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腐食世界のガーデンテイマー  作者: 時雨オオカミ
『草原の王蛇は微睡みの中で希望を抱くか?』

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55/55

図書館を満喫しよう!


「はあ〜図書館の空気の匂い〜!!」


 あっちもこっちにも本、本、本がたくさん! 

 私がテンションを上げて、くるくるまわりながらいろんな方向を眺めていれば、肩にしがみついているシーちゃんがパシパシと小さな手で叩いてくる。

 自己主張も増えたね〜! と喜んでもう、二、三度まわった。


「さて、図書館ではあるけど、調べられる箇所はさすがに限定されてるよね……」


 と、適当な本を抜き出してパラパラと捲ろうとして……ふとホログラムが飛び出してきて驚いてしまう。そうか、本の形はしているけれど、ゲームだから内容は本の分厚さほどはない。だからこうしてウィンドウが出て内容を見られるようになっているのだろう。


 タイトルは……【おみずをさがして】? 


 ――――――


 ある日、うさぎのルルは森の池が空っぽになっていることに気づきました。

 そこでルルは、友だちのリスやカエルと一緒に水を探しにいろんなところに旅をしてみることにしました。

 でも、どこを探しても水はなかなか見つかりません。


 山に登っても、川を辿っても、水はどんどん少なくなっていきます。


 最後に出会ったのは、大きな機械。

 そこからほんの少しずつ水が流れているのを見つけて、ルルたちは大喜び! 

 仲間たちを呼んで水を分け合うと、機械から湧き出る水だけではとても足りません。

 友達をみんな呼んだことをルルは後悔しました。

 後悔をして、そんな自分が嫌いになってしまいました。

 みんなお水が欲しいのは一緒だから、独り占めするのはいけないのだとルルは喉が渇いてもちゃんと順番を守って我慢しました。


「もうここしかないのかな……大事にしなくちゃ!」


 答えは誰も知らないままです。

 再び苦しい思いをして水を探しに行こうとする勇気ある動物は、あまり多くはありませんでした。


 そんな、みんなで水を大切に使おうと決める童話が本には書かれている……。


 ――――――


 水を大切にする話ではなくないか? 

 空中都市の人間ってこんな童話を読んでいるのか……こういうのを見ると、このゲームが腐食された世界観であることを分からせられる。

 これを書いた側の倫理観大丈夫そ? 


 ええと、他の本はどうだろうか。

 よく見てみれば、図書館のあちこちが光っている。よくある、ここは読めるよ! という目印だ。

 まあ、活字ならなんでも読むのが大好きなので、こういう世界観に則したフレーバーテキストは網羅していきたい。

 しばらく読み耽ってみることにしよう。


 近くから行こうかな。次はっと。

【たべものベッド 一巻】とな? 


 ――――――

 バターの香りが大好きなくまのポムは、いつも焼きたてのパンの上でお昼寝をします。そんなある日、ポムはパンが少しずつ固くなっていることに気づきました。


「どうしてだろう?」


 ポムはパン屋のおじいさんにお話ししてみました。


「火が強すぎるのかもしれないね」


 おじいさんが言ったことを覚えて、ポムはパンを守るために、近くの火を消したり、水を持ってきたり、いろいろ試していきます。


 やがて、ちょうどいい焼き加減のパンが戻ってきたので、そのままパンのベッドに寝転がってポムは笑顔になりました。

 ポムは今日も、あったかいパンの上で眠っています。


 ――――――



 いろいろとツッコミどころはあるけどまあいいや。一巻ってことはもう一冊くらいは同じシリーズのものがあるはず。どこかな〜。お、あった二巻。



 ――――――


 お鍋の中をベッドにしている蛇のシチーは寒くて目が覚めました。

 へくちっ! と大きなくしゃみをしてお鍋の下を覗き込むと、なんとあったかくしてくれていた火が消えているではありませんか。


 困り果ててしまったシチーは、近くを通りかかったネズミに頼んで火を探してきてもらうことにしました。

 火がなければシチーは元気が出ません。どろどろの体は冷えて固まって、動きづらくなってしまいますし、シチー以外の七匹の仲間は起き上がることすらできなくなってしまうのです。


 小さなネズミはその後、時間をかけてマッチを探して持ってきます。


「あつあつで頼むよ!」


 了承をしたネズミにより、持っているマッチを全て使いお鍋に火がつけられると、だんだんとテンションが上がったシチーは鼻歌を歌いながらあつあつのシチューを吐き出しました。


「わ! なにするの!」

「ありがとな〜! お礼にうまいシチューでも食っていけよ!」


 シチーの隣から、そして周囲から残りの七匹の蛇が顔を出すと、協力してくれたネズミに対して次々と熱々のシチューを吐き出し始めました。

 ネズミはとてもではありませんが、そんなあつあつのご飯は食べられません! 

