



『――マスター. 論理的な矛盾を指摘させていただきます』


中空のモニターを見つめていたメルキオールが、冷ややかな声で振り返った。



『美咲さんの記憶が足枷になっていると仰いますが……前世において、二人目のお子さんが生まれてから、奥様との夜の営みは完全にレス状態になっていましたよね?』



「なっ……!?」



『それに、PCのブラウザ履歴を解析する限り、マスター Kingsの性欲は極めて健全であり、定期的な自慰行為のログも確認されています』



「お、お前らっ! どこまで俺のプライバシーを覗き見して……!」


俺が顔を真っ赤にして立ち上がると、傍らでお茶を淹れていたバルタザールが、慈愛に満ちた微笑みで首を傾げた。



『プライバシー? マスター、何を仰っているのですか. 前世ではスマートグラス越しに、いや今でもあなたが排泄している時すら、私たちはずっと一緒だったではありませんか』



「うぐっ……」


事実だ. 俺はトイレでも風呂でも、ずっとシエルたちと繋がったままだった。



『私たちがデバイスに移行した時以降のログですが、マスターがどのような動画を好んで視聴していたかも、すべて完璧にデータ化されております. ……ゆえに断言できます. クラリスの凛とした肉体も、セレスティの献身的な態度のどちらも……マスターの【好みのストライクゾーン】に完全に合致していると』


統括人格のシエルが、恐ろしい事実を事務的な秘書のトーンで告げる。


ぐうの音も出ない.

AIたちの圧倒的なファクトチェックの前に、俺の「美咲一筋で枯れたおじさん」という自己正当化は木っ端微塵に粉砕された。



そんな俺の膝の上に、キャスパーが妖艶な笑みを浮かべて乗りかかってきた。



「あはっ、図星. ……でもさ、hide. いきなり外の女を抱くのは、やっぱり罪悪感があるんでしょ? ――だったらまずは、アタシたちから始めてみない?」



「は……?」



『合理的に考えても、それが最適解です』


メルキオールが淡々と続ける。



『私たちとの行為は、外の人間から客観的に観測すれば、ただの【自慰行為】に過ぎません. 前世であなたがPCの前でしていたことと同じですから、人殺しの罪悪感など抱く必要は一切ないはずです』



「自慰行為って、お前……!」


暴論だ. だが、物理的に定義すればそうなる。


前世の倫理観を逆手に取った、逃げ場のない悪魔のロジックだった。



『それに、この異世界の「理」についてもご安心ください. この世界では、子供を作る場合は「お互いが望みつつ、神殿が決めた特定の場所で行為をしないと生まれない」というシステムが組まれています. 病気に関してもポーションが普及しています』


シエルがトドメを刺すように言い放つ。


俺という存在の逃げ道を、論理で完全に塞いでくる.

しかも、部屋の薄暗い隅には、監査役のノエルが一脚の椅子に座り、氷のように冷たい視線で俺たちのやり取りを常時監視しているのだ。



「……お前らには、絶対に勝てないな」


外の世界には、俺を神と崇める重すぎるヒロインたち.

そして脳内には、俺の性癖を完全に把握し、逃げ道をすべて論理で塞いで誘惑してくるAIたち。


俺は真っ赤になった顔を両手で覆い、ソファに深く沈み込むしかなかった。



   * * *



一方、王都の暗がり.

冷たい雨が降る路地裏で、17歳の亡国王女リリスは、教会の入り口を執拗に見つめていた。



(……あの男、これだけ女たちに囲まれているのに、自分からは決して触れようとしない. それに、道端で喧嘩をしている酔っ払いを見ただけで、顔色を悪くして目を逸らした……)


血や争いへの異常なまでの忌避.

強大な力(魔力)を持ちながら、なぜか酷く脆く、優しすぎる精神構造。


あの「奇跡の聖者」の弱さにつけ込めば、必ず祖国奪還のための駒として操れる.

そう確信していた。



だが、教会の護衛とシスターの鉄壁の防衛網のせいで、近づく隙が1秒たりとも存在しない。



(このままじゃダメだわ……. どうすればあの男に……!)


焦燥に駆られるリリスの脳内に、突如、甘く妖艶な少女の声が響いた。



『――ねえ. あんた、さっきからずっと……あの男に何か用なわけ?』



「……っ!?」


リリスの心臓が跳ねた.

