【枯れ果てた草原】表層探索率100%
さっそく平原に行ってきてみたところだけど、今度はまた枯れ果てた草原のほうに行ってみようと思う。今日の夜ギリギリにお店には行くから……あと一回くらいは探索する時間があるはずだ。
今のガーデンはある程度防衛のできるモンスターたちが揃っている。それはつまり、ワルフルたちを全員連れ出しても大丈夫ということだ。
ワルフルにバタベアを連れ、バタベアには私の護衛をしてもらいながらワルフルたちの群れでモンスターを相手することが可能になる。
ワルフルたちが群れでいるのであれば、きっと草原の表層ボスもどうにかなるんじゃないだろうか? そう思いたい。
「ワルフルたち〜」
集合をかけるとみんないっせいに尻尾を振りながらやってきた。
助かる。可愛い。
ガーデンに戻ってきてさっそくだけど踵を返して枯れ果てた草原のほうへ向かう。
あわよくば今日中に表層の探索率を100%にしてしまいたいところだ。80%まではいってるからあとちょっとのはずなんだよね。
「探索を中心にやってから壁に向かおう」
ゲートをくぐって草原へ。
もはや見慣れた枯れ果てた草原の寂しい草と地面を踏みしめて、私は今日も歩きながら知らない施設がないかどうかを確認していくことにした。不思議のダンジョンほどではないが、入るたびに新たな施設を発見することがあるのでマップの隅から隅まで確認しないと気が済まないのだ。
ワルフルたちが順調に絡んでくるジャガイヌを蹴散らし、ゆったりと探索をしていく。
今回発見したのは風車の残骸らしきものと、土地の中心付近に建った大きな建造物である。
外縁のほうでは酪農施設や醸造施設、畑の痕跡などが多くあったが、中心部は特に石畳の道などが多く、加工品らしき痕跡がよく見つかる。しかし、こんなに大きな家は今まで一度も見つけたことがなかった。
本来ならあり得ない話だ。こんなにも目立つ大きなお屋敷を見逃すはずなんてないのだから。
「焼けこげた跡……?」
屋敷の外を囲うように焼けた跡のようなものを見つけてしゃがみ込む。構ってもらえると思ったのかリーダーのワルフルが鼻を押し付けてくるのを、うりうりと撫でくりまわしてやりながら観察する。
焼け跡を辿って歩いてみても、ちょうど丸く屋敷を取り巻いているように見える……ってくらいしか収穫はない。
「シーちゃん、これなんだと思う?」
「……保護フィールドの一種のように見受けられます。外敵から視認されることを防ぎ、一見としてそこになにもないように見せるフィルターのようなものですね。保護フィールドを展開していた端末を調べることができれば、ガーデンにも応用することができることでしょう」
「え!?」
なんと、めちゃくちゃすごいものだった。
ということは、探索率100%にするためにも必ず見つける必要がある場所だったのだろう。
よくよく調べて痕跡を記録してからお屋敷の中に入る。
廃墟のようになっているのでほとんど調べるところはなさそうだけど……ワルフルたちがふんふんと匂いを嗅ぎながら歩き回ることで、瓦礫の下に階段があるのを発見する。
「バタベア、お願い」
「べあ〜!」
危ない危ない。連れてくるのをバタベアにしておいてよかった! 最初、ボス戦をするなら妨害特化のオリウルかな〜とも思っていたので、そうしてバタベアを連れてくることをケチッていたら、いったん戻る必要があっただろう。探索メンバー制限は10匹くらいまで枠があるけど、正直ゾロゾロ連れ歩いていても敵対モンスターに気づかれやすくなるだけだからあんまりメリットがないんだよね。そうか……こういうこともあるなら、防衛、妨害、探索に役立つ能力持ちで固めていくほうがいいんだね。学習した!