 慌てて近くの水道から水をかけて火を消すと、みるみるうちに元気を失ったシチーがメソメソと泣きながら謝り出しました。


「ほどほどが一番だよ」

「ごめんよぉ」


 こうして、ほどほどの火加減にしてもらったシチーはネズミと仲直りをして、すやすやと健やかにお鍋のベッドで眠りにつくのでした。


 ――――――


 え、なに? お鍋にシチューの蛇で、シチーの他に七匹……ヤマタノオロチかなにか? こわ……ただの絵本だと思ってたけど、もしかしてこれ今後出てくるのかな。


――――――


【はしる しまうま と ひびわれただいち】


 元気いっぱいのシマウマの子どもは、走るのが大好き。

 でも、走るたびに地面がパキパキと割れていってしまいます。その音が面白くて散々に走り回りましたが、子どもはやがて疑問でいっぱいになりました。


「ねえママ、どうして地面は割れるの?」


 大人のシマウマは言います。


「ここはもう渇いてしまっているからだよ」


 それでも子どもは走るのをやめませんでした。よく分からなかったからです。


 最後に、少しだけ緑の残った場所を見つけて、

 そこで静かに立ち止まると、美味しそうに草を食みました。


「ここは割れないんだ! なんでだろう?」


 やがて草を食べ終えるとまた走り出します。

 根も残らなかった草地の跡はやがて渇いて、次に子どもが通ったときにはパキリとひび割れました。


 ――――――


 こっちはバキベキウエハースの平原のことかな……。

 シマウマいるのかなぁ。


 ――――――


【ちいさな はちの おくりもの】


 透明なおなかを持つハチは、きれいな水を集めるのが好き。

 でも、水はどんどん少なくなっていきます。


 ある日、ハチは旅人に出会いました。

 水がなくて困り果てている旅人に、ハチは少しだけ水を分けてあげます。

 すると旅人は言いました。


「ありがとう。これでまた増やせるよ」


 ハチはその言葉の意味も分かりません。

 でも、褒められたことだけは分かったので、誇らしげにしました。

 そして今日もハチは元気に水を求めて飛び回るのです。


 ――――――


 これはミズバチかな。

 水は大事だよ〜って話が結構多いように感じる。


 ――――――


【どうぶつえんにいきたい】


 ある子どもが「ほんもののどうぶつを見たい」と言う。

 大人は言う。


「図鑑で見られるよ」

「テレビでも見られるよ」


 でも子どもは言う。


「ちがうの。さわりたいの」


 その言葉に、大人は子どもをただ抱きしめた。


 最後のページに、大きなガラスの向こうで眠る動物を見ている描写が写されている……。


 ――――――


「ゔっ!」


 こればっかりは自分にブッ刺さってしまった。

 私たちは今まさにこれと同じような状況の時代に生きてるわけでぇ……グサグサ刺さってしまうわけでぇ……。

 でも、だからこそ、こうして『触れる』ゲームが高クオリティで世に送り出されているのだろう。

 自然を大切にしよう……。


 えーと、次。次は……おっ、なんか普通の動物図鑑がある。



【旧世界動物図鑑】

 ――――――


 名称:ウサギ(Rabbit)

 分類:哺乳類

 生息域:草原・森林・農地周辺


 草食性の小型動物。長い耳と発達した後脚を持ち、跳躍による高速移動を得意とする。

 外敵に対しては警戒心が強く、巣穴を中心とした生活圏を形成する。


 柔らかい体毛は保温性に優れ、古くから人類にとって愛玩・家畜の双方の対象であった。


 現況注記:

 野生個体は地上環境の変化により大幅に減少。

 現在は管理区域内での保護・繁殖個体のみ確認されている。


 ◯


 名称:オオカミ(Wolf)