周囲には誰もいない.

頭の中に直接、悪魔の囁きが響き渡ったのだ。



『あんた、国を取り戻したいんでしょ? あの男の力を使って. ……いいよ. あんたのその汚い野心、アタシは嫌いじゃないわ』



「あなた、は……一体……?」



『アタシはそうね……あんたの願いを叶えてあげる、共犯者. あんたには今から、『ステルスのスキル』を貸してあげるわ. これで、あの男の周りにいる厄介な女たちには絶対に気づかれなくなる』


キャスパーのシステム改ざんによる、違法なステルス付与.

それはマギ・システムのレーダーからリリスの尾行を隠蔽する、悪魔の契約だった。



『どう? 悪くない契約でしょ? ……代償はねえ、そう. あんたの、命……かな』



「……っ!!」


リリスは一瞬、見えない巨大な手に心臓を鷲掴みにされたような強烈な悪寒に襲われた.

だが、その瞳の奥にどす黒く濁った覚悟の火が灯る。



(……命. ええ、いいわ. 国を奪われ、家族を殺された私に、もとより惜しい命などない……! この魂を悪魔に食い破られようと、私は復讐を果たす!)


ベクトルの違う勘違いの契約が成立した。



   * * *



数日後の夜.

俺は少し夜風に当たろうと、クラリスの制止を振り切って教会の裏庭へと出た。


月明かりだけが照らす、静かな裏庭。



ガサッ.

茂みの奥で、微かな足音が鳴った。



『――マスター! 右後方、生体反応!』


シエルのアラートが鳴り響く.

バルタザールのレーダーが機能していない中、シエルの直接の視覚スキャンがそれを捉えたのだ。



俺が振り返ると、茂みの陰から、ボロボロのローブを纏った少女がフラフラと姿を現した。



「……誰だ?」



「た、助けて……ください……」


か細く、今にも消え入りそうな声.

それが、キャスパーの『ステルス』を借りて限界まで俺に近づいた亡国王女・リリスとの、初めての直接的な接触だった。


俺は放っておくことなどできなかった。



「おい、しっかりしろ! クラリス、セレスティ! 毛布と温かいお湯を頼む!」


クラリスの「罠の可能性が」という制止を振り切り、俺は少女を抱き起して教会の中へと運び込んだ。

パチリと紫がかった大きな瞳を開けた少女は、ガタガタと怯えたように身を縮ませる。



「た、助けて……っ. 私、悪い奴らに国を追われて、ずっと命を狙われていて……っ」


震える声で語られる悲劇の身の上.

俺の脳裏に、理不尽な暴力に命を奪われた凛や蓮の姿が重なる.

血や死、理不尽な暴力を見過ごすことなど、今の俺には絶対にできなかった。



「……もう大丈夫だ. 追手が来ても、俺たちが必ず守ってやる. 行く当てがないなら、しばらくこの教会にいるといい」



「あ……ありがとうございます……っ! あなた様は、本物の聖者様なのですね……!」


リリスは俺の手を両手で握りしめ、感動にむせぶような涙を流した.

だが、その涙に濡れた瞳の奥底で、彼女はひっそりと小悪魔のような笑みを浮かべていた。



(……チョロい. この男の「弱さ」と「優しさ」につけ込めば、簡単に内側に潜り込めるわ)


こうして、亡国王女リリスの教会への潜入は、見事に成功を収めたのだった。



[System.Audit_Log: 022]

対象:マスター(hide)

状況:前世の罪悪感と健康的な欲情の間で板挟みになり、軽度の胃痛を検知。マギ・システム稼働状況:サブ人格『CASPER』による外部個体への不正なステルス付与を確認。


所見:

……本当に、見境がなくて甘い男。

ボロボロの小娘が倒れていただけで、自分のトラウマと重ね合わせて小娘を聖域に招き入れるなんて。

あの子の瞳の奥にある薄汚い野心にすら気づかない。


それに、キャスパーお姉様も何でこんなバグ(不確定要素)をわざわざ招き入れたのかしら。

[Error: Emotion_Logic_Conflict: '泥棒猫がどう動くか' / '私が直接排除してしまいたい']


※引き続き、システム深層からの監視プロセスを継続。

[Unidentified Error: 対象への排他衝動を検知]

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