バキベキウエハースの平原へ
ガーデンの仕事がひと段落ついたところで、一度バキベキウエハースの平原に行ってみようと思う。
枯れ果てた草原があんな感じだったのでなんとなく想像がつくが、名前の字面的にひび割れた大地になっているんだろう。シーちゃんの見せてくれた映像だけでは判断ができないものの、やっぱり新しい場所に行くとなるとワクワクするものだ。
探索の選出にはリーダーのワルフルと真っ先に子分になったジャガイヌの親分子分コンビに、オリウルにバタベア。これだけいれば探索もきっと盤石だろう。ワルフルとジャガイヌのコンビはなんだかんだ仲が良くて、いい関係を築けているのでその関係性を眺めているだけでも楽しく、可愛らしい。探索が終わったら識別しやすいようにアクセサリーのお買い物をしに行こうね……。
端的に言って、彼らは私の中での推しのモンスターになっているので贔屓もやむなし! って感じ。みんな可愛いけど、ここまで個性が際立っているエピソードを持つと、やっぱり印象に残りやすいんだよね。その点でいくとバタベアとミルックマのクマコンビも良い。
「べあー」
「みる~」
今も探索に行く前の挨拶なのか、バタベアにぐわーっと抱きついて甘えているくらいだ。バタベアのほうがそんなミルックマの背中をよしよしと撫でてあげている。保護者かな? ザ・包容力! って感じ。
でっかいクマ同士が仲良くしているものだから目立つこと目立つこと。こんな感じのモンスター同士の交流とかも、きっとガーデンによって違うのだろう。
うちでは他にも、つい先ほど仲間になったコンコンが、バードッグの掘る穴を目当てについて回ったりしていて、自分で穴を掘る手間を狐らしく賢く横着していて可愛いかったりする。
「はあ、癒し……」
「本日は一日眺めていますか?」
「ああ、行くよ。探索にはちゃんと行く。シーちゃんったら意地悪なんだから……」
「私はただ、疑問を口にしただけです」
「まったくそんなこと言って~……私って言った?」
「どうかなさいましたか?」
「い、いやあ、なんでもない」
隣で首を傾げるシーちゃんに皮肉かな? と返したら一人称『私』での考えが返ってきた……マジ?
たま~に私って言って主張するときがあるけれど、普段は一人称『C』なんだよね。これってやっぱり意味とかがあるのかなあ……考察がはかどってしまう。少なくとも、私って言って主張してくれるのはきっといいことなのだろう。この調子で自我をもっと出してくれるようになったら、いつか料理とかを受け取ってくれるようになるだろうか。
「じゃあ、みんな。行こう。はじめての探索地へ!」
ガーデンを防衛する子たちに手を振って外に出る。ガーデンの近くのワープゲートまで来ると、いつも行っている【枯れ果てた草原】のワープゲートのような空間の隣に、これまた露骨に大きな姿見に似たゲートが設置されている。どうして鏡だと判断したのかというと、大きさがちょうどそれっぽいことと、波打つようにゲートの中に知らない景色が見えるからだ。多分行先の景色が映っているんだと思う。
「よし」
ゲートをあっさりくぐって目をつむる。
そして次に感じたのはパリッとなにかを踏んだ感触。砂が巻き上げられるような乾燥した空気に、枯れ果てた草原よりも少しあたたかい気候。
どこまでも続いていく地面はひび割れていて、乾燥地帯で想像するような干上がった大地……というイメージそのままの場所だ。蜘蛛の巣のように亀裂が無数に広がっているのに、足元は一定の安定感がある。けれど、地面にしゃがんで覗き込んでみると亀裂の中は真っ暗で何も見えない。
ここまで暗いと、地面の下にポッカリと暗い洞穴が待ち受けていて、一歩踏み出した瞬間崩れ落ちていってもおかしくないとさえ感じてしまうほどだ。
実際にはただ亀裂の中が暗いだけなのだろうが、本当にそうだろうか? と不安になるような得体の知れなさがあった。まるで暗く濁った水たまりを見て、実はとんでもなく深いんじゃないかなんて想像が膨らんできてしまうような。立っている足場の不安定さを勝手に想像してしまうような不気味さがあった。
「パリパリいってる……」
地面を軽くつま先で叩くとパリパリと表面が軽くて剝がれるような感触がする。再びしゃがんで剥がれた地面をつまんでみる。しゃがむとワルフルが近づいてきて鼻先を頬に押し付けてくる。はいはい分かったからちょっと待っててね~なんて言いつつ、剥がれたものを観察して上に持ち上げたり、匂いを嗅いでみたり、太陽に透かしてみたりしていたときだった。
「わふー!」
あ。
「た、食べた!?」
ワルフルが地面のカケラをパックリと食べてしまった。
びっくりして思わず見つめてしまったが、地面を食べるなんてどういうこと!? とワルフルの体を掴んで固定しながら口をこじ開ける。犬が毒物でも誤って食べた時みたいな反応になってしまったが仕方ないよね!?
「わ、わう~」
しょんぼりしながらくぐもった声を漏らすワルフルがかわいそうだけど、とりあえずと口の中を覗き込む。そこにはカケラになってなんだか水分を含んだような地面のカケラがあった。
「ん? んん? てっきり土を食べるだけならミネラル摂取かなにかだと思ったけど……」
思い付きのまま私も地面のカケラを新しく手に取って思い切って口に放り込んでみる。
……こ、このさくさくパキッとしていて口の中の水分が奪われるような感覚は!
「ウエハースだこれー!?」
死ぬほど経験した覚えのありすぎる味である。
ウエハースばっかりそんなに食べる機会なんてないって? オタクにはあるんだよ。
そのうち食べるのに飽きた末、ウエハースを材料に利用した別のお菓子の料理の作り方とか検索して無駄に詳しくなっていくんだ。私は詳しい。そういうレシピばっかり覚えちゃったりするんだよね。
「新たな探索地の名称は【バキベキウエハースの平原】だと認識していただけていたと思っておりましたが……」
当たり前のように疑問符を浮かべて尋ねてくるちっちゃいシーちゃんに目を向ける。
「まさかそのまんまの意味だとは思わないじゃない!?」
「そういうものでしょうか」
やっぱりシーちゃんは不思議そうにしていた。
第二章の章タイトルを追加しました。