 分類:哺乳類

 生息域:森林・草原・寒冷地帯


 群れを形成し、高度な社会性と連携による狩猟行動を行う肉食動物。

 個体間の役割分担が明確であり、リーダー個体を中心に秩序が維持される。


 遠吠えによるコミュニケーションや縄張り意識が強く、広範囲を移動する習性を持つ。


 現況注記:

 生息域の消失と食料環境の変化により、自然個体群は確認困難。

 遺伝子情報は保管されている。


 ◯


 名称:コアラ(Koala)

 分類:哺乳類

 生息域:温暖な森林地帯


 主にユーカリの葉を食べて生活する樹上性動物。

 ユーカリに含まれる毒性成分を分解できる特殊な消化能力を持つ。


 活動時間は短く、一日の大半を休息に費やす。代謝効率の低さが特徴。


 現況注記:

 生息環境の維持が困難となり、自然繁殖はほぼ停止。

 現在は高管理施設においてのみ生存が確認されている。


 ――――――


 ちょっと抜粋して見ただけでも、現在は存続が無理だよ〜みたいな内容が多い。し、深刻だなあ……でもこれ、リアルでも似たような状況だから困るんだよね。

 他にも旧世界の植物図鑑やらなんやらもあったり、空中都市の生活史や、食糧供給の仕組みについての本などが見つかった。


 食糧供給については、主にガーデンテイマーの職を持つ人たちに頼りきりになっていて、それ以外の食糧は人工物らしい。よくあるディストピア飯みたいなこう、ブロック状の栄養バーとゼリーみたいな。

 ガーデンテイマーは多く存在するけど、そのほとんどの拠点は空中都市にあって、地上から持ち帰ったものを利用して畑を作ったりして生活しているらしい。

 だから、地上に拠点を構えてガーデンと一緒に暮らし、過ごす私たちプレイヤーの世代は特別らしい。


 第七十五期ガーデンテイマー。それが私たちプレイヤーの名称なのだとか。

 ……って、これ、図書館で能動的に手に入れないと分からない情報なのでは!? いいのかそれ!? 


 他にも旧世界の環境汚染レポート的なものがグラフ付きで載っていたり、環境を維持するためのエコスフィアという、あの装置の補正値がズレて維持されていたものがだんだん崩壊していく様子が数値で分かる資料なんかもある。


 料理レシピをいくつか発見して作れるようになったりとか、植物の名前を知ったのでショップで注文できるようになったとか、あとは遊具類の名称を知ってこれまたショップに入荷させることができるようになったとか、そういう恩恵も得た。


 他にも未解明モンスターの報告書やら、異常個体のレポートやら、ちょっとホラーな報告書なんかも見つけたりして楽しく読む。


 あとは厄介なモンスターについてとかもかな。1タイルでも環境変化させた場所があれば、しばらく住民化はできないのに延々訪れて、しかも能力が厄介なモンスターがいる……みたいな情報を手に入れて私は笑顔になってしまった。


 しばらくは浄化を後回しにしているし、荒らされても平気な第二ガーデンでちょっとチャレンジしてみようかな? どんな子が来るのか楽しみだなあ。



 ありとあらゆる読めるフレーバーテキスト。

 それら全てを穴が開くほど読み進めて、そして私は見つけてしまった。


「ん、このファイル手紙が挟まってるな」


 気になったので、手紙を見てみる。

 開封済みだ。それに、なんかメモも一緒にファイルに入っている。

 二つを手に取ると、手紙のほうからブゥンとホログラムが浮かび上がり、その内容がウィンドウとして目の前に展開された。


 読み進めていくうちに、私は衝撃を受けることになる。


 ――――――


【ガーデン管理補助における例外事例についての照会】


 第七十五期ガーデンテイマー各位。

 ならびに関連部署ご担当者様。


 お疲れ様です。空中都市拠点、ガーデン管理担当の第七十三期テイマー、識別番号A-73-112です。


 先日、地上拠点にて活動している第七十五期のテイマー数名と情報交換を行った際、気になる点がありご連絡いたしました。


 彼らの発言によると、各個人に対し「C」と名乗る補助存在が常時随伴しているとのことです。

 当該存在は以下の機能を有するとの報告を受けています。


 ・探索時のナビゲーション

 ・環境および生態に関する助言

 ・施設および機構の操作補助

 ・対話による意思疎通(双方向)


