ローラビット・ハニービィ
やってきたモンスターは見知らぬウサギさんと、ハチさんだ。
ウサギのほうは抹茶っぽい色をしていて、お腹の辺りがぐるぐると渦巻くクリーム色の模様がついている。ひび割れて硬そうだけど、本来なら柔らかい毛皮なんじゃないかな?
ぴょこぴょこと可愛らしく移動しているが、ときおり体や長い耳を丸めて密着させ、大きなボールのようになって転がって移動することもある。
このボールになった姿に既視感を覚えてしばらく眺めていたけれど、すぐに思いついた。ロールケーキに似ているのだ。
この子も多分スイーツ系モンスターだろう。
ウサギはお花畑に近づいていくと、器用に鼻先で柵を開いて中に入った。そして、振り返って柵を閉じ、ふんふんと鼻を鳴らしながら柵の中を歩き回った末に卵に変化する。
テンカウントがあって、卵から出てきたウサギにはすっかりひび割れがなくなり、柔らかいロールケーキらしいふわふわさに変化していた。
さーて、この子の図鑑は……。
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No.014
名称【ローラビット】
・ 分類:洋菓子
・ 原型食物:ロールケーキ
・ 原型生物:ウサギ
・ 危険度:D
・ レア度:R
・ 大きさ:1タイル
・ 生息地域:バキベキウエハースの平原
・ 好物:??? 、??? 、???
・ 来訪条件:
10タイル分の汚染されていない草地がある。
6マス以上を覆った開閉可能な柵がある。
所属するローラビットが三匹以下。
・ 住民化条件:
15タイル分の汚染されていない草地がある。
6マス以上を覆った開閉可能な柵がある。
所属するワームースが一匹いる。
・ 汚染タイル数: 2
・ 能力:
自身の味と同じロールケーキ【ロールラビットケーキ】を一日に一回、十個生成する。
捕食者モチーフのモンスターをガーデンに引き寄せることがある。(群れでの重複発動は行わない)
ローラビットによって引き寄せられた、捕食者モチーフモンスターの未解放の来訪条件がひとつ開示される。
・ 備考:
Aランクまでの危険度の高いモンスターも稀に引き寄せることがあるので注意。
【ローラビットケーキ】の単価は高めに設定されている。
・ 生態観察:
ローラビットは転がるような移動様式を持つ小型草食系モンスターである。
自身の体組成と同一の高単価食品を生成する能力が確認されている。
無害そうな外見とは異なり、捕食者を強く引き寄せる性質を持ち、危険度の高い個体を誘引する可能性があるため注意が必要とされる。
生存戦略としては高リスク型のモンスターに分類される。
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私は戦慄した。
あまりにもリスクの高い能力内容に、分かりやすくビビったのだ。だがそれと同時に好奇心を得た。
これほどまでに高リスクを押し付けて来るモンスターの、メリットとして挙げられている高単価食品の生成とはどれほどのものなのか、と。
「シーちゃん、ローラビットケーキって売るといくらになるの?」
「一つ、およそ3000ゴールドです」
「……なら仕方ないかあ」
はい、お金に目がくらみました。
いやだって、1日10個も手に入るんだよね? 1日で3万になるんだよね? 200ゴールドとかの野菜をチマチマ売るのが馬鹿らしくなるくらいに売却額が高い。こんなんもうリスクを承知で住民にしておくしかないじゃない!
ひとまずそのまま住民にしておいて、稀にやってくるという『稀』がどれくらいなのかとか、その稀ケースでやってくるモンスターが防衛の子たちで手に負えるかどうかをまず見てから今後のことを決めよう。このガーデンにはもう居ついちゃったけど、第二ガーデンからは柵の開閉ができないようにして住民にならないようにすることも可能だろうし。
「びっくりした……えと、次は」
実はローラビットに驚いている間に、もう一種類のモンスターがさらっと住民になった。桜の木を眺めていたハチさんである。
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No.024
名称【ハニービィ】
・ 分類:甘味料
・ 原型食物:ハチミツ
・ 原型生物:ハチ
・ 危険度:D
・ レア度:R
・ 大きさ:1タイル
・ 生息地域:糸引く森
・ 好物:樹木の花蜜
・ 来訪条件:
50タイル分の汚染されていない草地がある。
ガーデンに花をつけた樹木がある。
・ 住民化条件:
桜の木から蜜を採取する。
ハニービィの巣作りを放置する。
所属するハニービィが五匹に達していない。
・ 汚染タイル数: 陸上2
・ 能力:
自ら製作した巣箱に蜜を集め、ハチミツを生産する。
巣箱が複数ある場合、蜜の種類ごとに仕分けて蜜を生産する。
蜜を採取できる樹木に腐食モンスターが近づくと防衛する。(ランク差により防衛失敗率が増加)
・ 備考:
生産されたハチミツを取り出せるのは一日一回。
生産数(瓶詰め)は所属するハニービィの数に依存する。
ハニービィが五匹になると群れボーナスが発生する。(蜜生産数さらに1増加)
・ 生態観察:
ハニービィは樹木の花蜜を専門に採取する群生型モンスターである。
巣箱を中心に活動し、樹種ごとに分けられた高品質なハチミツを生産する。
蜜源となる樹木に接近する敵対モンスターに対して防衛行動を取る。
群れが形成されることで生産効率が上昇し、序盤の安定収入源となりやすい。
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「……ちなみに、ハチミツはひと瓶おいくら?」
「1000ゴールドです」
私の目玉がお金の形になっていないか、今すぐにでも確認しないといけないかもしれない。それくらい私はニヤついていそうだった。
「っと、危ない危ない。顔が……」
頭を振って余計な思考を払い、今日ものそのそとやってきた歩くハムの原木を視界に収める。
ダイコン狐……コンコンはうまくいったが、果たして豚さんのほうは上手くいくかな?
私は豚さんの通るだろう場所に、野菜類を潰して作成したミックスジュース。トマトジュース。そして、単純に切り分けて小さくし、柔らかくしたサラダを用意してみた。昨日見かけたえんどう豆やトウモロコシを中心とした料理だ。柔らかいものを食べるのであればこれでいいんじゃないかと思うけど……?
「……フンッ!」
……ダメだったらしい。
歩くハムの原木はしばらく鼻でふごふごと匂いを嗅いでいたけれど、どちらも食べずにスルーされてしまった。
「違うのか……」
ま、推測を外すときもあるよね。
まだなにか条件が足りないのか、それともなにか私が勘違いして推測しているのか……どちらだろうか。
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No.021
名称【???】
・ 分類:加工肉
・ 原型食物:ハム
・ 原型生物:豚
・ 危険度:D
・ レア度:R
・ 大きさ:2(1×2)タイル
・ 生息地 : 枯れ果てた草原
・ 好物:??? 、???
・ 来訪条件:
10タイル分の汚染されていない草地がある。
ガーデンに10タイル分の野菜畑がある。
・ 住民化条件:
10タイル分の汚染されていない草地がある。
???
???
???
・ 汚染タイル数: 陸上2
・ 能力: ???
・ 備考:???
・ 生態観察:???
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条件未達成が三つか……ハムの原木を収穫できる日はまだまだ遠そうだ。
「あとで新しい探索地にも行ってみないと」
一気にやることが増えた四日目は、まだまだ始まったばかりだった。




