ニンジンパーティ!
第二ガーデンのほうはひび割れ部分をならすのだけやっておいて、あとは勝手に住み着く子がいるならそれに任せることにしよう。
そうして第一ガーデンに戻ってきた私は、さっそく施設を作ることにした。焼き窯自体は集めるのが簡単なアイテムでつくることができるからすぐにでも製作することができるだろう。施設の設置だからか、四隅を杭で囲ったボックス型の木箱みたいなものが現れて、設置する場所を指定するタイプの操作ができるようになる。
タイルの位置を見ながら景観の邪魔にならないところに設置をすると、木箱が実体化してその目の前にあと三十分、という看板が立つ。
これを醸造場の設置でも考えて場所を指定する。これで時間が経てば自然と二つの施設が完成することだろう。
こうして施設関連についての準備が終えた頃、ガーデンにあの原木ハム豚がやってきた。
「お……!」
さっそく、思いついたことを試す機会が巡ってきたらしい。
確か以前……あの豚がご飯を食べている場面をはじめて見たときに食べていたものがあったよね? ええとなんだったっけ。トウモロコシと、エンドウマメと、イチゴかなにかだったかな。腐った果実を食べているのが印象的だった。あのときは、腐食モンスターだからそれしか食べるものがないのかなと思っていたけれど、今はもう、それが特性なんじゃないか? と推測ができている。あとは実践あるのみ!
ふごふごお鼻で地面を嗅いでいる豚さんの近くで、取り出したるは三種類の食品。
これをなんと今回は、地面に置いてスコップでですね……叩きます。
「うう、もったいない」
罪悪感を抱きながらも、スコップで食べ物を軽く叩く。そうするだけで一瞬で腐り、柔らかくなった食べ物はいかにも悪臭を放っていますよというもやもやエフェクトが出ている。周囲で「なにしてるの?」とばかりにいたモンスターたちがドン引きして去っていった。あ、待って! 違うの! これは必要なことでぇ!!
特に果物系の子たちは、よりドン引きしたらしく遠くにまで行ってしまっている。悲しい。
でもその甲斐あってか、原木ハムちゃんは「!」となにかに気づいたような素振りを見せてから、ぷりぷりとおしりを振りながらこちらに近寄ってくる。
そして悪臭を放っているらしい可哀想な果実たちを嗅ぎまわり、鼻で転がし、そして食べた。
「本当に食べてるぅ……」
「ぷぎぃ~!」
まさかと思ったけど、本当に成功しそうだ。
手元にスケッチブックを出して絵本タッチで柔らかく。もやもやを出している食べ物をもっしゃもっしゃと食べる豚の絵を描いた。柔らかい感じで描かないと見た目の絵面がヤバい感じになるから、結構気を遣っちゃうな~。
全て食べ終えたタイミングで豚さんが光って卵になり、テンカウント。立派で美味しそうな原木のハムが目の前でぷりぷりお腹を揺らしている。ごくりと喉を鳴らしてしまうのは仕方ないと思うの。
「シーちゃん、この子の図鑑を見せてくれる?」
「はい」
――――――
No.021
名称【パッグ】
・ 分類:加工肉
・ 原型食物:ハム
・ 原型生物:豚
・ 危険度:D
・ レア度:R
・ 大きさ:2(1×2)タイル
・ 生息地 : 枯れ果てた草原
・ 好物:野菜類、穀物類
・ 来訪条件:
50タイル分の汚染されていない草地がある。
ガーデンに10タイル分の野菜畑がある。
・ 住民化条件:
50タイル分の汚染されていない草地がある。
腐ったトウモロコシをひとつ食べる。
腐ったえんどう豆をひとつ食べる。
腐ったベリー類をひとつ食べる。
・ 汚染タイル数: 陸上2
・ 能力:
腐った野菜、果実を食べることができる。一日一回、お腹の塊ハムを切り取って収穫することができる。
・ 備考:
ハムを収穫したあと、野菜か果実を食べないと体が回復しないので注意。切り取りすぎると疲労が溜まり、回復が数日単位に及ぶ場合がある。
・ 生態観察:
腐敗した農産物を摂取可能な処理系モンスター。
腐敗食材の消費により保管・畑周辺のリスク低減に寄与する。
体表(腹部)には加工肉成分が形成され、定期的な採取資源となる。
採取後は栄養補給が必要で、過剰採取は疲労と回復遅延を招く。
衛生管理と資源回収を両立できるが、運用には給餌サイクルの設計が求められる。
――――――
「お腹のハムを切り取って収穫することができ、る?」
「はい、可能です」
宇宙を背景にした猫みたいな顔をしてしまった。
今までも収穫できるモンスターは当たり前だったけれど、さすがにお腹を切り取れるというのは驚きだ。いや、ハムの原木ならスライスできるのは分かるのだけれど……それはそれとして、どこに内臓が……とか考えてしまう。生命の神秘!