 しかしながら、我々第七十三期以前、そして七十四期のテイマーにおいては、そのような補助機構の配備は確認されておりません。

 ガーデン管理は原則として単独作業であり、支援は遠隔端末またはマニュアルに限定されていたと認識しております。


 当該「C」が新規実装された補助システムである場合、正式な通達が未確認である点、またその存在が地上拠点に限定されている可能性について、いくつかの懸念がございます。


 ・期ごとの支援格差が発生している可能性

 ・未承認の補助機構が現場運用されている可能性

 ・当該存在の制御権限および管理主体の不明瞭さ


 また、当該テイマーの発言からは「個体ごとに挙動差がある」旨の示唆もあり、単一システムではない可能性も考えられます。


 現時点では情報が断片的であるため、確認および必要であれば調査の実施をお願いしたく存じます。


 以上、取り急ぎのご報告となります。


 第七十三期ガーデンテイマー

 識別番号A-73-112


 ――――――


 ――――――


 下には印刷用紙に手書きのメモが挟まれている。

 端が少し折れているため、急いでいたのかもしれない。


 ――――――


 ・例の「C」報告


 → 第七十五期のみ? 

 → 仕様書に該当記述なし


 ・地上拠点限定の可能性あり

(現場判断で追加? 誰の?)


 ・補助AIの正式配備はしていないはず

 → 基本は単独運用+端末支援のみ


 ・とはいえ現場で問題起きてないなら優先度低


 ・人格的応答あり? 

 → 見た目は一緒らしい。そんな高度なAI秘書ができたならこっちに欲しいくらいなのに、どうして現場なんかにあるんだ


 ・一応、次の会議に回す

(議題多いので時間あれば)


 ・ログ残ってるなら後で見ればいい


 ◯


 別の筆跡でその後に追加されている……。


「放置でいいのでは」

「現場の主観の可能性あり」

「勝手に湧いて出たわけでもあるまい」

「誰が開発したのかだけ捜索すること」


 ◯


※さらに小さく書き込みが行われている。


「開発者の該当なし。本当に湧いて出てる? そんなわけ」

「まあでも、もし自律化してるならそれはそれで使えるし、そのままで良いのでは」



 ――――――


 その全てを読み終わり、私は急に自身の肩にいる存在が怖くなった。

 緊張してしまっている自信がある。首を、もしくは視線を横に動かして、シーちゃんをまともに見ることができない。


「……」

「どうされましたか、ユウ様」

「……シーちゃんは、私を待ってたんだよね?」

「はい、『C』はお待ちしておりました。ずっと、ずっと」

「そっか」


 いや、こんなよく知らない誰かのメモ書きよりも、これまで過ごしてきたシーちゃんを信じよう。この子はずっと私と寄り添ってくれた。それならば、どんな存在だとしてもいい。

 彼女が私たちを騙しているとか、そういうことは絶対にないと言える。それは私の主観でしかないけれど。


 だから、大丈夫。

 心を落ち着けて、シーちゃんと目を合わせる。

 深い緑色の綺麗な瞳と目が合って、微笑んだ。


「期待に応えないとね」

「……ありがとうございます」


 そんなことより、これが本当なら私たちってなにも知らないまま現場に放り出される予定だったって、こと!? 

 どこの場所も偉い人ってやつはさぁ!! 


「シーちゃんがいてくれてよかった」

「それはなによりです。『C』は、ガーデンテイマーのサポートをすることが至上の喜びですから」


 当たり前のように返事をする彼女に頬を寄せる。

 くすぐったそうに、けれど彼女は積極的に同じく頬を寄せてくれた。

 それだけでいい。私にとって重要なのはそれだけだから。

思いつきで予定にないフレーバーテキストを大量に書くなんてことするもんじゃないですね!!でも楽しかったです。

更新遅れて申し訳ありません。3話分くらいの文量があるので許して!!

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― 新着の感想 ―
自然発生してるならシーちゃん一人ぐらいお持ち帰り許される…?
絵本って教訓を含めないといけないからか、大きくなって読むとちょっと怖く感じたりすることがありますよね。シマウマの話とかちょっと悲しくなっちゃいました。 Cさんかなり意味深ですね。世界観がちょっとずつ出…
なるほどなるほど 手紙もCの高感度変動要素と。 さては反応次第でかなり細かくC関連のイベントが切り替わるな? ついでに攻略を見て急に態度を変えすぎたり固定対応したりすると多分そっちでも好感度が下がると…
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