地下への階段を降りていって少し。
今度は古い廃墟のような屋敷には似つかわしくない『サイバーな雰囲気』の部屋に辿り着いた。
「こ、ここは……?」
上の様子と違いすぎるので、正直かなり異様だ。
でも、どことなく空中都市と同じような技術に感じる。
部屋の中心にある、明らかにこれが重要ですよ! みたいなでっかい機械に近づき、調べると近くにキーボードのようなものがあるのを発見した。8桁くらいの番号みたいなのまで刻まれていて、いよいよ怪しい。
「これは……どうしよ」
「解析はお任せください」
「それじゃあ、頼むよ」
シーちゃんが自己主張してきたので、いったん機械のキーボードの近くに彼女をおろして見守ることにした。すると、彼女は猛烈な勢いでキーボードを叩き出し、なにやら解析をはじめた。素人目にはさっぱりと分からない演出が終わる頃には、機械は空中に地図のようなものを照射していた。
そして長い長い操作の末にシーちゃんがこちらを向いて話し始めたのだ。
「記録照合中……照合を完了。この地域の表層調査は完了しました。ログを参照しますか?」
「もちろん!」
シーちゃんの説明を聞くに、この草原のフレーバーテキストやログを全て確認してみると、こうなるらしい。
――――――
本地域には、かつて人類の生活圏が存在していたと推測されます。
確認された遺構は以下の通りです。
・酪農施設跡
囲い、搾乳設備と思われる機構、貯蔵槽の残骸を確認。
現在「ミルクの池」と呼称されている地形は、当時の乳製品処理設備の一部であった可能性があります。
・醸造施設跡
発酵槽、保管庫、搬送用配管の痕跡を確認。
農作物の加工を目的とした施設だったと推測されます。
・市街地跡
住宅基礎、道路の残骸、生活設備の配置が確認されています。
本地域は農業と生活が近接した、地方都市に近い構造を持っていたと考えられます。
・大壁
市街地と外部区域を区画するための構造物。
防衛目的としては脆弱であり、土地の境界を示す用途で使用されていた可能性が高いです。
・畑の跡
耕作地の区画、土壌改良設備、灌漑跡を確認。
長期間にわたり農業が行われていた記録と一致します。
・風車
風力を利用した小規模発電設備の残骸。
地域単位でのエネルギー供給を担っていたと考えられます。
以上の調査結果から、この地域は農業・畜産・加工を中心とした穏やかな地方都市であった可能性が高いと判断されます。
しかし、この市街地跡の中心部に存在する、大型住宅構造の地下より機械による管理区域を確認しました。
建造物内部には、旧時代の技術体系に属する機械設備が保存されています。
装置には八桁の管理番号が刻印されており、現在も最低限の待機状態を維持しているようです。
再起動には認証キーが必要となります。
――――――
「入力します」
「えっ、知ってるの!?」
「はい」
どういうこと〜!? となっている間にキーの入力が終わったらしい。待機中……のような形だった機械が強く光って低い起動音を鳴らした。
――――――
確認された第一段階の認証キーを読み込み。
……認証成功。
システム再起動中。
……完了しました。
装置の起動により、本地域の地形情報が更新されました。
表層マップは単層構造ではなく、複数の層を持つ多重構造マップとして再構成されます。
この土地は、かつて穏やかな田舎の街でした。
しかし、その静かな風景の裏側には、確かな科学技術の管理網が存在している。人類は長く、長く、この星を管理する存在だったのです。
……探索地【枯れ果てた草原】
……表層探索率100% 達成。
――――――
機械を再起動したシーちゃんが私のほうを振り向く。
「こういった機械を各地でお探しください。探索地のデータを直接確認することでCが記録し、ガーデンテイマーへ有益な情報として利用します。この端末には保護フィールドについての使用方法が確認されたため、解析が完了次第ガーデンで利用可能になるでしょう」
「つ、つまり?」
「草原のガーデンでは、保護フィールドを展開している間、新たなモンスターが来訪することがなくなります。ご活用ください」
シーちゃんの言葉をよくよく吟味して顔を上げる。
そ、それがあればつまり、草原のガーデンをある程度放置して第二ガーデンに手をつけても大丈夫になるって、こと!?
ログ内容にめちゃくちゃ悩んでしまった。