【未発見のモンスターが来訪しました】
そう考えていると、ホウホウとオリウルが鳴いてはじめてのモンスターの来訪を告げた。
そこにはでっかいニンジンがひとりでに動く姿が! ……と思ったら、重そうなニンジンの尻尾を引きずったネズミさんだった。ニンジンモンスター……多くない? 確か草原で見かけた馬もそうだったし、案外同じ食材と融合して共存しているモンスターは多いのかもしれない。キャロキャットもニンジンだしなあ。
ニンジンサラダが食べたくなってきてしまった。味に違いとかあるのだろうか。
味比べ日記とかも需要あるかなあ。産地や品種によって多少の違いがあるのなら、モンスターによって違ってもおかしくないと思うんだ。
ネズミは柵をくぐって畑に尻尾を埋める。ああ、そういうパターンかあと思って、水をやったほうがいいのかなと近づいてみると慌てて逃げてしまった。あれ? 違ったのかな。
畑から離れた瞬間の尻尾がなんだかキラキラと輝いていた気がした。明らかなエフェクトの違いに動揺して思わず追いかける。
ネズミは柵の隙間を通って花畑にも侵入し、近くのローラビットの横を通り過ぎ……あっ。
「ぢぢー!!」
キラキラに惹かれたらしいローラビットが覆いかぶさって、ネズミの尻尾をかじる。
え、そんなご無体な!?
汗のエフェクトを出しながら、逃げられずになんだか可哀想なことになっているため、私がその場に駆けつけてひょいとローラビットを持ち上げる。不満そうにローラビットは足をぷらぷらさせて抱っこされた。
「ぢ!」
次の瞬間、ネズミが卵に変化して住民に変化する。え、今ので良かったの!?
――――――
No.027
名称【キャラット】
・ 分類:野菜
・ 原型食物:にんじん
・ 原型生物:ラット
・ 危険度:D
・ レア度:R
・ 大きさ:1タイル
・ 生息地域:枯れ果てた草原
・ 好物:穀類。ニンジン。
・ 来訪条件:
所属するキャラットが一匹もいない。
ガーデンに3タイル以上の畑がある。
・ 住民化条件:
ガーデンの畑に空きがある。
ローラビットに尻尾をかじられる。
・ 汚染タイル数: 陸上2
・ 能力:
空きのある畑に尻尾を埋めて半日に一回キラキラニンジンを一本生産する。
キャラットがかじったニンジンをもう一度埋めるとキラキラニンジンに変化する。
・ 備考:
満腹の際にニンジンを齧らせようとすると怒って生産をストップさせる。
ローラビットにかじられると疲労度が溜まり、50%以上で普通のニンジンしか生産されなくなる。
・ 生態観察:
畑に定着し、特殊な高付加価値作物を生産する小型モンスター。
尻尾を地中に埋めることで、通常とは異なる作物へ変化させる特性を持つ。
精神的・肉体的な負荷が生産効率に直結するため、安定した環境が必要。
他モンスターとの相互作用によって状態が変化する点に注意が必要である。
――――――
「逆に今までどうして来てなかったんですか……?」
そう思ってしまうのも無理のない来訪条件だろう。
もしかしたら来ていたことに私が気づいていなかった? いや、でもさっき確か未発見のモンスターが来訪しましたって通知が……?
通知ログをよく見てみると、未発見のモンスターが~云々の前に、「キラネズミの来訪」って書いてあって驚愕する。来たことあったの!? ……私が知らなかったということは夜間のログの見落としだろうか?
夜間というと、ワルフルたちが頑張ってどうにか追い払ってるから気にしていないが、ずっと来訪しては住民にならないコウモリとかもいたりする。意識していないだけで、結構いろんなことが起きているのだろう。これを完璧に管理するのは無理じゃない? なんてめげてしまいそう。そこがおもしろいところではあるけど!
「え、じゃあさっきの初来訪は誰……?」
「あちらのほうをご覧ください」
そこにはなぜ気づかなかった! と思うほど存在感のある、ニンジンタテガミの馬が……!!
「きょ、今日はニンジン尽くしだなぁ~」
もっしゃもっしゃと柵越しに首を伸ばして花畑のお花を貪り食っていた馬が、近くを通りかかったキャラットの尻尾をひと囓り。可哀想……今日あの子はなんだか不運に見舞われてばかりな気がする。
すると、馬はあっさりと卵になり、住民化した。
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No.029
名称【ギャロット】
・ 分類:野菜
・ 原型食物:にんじん
・ 原型生物:ウマ
・ 危険度:D
・ レア度:R
・ 大きさ:2タイル(1×2)
・ 生息地域:枯れ果てた草原
・ 好物:ニンジン、短い草
・ 来訪条件:
所属するギャロットが一頭もいない。
400タイル分の汚染されていない土地がある。
・ 住民化条件:
400タイル分の深層浄化された草地がある。
(設置物の下も含む)50タイル分の空いた直線がある。
枯れ果てた草原探索率80%以上。
キラキラニンジンを一本食べる
・ 汚染タイル数: 陸上3
・ 能力:
騎乗ができる。
探索時、敵対モンスターに出会った場合ガーデンテイマーを乗せて自動でモンスター周囲を移動。攻撃を回避する。
通常探索時は移動で直接指示が可能。
一日一回タテガミを引き抜いていくとニンジンが11本収穫できる。
・ 備考:
タテガミを引き抜いていてもパフォーマンスは落ちない。
タテガミとして生えているニンジンの葉っぱを編んで飾りつけることが可能。
・ 生態観察:
広範囲の浄化が進んだ土地に現れる移動特化型モンスター。
騎乗による探索補助能力を持ち、敵対行動の回避に優れる。
日常的な生産にも貢献し、長期運用に向いた相棒となる存在。
高い信頼関係を前提とした安定した管理が推奨される。
――――――
「柵沿いまで植えてるとこうなるんだなあ」
遠い目になりながらも柵の設置の仕方を見直すことを考える。
ええと、本格的に騎乗できるモンスター……ゲットだぜ?
第二ガーデンについては、見てないところで覗きに行ったことがあったということで……!




