畑を作ろう!
めちゃくちゃ土作りに熱中をしていた私は、ハッと気がつく。空を見上げると、随分と日が高くなっていた。
「ワルフルパニック……だったな」
「お疲れ様です」
ワルフルの図鑑を開けば、すっかりと空欄だった項目が埋まっていた。
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名称【ワルフル】
・ 来訪条件:
10タイル分の汚染されていない草地がある。
・ 住民化条件:
20タイル分の汚染されていない草地がある。
ミルクを1瓶飲む。
所属するワルフルが五頭に達していない。
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最初に選んだ卵から孵った子だったから、来訪条件も住民化条件も空欄のままだったんだけど、判明したんだよね。
「……ふふ」
思わず、ひとりでほくそ笑む。
あれからひたすら地面をならし続けていたんだけど、ワームースが三匹揃ったあとは野生のワルフルが次々と来訪し始めたのだ。
ただ、ワームースとは違ってワルフルたちは歩いた地面をどんどん乾かしてひび割れさせていく。
可愛らしい肉球が地面に接しているだけなのに、そこから荒れ地に変わっていくのをまざまざと見せつけられるのは結構きつかったな。せっかくならしたあとだったから。
それに、あんなに可愛らしいワルフルの背中やお耳が欠けていたり、ひび割れていたり、古くなって固まったワッフルのようになっていたのも見た目がすごくてショックが大きかった。
「ちょ、待って待って!」
慌ててミルクを差し出す。
「わふ!」
飲ませる。
ワームースがやってきて汚染された地面を浄化する。
また来る。
またひび割れる。
「ちょっと!」
……それを何度も繰り返し、ようやく落ち着いたのだ。
何頭も来訪して来た結果、すでにワルフルは五頭揃っている。
見事な群れが形成されていた。
最初に生まれたワルフルが自然と先頭に立っていて、他の子と同じ“新入り一日目”のはずなのになぜかドヤ顔だ。可愛い。
二時間くらいひたすら作業をしていたけど、見渡せばガーデンは見違えるほどマシになっている。
荒れ地や瓦礫はまだ残っているけど、最初に比べれば雲泥の差だ。
土壌の完全な回復はワームースたち頼みだから見守るしかないけど……ええと、ワームース一匹で、1時間に15タイル回復でしょ? それが三匹で群れボーナスがあるから……。
「……今日か、遅くても明日には初期ガーデン全部、整うかな」
二本目、三本目のゲージはどうすればいいのかっていうのはそれから考えればいいよね。シーちゃんも特になにも言ってこないし。
それよりも、今早急になんとかしたいのが瓦礫だ。
1タイル分くらいならツルハシでどうにかなるけど、それ以上大きな瓦礫はどうやら私の力じゃじゃ壊せないらしい。
「……シーちゃん、なにかアドバイスとかある?」
瓦礫とか、いろいろ。
「……力持ちなモンスターであれば、瓦礫を破壊することも可能でしょう」
「うーん……」
力持ちか。ワームースもワルフルも瓦礫を壊すことはできないし、今はまだ無理そうだね。瓦礫を壊すことのできるモンスターもそのうち来てくれるようになるんだろうな。
「じゃあ、今他にできることはある?」
少し考えてからシーちゃんは提案した。
「それでは、畑を作って種を植えてみてはどうでしょうか?初日ですので種をおひとつサービスしますよ」
「……畑。なら、クワ?」
「はい」
シーちゃんがコンソール? のようなもので新しいアイテムを表示する。手のひらくらいある大きな種だ。見た目だけじゃなにが育つかは分からない。こんなに大きいのは見たことがないし、ゲーム特有の樹木か、それともデフォルメ表現みたいなのが効いているだけで、リアルでもある植物の種なのか……育ててみれば答えは分かるだろう。
「樹木の種をお渡しします。植えるのに必要なタイル数が
表示されると思います。その分を耕してみてください」
「分かった」
必要なのは、1タイル分。チュートリアルって感じだ。樹木というともっと大きくなるイメージがあるけど、低木とかなのかな。
さくさく耕して種を植える。
ジョウロで水を与えると、ニョキッとすぐに小さな芽が顔を出した。
「おお……」
「植物には、乾燥ゲージがあります。適宜、水を与えてください。成長途中で、適切なタイミングで肥料を与えるとより大きく育ち、採れる果実が増えるなどの変化が起こりますよ」
「農場作りも楽しそう」
「本日は肥料などは与えず、通常成長を観察してみましょう」
「うん」
ワクワクしながら芽を眺めつつ、私はまたスコップを手に取る。
整地作業自体は単純だけど、群れになったワルフルたちがぞろぞろと縄張りを巡回している姿が見えたり、あちこちで潜ったり出たりしているワームースが地面から顔を出してニッコリ笑いかけてきたり。
それぞれが思い思いに行動していて、まだ2種類しかモンスターもいないのに見ていて全然飽きない。
「わふっ!!」
「わふっ!」
「わふーん!」
「わう!」
「ばふぅ!」
整地しながらほっこりしていると、突然ワルフルたちが
いっせいに吠えはじめた。
びくっとして固まる。直後、ログが視界に流れた。
【ワルフルたちが未発見のモンスターを発見しました!】
慌てて、吠える方向に目を向ける。
そこにいたのは、大きなクマ。体格が明らかに違うし、体表を覆うように黒い粘液みたいなものがドロっと滴り落ちている。
ゆっくりと歩いて近づいてくる、明らかに今までとは格が違う存在に緊張する。そして、スコップをしまって見つめることに集中した。
「大丈夫かな」
うちの子たち、まだ小さい子しかいないんだけど対処できるのだろうか。
私のところへいっせいに走り寄ってくるワルフルたちを順番に撫でながら、私は顎に手を添えて考え込んだ。




